Fate/atlantis:衛宮切嗣生存stay night 作:星P/すたーりん
切嗣を今後大活躍させられる、とあるネタを思いついてしまいました。
この一文だけで察した方もいるかもしれませんね(笑)。
そこまで書けるようになるのが、今から楽しみです!
『近頃、ここ冬木市で頻繁に起きているガス爆発事件ですが―――』
テレビからはニュース番組が流れる。
その前には男2人に女2人。
「あら、この緑茶、おいしいわね」
目の前では、遠坂が実に様になる仕草で湯呑みを口へ運んでいた。
……絵になる。
同じ高校生とは思えないくらい様になっている。さすがお嬢様というべきか。
その向かいには俺の隣に座る金髪の少女、セイバー。
一応お茶を勧めてみたものの、飲み方がわからないのか、それとも熱いのか、湯呑みをじっと見つめたまま動かない。
そして右には爺さん――衛宮切嗣。
「いらない」と言っていたけど形だけでも、と思い用意した湯呑みは案の定そのままだ。
……なんだ、この空間。
遠坂とセイバーが同じ部屋にいるだけでも現実味がないのに、その横で爺さんまで黙って座っている。
昨日までの俺なら絶対信じない。
というか、誰か何か喋ってくれ。
この沈黙は胃に悪い。
「マスター。これは、どう飲むのがよいのでしょうか?」
ようやく口を開いたのはセイバーだった。
「あ、ああ。そんな難しいものじゃないよ」
俺は湯呑みを手に取り、持ち方や飲み方を軽く教える。
セイバーは一度見ただけで頷いた。
「なるほど」
そう言うと、今度は迷いなく湯呑みを持ち上げる。
一口。
「……これは、なんとも美味しいものですね」
その表情だけで、本当に気に入ったのがわかる。
そして、そのまま全部飲み干した。
……早いな。
「マスター。おかわりをいただけますか?」
「も、もちろん」
なんというか、そんなに美味しそうに飲まれると嬉しくなる。
が、相手は素性のわからない少女だ。まだ心が許せていないのか、固くなる。
俺は急須を持って台所へ向かった。
お湯を注いでいると、居間から遠坂と爺さんの話し声が聞こえてくる。
いつの間にか、テレビは消えていたようだ。
「それで、お聞きしますけど。士郎くんは魔術を使う。それで間違いありませんね?」
「ああ」
「では、あなたも?」
「ああ」
短い沈黙。
「……それ、知らなかったんですけど」
今度は遠坂の声色が変わった。
少し怒っている。
話を聞く限り、遠坂の家は冬木の土地を管理する魔術師の家系らしい。
この街に陣地を構える魔術師は、遠坂家へ所場代を納める決まりがあるそうだ。
でも衛宮家は一度も払っていない。
……そりゃ怒る。
「……このまま隠居できると思っていたんだがな」
爺さんが苦く笑う。
「あ、当たり前でしょ!」
遠坂は勢いよく言い返したあと、大きく息を吐いた。
「……まあ、十年間も見つけられなかった私にも責任はあるし。この件は不問にするわ」
「それは、助かる」
ちょうどお茶も入ったので居間へ戻る。
「はい、おかわり」
セイバーの前へ湯呑みを置く。
「ありがとうございます、マスター」
……やっぱり気になる。
さっきから当たり前みたいに呼ばれているけど。
「なあ、セイバー。そのマスターって何なんだ?」
その瞬間。
セイバーの手が止まる。
遠坂まで目を丸くした。
「……まさか衛宮くん、聖杯戦争を知らないの?」
またその言葉だ。
さっきから何度も聞くけど、本当に心当たりがない。
「だから、その聖杯戦争って何なんだよ。俺は変な青い槍使いに襲われて、土蔵に逃げ込んだらこのセイバーが出てきた。ただ、それだけなんだ。本当に何も知らない」
遠坂は信じられない、という顔で爺さんを見る。
「……お爺さんは?」
切嗣は静かに目を伏せた。
「……士郎を参加させるつもりはなかった。そもそも、教えるつもりすらなかった」
どうやら爺さんは、その聖杯戦争ってやつを知っているらしい。
遠坂も当たり前みたいに話しているところを見ると、魔術師の間じゃ常識なんだろう。
俺は爺さんから半ば無理やり魔術を教えてもらっただけの人間だ。
余計なことを教えなかったのも、爺さんなりの考えだったのかもしれない。
ぼんやりしていると、遠坂が呆れたようにため息をついた。
「衛宮君。それじゃあ、私が一から教えてあげるから、そこに座りなさい」
「あ、ああ」
言われるがまま遠坂の正面へ座る。
「じゃあ始めるわね。そもそも聖杯戦争っていうのは――」
*
「―――っていうわけ。どう?わかった?」
「……待て。頭の整理をさせてくれ。」
少し、頭を冷やす。
「つまり七人の魔術師――マスターが、一人につき一騎のサーヴァントを従えて、願いを叶える聖杯を奪い合う。そういうことなんだな?」
「ええ、よくわかってるじゃない」
「......それで、俺がそのマスターに選ばれてセイバーを召喚した、と」
