1話3000字前後で作れたらいいなぁ…と思ってます。
追記:誤字報告ありがとう!!
…しまった。思いっきり叫んでしまった。近所迷惑でクレームが入らないといいけど。
「…なんで?え?夢?…ほっぺ痛ッ。」
鏡に写っていたのは、かの有名なバーチャル・シンガー鏡音リン。しかもレオニスタイルの姿で。私にとっては見慣れた姿だが…
「まっ、ちょ、タンマ。なんで私がリンになってる!?」
推しになれたのが嬉しい!となる余裕があるはずもなく、暫く狼狽えた。トラックに轢かれて寝て起きたら推しでした!とか現実にあったら洒落にならない。あってたまるかそんな物。
「…え、てことは、てことはだよ…。…ここ教室のセカイ?ここプロセカの世界?」
教室のセカイの夜空には流星群が流れている。丁度夜のようなので、近くの窓から空を見上げてみると…
「…綺麗…じゃなくて。うわ、あの…セカイビッツだっけ?あの透明三角形見覚えしかないわ。」
どうやら私はプロセカの、それも教室のセカイに鏡音リンとして転生してしまったらしい。今から入れる保険ってありますか?
「マジか…えぇ…?…てか、じゃあ一歌達とも会えるのかな……てか、リンってどのイベストからの登場だっけ。」
推しユニットの事となると、不思議と頭が冴えるもので。確かフロムトーキョーが描き下ろしのあのイベストだ。内容はプロを目指すことを決めた4人の、曲作りの話。咲希バナーのやつだ。
「するってーと…。本来のリンは、教室に入って一歌達と初顔合わせだよね。…え、ギャルノリ分かんない。」
レオニリンのあの優しいギャルのような感性。会ってすぐに皆にあだ名を付けられるほど私はフレンドリーじゃない自覚がある。でもここで私がどうにかしないとストーリーが進まないし…。
「…私の感性で、やるか。どうにかなるよ、多分。うん。」
そう心の中で決めて、私は足を進めた。
「…あれ、一歌達がいる教室どこ!?」
─────
「あ、みんな来たんだね。いらっしゃい。」
「ミクちゃん、ルカさんこんにちはーっ♪」
「今日はいつも以上に元気ね、咲希。」
プロになる事を決意した私達Leo/need。宮女で決めた活動方針をミク達に伝えて、アドバイスを貰うためにセカイに来ていたんだれど…
「何かいいことでもあったの?」
「ここに来る前に、プロになる為には具体的に何をすれば良いか話してたんです。それで、まずは経験を積むために私のバイト先でライブをするって事になって。」
「ライブ?へぇ、面白そうじゃん!」
「でしょでしょ〜!ついにアタシ達Leo/needが、世界に羽ばたくんだよ!もう、今からドキドキしちゃって!」
そうやってミク達に想いを語る咲希はどこか、いつも以上に眩しくて。志保はどこか呆れるように咲希を見ていたけど、その目には真剣な熱が宿っていたように見えた。
「世界って…咲希、大げさ。」
この言葉を言い終わるや否や、扉の方からこのセカイでは聞き慣れない、でも私にとっては馴染み深い─あの声が、聞こえてきた。
「大げさじゃないよ、一歌。」
「えっ…」
「想いの持ち主さん達、始めまして。鏡音リンだよ!」
「リ…リン!?」
「あら、来ていたのね、リン。呼んでくれれば出迎えたわよ?」
「ふふ。気持ちは嬉しいよ、メイコ。でもね、始めましては自分からやってみたくって。」
扉に背を預けて立っていたのは、バーチャル・シンガーのリン。確かにミクやルカ達がいるなら、この子も来るんじゃって思っていたけど…思ってたより、早かったな。
「わー、リンちゃんだー♪ねぇねぇ、リンちゃんも一緒にバンドとか、してくれるの!?」
「わっ!?」
興奮のあまり、咲希がズイッと大きく迫った事で驚いたリンはその場で尻もちをついた。…見た目の割に、意外と謙虚なのかな?
