モン娘ゲットだぜ! ~目指せモン娘マスター~   作:トマトルテ

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1話:チャンピオン

 

 君は、可愛いモンスター娘を戦わせる、エロゲーの世界に転生したらどうする? 

 

 

 好みのモン娘を捕まえて、エッチなことをする? 

 それとも、バトル要素に没頭して最強を目指す? 

 

 どちらを選ぶかは人それぞれだろう。

 そこに良し悪しはない。ただ、自分が決めるだけだ。

 だからこそ、俺はこの世界に抗うことにした。

 

「かわいそうなのは抜けない!」

 

 それが俺の性癖(しんねん)だ。

 この手のゲームにありがちな、敗北プレイやNTRなんてもってのほか。

 自分や仲間達はもちろん、他人がそういう目にあうのを見るのも嫌だ。

 パンツを脱いで準備したティッシュで、そのまま涙を拭くはめになってしまう。

 

「だから、俺は負けない。俺の()()()()()()()を敗北プレイなんてさせない! イチャラブエッチこそが至高だと証明してみせる!!」

 

 俺が転生して来たこの世界はエロゲーの世界だ。

 そんな世界で、敗北プレイやNTR、レイプ展開を拒絶するのは、ある意味で狂っているかもしれない。

 

 だが、それがどうした? 

 妥協してシコるなんて、魂の処刑に等しい。

 俺が俺の性癖(しんねん)を貫くことの何が悪い。

 誰よりも強く、最強になって──

 

 

「俺がこの世界を変えてみせる! ──モンスター娘バトルのチャンピオンになって!」

 

 

 ──敗北エッチやNTRという、この世界の常識をぶち壊してみせる!! 

 

 

 

 

 

 ……などと、意気込んでいたのはいいが。

 

(仕事辞めたい……チャンピオンの仕事が多すぎる。いや、俺が世界を変えるとか張り切ったせいか?)

 

 選手専用の入場ゲートの前で、モンスター娘バトルのチャンピオン。

 神崎(かんざき)ユウマは、精悍(せいかん)な顔を歪ませながら、黒色の髪を抱えて内心で愚痴る。

 

(辞めたいけど、立場が重すぎて気楽に辞められない。原作知識持ちの俺じゃないと、出来ないことがやたらと多いし……バトルだけしておけばいいと、簡単に思ってた過去の俺を殴りたい……なんでモン娘ハーレムを作ったのに、モン娘じゃなくて書類とイチャイチャしなきゃならないんだ)

 

 やめますと気軽に言って転職を出来る程、彼の立場は軽くはない。

 会社の社長が転職すると言うようなものなのだ。

 しかも軌道に乗りかけの事業で。

 誰が悪いのかと考えてみても、敗北プレイやNTRの根絶を願った自分の顔しか浮かんでこない。

 

『さあ、ついにやってまいりました! 第72回、モンスター娘バトル・チャンピオンシップ・決勝戦! この大会の実況と解説は放送席の歌姫こと、セイレーン娘のルルカと! モンスター娘バトル・チャンピオンシップ第45回のチャンピオンであり、解説でお馴染みの大木(おおき)ノリオ博士と共にお送りいたします!』

『解説の大木です。今回もどちらのモンスター娘マスターが、栄冠に輝くか……今から楽しみでしょうがないですね~』

 

 スタジアムの方からは、大歓声と共にお馴染みの実況と解説がユウマの耳に入ってくる。

 逃げたいと思うが、この状況で逃げろという方がよほど度胸がいる。

 

(モン娘バトル……確かに俺TUEEEEE! はしたかったけど。こういうのは1回ぐらいで良い……勝てば勝つ程、負けられないプレッシャーが増えるのはキツイ……)

 

 モンスター娘バトル。

 それは、このエロゲーが元になった世界で大流行しているモンスターバトルだ。

 早い話が、ポケ〇ンのモン娘版である。

 

『いやぁ、今回もお馴染みの顔合わせになりましたねぇ~。絶対的なチャンピオンと宿命のライバルであるチャレンジャー。ルルカさん、紹介をお願いします』

『はい! では、まずはチャレンジャーの方から紹介いたしますね?』

 