「そういうこと」
セイバーを見る。
細い身体つきだし、年齢だって俺とそう変わらないように見える。
……これが英雄。
正直、まだ実感が湧かない。
いや、戦っているところは見た。
あれを見れば強いのはわかる。
でも、英雄と言われるとどうしても結びつかない。
そこでふと疑問が沸いた。
「でもよ遠坂。俺、召喚の呪文なんか知らないぞ。それに意識したわけでもないし」
「そう、それが不思議なのよね。もしかして、その土蔵に何かあったのかしら」
遠坂が首をひねる。
すると、爺さんが口を開いた。
「魔法陣だ。あの土蔵には魔法陣が描かれている」
セイバーが一瞬反応したように見えた。
「僕の妻が生前、描き残したものだ。もっとも、今は機能しないと思っていたが」
爺さんに奥さんなんていたのか。
「なら、おそらくそれが原因ね。......てことはセイバーとは正式な契約ができていないってこと?」
「ええ。だから私とマスターは正式に魔術のパスはつながっていない。それに、霊体化することもできない」
遠坂が少し固まった。
「......驚いた。鎌をかけるつもりだったけど、まさかそこまで言うなんて」
「わざわざ隠すまでもないでしょう。戦いになればそんなこと考える暇などない」
セイバーは淡々と言った。
「ま、それもそうね。今のは聞かなかったことにしましょう」
そこで、遠坂は会話を止めた。
二人の会話は意味が分からなかった。
「そういえば、お前のサーヴァントはどうしたんだ?あの赤い奴」
「ああ、それなら今見張りをさせてるから安心なさい」
なるほど、そういう扱い方もできるのか。
俺が感心していると、唐突にセイバーが話し出した。
「......キリツグ、そろそろマスターに話をするべきでは?」
それは爺さんに向けられたものだった。ただ、その顔は憎しみを抱くかのような表情だった。
爺さんは動かない。まるでセイバーの声が聞こえていないかのように。
というか、なぜ二人は顔見知りなのかそれが一番不思議だった。
「え、何?あなたたち知り合いなの?」
遠坂が問う。
「......まあ、古い友人のようなものだ」
「……友人?」
セイバーの声が低くなる。
さっきまでの穏やかな空気が、一瞬で消えた。
「キリツグ。あなたは本気でそう言っているのですか」
セイバーが爺さんを見据える。その顔は少しも笑っていなかった。
「……忘れたとは言わせません。あれのどこが友人だというのです!」
セイバーが声を荒げる。
俺と遠坂の肩が思わず跳ねる。
爺さんはまた動かない。
「なんとか言ったらどうですかキリツグ!また同じことを繰り返すのですか!」
セイバーが机を叩いた。
俺もだが、また遠坂も言葉を失っていた。
爺さんはまだ動かない。
一時の間。
やっと爺さんが動き出した。
「......少し、外の空気を吸ってくる」
「キリツグ!」
そう言うと、爺さんはセイバーに見向きもせず庭へと行ってしまった。
セイバーは悔しそうに俯く。
あんな爺さんは初めて見る。
よほどセイバーと何かがあったに違いない。
これを一緒に見ていた遠坂と顔を見合う。
遠坂も同じような感想を抱いている。
すると、セイバーがこちらを向き、頭を下げた。
「......マスター。見苦しいところを見せてしまった。どうか許してほしい」
「セイバー、一体爺さんと何があったんだ......?」
セイバーが頭を上げて言った。
「話せば長くなりますが、昔、私はキリツグによって召喚されたことがあります。時間はわかりませんが、そう古いものでもないようです」
それを聞いた遠坂が聞く。
「それじゃあ聖杯戦争に参加するのも2回目ってこと!?どんな確率よそれ......」
「ええ。あの戦いで、私とキリツグの関係は最後まで良好とは言えませんでした。そして、私は彼を許せない、恨んでいる理由も、そこにあります。」
「恨みって......」
爺さんがセイバーにここまで恨まれるようなことをした。
……正直、想像できなかった。
あの爺さんは、昔から何を考えているのかわからない人だったけど、それでも誰かと声を荒げて言い争うような人じゃない。
「......まあそういうこともあるって割り切ることも必要よね。うん。よし」
遠坂は一人で納得したように言った。
すると、玄関へ向かった。
「ま、とりあえず今から教会に行くわよ。衛宮君、もちろんあなたもね」
「お、俺も!?」
今はもう夜も遅い。
「今から行くったってここから教会は距離があるぞ」
「大丈夫よ。だって明日はお休みでしょ?ちょっとくらい大丈夫」
そういうとそそくさと外へ出てしまった。
待っていようかとも考えたが、それはそれでセイバーと爺さんを置いておくのも問題だ。
それに遠坂が許してくれるはずもない。
俺は意を決し、上着を着て外へと出た。
頑張れ衛宮切嗣!