Fate/atlantis 衛宮切嗣生存stay night   作:星P/すたーりん

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初めまして。星Pと書いて「すたーりん」と読みます。

近頃Fateシリーズにどっぷりとハマってしまい、日常の思考の大半がFateで埋め尽くされている所存です。

本作はFate/ZeroおよびFate/stay night(UBWルート)を読了した後、
「もし衛宮切嗣が生き残っていたら、物語はどう変わるのか」
という疑問が湧き出たことから始まります。

「え?切嗣生存ルートを書いてる人がいない?...ならいっそ自分で書いてしまおう!」

その発想のまま、切嗣生存IF√を聖杯に願うような気持ちで形にしました。

そのため、本作は基本的に原作設定を踏襲しつつも、IFとしての独自解釈を多分に含んでいます。
設定の補完や展開の一部において、原作とは異なる解釈・展開が含まれる場合がありますが、それらはすべて「こんな展開が見てみたい」という個人的な願望に基づくものです。

そのため、解釈違い等あるかと存じますが、そこはご愛敬。何卒ご容赦のうえお付き合いいただければ幸いです。

それでは、聖杯に導かれたあったかもしれない第五次聖杯戦争をお楽しみください。


プロローグ

 

 

 ――聖杯。

 

 その名は古より幾多の伝承に語られ、人の世ならぬ奇跡を宿す器として畏れられてきた。万象の理を覆し、いかなる願いをも成就へと導くという魔法の釜。

 

あるいは神々の遺せし秘宝。

 

あるいは人の飽くなき欲望が生み出した幻。

 

その起源を辿れば、神話の深淵に沈む「願いを叶える大釜」に行き着く。

すなわち、森羅万象を掌中に収める「万能の願望器」である。

 

 そして今、時は満ちる。

定められし地に七人の魔術師が集い、その召喚に応じて七騎の英霊が現界する。

 

勝者にのみ聖杯は与えられる。

敗者には死のみが残される。

 

願いを賭け。

誇りを賭け。

あるいは魂そのものを賭して――。

 

聖杯戦争は、静かに幕を開ける。

 

 *

 

 此度で五度目となる、第五次聖杯戦争。本来であれば、何ひとつ変わることはなかった。

 

七人の魔術師。

 

七騎の英霊。

 

幾度となく繰り返されてきた儀式が、再び粛々と執り行われる。ただ、それだけのはずだった。

だが運命とは往々にして、人の思惑を嘲笑う。聖杯に呪われし男は、未だこの世に在った。

 

――衛宮切嗣。

 

かつて第四次聖杯戦争の果てに立ち、誰よりも聖杯へ近づきながら、その奇跡を拒絶した男。

 

 *

 

 その聖杯は穢れていた。万能の願望器と謳われながら、その内には『この世の全ての悪』が満ちていたのである。

 

切嗣はそれを知った。

否。

知ってしまった。

 

故に彼は、自らのサーヴァントへ命じる。

 

――聖杯を破壊せよ、と。

 

しかし砕けたのは器のみ。奥底に淀んでいた呪いは黒き奔流となって溢れ出し、男を蝕み、街を焼き、数多の命を奪い去った。

 

 炎の中を、男は歩いた。ただ一人でも多くの生者を救うために。

そして彼は、一人の少年と出会う。後に衛宮士郎と名乗ることになる少年。

それは偶然ではない。ひとつの運命であった。

 

――それから十年。

 

 再び時は巡る。

 

第五次聖杯戦争、開幕。

 

だが、そこには本来在るはずのない男がいた。

既に終わりを迎えているはずの物語があった。

聖杯の呪いをその身に刻みながら、なお生き永らえた男。

 

その男が再び、運命の渦中へと足を踏み入れる。その存在は何をもたらすのか。

 

―救済か。

 

―破滅か。

 

―あるいは、そのいずれでもない何かなのか。

 

その答えを知る者は、まだ誰もいない。

ただ、一つだけ確かなことがある。

 

 衛宮切嗣は、生きている。

 

――それこそが、此度、第五次聖杯戦争最大の異変であった。

 

 *

 

 

「子供の頃、僕は正義の味方に憧れていたんだ」

 

一人の男と少年が、縁側に並んで座り、月を眺めていた。

 

『なんだよそれ。憧れてたってことは、もう諦めたってことか?』

 

少年は、不思議そうに男を見上げる。

 

男は小さく笑い、静かに首を振った。

 

「うん。残念ながらね。ヒーローっていうのは期間限定なんだ。大人になると、簡単には名乗れなくなる」

 

「そんなこと、もっと早く気付けばよかった」

 

その言葉は、どこか自嘲のようにも聞こえた。

 

『そっか。じゃあしょうがないな』

 

少年はあっさりと言うと、すぐに顔を上げた。

 

『だったら俺が代わりになってやるよ。爺さんは大人だから無理でも、俺ならまだいけるだろ』

 

男は、その言葉に目を細める。

 

『まかせろって。爺さんの夢は――俺がちゃんと形にしてやるから』

 

屈託のない笑顔が、そこにはあった。

 

「……ああ、安心したよ」

 

男は再び月へと視線を戻す。

 

そして、ぽつりと呟いた。

 

「だけどね、士郎。正義の味方には、必ず犠牲が伴う」

 

「どれだけ犠牲をなくしたいと願っても、それだけは消えないんだ」

 

『それは……』

 

少年の言葉は途中で途切れる。

 

男はそれ以上を求めず、ただ静かに続けた。

 

「今は分からなくていい。そのうち嫌でも分かる日が来る」

 

そして、少しだけ間を置いてから言った。

 

「さあ士郎、もう夜も遅いしそろそろ寝よう」

 

男は立ち上がる。そして少年も立ち上がる。

 

すると、少年は少しだけ不満そうに言った。

 

『まだ月、見てたかったんだけどな』

 

「明日もあるさ」

 

月は変わらず、そこにあった。

 

月は静かに、二人を見下ろしていた。




今後は週3話以上の更新を目標に、無理のない範囲で続けていければと思っています。
まだプロローグのほんの入り口ですが、少しでも気になっていただけた方は、ぜひ今後もお付き合いいただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。
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