Fate/atlantis:衛宮切嗣生存stay night   作:星P/すたーりん

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これでやっとプロローグ終わり!!やったね!!


2日目/プロローグ終

鉄と鉄とが噛み合うような音が夜気を震わせた。

火花が散る。

泥が跳ねる。

大地が呻く。

視界の先では、赤と青、二条の閃光が幾度となく交錯していた。

 

 *

 

「……セイバーじゃないのか」

 

思わず漏れた呟きに、男は眉をひそめた。

 

「む。セイバーでなくて悪かったな」

 

わずかに不機嫌そうな声音だった。

 

「え? あ、いや……。その、痛恨のミスではあるけど、悪いのは私だし――」

 

「ふん。どうせアーチャーでは華がないと言いたいのだろう」

 

男は鼻を鳴らした。

 

「いいだろう。後になって今の言葉を悔やませてやる。後から謝っても聞かないからな」

 

「……はい?」

 

意外だった。

私がセイバーに拘ったことが、そこまで気に障ったのだろうか。

だけど、その不機嫌さはどこか子供じみていて、妙に憎めない。

 

「ふふっ。ええ、そうね。ぜひ後悔させてちょうだい、アーチャー」

 

「ああ。必ずや」

 

男は迷いなく言った。

その瞬間、私たちの契約は正式に結ばれたのだった。

 

 

「ところで」

 

ふと、気になっていたことを思い出す。

 

「あなた、どこの英霊なの?」

 

問いかける。

しかし返事はなかった。

 

「……アーチャー?」

 

男は黙したまま動かない。

やがて観念したように口を開いた。

 

「それについてなのだが……」

 

珍しく言い淀む。

 

「なによ。私に言えないことでもあるの?私はあなたのマスターよ?」

 

「......実は――私にも分からない」

 

「わ、わからない!?」

 

思わず声が裏返った。

 

「いや、なにも君を愚弄しているわけではない。だが、不完全な召喚の影響だろうな。記憶がひどく混濁している。己が何者であるかは理解しているのだが、名も素性も思い出せない」

 

まるで他人事のように言う。

私は頭を抱えたくなった。

 

「だ、大問題じゃない!正体が分からなければあなたの強さが把握できないでしょう!」

 

「はっ、案ずるな」

 

男は平然としていた。

 

「私は君に召喚されたのだ。ならば最強であることに疑いはない」

 

そう言って真っ直ぐこちらを見つめる。

不意打ちだった。

根拠も理屈もない言葉なのに、不思議と嘘には聞こえない。

頬が熱くなるのを感じ、私は慌てて視線を逸らした。

 

「……ま、まあいいわ。どうせ正体なんて誰にも分からないんだし」

 

誤魔化すように肩をすくめる。

 

「敵を欺くにはまず味方から、とも言うものね」

 

「その理屈はどうかと思うが」

 

「細かいことは気にしない」

 

私は咳払いを一つした。

 

「それよりアーチャー。あなたに最初の仕事を命じるわ」

 

「ほう。もう戦場か」

 

男の目に僅かな期待が宿る。

だが、私は容赦なく告げた。

 

「部屋の掃除、お願いね」

 

「……何?」

 

「あなたが散らかしたんだから責任持って片付けなさい」

 

男は十数秒ほど完全に停止した。

やがて、ぎこちなく箒へ視線を落とす。

 

「待て。君はサーヴァントを何だと思っている?」

 

「使い魔でしょ?」

 

「少し生意気で扱いづらいけど」

 

「…………」

 

男は何かを言おうとして、やめた。

それに、私には切り札がある。

 

「令呪のこと、忘れてないわよね?」

 

「む」

 

「逆らうと体が重くなるんでしょう? それが掃除が終わるまで続くとしても?」

 

「むむむ……」

 

男はしばらく唸った。

そして敗北を悟った武将のような顔で箒を握り直す。

 

「……了解した」

 

低く呟く。

 

「地獄に堕ちろ、マスター」

 

 *

 

翌日、私は学校を休んだ。

霊体のアーチャーを伴い、街を歩く。

 

これからこの街で殺し合いをするのだ。戦場となる土地の輪郭くらいは、あらかじめアーチャーにも把握させておかなければならない。

 

「ところで、マスター。君の名は何と言う」

 

「あ……そういえば、まだ教えてなかったわね。私は遠坂凛。好きに呼んでくれて構わないわ」

 

「そうか。では、凛と呼ばせてもらおう」

 

アーチャーは一度頷き、

 

「ふむ。実に君によく似合った、良い響きだ」

 

と続けた。

 

一瞬、自分の顔が熱くなる。

こいつはどうして、こうも臆面もなく言えるのだろう。

気障な台詞のはずなのに、不思議と嫌味には聞こえない。

 

結局、文句を言うタイミングを逃したまま、私たちは道なりに新都へと向かった。

 

新都。

 