「あはは…うん。私もミク達と一緒に、ここでバンド演奏しようって思ってるよ!」
「やったー!リンちゃんが来てくれたから、これでもっと楽しくなるね♪」
そこまで来て、珍しく穂波が口を開いた。
「ね、ねぇ…リンちゃん。大げさじゃないって、どういうこと?」
その問いがまるで意外だったかのような顔をした後、リンはこちらを優しい笑顔で見つめながら話しだした。
「だって、本気で目指そうって決めた人の夢を、大げさなんて思いたくないから。世界ってね、最初はすごく遠く見えるんだ。でも、一歩ずつ進んでたら、気づいた時には思ってたより近くにあることもあるんだよ。」
そう語った彼女の瞳には、何か、言葉に出来ない強い想いがメラメラと燃えているように見えた。
…どうしてだろう。リンとは、今始めて会ったはずなのに。その言葉は、不思議に思うぐらい胸にすっと入ってきた。
「そういえば、メイコさんが来てくれた時は、『わたし達の想いが一歩先に進んだから』って言ってたよね。もしかしてリンちゃんも、同じ理由でセカイに呼ばれたのかな?」
ミクもルカもメイコも、私達の想いに共鳴したセカイが生み出した存在。だとすればリンにもきっと何か理由があるんだろうな。…穂波、流石の着眼点だなぁ。周りをよく見てる。
「理由?…理由、かぁ。」
リンは下を向いて、静かに考え込んでいた。その顔は笑顔とはまた違う、諦めにも似たような感じのようにも見えた。
そして顔を上げた後、彼女は静かに、ぽつぽつと喋り始めた。
「…分かんないな。何もかも、ぜーんぶ。でもね?」
そこで言葉を切ったリンは、私達一人ひとりをしっかりと認識するように眺めてから、再び口を開く。
「私は、いや私も、皆と一緒に過ごしたいなって、思ってる。皆の力になりたいな。」
その満面の笑みと言うには程遠いけれど、はにかんだような笑顔は、まっすぐな言葉と共に空間を照らした。
「…もし、リンが力を貸してくれるなら。私達、今はライブの準備をしてるんだ。良かったら、一緒にやらない?」
この言葉は意図して出たものか、本能的に出てきたのか。私は気づけば、リンを誘っていた。この子の事を、よく知ってみたい。
「ライブの準備…。曲作りとか、練習とか?」
「うん。まだそのあたりは決まってないけど、やりたい事は決まってるよ。4人で、聴いてくれた人の心に残るような演奏をしたい。その想いは、皆同じ。」
「しほちゃん…!」
志保の言葉に、私も穂波も咲希も、皆が頷いた。私も、誰かにとって忘れられないようなライブをしてみたい!
リンをもう一度見ると、目を見開いて固まっていた。その後自分の掌を眺めた後、手を後ろに回して笑顔でこう言った。
「…いいね。凄く、良いや。その絆、その想い。きっと、皆なら大丈夫だよ。」
「もちろん!よーし皆!早速練習しようよ!アタシ、居ても立ってもいられなくなっちゃった♪」
「あはは…。でも、咲希ちゃんの気持ち分かるよ。」
「よし、それじゃあ皆。それぞれ準備して練習しようか。」
「「はーい!」」
「皆、困った事があったら教えてね。出来る限り、力になるから。」
そう言った後、リンは背中を向けて扉のほうに向かって行った。
「あ……。…行っちゃった。」
「一歌、どうかしたの?」
「ミク。大したことじゃないんだけど─」
「…なるほどね。まだリン、近くにいると思うよ。気になるなら探してみたらどうかな。」
「…うん、そうしてみるね。ありがとう!」
あの笑顔に疑問を持った私は、リンを探すべく扉を開けた。
マジで ギャルノリ 分かんない