Fate/atlantis:衛宮切嗣生存stay night   作:星P/すたーりん

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運命の夜2

 

 *

 

「はぁ……っ、はぁ……」

 

壁づたいに歩く。

あと少しで家に着く。

 

爺さんはまだ帰っていないだろうか。

心配をかけてしまったかな。

 

いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

吐き気のような気持ち悪さは、まだ体から抜けない。

ようやく家へ入り、居間へたどり着くと、その場に倒れ込んだ。

 

「ああああっ!」

 

ひときわ激しく胸が疼く。

そもそも、生きていること自体が不思議なんだ。

だが、横になったおかげか、さっきよりはずいぶん楽になった。

 

その時――

 

チリン。

 

侵入者を知らせる結界が鳴った。

 

「……まさか!」

 

第六感にも似た予感が走り、とっさに右へ転がる。

次の瞬間、さっきまで寝ていた場所に、真紅の槍が突き刺さった。

 

奴だ。

 

仕留め損ねた俺を追ってきたんだ。

青い影が居間へ舞い降りる。

 

「はぁ。さっき確実に心臓をぶっ刺したはずなんだがなぁ……まさか生きてるとは」

 

「ぐっ……!」

 

「ま、坊主。何をしたかは知らねぇが、これもルールなんでな。観念してくれや」

 

再び槍が俺へ向かって放たれる。

 

このままやられてたまるか!

 

近くに転がっていた丸めたポスターを掴む。

何もないよりは、よほどマシだ。

 

「――同調、開始!」

 

飛来する槍を避けながら、ポスターへ強化魔術をかける。

今回は一発で成功した。

 

そのまま居間を飛び出す。

だが、槍の猛攻は止まらない。

庭へ出た時、いつも魔術の練習をしている土蔵が目に入った。

 

藁にもすがる思いで土蔵へ転がり込む。

もちろん、奴も追ってくる。

 

「さあ、観念しな。もうお前は袋のネズミってやつだ」

 

槍が放たれる。

 

死ぬ。

 

そう直感した。

 

だが――

 

こんなところで、こんな奴に殺されるなんてごめんだ。

 

「ふざけるな……俺は――」

 

こんなところで、意味もなく。

お前なんかに殺されてたまるか――!!

 

「……え?」

 

眩い光が土蔵を包み込む。

 

「うそだろ……」

 

わかったのは、その光の中に現れた"それ"が、少女の姿をしていたということだけだった。

 

ギィン――!

 

鋭い金属音が響く。

俺の胸を狙った槍は、突如現れた少女によって弾き返されていた。

 

「――本気か。七人目のサーヴァントだと……!?」

 

弾かれた槍と、少女の見えない剣が再びぶつかる。

二度、火花が散った。

 

「くっ――」

 

分が悪いと悟ったのか、奴は土蔵の外へ飛び退き、槍を構えたままこちらを睨みつける。

 

風の強い夜だった。

流れていた雲が途切れ、わずかな時間だけ月が姿を現す。

土蔵へ差し込む銀色の月光が、騎士の姿をした少女を静かに照らし出した。

 

「――――」

 

声が出ない。

突然の出来事に混乱していたからではない。

ただ、目の前に立つ少女が、あまりにも美しかったから。

少女は宝石のような瞳で俺を静かに見つめる。

やがて、凛とした声で問いかけた。

 

「――問おう。貴方が、私のマスターか。」

 

「え……マス、ター?」

 

何を言われたのか分からない。

そもそも、さっきの青い槍兵といい、この少女といい、一体何が起きている。

頭が追いつかない。

 

つい先ほどまで全身を支配していた死の恐怖は、いつの間にか消えていた。

今、視界に映るのは目の前の少女だけだった。

 

「サーヴァント・セイバー。召喚に従い参上しました」

 

少女は静かに告げる。

 

「マスター。ご命令を」

 

その声を聞いた瞬間だった。

 

「――ッ!」

 

左手の甲が焼けるように熱い。

焼きごてを押し当てられたような激痛。

思わず左手を押さえる。

 

すると少女は、その反応を皮切りに、小さく頷いた。

 

「これより我が剣は貴方と共にあり」

 

「貴方の運命は私と共にある」

 

澄み切った声が夜気に溶ける。

 

「――ここに契約は完了した」

 

「け、契約って……何の――!?」

 

俺だって魔術師の端くれだ。

契約という言葉が意味するものくらい分かる。

だからこそ理解できない。

 

少女は問いには答えなかった。

ただ静かに身を翻し、視線を部屋の入口へ向ける。

その細い腕が何も持っていない空間へ伸びる。

 

するとなにかを持った。

いや、確かに剣を構えた。

見えないだけで、そこには確かに何かが存在している。

 

その時

 

――誰か来る。

 

外を駆ける足音。

勢いよく扉が開いた。

 

「士郎!! どうした!!」

 

「じ、爺さん!?」

 

飛び込んできたのは衛宮切嗣だった。

だが、その足が止まる。

切嗣の視線は俺ではなく、セイバーへ向けられていた。

 

そして。

少女もまた切嗣を見る。

 

一瞬。

 

時間が止まった。

 

「……お前は」

 

切嗣が、信じられないものを見るように呟く。

 

「……まさか、そんな」

 

セイバーの瞳も大きく揺れる。

 

「セイバー……!」

「キリツグ!」

 

二人の声が重なった。

互いの名を呼ぶ、その響きだけで十分だった。

二人は知り合いだ。

それだけは理解できる。

だが、俺には何一つ分からない。

 

ただ、目の前で起きた再会だけが、妙に現実離れして見えた。




やっと切嗣が描けたよ......
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