俺は兵藤一誠、呪術師だ! 作:朝日
赤龍帝の籠手と黒閃にシナジーを感じて衝動的に描きました。
あらすじにも書きましたが、本作のイッセーからはスケベ成分が消えてしまっています。
原作と違って祖父が呪術師なのと、幼少期から人外と戦い続けて紙芝居のおっちゃんと出会う機会がなかったんだと思います。
それに伴ってイッセーの性格が原作より若干ドライになってしまってるので、ご注意ください。
『───イッセー、お前は強いから人を助けろ』
それが、俺の爺ちゃんの最期の言葉だった。
普段は優しくて大雑把な気のいい人なのに、稽古の時はそんな気配を微塵も感じさせないほど、鬼の形相で俺を鍛えてくれた爺ちゃん。
まだガキだった俺は稽古の度に爺ちゃんのことが嫌いになってたけど、今の俺なら爺ちゃんがあれだけ俺に厳しく稽古を付けていたのが、本心から俺のことを心配してくれていたからだと言うことがよく分かる。
「(……まぁ、谷底に突き落とされた時は死ぬかと思ったけど)」
退屈な授業の内容を小耳に挟みながら、毎日のように無理難題を吹っ掛けられ死にかけていた幼少期を思い出して苦笑する。
爺ちゃんは所謂裏稼業に身を置いていた人間で、今は廃れてなくなっちまったらしいんだけど、爺ちゃんは『呪術師』って呼ばれる一族の末裔だったんだとか。
息子───父さんが生まれてからは、父さんが何の力も持たない一般人だったことと、結婚相手の母さんも同じだったこともあり足を洗ったと言っていたが、俺が『神器』なんてもんを宿して生まれちまったがために、爺ちゃんは俺が自分の身を守る術を身に着けられるようにと、余命僅かな時間の中で俺に稽古を付けてくれたのだ。
「(実際、爺ちゃんが稽古付けてくれなかったら間違いなく死んでたしな)」
『神器』を上手く制御出来なかった頃は、何度も悪魔だの堕天使だのに命を狙われたもんだ。その度に逃げたり打ち負かしたりして難を逃れてきたが……あの頃は本当に大変だったなぁ。
『───
今まで苦楽を共にして来た
もっと恩返しして置けばよかったと心の底から思うが、きっと爺ちゃんは俺が生きててくれるだけで十分だと笑ってくれるんだろうなって確信がある。
ならばこそ、俺が爺ちゃんに出来る恩返しはたった一つだ。
「(呪術師として人を助ける……爺ちゃんとの最期の約束だもんな)」
▽
日課の鍛錬に向かうべく、部活動に向かうクラスメイトたちを見送りながら放課後の廊下を歩いていると、不意に視界に真っ赤な長髪が特徴的な美少女の姿が映る。その隣には大和撫子を体現したかのような、同じく目の保養には充分すぎる美少女の姿。
我らが駒王学園の二大お姉様こと、リアス・グレモリー先輩と姫島朱乃先輩だ。
「相変わらず、すげー人気だな」
ついつい言葉が口を衝いて出てしまったが、それほどまでにこの学園での先輩たちの人気は凄まじい。
異性だけに限らず同性からも絶大な支持を誇る二人の周囲には、まるでモーゼの海割りの如くぽっかりとした通り道が出来上がっているが、そんな二人を遠目から熱を帯びた眼差しで見据える視線は数え切れないほどだ。
こうして二人を目にしている以上、俺も当然ながらその一人ではあるのだが……むしろあれだけの美少女を見かけて足を止めない人間がいるなら俺が知りたいくらいである。
『相棒は奴らが
「……反応に困ること言うなよ」
ドライグからの言葉に嘆息しながら視線を外して廊下を歩く。
ドライグが言ったように、グレモリー先輩も姫島先輩も人間ではない、文字通り悪魔という人外の種族だ。
しかしそれは、決して過去に俺の命を狙って来たあの悪魔たちと同じという訳では断じてない。
俺たちが暮らすこの駒王町。この町はグレモリー先輩が管轄する土地の一つであり、日夜人外たちの襲撃からこの町の人たちを守ってくれているのが、他でもない彼女たちなのだ。
俺を襲って来たのははぐれ悪魔と呼ばれる所謂悪魔側のお尋ね者のような存在で、むしろ悪魔という種族全体で見ればグレモリー先輩たちのような悪魔が一般的な悪魔と言える。
まぁ……それはそれとして、単純に百パーセント信頼できるって訳じゃないからちょっとだけ警戒してしまったりもするが、俺としてはグレモリー先輩と敵対するつもりなんて微塵もないし、出来ることなら先輩たちとは関わらずにこの学園を卒業出来たらそれに越したことはないとも思ってる。
