ピクミン擬人化ハーレム物   作:風神ぷー

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これからたまーに投稿するのでよしなに


第一話 運び屋

荷物は裏切らない。

 

少なくとも、人間よりは。

 

「おいオリマー、明日の朝までに届けられるか?」

 

営業所長が缶コーヒー片手に聞いてきた。

つるりと光る禿頭に思わず目を細めて俺は、

伝票を確認しながら肩をすくめる。

 

「まぁ、なんとかなるでしょ」

 

「お前のその『なんとかなる』は本当になんとかなるから腹立つんだよな……」

 

「褒め言葉として受け取っときます」

 

周囲から笑い声が上がる。

この仕事に着いてから数年は経つが『運び屋』として荷物を運ぶ事を今まで一度のミスもなくやってきた。恐らく天職なのだろう。

 

 

織間哲平(おりまてっぺい)

 

三十歳。

 

長距離トラック運転手。

 

同僚達からはなぜか「オリマー」と呼ばれていた。

 

理由は誰も覚えていない。

 

ただ、気付けばそう呼ばれていた。

何となくしっくりくるので拒否感は無かった。

 

「今回も山越えルートか」

 

伝票を見ながら呟く。

 

宮城県から山間部の配送センターまでの長い距離だが走り慣れた道だ。

 

「荷物ってさ」

 

出発前、若い同僚が聞いてきた。

 

「うん?」

 

「なんでそんな真面目に運ぶんです?」

 

急な質問、しかし無意識に俺の口は開いていた。

 

「仕事だから」

 

「いや、それはそうなんですけど」

 

オリマーは少し考えて、改めて口にしてみる。

 

「ちゃんと届けるから意味があるんだよ」

 

「?」

 

「途中で捨てたら終わりだろ?」

 

「はぁ」

 

「だから最後まで運ぶ」

 

 当たり前のことを言っただけだった。

 

 同僚は苦笑する。

 

「オリマーさんらしいっすね」

 

「そうか?」

 

「配送ミスしたことないですもんね」

 

「まぁな」

 

それだけ言ってトラックに乗り込む。

 

鍵を捻りエンジンが唸りを上げた。

 

 

夜。

 

人気など全くない山道。

 

街灯は少ない。

 

窓の外には黒い森が広がっている。

 

ラジオから流れる音楽を聞きながらハンドルを握る。

 

眠気はない。

 

道も慣れている。

 

いつも通りの配送。

 

いつも通りの夜

 

そのはずだった。

 

ドンッ!!

 

「っ!?」

 

突然の振動。

 

車体が大きく揺れた。

 

ハンドルが暴れる。

 

「なっ!?」

 

急ブレーキ。

 

タイヤが悲鳴を上げる。

 

トラックはガードレールにぶつかる寸前で停止した。

 

車内に沈黙が訪れる。

 

「……は?」

 

心臓が激しく鼓動している。

急な命の危機に思い出したかのように心臓が跳ね回っている。

 

恐る恐る外へ出た。

 

ライトで確認する。

 

前輪。

 

完全にパンクしていた。

 

「マジかよ……」

 

ため息を吐く。頭を抱えたい衝動が襲う。

 

 

こんな山奥で。

 

こんな時間に。

 

最悪だった。

 

スマホを取り出す。

 

圏外の二文字。暗い山道でスマホの淡い光が心細く光っている。

 

「だろうな……」

 

思わず口から頼りない言葉が漏れ出ながら空を見上げる。

 

月が妙に大きく見えた。

 

仕方なく周囲を確認する。

 

すると。

 

道路脇に細い獣道が続いていた。

 

その先には森。

 

「人家でもあればいいんだが」

 

懐中電灯を手に取る。

 

そして森へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

空気がおかしい。

 

森に入ってすぐ気付いた。

 

妙に甘い香り。

 

花の匂いにも似ている。

 

だが不快ではない。

 

むしろ心地いい。

 

「……なんだこれ」

 

歩く。

 

さらに歩く。

 