 エロゲーなので細かい所は違うが、バトルが国民的人気を誇るのは同じだ。

 

『ついた仇名は、“不屈の怪物”! モン娘マスターランキング常時トップ3以内を維持! チャンピオンを倒すのは俺だと言って(はばか)らない、不屈の男! 力こそがパワーだ! 剛よく柔を断つ!! 霧島(きりしま)ヒロトォオッ!!』

『チャンピオンである、ユウマ選手とは今回で11度目の対戦。11度目の正直となるか、期待ですねぇ~』

 

 スタジアムがどっと沸く。

 恐らくは、チャレンジャーであるヒロトが入場したのだろうと、ユウマは静かに息を吐く。

 

(いや、まあ、俺もバトルは楽しい、嫁達が活躍するのは嬉しいけど……その後の取材とかが疲れるんだよな。いっそ負け…るのは、腹が立つな。何より手を抜くのは、全力で来る相手に失礼だし)

 

 あと少しで出番だ。

 気分は満員電車の中で、会社最寄りの駅の案内が表示された時と同じだ。

 ああ、仕事かぁという憂鬱な考えが、頭を過る。

 

「チャンピオン、そろそろご入場お願いします!」

「ああ、ありがとう!」

 

 だが、ユウマはそれを表には出さずに、案内に来たスタッフにグッドスマイルで笑いかける。

 内心は仕事に疲れて、モン娘達とのんびりイチャイチャしたいだけだが、仕事は仕事。

 チャンピオンとして立ち続ける限りは、常に堂々として居なければならない。

 それが立場というものだ。

 

 出勤前でも、スーツを着た取引先の顔見知りと出会ったら、仕事モードで挨拶をするあれと同じある。

 

「よし……今日も気合入れていくぞ!」

 

 そして、己を奮い立たせるように頬を叩き、光差すスタジアムのゲートをくぐっていく。

 

『そしてーッ! 対するはこの人!! “沈まぬ栄光”! 最年少15歳で、モン娘チャンピオンの座に輝いた生きる伝説! 同時に、チャンピオン防衛回数、歴代最多の20回! マスターランキング10年連続1位の記録を更新し続ける、過去・現在・未来における絶対の王者! 栄光は常に彼を照らし続けるッ! チャンピオン・オブ・グローリー! 神崎(かんざき)ユウマだァアアッ!!』

『ここからでも、絶対王者のオーラがビンビン伝わってきますね~。無敗の王者が、今日も絶対を証明するバトルを見せてくれるのでしょうか、ユウマチャンピオン』

(期待が…期待が重い……でも、逃げられない。チャンピオンだもん)

 

 歓声が質量となって、ユウマの全身を叩く。

 重過ぎる期待、羨望、嫉妬。

 それを全て受け止めて、ユウマは仕事モードでファンサービスを忘れずに、観客席へと手を振ってウィンクを送る。

 

「キャーッ! ユウマ様ぁ~ッ!!」

「今、ユウマが私にウィンクを…!」

「はぁ? ユウマ()でしょ? そもそも、今のは私に向けてよ!」

 

 それだけで、黄色い悲鳴が巻き起こり、勝ってもいないのに紙吹雪が巻き起こる。

 正直、ユウマは自分のことながら、あまりの人気に内心でちょっと引いているが、これも仕事と割り切る。

 出勤前は、仕事嫌だなぁと思っているが、一度会社に来れば仕事モードで集中できるあれだ。

 

「お客さんも満員、張り切っていくとしようか」

 

 ユウマが腕をクロスさせて、両手に3つずつ着けた、合計6つの宝石の指輪を宙にかざす。

 モンスター娘リング。略してモン娘リング。

 モンスター娘達と契約を交わした証であり、彼女達がいつもマスターの傍に居られる道具である。

 

 早い話が、モ〇スターボールの指輪版だ。

 

「さあ、出番だ、みんな! 出てきてくれ!!」

 

 赤・紫・黄・青・緑・白の宝石が光輝き、指輪からユウマの周りに降り注ぐ。

 そして、6人のモンスター娘が姿を現す。

 