『クク。俺としては魔王と一戦交えるのも吝かではないがな』
「(あのなぁ……何てったってお前はそんな好戦的なんだよ)」
『ドラゴンなら往々にしてそういうものだ、相棒もいずれ分かる』
「(分かりたくねぇ……)」
グレモリー先輩、そしてもう一人の上級悪魔である生徒会長。
一度二人と事を構えるような事態になれば、最悪冥界の魔王たちがその腰を上げてやってくることは明白だ。そんな事態になれば、勝敗は別にしてこの町に甚大な被害が出ることは想像に難くない。
だからこそ、爺ちゃんとの約束を守るためにも、俺から彼女たちに干渉するようなことは今後一切ないと断言できる。
「───やぁ、兵藤くん」
下駄箱から靴を取り出していると、背後から聞き馴染みのある声を耳にして振り返る。
日本人離れした金髪と碧眼、そして特徴的な泣きぼくろ。駒王学園でも一、二を争うイケメン王子こと木場祐斗がそこにいた。
「よ、木場。お前もこれから部活か?」
「うん。兵藤くんは今日もバイトかい?」
「ああ。最近風邪が流行ってるらしくてな、今月はかなり忙しくなりそうなんだよ」
他愛ない話を交わしながら校門まで続く道を二人で歩く。
木場とは合同授業や学園の行事で知り合ってからというものの、いつの間にかこうして友人のように接する仲になってしまったが、俺はこいつの正体が姫島先輩と同じグレモリー先輩の眷属悪魔だと言うことを知っている。
松田や元浜からはイケメン王子として疎まれているが、木場がいい奴だって言うのは今までの関わりで俺としては十分理解しているものの、それでも悪魔ということもあり心のどこかでイマイチ距離を測りかねている自分がいるのも確かだ。
もしかしたらグレモリー先輩からの指示で俺のこと調べてたりするのかな、なんて考えてしまうのは俺の被害妄想に過ぎないことを切に願うばかりである。
ちなみに、バイトというのは嘘ではなく紛れもない事実だ。
普通に新作のゲームやその他の趣味、松田や元浜たちと遊びに出掛ける時にどうしてもお金が必要だからな。学生の身分では全く足りないのが現実だから是非もない。
『相棒なら、その辺の賞金稼ぎよりもよっぽと良い収入が得られると思うがな』
「(アホか。そんなことしてたら目付けられて、父さんや母さんに迷惑かかるだろ)」
何のために爺ちゃんが呪術師を止めたと思ってるんだ。
家には念のため『帳』を下ろしてるし、察知されないようにその外側にも隠蔽用の結界を余分に重ねているけど、それでも俺の正体が広まれば必ず父さんと母さんという弱みに付け込まれるから、それだけは絶対に阻止しなければならない。
「それじゃ、俺はこっちだから……部活頑張れよ、木場」
「うん。兵藤くんも、
「……おう、またな」
物騒ねぇ……ま、心当たりはあるし、何事もないように祈るしかないなこりゃ。
▽
「───おいおいアーシアちゃん。そんなに尻振って逃げ回られると、お兄さん誘われてるんじゃないかって勘違いしちゃうなぁ」
そう思ってたんだが、どうやら神様ってのはとことん俺のことが嫌いらしい。
バイトへ向かう道すがら。暗い路地から躍り出て来たのは、ボロボロのシスター服を身に纏った金髪の少女と、返り血でその神父服を真っ赤に濡らした白髪の青年。少女の顔はひどく青褪めており、青年の顔には下劣な笑みが浮かんでいる。
『悪魔祓い……いや、あの雰囲気ははぐれか? どちらにしても、どうするつもりだ相棒?』
「(どうするって……お前、分かってて言ってるだろ?)」
最近は鍛錬ばかりで実戦はからっきしだったからな。そう考えればドライグの言いたいことは自然と理解出来てしまうが、明らかに俺を揶揄って言ってると分かってしまうとどうしても嘆息せざるを得ない。
まぁ、それでも俺のやることは変わらないけどさ。
「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」
取り敢えず周囲を巻き込まないように『帳』だけでも下ろしておこう。
ていうか、普通に考えて悪魔の領地にシスターと神父がいるって相当な事態だぞ。しかも当たり前のように神父の方は光の剣と銃で武装してるし、グレモリー先輩たちは何してんだ?