恐ろしいはない。

 

虫の声が聞こえない。

 

風も吹かない。

 

静かすぎる。

 

まるで世界から音が消えたようだった。

 

なんてホラー小説の一文のようなことを思ったその時。

 

ふわり。

 

何か白いものが視界を横切った。

 

「花粉……?」

 

違う。

 

胞子だ。

 

雪のように舞っている。

 

無数に。

 

どこまでも。

 

本来なら困惑が真っ先に出る異常な光景にしかし俺は、

 

「綺麗だな……」

 

意識がぼんやりする。

 

足元が揺れる。

 

頭が重い。

 

眠い。

 

急に。

 

とてつもなく眠くなった。

もう今この瞬間も夢の中みたいで、

 

「おいおい……冗談だろ……」

 

微睡んだ声が漏れる。

 

視界が霞む。

 

木々が歪む。

 

世界が回る。

 

膝が崩れた。

 

地面に倒れ込む。

 

最後に見えたのは。

 

森の奥。

 

巨大な白い花だった。

 

 

 

 

 

目を開けた。

 

空が見える。

 

青空だった。

 

「……朝か?」

 

体を起こす。

 

いつのまにか寝ていたらしい。

寝ていたというより気絶か。

 

頭が痛い。

 

周囲を見渡し違和感に気づく。

昨夜の森とは別世界だった。

 

木々は巨大化していた。

 

草は人の背丈ほどある。

 

花は建物みたいに大きい。

 

「なんだ……ここ」

 

立ち上がる。

 

トラックもない。

 

道路もない。

 

森しかない。

 

緑に囲まれている。

 

まるで神隠しにでもあったかのような急激な環境変化。

 

嫌な汗が流れた。

 

「夢……か?」

 

あるいはそうであって欲しいと願いが込められていた。

 

そう呟いた瞬間だった。

 

ガサッ。

 

背後の茂みが揺れる。

 

恐る恐る振り返る。

 

何かいる。そこになにか。

 

ゆっくりと。そう怯える子供のようにゆっくりと。

 

草むらの奥から姿を現した。

 

丸い。

 

異様なほど丸い。

 

橙色の巨大な頭。

 

飛び出した青い目。

 

短い脚。

 

間抜けそうな顔。

 

どこか子供向けアニメに出てきそうな生き物だった。

熊などではない。見たことも聞いたこともない生物を前に、

一瞬思考が止まる。

 

「……なんだこいつ」

 

思わずそう呟く。

 

少しだけ可愛いと思った。恐らくそれは現実逃避の類。

 

だが次の瞬間。

 

その生物が口を開いた。

 

並んだ牙。

 

肉食獣のような鋭い牙。

 

頭部の半分を占める巨大な口。

 

生暖かい息。

 

そして。

 

こちらを見る目。

 

獲物を見る目だった。

 

「……え」

 

嫌な汗が背中を伝う。

 

心の底から騒いでいる。

生物としての原初の本能。すなわち生存本能が。

 

丸い頭が揺れた。

 

一歩。

 

また一歩。

 

それは死神の一歩と同一であった。

 

近付いてくる。

 

その巨体に似合わない軽い足取り。

 

しかし近付くほど分かる。

 

デカい。人間より遥かに大きい。

 

頭だけで軽自動車ほどある。

 

たぶんだが、熊とかよりデカい、そんな怪物を前に、

 

「いやいやいや」

 

冗談だろ。

 

そう言おうとした。

 

だがその数巡前、怪物は突然地面を蹴った。

 

ドンッ!!