『続いて、チャンピオンのモン娘達のご紹介! まずはチャンピオンのエース! その小柄な見た目に騙されると、得意のドラゴンブレスで灰も残らないぜ! 眠れる竜の尾を踏むのは誰だ!? 火属性の頂点、ドラゴン娘! リューカ!!』

「ふわぁ……うーん、まだ眠いけど……まあ、ボチボチやろっか」

 

 小柄な体型。されど纏うオーラは、生物の頂点。

 しっぽまで伸びる長く赤い髪に、鱗に覆われた巨大な翼。

 青と赤のオッドアイを爪のついた手で眠そうに擦る、ドラゴン娘リューカ。

 常に眠そうにしているが、一度その逆鱗に触れてしまえば誰も生きては帰れない恐ろしさを持つドラゴン娘だ。

 

『お次に、その豊満な体と母性的な笑みは、お茶の間のお父さんを虜にして離さない! 画面越しでも、胸のほくろが放つ魅了(チャーム)の威力は衰え知らず!! 聞いてください、この野郎共の汚ねぇ野太い歓声の数を! バトルから墓場まで、甘やかし大出血サービス! 闇属性のサキュバス娘! リリアッ!』

「はーい、みなさんー、今日も私のコ・コ・に・注目してくださいねー♡」

 

 悪魔らしい角と翼に尻尾。

 だが、そんなものよりも、説明不要のボンキュッボンの愛されボディが衆目の注目を集める。

 リリアは肌色の多い体をくねっとさせ、チュッと観客へと投げキッスをして、ピンクの目を妖艶に細める。

 そして、際どいボンテージから伸びた、ハート形の尻尾で腰まで届く紫の髪を払って、お尻をチラリと見せることで、更なる野太い歓声を引き出す。

 

『ちょっと散歩に行ってくると、群れを離れて早10年! いつの間にか、モン娘達の頂点に! 焼かれた褐色の肌と鍛えた足腰は、ここまでの苦難の旅路の証! 狙った獲物は誰であろうと、その脚で地の果てまで追って仕留める! 牙が剥かれるのは、月夜ばかりと思うなよ!? 地属性、オオカミ娘! フェン!!』

「うん……頑張る」

 

 静かな声で、大歓声にも動じることなくマイペースに。

 背の高い褐色の体は鍛えこまれ、むき出しの腹筋が日差しに輝く。

 雪のように白く長い髪と耳。

 ふわりとした尻尾をピンと立て、フェンは黄色の瞳で静かに相手の方を見つめる。

 

『その羽ばたきは、まさに疾風(はやて)のごとし! 知的なメガネが見通すのは、 勝利への道筋か! 計算されつくした合理的なスケジュール帳か! それともその両方か!? モン娘界、空の最速の称号は誰にも渡さないッ! 風属性ハーピー娘! ヒカリ!!』

「スケジュールも戦闘も完璧に管理してみせます。この後の予定は、既に祝勝会を入れていますので」

 

 短めの緑色の髪に、見ての通りの知的さを漂わせる赤ぶちの眼鏡。

 空気抵抗を極限まで減らすために、ムチムチの体の上に着た白の競泳水着は、腕の巨大な翼と合わせて、まるで空を泳ぐよう。

 一見すると文学少女のような雰囲気のヒカリだが、能ある鷹は爪を隠すという言葉を忘れてはいけない。

 その足についた鋭い爪は、伝家の宝刀と言うに相応しいのだから。

 

『個人的お嫁さんにしたいランキング第1位!! チャンピオンの財布の紐は私が握る! 見た目は小さいが、その面倒見の良さは母ちゃんそのもの! 同郷のよしみでちょっと、私も面倒を見てくれませんか? 水属性のスライム娘のォオオ! ミミちゃぁあああんッ!!』

「はぁ!? 真面目に実況しなさいよ、あのバカ実況!!」

 

