Fate/atlantis:衛宮切嗣生存stay night   作:星P/すたーりん

6 / 6
幕間です。ほぼ本編!ぜひお楽しみください!


本編:幕間
運命の日


十年前。

俺は、死の淵に立っていた。

街は燃えていた。

 

炎が空を赤く染め、黒煙が夜を覆い尽くす。

瓦礫の下で助けを求める人。

炎に呑まれていく人。

泣き叫ぶ声も、建物が崩れる音にかき消されていく。

 

肺が焼けるように熱い。

いや、もう焼けていたのかもしれない。

逃げようと足を動かす。

けれど、その場で膝が折れた。

 

――ああ、ここで死ぬんだ。

 

そう思った。

だけど、死にたくなかった。

家族は俺を逃がしてくれた。

だから、生きなければならない。

 

歯を食いしばり、立ち上がる。

周囲には助けを求める人がいた。

瓦礫に足を挟まれた人。

「せめてこの子だけでも」と、幼い子供を差し出す母親。

その一人一人が目に焼き付いている。

 

けれど俺は、立ち止まらなかった。

助ければ、自分もそこで終わる。

そんなことは子供の俺にも分かっていた。

 

だから歩いた。

ひたすら、生きるためだけに。

 

謝ることもしなかった。

謝れば少しは楽になれたのかもしれない。

それでも、それだけは違う気がした。

 

俺は誰にも手を伸ばさず、燃え盛る街を歩き続けた。

その結果だった。

誰かを見捨てた分だけ生き延びた。

誰かが力尽きるたび、その最後を見届けながら、俺だけが前へ進んだ。

 

それでも限界は来る。

肺は焼け、身体は鉛のように重い。

子供の足で、この地獄から逃げ切れるはずがなかった。

ついに倒れる。

仰向けになったまま、霞む空へ手を伸ばす。

届くはずもないその手を。

その時だった。

 

「良かった……! まだ生きてる!」

 

声が聞こえた。

誰かが俺を抱き起こす。

 

「ありがとう……ありがとう……!」

 

何度もそう繰り返す男の声だけが、不思議とはっきり聞こえた。

その男の名は、衛宮切嗣。

後に俺の養父となる人だ。

 

   *

 

大火災の後、目を覚ますと病院のベッドの上だった。

周りには俺と同じように傷を負った子供たちが眠っている。

 

――生き残ったのか。

 

そう思って、自分の身体を見る。

なぜか、火傷の痕はほとんど残っていなかった。

まだ痛みはある。

だが、生きている。

 

病室の扉が静かに開いた。

入ってきたのは、一人の男だった。

まだ若いはずなのに、その顔には年寄りのような疲労が刻まれていた。

 

「君が士郎君だね?」

 

男は穏やかに笑う。

 

「これから孤児院へ行くのと、何も知らないおじさんの養子になるのと、どっちがいい?」

 

少しだけ考える。

そして俺は、男を指差した。

男は目を丸くし、それから柔らかく笑った。

 

「そうか」

 

その笑顔は、どこか嬉しそうだった。

 

「じゃあ、すぐ準備をしよう。こういうことは早い方がいいからね」

 

そう言って病室を出ようとした男は、ふと思い出したように振り返る。

 

「ああ、言い忘れてた」

 

いたずらっぽく笑って、こう言った。

 

「僕はね――魔法使いなんだ」

 

   *

 

これが、俺と衛宮切嗣――今の爺さんとの、最初の出会いだった。

 

「それじゃあ、行ってくるよ、爺さん」

 

爺さんに声をかけ、学校へ向かう。

 

「ああ。いつも言ってるけど、気を付けて行ってくるんだよ」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

優雅ではない戦い、優雅な結末(作者:折無堂)(原作:Fate/)

刃が沈む寸前、遠坂時臣は死ななかった。▼言峰綺礼の裏切りを退けたことで、時臣は聖杯戦争の裏側を見ることになる。▼大聖杯の異常。間桐の契約不履行。桜に施された処置。▼そして、魔術師殺し・衛宮切嗣。▼優雅であることは、目を逸らすことではない。▼遠坂の当主として、魔術師として、そして父として。▼時臣は、優雅ではない戦いへ踏み込んでいく。


総合評価:1414/評価:8.34/連載:26話/更新日時:2026年06月25日(木) 21:46 小説情報

『calor ――理想の果てに灯る温もり――』(作者:そもゆえに)(原作:Fate/)

正義の味方は、多くを救った。▼だが、▼救えなかったものもあった。▼何気ない日常。 当たり前の食卓。 ▼誰かと笑い合う時間。▼聖杯戦争を終えた英霊エミヤは、 異世界・麻帆良で小さな食堂を開く。▼店の名は『calor』。▼温もりを意味するその場所には、 傷ついた者たちが自然と集まってくる。▼出し巻き卵に涙する少女。▼シチューに頬を緩める吸血鬼。▼一杯の珈琲に救わ…


総合評価:747/評価:8.6/連載:27話/更新日時:2026年06月25日(木) 23:45 小説情報

機動戦士ガンダムSEED / Re.00 -西暦の蒼き翼-(作者:コエンマ)(原作:機動戦士ガンダムSEED)

C.E.71、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦。▼激戦の果てにキラ・ヤマトと彼の愛機フリーダムが辿り着いたのは、母なる地球――だが、そこは彼の知る歴史とは異なる、西暦2307年の世界だった。▼迷いながらも少年は進む。自らがこの世界に在る意味を探しながら。▼これは、絶望の果てに異世界へ迷い込んだ少年が、砂漠の少女たちから受け取った「絆」を胸に、自らの歩むべき道を探…


総合評価:922/評価:8.29/連載:15話/更新日時:2026年06月06日(土) 18:02 小説情報

汎モルガン「どけ!!! 私はお姉ちゃんだぞ!!!」(作者:花のお姉ちゃん)(原作:Fate/)

 第一人格「どけ!!! 私はお姉ちゃんだぞ!!!」▼ 第二人格「ならば私は、全力でお姉ちゃんを遂行する!!」▼ 第三人格「ブリテン姉妹ぃぃいい!!! ファイヤーッッ!!!!」


総合評価:1602/評価:8.56/連載:4話/更新日時:2026年03月05日(木) 22:25 小説情報

俺が死んだと思っている仲間と会うのが気まずい(作者:guruukulu)(原作:葬送のフリーレン)

何で死んだのが分身って誰も気付かないの・・・


総合評価:6065/評価:8.11/連載:6話/更新日時:2026年04月01日(水) 19:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>