 

「はぁ!?」

 

爆発みたいな音。

もしかしたら本当に爆破されたかも錯覚する質量の暴力。

 

巨体が弾丸のように迫る。

 

速い。

 

あり得ないほど速い。

 

オリマーは反射的に走り出した。

きっと体が生きたいと勝手に生存へと向かったのだ。

 

「うわあああああああああ!?」

 

全力疾走。

 

草を掻き分ける。

 

転びそうになる。

 

後ろから地響き。

 

怪物が追ってくる。

 

まるで大型犬がボールを追うような気軽さで。

 

しかし捕まれば終わりだ。

現代日本ではまず出会わない、捕食される恐怖。

 

「なんなんだよお前ぇぇぇ!!」

 

余りの理不尽な展開に怒りすら芽生えた。

 

枝が顔を掠める。

 

息が切れる。

 

振り返る。

 

怪物との距離は十メートルもない。

きっとあの怪物からしたら数秒の距離。

 

青い瞳。

 

大きな口。

 

そして

 

牙。

 

牙。

 

牙。

 

終わった。

 

あの牙が五体を噛み砕く、その数巡前

 

その時俺は赤色の運命に出会う。

 

「伏せなさい!!」

 

麗しい少女の声。

 

直後。

 

燃えるような紅い影が視界を横切った。

 

「え?」

 

俺が影を追うより早く赤い影の正体。

美しい少女は怪物へ向かって一直線に駆けていた。

 

速い。

 

まるで弾丸だった。

 

怪物が牙を剥く。

 

だが少女は恐れない。

 

むしろ自分から飛び込んだ。

 

「邪魔よ!!」

 

炎のような苛烈な声が響く。

 

踏み込む。

 

どこにそんな質量があるのか地面が砕ける。

 

次の瞬間。

 

少女の拳が怪物の顔面へ突き刺さった。

 

ドォォォン!!

 

鈍い衝撃音。

 

決して人間からなる音では無い。

 

怪物の巨体が吹き飛ぶ。

 

木々をなぎ倒しながら地面を転がった。

 

「は……?」

 

思わず目を疑った。

 

軽自動車ほどもある怪物が。

 

一人の少女に殴り飛ばされた。

 

怪物は怒りの咆哮を上げる。

 

再び突進。

 

しかし少女は逃げない。

 

「何回でも来なさい」

 

迎え撃つように拳を構える。

 

怪物の牙が迫る。

 

少女は身体をひねって回避。

 

そのまま懐へ飛び込んだ。

 

腹部へ拳。

 

顎へ掌底。

 

最後に。

 

跳び上がりながらの蹴り。

 

怪物の頭が大きく跳ね上がる。

 

悲鳴。

 

怪物は数秒睨みつけた後。

 

低い唸り声を残して森の奥へ逃げていった。

 

静寂が戻る。

 

少女はようやく振り返った。

 

改めて全身を眺める。

 

赤い、真紅の髪をツインテールにした小柄少女。

あるいはそれだけであれば街中ですれ違っても違和感はない。

しかし一点只人にはない要素が頭から生えていた。

 

そうそれは植物のような、アホ毛のような、よく分からない突起部。

 

頭が困惑で埋め尽くされた。

 

そんな俺のアホズラを真っ赤な瞳が見つめる。

 

「生きてる?」

 

「あ、ああ……たぶん」

 

「たぶんじゃ困るのよ」

 

少女は肩をすくめた。

 

なんとなくその動作が似合うと感じた。

 

そして。

 

じっとオリマーを観察する。

 

「……人間?」

 

「いや、たぶん人間だと思うんだけど」

 

「何よその答え」

 

「こっちだって状況が分からないんだよ!」

 

思わず声が大きくなる。

 

少女は少し目を丸くした。

 

だが次の瞬間。

 

小さく笑った。

それはとても可憐な笑みで。

 

「そうね」

 

その笑顔は一瞬だった。

 

すぐに真面目な顔へ戻る。

 

「私はローズ」

 

少女は名乗った。

 

そして。

 

真っ直ぐオリマーへ指を突きつける。

 

「よく聞きなさい」

 

風が吹く。

 

赤い花びらが舞う。

 

少女の瞳はどこか悲しそうだった。

 

「絶対に帰りなさい」

 

その言葉だけが。

 

なぜか胸の奥へ深く突き刺さった。

初対面のはずなのに。

 

まるで。

 

ずっと昔から言われ続けていた言葉のように。

 

 

 

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