 小柄というよりも、ロリ少女のプルプルとしたスライムボディ。

 本来、隠す場所もないので、別に着なくてもいいが一応着ている白のシャツが、余計に危なさを醸し出す、魔性のロリ。

 ツンツンとした態度と、小柄なスライムボディのツインテールが一部の人を狂わせる、貴重なツッコミ役。

 それがミミだ。

 

『そして、最後! リューカが一番槍ならば、こちらは難攻不落の砦! チャンピオンの不敗神話を語るには、この娘は欠かせない! 回復・魔法・肉弾戦なんでもござれ。不落の玉座の最も近くに侍る、才媛! 果て! 光属性であるキツネ娘の進化の果て! 九尾のクレハッ!!』

「うふふふ、マスターを傷つけようとするお方は……誰であろうとも許しませんわ」

 

 一際目立つ、赤と金のグラデーションの髪の毛と9本の尾。

 色気を醸し出す肢体を惜しげもなく晒すように、白と赤の着物を崩して着こなす、九尾。

 されど、男を誘うその金色の瞳が見つめるのは、常に主であるユウマだけ。

 誰よりも一途で、誰よりも愛情深い女、それがクレハだ。

 

「フン……相変わらず大した人気だな。アイドルにでも転職した方が良いんじゃないのか? ユウマ」

「これもチャンピオンの大切な仕事さ。モン娘リーグの象徴として、ファンに覚えて貰わないとな。ヒロトも俺を倒す気があるのなら、自分がどんなファンサービスをするか、イメージでもしておいた方がいい」

 

 凶暴で野性味にあふれた顔立ち。ギラリとした瞳。

 ライオンのように金髪を逆立たせた男、霧島(きりしま)ヒロト。

 何度もしのぎを削り合ってきた、ユウマのライバルと呼べる存在だ。

 

「ハ! お前の方こそ、チャンピオン引退後の仕事の心配でもしたらどうだ?」

「ご心配どうも。引退後の、のんびりプランはしっかりイメージ出来ているさ。ただ残念なことに……何度イメージしても、君に負けるイメージだけは出来なくてな」

「抜かせぇッ!」

 

 顔見知り。または戦友。

 何度も、戦いの舞台でこうして向かい合ってきた男2人。

 チャレンジャーのヒロト。チャンピオンのユウマ。

 まだ、2人がこうした間柄になる前からの、古い付き合いだ。

 

「今日も良いバトルをしよう、ヒロト」

「フン、退屈させないことだけは、保証してやるよ、ユウマ」

 

 お互いにマイクパフォーマンスとして軽口を叩きながら、痛い程に強く握手を交わす。

 バトル前とバトル後は必ず、握手と挨拶を行う。

 それが、モン娘リーグに伝わる由緒正しき、バトルの作法なのだから。

 

『さあ、握手も終わり、両者持ち位置につきました! では、僭越ながら私がバトルのルールを説明させて頂きます』

 

 実況のルルカとノリオが、ルールの説明を行う。

 

『両者6人までのモン娘を、バトルに参加させることが出来ます。ただし、バトルフィールドに出て戦うことが出来るのは、一度に1人までです。途中交代、再出場は可能。ですが、交代する際はマスターのいるベンチまで戻って、交代するモン娘とタッチを交わさなければいけません。当然、そこまでの間に相手側は自由に攻撃が可能です』

『なお、ベンチに戻ったモン娘は治療が可能です。勢いに乗って戦い続けるか、一度回復時間を挟むかは、マスターの判断力が試されることになりますよー、これは』

 

 ルールはシンプル。

 1人ずつ戦っていくだけ。

 

『ただし、審判により戦闘続行不可と判断された場合は、審判がバトルを一時中断して強制的にモン娘をモンスター娘リングに戻します。もちろん、その場合は回復しても、再びバトルフィールドに立つことは出来ません。戦闘中断とされて、両者のマスターは、次に送り出すモン娘を自由に決める時間が与えられます』

『審判の判断以外にも、マスターの判断やモン娘自身の判断でモン娘リングに戻ることは、可能ですねー。もちろん、その場合も棄権とみなされて、戦闘復帰は出来ません』

 

 どこまで戦えるか、それを見極めて大切な仲間を送り出す。

 そこに戦略や駆け引きが生まれる。

 

