Fate/atlantis:衛宮切嗣生存stay night 作:星P/すたーりん
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「はぁ……っ、はぁ……」
壁づたいに歩く。
あと少しで家に着く。
爺さんはまだ帰っていないだろうか。
心配をかけてしまったかな。
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
吐き気のような気持ち悪さは、まだ体から抜けない。
ようやく家へ入り、居間へたどり着くと、その場に倒れ込んだ。
「ああああっ!」
ひときわ激しく胸が疼く。
そもそも、生きていること自体が不思議なんだ。
だが、横になったおかげか、さっきよりはずいぶん楽になった。
その時――
チリン。
侵入者を知らせる結界が鳴った。
「……まさか!」
第六感にも似た予感が走り、とっさに右へ転がる。
次の瞬間、さっきまで寝ていた場所に、真紅の槍が突き刺さった。
奴だ。
仕留め損ねた俺を追ってきたんだ。
青い影が居間へ舞い降りる。
「はぁ。さっき確実に心臓をぶっ刺したはずなんだがなぁ……まさか生きてるとは」
「ぐっ……!」
「ま、坊主。何をしたかは知らねぇが、これもルールなんでな。観念してくれや」
再び槍が俺へ向かって放たれる。
このままやられてたまるか!
近くに転がっていた丸めたポスターを掴む。
何もないよりは、よほどマシだ。
「――同調、開始!」
飛来する槍を避けながら、ポスターへ強化魔術をかける。
今回は一発で成功した。
そのまま居間を飛び出す。
だが、槍の猛攻は止まらない。
庭へ出た時、いつも魔術の練習をしている土蔵が目に入った。
藁にもすがる思いで土蔵へ転がり込む。
もちろん、奴も追ってくる。
「さあ、観念しな。もうお前は袋のネズミってやつだ」
槍が放たれる。
死ぬ。
そう直感した。
だが――
こんなところで、こんな奴に殺されるなんてごめんだ。
「ふざけるな……俺は――」
こんなところで、意味もなく。
お前なんかに殺されてたまるか――!!
「……え?」
眩い光が土蔵を包み込む。
「うそだろ……」
わかったのは、その光の中に現れた"それ"が、少女の姿をしていたということだけだった。
ギィン――!
鋭い金属音が響く。
俺の胸を狙った槍は、突如現れた少女によって弾き返されていた。
「――本気か。七人目のサーヴァントだと……!?」
弾かれた槍と、少女の見えない剣が再びぶつかる。
二度、火花が散った。
「くっ――」
分が悪いと悟ったのか、奴は土蔵の外へ飛び退き、槍を構えたままこちらを睨みつける。
風の強い夜だった。
流れていた雲が途切れ、わずかな時間だけ月が姿を現す。
土蔵へ差し込む銀色の月光が、騎士の姿をした少女を静かに照らし出した。
「――――」
声が出ない。
突然の出来事に混乱していたからではない。
ただ、目の前に立つ少女が、あまりにも美しかったから。
少女は宝石のような瞳で俺を静かに見つめる。
やがて、凛とした声で問いかけた。
「――問おう。貴方が、私のマスターか。」
「え……マス、ター?」
何を言われたのか分からない。
そもそも、さっきの青い槍兵といい、この少女といい、一体何が起きている。
頭が追いつかない。
つい先ほどまで全身を支配していた死の恐怖は、いつの間にか消えていた。
今、視界に映るのは目の前の少女だけだった。
「サーヴァント・セイバー。召喚に従い参上しました」
少女は静かに告げる。
「マスター。ご命令を」
その声を聞いた瞬間だった。
「――ッ!」
左手の甲が焼けるように熱い。
焼きごてを押し当てられたような激痛。
思わず左手を押さえる。
すると少女は、その反応を皮切りに、小さく頷いた。
「これより我が剣は貴方と共にあり」
「貴方の運命は私と共にある」
澄み切った声が夜気に溶ける。
「――ここに契約は完了した」
「け、契約って……何の――!?」
俺だって魔術師の端くれだ。
契約という言葉が意味するものくらい分かる。
だからこそ理解できない。
少女は問いには答えなかった。
ただ静かに身を翻し、視線を部屋の入口へ向ける。
その細い腕が何も持っていない空間へ伸びる。
するとなにかを持った。
いや、確かに剣を構えた。
見えないだけで、そこには確かに何かが存在している。
その時
――誰か来る。
外を駆ける足音。
勢いよく扉が開いた。
「士郎!! どうした!!」
「じ、爺さん!?」
飛び込んできたのは衛宮切嗣だった。
だが、その足が止まる。
切嗣の視線は俺ではなく、セイバーへ向けられていた。
そして。
少女もまた切嗣を見る。
一瞬。
時間が止まった。
「……お前は」
切嗣が、信じられないものを見るように呟く。
「……まさか、そんな」
セイバーの瞳も大きく揺れる。
「セイバー……!」
「キリツグ!」
二人の声が重なった。
互いの名を呼ぶ、その響きだけで十分だった。
二人は知り合いだ。
それだけは理解できる。
だが、俺には何一つ分からない。
ただ、目の前で起きた再会だけが、妙に現実離れして見えた。
やっと切嗣が描けたよ......