整然と区画された街並みを巡り、最後に私は最も高いビルの屋上へ上った。

吹きつける風を受けながら、眼下に広がる景色を見渡す。

ここが戦場になる。

そう思うと、見慣れたはずの街並みもどこか別の顔をしているように見えた。

 

その時だった。

遠く、誰かと目が合った気がした。

見知った顔だったような気もする。

だけど、確かめる気にはなれなかった。

 

さらに翌日。

私はアーチャーを連れて学校へ向かった。

もちろん護衛のためでもある。

だが、それだけではない。

昨日から胸につかえている疑問があった。

確認しなければならないことがある。

校門をくぐりながら、私は隣を歩くサーヴァントへ視線を向けた。

 

「どう、アーチャー?」

 

「ああ。僅かだが魔力を感じる。おそらく結界魔術の類だろう」

 

「やっぱり……」

 

前々から薄々感じてはいたが、やはり結界の痕跡があるらしい。

 

誰が、何のために学校に結界を張ろうとしているのかはわからない。だが、少なくとも放置していいものではない。

 

「それじゃあ、アーチャー。私は授業があるから動けないけど、その間に結界の魔法陣を探してきてくれない?魔力が残っている以上、どこかに術式の核となる魔法陣があるはずよ」

 

「了解した。だが、私にわかるのは魔力の存在だけだ。正確な位置までは特定できない。探し出すのに多少時間がかかるが、構わないか?」

 

「ええ。どうせ今日は特に予定もないもの」

 

「承知した。では凛、また後で」

 

そう言うと、アーチャーの気配がふっと消えた。

一流の魔術師なら、残留魔力などほとんど残さない。

ならば術者は三流か、それとも結界術に不慣れな素人か。

どちらにせよ、発見できれば解除は難しくないはずだった。

私は人のいなくなる放課後に、まとめて解除することにした。

 

 

屋上の壁に刻まれた魔法陣へ魔力を流し込む。

次の瞬間。

魔法陣は乾いた音を立てるように砕け散った。

 

「ふぅ……。これでようやく最後ね」

 

気がつけば、外はすっかり暗くなっていた。

まさか、ただの結界解除にここまで時間を取られるとは思わなかった。

まず数が異常だった。

三十どころではない。校舎全体に張り巡らされていた術式は、それを優に上回っている。

 

しかも解除作業そのものも厄介だった。

単純に魔力を流し込めば壊せるような代物ではない。

まるでパズルを解くように、決められた手順で魔力を通さなければ術式が崩れなかったのだ。

 

――それに

 

ただの結界にしては、妙に手が込みすぎている。

胸の奥に小さな違和感が残った。

 

「まあ、なんとか全部解除できたことだし――帰りましょうか、アーチャー」

 

霊体化しているアーチャーへ声をかける。

だが、返事はなかった。

 

「……アーチャー?」

 

気配はすぐそばにある。

そこにいるのは間違いない。

それなのに返事がない。

どうしたというのだろう。

 

次の瞬間。

 

私の前に青い影が躍り出た。

 

「よう、嬢ちゃん。律儀に結界の解除か? 感心感心」

 

「なっ――!?」

 

反射的に距離を取る。

目の前に立っていたのは、青い装束に身を包み、赤い長槍を携えた男だった。

間違いない。

 

「……サーヴァント!」

 

構えはない。

槍の切っ先も私には向いていない。

それなのに、どこにも隙が見当たらなかった。

下手に動けば、その瞬間には首が飛んでいる。

そんな確信だけがあった。

 

「凛。君は下がっていろ」

 

それまで沈黙していたアーチャーが姿を現す。

 

「ここは私が引き受ける」

 

「お、それがお前のサーヴァントか」

 

男は面白そうに笑った。

 

「なかなか良さげなやつじゃねえか」

 

それでも警戒を強める様子はない。

いや。

警戒しているからこそ、余裕を崩さないのかもしれない。

 

「マスター。指示を」

 

「……ええ」

 

私は頷いた。

 

「アーチャー。遠慮はいらないわ」

 

「思い切り叩き潰しなさい」

 

「了解した」

 

直後、アーチャーの手に一対の剣が現れる。

白と黒。

陰陽を思わせる夫婦剣。

いつ現れたのかなど分からない。

だが、それが人智を超えた代物であることだけは理解できた。

 

「サーヴァント・アーチャー」

 

アーチャーが双剣を構える。

 

「マスターの命により、貴様を排除する」

 

「へっ、お前、アーチャーか。弓兵が双剣をつかうたぁ、時代も進んだもんだな。ちなみに、見てわかると思うが、俺はランサーだ」

 

ランサーも槍を構えた。

 

「さあ、来い!」

 

互いに見合うこと数秒。先に仕掛けたのはアーチャーだった。

 

「はっ!」

 

まず踏み込むと、一瞬にして距離を詰めた。直後双剣で横一文字にランサーを切り裂く。

 

「甘い!」

 