『そうして、先に相手のモン娘を全員戦闘不能にするか、マスターがバトルを棄権した場合に勝敗が決まる形になります!』

 

 そうして、先に全員を倒した方が勝者となる。

 シンプル、しかし奥が深いルール。

 そんな説明が終わり、審判がフィールドのセンターラインに立つ。

 

「それでは、両者。1番目のモン娘をフィールドに送り出してください」

 

 荘厳な声で、審判が2人のマスターに促す。

 

「リューカ。いつも通り、君に決めた」

「もー、モン娘使いが荒いなー。いつも、お姉さんが一番槍じゃん? これでも、マスターより年上なんだけどなぁ、年上は敬わないと」

「奇策は弱者の戦い方さ。王者の戦い方っていうのは、最大火力を最初にぶつけること。それに、策を練られても、真正面から踏みつぶしていく……それがドラゴン娘の本質だろう?」

「まったく……嬉しいけど期待が重たいなぁ」

 

 口ではブツブツと言いながらも、リューカの足に淀みはない。

 常に先陣を切り、歯向かうものを何であっても踏みつぶす最強の鉾。

 それが、チームとしての自分の役目だと信じて。

 

「レックス、こっちもいつも通りで行く!」

「任せな、相棒! ……リューカ! 今はうちらの戦績は5勝5敗だな? 悪いけど、先に6勝目は頂くぜ?」

「まーたレックスちゃんかー、疲れるんだよねぇ……まあ、手加減しなくても大怪我させる心配が無い分、楽だけどさ」

「ハ! それはこっちのセリフだよ!! 力と力! うちと全力で殴り合えるのは、あんたぐらいだからね!」

 

 ヒロトが黒に近い褐色の肌に、傷が無数に散らばった筋肉質な体をした、赤目のティラノ娘をフィールドに出す。

 レックスは何度も、リューカとぶつかり合ってきたライバル。

 そして何より、ドラゴンの全力を止められるのは、ティラノサウルスしかいないのだから。

 

「では、準備はよろしいですか?」

 

 審判が、静かに両者へ確認を取る。

 

「うん、いいよー」

「ああ、いつでもだ!」

「では、両者合意とみなします。それでは──」

 

 会場が、気味の悪い程の静寂と、むせかえるような熱気に包まれる中。

 静寂を割くように、審判がバッと腕を上げ、そして──

 

 

「モン娘バトル! レディ──ファイトッ!!」

 

 

 ──大歓声の堰を切るかのように振り下ろすのだった。

 

 

 

 

 

 “目指せ! モン娘マスター! ~君だけのモン娘ハーレムを作れ! ~”

 

 それが、俺が転生したエロゲーのタイトルだ。

 タイトルでお察しの通り、ポケ〇ンのパク…オマージュ作品のようなものだ。

 ただ、オマージュと言っても、それはモンスターを戦わせて旅をするという点ぐらいである。

 

 ビジュアルに関しては完全に別物、モン娘大好きな製作者の性癖が詰め込まれている。

 多種多様なモンスター娘達。その数、151人。

 元々、人外が好きだった俺はこの作品に感銘を受け、迷わず購入した。

 だが、俺は失念していた。

 これはエロゲーであり、モン娘達が戦うゲームなのだと。

 

 

 そう、この手のゲームでありがちな、敗北した場合の特殊エンドやNTRが存在するのだ……。

 

 

 しっかり、事前にリサーチしなかった自業自得とは言え、この性癖は俺にとっての核地雷。

 俺はただ単に、可愛いモン娘達と主人公が、ラブラブエッチをするのが見たかっただけなんだ。

 敗北したせいで嫁キャラが、無残に触手に卵産みつけられるシーンなんて見たくはなかった。

 自分のモン娘が対戦相手にレイプされるシーンなんて、思わず脳破壊されて画面を叩き割りそうになった。

 

 匿名掲示板でこのことを話すと『君、素質あるよ』と言われて、全力で荒らし回った俺はきっと悪くない。

 

 しかし結局は、自分のプレイスタイル(真面目)のせいなので、誰も恨めない。

 早く抜きシーンにイキたいという理由で、育成をおざなりにしたのが悪かったのだろうか? 