「およ? なんだこりゃ、結界か?」
「……え?」
そして当の神父とシスターはと言えば、恐らく初めて見るであろう俺を起点にして空から泥のように落ちてくる『帳』に疑問顔。
俺も初めて爺ちゃんに教えて貰った時は普通の結界術との違いに違和感凄かったし、呪術師が廃れてめっきり見る機会のなくなった今の時代を考えれば二人の反応も無理はない。
ついでにちょっと余裕があったから帳だけじゃなく隠蔽の結界も張らせてもらった。これなら仮にこの後ドンパチが起こってもグレモリー先輩たちに気づかれることはないだろう。
「それで、いい年した男が女の子を追いかけまわして何のつもりだ?」
「あ? 何だてめェ」
「通りすがりの呪術師だよ」
呪術師ィ? と首を傾げる神父の前に、シスターを庇うようにして立ち塞がる。
同時にシスターだけに見えるように今のうちに逃げろと合図を送ってみたものの、シスターは気づいているのかいないのか、はたまた腰が抜けてしまっているのか、何にしても動く気配はなくその不安に揺れているであろう視線だけが背中に突き刺さってくる。
「君さぁ、呪術師だか何だか知らないけど、身内のゴタゴタに首突っ込まないで欲しいんだよねぇ……つい勢い余って殺したくなっちゃうから、さ!」
「容赦ねぇな!?」
もう二言ぐらいは言葉を交わせると思っていたのだが、やはり悪魔の管轄する土地を武装して歩き回る非常識なはぐれ悪魔祓い相手ではそれも叶わず……言うや否や光の剣を振り被って飛び掛かって来る神父に瞠目しながらも、何とか背後のシスターを抱えて飛び上がり距離を取ることに成功。
目を丸くするシスターをゆっくりと地面に下ろし、そこを動かないようジェスチャーで示して戦意どころか殺意を滾らせる神父と向かい合う。
「確認だけど、ここがグレモリー家の次期当主が管理する土地だってことはご存じ?」
「あー、何、君って悪魔の協力者か何か? オーケーオーケー、そしたらぶち殺し確定っすわ!」
「人の話を聞けよ!?」
頭の中どうなってんだこの神父。
そう思いつつ、放たれた銃弾を回避するために呪力を全身に巡らせ大地を蹴り上げる。
「そっちがその気ならこっちも容赦しねぇぞ、『
『Boost!!』
ついでに神器も左腕に展開して『倍加』の力を発動。
一気に加速した視界の中で、目を丸くして俺の姿を見失った神父の背後に回り込み、その無防備な背中に飛び蹴りを叩き込む。
「ガッ!!?」
肺から空気の掻き出される音と共に、神父の体がくの字に曲がって地面をバウンドしながら転がっていく。
軽い呪力強化と一回だけの『倍加』だから死ぬことはないだろう。起き上がってもしばらくは動けないだろうし、離脱するなら今の内だ。
「ちょっと失礼」
「え、あのっ……!?」
目を見開きっぱなしのシスターの背中と膝裏に手を回し、お姫様抱っこの要領で抱えながら帳と結界を解除して裏路地を駆け抜ける。
「(……こりゃ、今日のバイトは無理そうだな)」
腕時計を一瞥すれば既にリミットは五分前まで差し迫っている。
シスターを安全なところに置いてすぐに向かえば間に合わなくもない時間ではあるが、流石に後味が悪すぎるので店長には申し訳ないが今日はお休みさせて貰うとしよう。
「俺は兵藤一誠、君は?」
「あ、アーシア・アルジェントです……」
「そっか。それじゃアーシア、ちょっとだけ速くするからしっかり掴まっといて」
帳を下ろしていた場所から馴染みのある気配と共に真紅の粒子が空に昇って行くのを確認した俺は、流石に神器、それも『