だが、ランサーはすんでのところで後ろに飛び退き、槍で双剣をはじいた。

それでもアーチャーは止まることなく攻撃を続ける。

それをいなし続けるランサー。

 

鉄と鉄とが噛み合うような音が夜気を震わせた。

火花が散る。

瓦礫が跳ねる。

大地が呻く。

視界の先では、赤と青、二条の閃光が幾度となく交錯していた。

 

目にもとまらぬ速さで打ち合う姿を見て理解する。

 

――ああ、これが聖杯戦争なのか、と。

 

そして転機が訪れる。攻め続けていたアーチャーに一瞬の隙が生まれた。

その隙を、ランサーが見逃すはずもなかった。

ランサーはあえて穂先ではなく、槍の柄でアーチャーを薙ぎ払った。

それに弾き飛ばされるアーチャー。

さらにそれを追うランサー。

 

ここからはさっきの猛攻が嘘のように形勢が逆転した。

ランサーの槍技をいなしきれず、アーチャーに傷が増える。

だが、どれも致命傷には至らない。

しかし、ランサーも未だ無傷。

槍と短剣2本ではリーチの差が激しい。

それが影響したのだ。

 

分が悪いと察したアーチャーはランサーから距離を取り、いきなり私を抱きかかえた。

 

「ちょ、なにするのよアーチャー!」

 

「今から飛び降りる!舌噛むなよマスター!」

 

「え、えええええ!?」

 

次の瞬間、景色が反転した。

アーチャーは私を抱えたまま、校舎の屋上から躊躇なく身を躍らせていた。

 

「逃がすかよ!」

 

ランサーも逃げることなく追ってくる。

そこでアーチャーは空中にいながら、左に持っていた剣をランサーに向かって投げる。

しかし、またもやギリギリで躱される。

 

「ちっ......!」

 

アーチャーが地面に着地した。

彼のおかげか、衝撃はほとんどなかった。

 

「し、死ぬかと思った......」

 

「何を言っているマスター!まだ死合いの最中だ!」

 

アーチャーがランサーの槍を受け止める。

だが、片方しかないためか反撃にはでない。

 

「さっき投げたのがまずかったな!それじゃあこのまま押させてもらうぜ!」

 

ランサーの槍さばきがさらに鋭く早くなる。

 

「グっ......!」

 

アーチャーが押されている。

まずい。このままじゃ負けてしまう。

だけど、私にはどうもできない。

なにせ相手はサーヴァントだ。

ただの1魔術師が相手にできる器ではない。

 

ついにランサーの槍がアーチャーの右肩に刺さった。

 

「殺った!」

 

そのまま斬り払われるかと思った刹那、アーチャーの左手に剣が生成された。

 

「甘いぞランサー!」

 

そのままランサーを薙ぎ払う。

 

「くっ......! 」

 

今度は確実に入った。ランサーの腹部から血が流れる。

だが、そこまで深い傷ではなかった。

しかし、それはアーチャーも同じ。

 

もう一度互いに見合う。

ランサーが口を開いた。

 

「これは、俺も本気を出さなきゃならねえみたいだな」

 

「こちらとしては、そのまま手加減を続けてほしいところだが」

 

「言うじゃねえか」

 

ランサーから膨大な魔力が溢れ出す。

空気が震える。

本能が警鐘を鳴らした。

危険だ。

あれは危険すぎる。

 

「貴様……宝具を使う気か」

 

「ああ」

 

ランサーは獰猛に笑った。

 

「でなきゃ、お前に失礼ってもんさ」

 

今にもランサーが飛び出そうとした、その時だった。

背後から、小枝を踏むような音が響いた。

 

「誰だ!」

 

ランサーの姿が掻き消える。

反応した時にはすでに音のした方角へ向かっていた。

私は一瞬呆然としてしまったが、すぐに意識を取り戻す。

 

「アーチャー、追うわよ!」

 

「了解した」

 

私たちも後を追う。

 

この時の私はまだ知らなかった。

 

たった一つの物音が、これからの聖杯戦争を大きく変えてしまうことを。




次回からいよいよ本編に突入します!

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

正直なところ、想像していた10倍以上の方々に読んでいただけていて、とても嬉しいです。まだまだ序盤ですし、内容もほとんど原作沿いではありますが、それでも楽しみにしてくださる皆さんのおかげで執筆のモチベーションを保つことができています。本当にありがとうございます!

今回は聖杯戦争開幕前の導入と、アーチャー対ランサーの初戦を書かせていただきました。我ながら、戦闘描写はなかなか上手く書けたのではないかと思っています。

もちろん未熟な部分も多いとは思いますが、これからも自分なりの聖杯戦争を描いていくつもりです。

まだ登場していない切嗣がどのような影響を与えるのか。そして、この物語がどこへ向かうのか。少しでも楽しみにしていただけたら嬉しいです。

本当にありがとう!!(*^▽^*)
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