 それとも、チュートリアルは適当に流して、ヤリながら覚えればいいと思ったからだろうか? 

 

 とにかくだ。俺は敗北プレイもNTRもレイプも拒絶する。

 

 だから、それからのプレイは徹底的にレベルを上げて育成し、常に安全マージンを意識しながらのものに変わった。

 敵キャラの技なども、しっかりと攻略サイトを見て覚えた。

 一撃必殺とかあったら、画面越しの俺まで一撃で死んでしまうからな。

 

 その結果として、俺はエロゲーのくせにやたらとバトルを頑張るプレイヤーと化してしまった。

 購入当初に描いていた理想からは、かけ離れたものになったが……まあ、悔いはない。

 おかげでこの世界に転生してからは、前世のエロゲーで得た育成とバトルの知識で、チャンピオンの座まで昇り詰めることが出来たのだから。

 

 ん? NTRが嫌なだけなら、チャンピオンになる必要は、なかったんじゃなかったのかだって? 

 

 確かに、自分のモン娘を守るためだけなら、自分達が強くあればいい。

 だが、ここはエロゲー世界と言えど現実。

 ゲームではプレイヤー視点以外映らないが、現実では他の人間にも目が行く。

 

 道を歩くだけで、モン娘がレイプやNTR、敗北強制種付けされている光景にぶち当たるかもしれないんだぞ? 

 地雷原でタップダンスを踊る趣味は俺にはない。

 一度、破壊された俺の脳は、転生してもそのダメージを覚えているのだ。

 到底見過ごせるものではない。

 

 

 だから、俺はチャンピオンになって──この世界の常識を変えることを選んだのだ。

 

 

 モン娘達の社会的立場を確立し、生まれるであろう俺との子達も守るために。

 まあ、その結果として、忙しすぎて人生の余暇が犠牲になったのだが。

 

 

 

 

 

「放送席! 放送席! 見事、死闘を制しました、ユウマ選手への勝利インタビューになります! お互いのモン娘が残り1体になるまでの死闘…! ズバリ! 今のお気持ちはどんなものでしょうか!?」

 

 カラスのハーピー娘のリポーターである、ハルカがマイクをこちらに向けて来る。

 ヒロトと俺の勝負は、お互いに最後の1体になるまで続いたが、何とか勝つことが出来た。

 21度目のチャンピオン防衛だ。

 

 え? 引退したいとか言ってなかったかって? 

 ワザと負けるのは相手に失礼だろ! 

 これはゲームじゃなくて現実なんだよ!! 

 

「まず、感謝の気持ちですね。リューカ、リリア、フェン、ヒカリ、ミミ、そしてクレハが、本当に良く頑張ってくれた。そして何より、このスタジアムに詰めかけた皆様の声援が、大きな力になりました。みなさん、喉が枯れんばかりのご声援! 本当にありがとうございます!!」

 

 マイクに大きな声を吹き込み、手を振るとドッとスタジアムが盛り上がる。

 こうして、ファンサービスをして人気を稼ぐのも、チャンピオンの大切な仕事だ。

 エロゲーとしてのモン娘バトルではなく、スポーツとしてのモン娘バトルを広めるためには、こういった地道な活動が大切なのだ。

 クリーンで爽やかなイメージを大衆に植え付ければ、俺以外の人間も敗北プレイに対して嫌悪感を抱くようになるはず。

 

「ありがとうございます、ユウマ選手! 本当に熱い試合でしたね! 序盤のリューカちゃんとレックスちゃんのぶつかり合いから、最後のクレハちゃんとアストラちゃんの手に汗握るギリギリの攻防! 最初から、最後まで見どころたっぷりでした! ……ところで、ユウマ選手はいつも通りの、揺るぎない勝利を見せてくれましたが、今回の試合で『ここが一番キツかった!』という場面はありましたか?」

 

 カラスの翼を軽くはためかせながら、ハルカがマイクをぐっと近づけてくる。

 彼女の深紅の瞳が、好奇心でキラキラと輝いている。

 こんなのでも、大木さんのモン娘で確実に俺よりも年上なのだから、モン娘の年齢詐欺具合が際立つ。

 

「キツかった……正直、全部キツかったですね。特にヒロトの諦めない粘り。せっかく、リューカが先制してくれたのに、私が指示を焦ったばかりに、リューカとリリアを一気に失ってしまった。フェンが持ち直してくれたと思ったら、根性で相打ちに持っていきましたし……先制しても即座に巻くってくるのは、流石はヒロトと言うべきか、何と言うか……とにかく肝を冷やしました。でも、ミミが私の尻を叩いて叱咤激励してくれたおかげで、冷静になれました。ヒカリが互角に持ち込んでくれたのも、平常心に戻れた理由ですね。ですが、結局は最後もクレハが機転を利かせてくれた勝利なので、とにかくみんなに助けられた勝利です」

 

 割と真面目に危なかったので、愚痴のようにバトルの感想を漏らしてしまう。

 すると、すぐ後ろに控えていた九尾のクレハが、優雅に微笑みながら9本の尾を軽く揺らして俺の背を撫でて来る。

 

「うふふ、マスターが褒めてくださるなんて光栄ですわ。ですが、マスターが最後まで諦めなかったからこそ、私達も全力を出すことが出来たのですよ? 私の最後の行動も、普段のマスターの戦術を覚えていたおかげですから」

「とまあ……平たく言えば、いつものようにみんなで掴んだ勝利ですかね」

 

 ハルカが目を丸くして、興奮気味にクレハにマイクを向ける。

 こうした、インタビューでもちゃんと俺のことを立ててくれるのが、クレハの良い所だ。

 夫の後ろを歩く、大和撫子的な良さがある。

 まあ、怒るととんでもなく恐ろしくなるところも、大和撫子だが。

 

「わぁ! クレハさんからも素晴らしいコメント! モン娘達との信頼関係がすごいですね! 流石は『モン娘は家族だ』と普段から言い続ける、チャンピオンといった所ですね。それでは次の質問です! 下世話な話ですが、優勝賞金は何に使う予定ですか!?」

「えーと……ミミと相談して使い道を検討したら、自由に使える分は頑張ったモン娘達のために使おうかなと」

 

 今は治療を受けているミミの顔を思い出して、俺は苦笑いを零す。

 我が家の財布の紐は、実はミミが握っている。

 まあ、俺を含めて7人の家族なのだから、大切に使わないといけないのでありがたいのだが。

 

「しっかり、尻に敷かれていますね! では、お次の質問です! チャンピオンシップを制して、21回目の防衛に成功しましたが、次の目標などはありますでしょうか?」

「次の目標……そうですね。まずは、次に控えているモンスター娘マスターリーグ戦で、いい成績を残すことですかね」

 

 次の目標を聞かれて、俺は内心で渋い顔をする。

 防衛戦だけをやっていればいい程、チャンピオンの仕事は暇ではない。

 他の大会や、ランキングを決めるマスター同士のリーグ戦。

 バトルだけでも、やることは盛りだくさんだ。

 

「おお! 既に次の目標を見据えているとは、あくなき向上心に感服です! しかし、その向上心はどこからやってくるのでしょうか?」

「モンスター娘やその子供達の、社会的な地位の向上を目指し、同時にモン娘マスターの育成も行って、世界中にもっとモン娘バトルを広めること……そのために、自分に出来ることをやっているだけです」

 

 そして、俺の個人的な目標である、敗北プレイを無くすこと。

 このために、モン娘達の地位を向上させると共に、マスターの育成(主に倫理観)を行うことで、卑劣なNTRなどを無くそうとしている。

 相手がモン娘であっても『レイプとかドン引きするわ』という、国民性を育てるのだ。

 ロケ〇ト団のような、人身売買(モン娘を売る)組織など、もっての外だ。

 

「素晴らしい!! 私もモン娘として、その信念に賛同しますよ! 因みに、どのような活動をされていらっしゃるのですか?」

 

 チラッと、アピールチャンスですよ? 

 などといった目を向けて来るハルカに甘えて、俺はありがたく、カメラの方を向いて広報活動を行う。

 

「モン娘バトルの大会に出ることはもちろんですが、講演会を開いてモン娘バトルに最も重要なものは、モン娘との絆だと広めることもしています。他にも様々な町や地方を回って、子供達にモン娘バトルを教えることで、モン娘達とより身近になって貰う取り組みも行っています。そのために日々、色々な地方や町を飛び回っていますね。後は、モン娘の育成論についての、自分なりの考えをまとめた本の執筆などをしています。きっと、皆さんの町にもご厄介になる日が来ると思いますので、その時はこぞってご参加ください」

 

 大会に出る→その地方で講演会を開く→イベントなどに参加する→合間に原作知識を活かした、モン娘についての論文を書く→その実証のために調査を行う→戻ったら、また大会に出る。

 

 このループを行っているのが、現状の俺だ。

 この生活を15歳でチャンピオンになってからずっとだ。

 前世社会人でなければ、普通に発狂していただろう。

 もはや、バトルすることの方が、息抜きになりつつある現状なのだから。

 

「凄い活動量ですね! キツかったりとかしませんか?」

「ははは、モン娘のためを思えばこの程度」

 

 ──いやー、キツイっす。

 

「チャンピオンの座に君臨してから、早10年……日に日に貫禄が増していくばかりですね!」

 

 15歳でチャンピオンの座についてから、もう10年。

 25歳だ。そろそろ、30代が見えてきて段々と体がしんどくなってきている。

 バトルは好きだし、手を抜いて負けるのは論外だが、いい加減引退して、モン娘達とイチャイチャのんびりライフを送りたい……子供も欲しいし。

 

「このままをチャンピオンの座を、自分専用の玉座にしてしまいそうな勢いですが、ズバリどこまで勝ち続けますか!?」

「どこまでと言われましても……そんなに簡単に勝てる訳でもないんですけどね。ヒロトもそうですし、今回はぶつかりませんでしたが、セラ選手も私の首に手を届かせることが出来ますよ」

 

 理論上、引退はしようと思えばいつでも出来る。

 だが、苦労して掴んだチャンピオンの座を、タダで明け渡すのは腹が立つのが人情だ。

 何より、俺だってモン娘マスターとしての意地と誇りがある。

 

 自分から負けるような真似はしたくない。全力で戦って敗北する、誇り高き敗者でありたい。

 何より、俺が倒してきた相手に失礼だ。

 

 ……それに、俺を超えるような奴じゃないと、結局バトル以外の仕事はそのまま俺がやりそうだし。

 世界そのものを変えることを目指したのだ。

 表の権力も必要な以上、実力でもスター性でも、完全に超える後継者が出ないとスローライフが送れないのである。

 

 俺が居ないと、暴れる悪の組織などもいるしな。

 

「でも、勝ちますよね?」

「ははは……いつも必死なんですけどね」

 

 そんな引くに引けぬ状況だが、ありがたいことに俺はある希望を抱けている。

 いや、探しているというべきか。

 俺を確実に真正面から実力で打ち倒せて、スター性でも後継者になりえる存在。

 チャンピオンを辞める理由を作ってくれる後継者を。

 

「それに……」

「それに?」

 

 少し格好をつけて、テレビカメラに向けてビシッと人差し指を突き出す。

 

 俺がクソ激務を行ってまで、様々な町を飛び回っているのは、単にモン娘の地位向上のためだけではない。

 探しているのだ。俺を超える可能性を秘めた存在を。

 この世界において、最高のモン娘マスターの才能を持っていると断言できる存在──

 

「俺を超える逸材は、今この瞬間にも生まれていますよ」

 

 ──“目指せ! モン娘マスター!”の主人公を。

 

 

「次の物語の主人公は──君だ!」

 

 

 拝啓、原作主人公様へ。

 どうか早く原作通りチャンピオンになって、俺を引退させてください。

 お願いします。

 




任天堂に訴えられたら消します。
次回は明日の朝7時に投稿します。

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