仮面ライダージオウ Re:Starting Life in Another World   作:吉野家

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第28話 剣聖の誓い

 

沈黙が続いていた。

 

誰もすぐには言葉を返せない。

 

ラインハルトの声には迷いがなかった。

 

だからこそ。

 

余計に分からなかった。

 

「……意味分かんねぇ」

 

フェルトが小さく呟く。

 

それが本音だった。

 

守る。

 

連れていく。

 

説明は後だ。

 

言っていることは分かる。

 

だが。

 

理由だけが分からない。

 

「何なんだよ本当に……」

 

視線が落ちる。

 

掌を見つめる。

 

そこには徽章があった。

 

青い徽章。

 

中央の赤い宝石。

 

ただそれだけの物。

 

それなのに。

 

今日一日で。

 

全部がおかしくなった。

 

ロム爺は腕を組んだままだった。

 

視線はラインハルトから外さない。

 

少しでも危険だと思えば。

 

すぐにでも飛び出すつもりだった。

 

「若造」

 

低い声。

 

ラインハルトが視線を向ける。

 

「一つ聞く」

 

「はい」

 

「フェルトを連れていった後」

 

ロム爺の瞳が細まる。

 

「本当に無事で帰って来るんじゃろうな」

 

静寂。

 

誰も口を挟まない。

 

フェルトも。

 

スバルも。

 

エミリアも。

 

答えを待っていた。

 

ラインハルトは黙らない。

 

逃げない。

 

真っ直ぐロム爺を見た。

 

そして。

 

腰の剣へ手を添える。

 

「誓います」

 

短い言葉だった。

 

だが。

 

重かった。

 

「この剣に懸けて」

 

一拍。

 

「必ずフェルト様をお守りします」

 

盗品蔵が静まり返る。

 

剣聖。

 

その言葉の重みを。

 

この場の誰もが知っていた。

 

だから。

 

その誓いは軽くない。

 

ラインハルトは続ける。

 

「私が生きている限り」

 

「フェルト様に害は及ばせません」

 

ロム爺は黙る。

 

その目はまだ鋭い。

 

だが。

 

先程までの怒りは少しだけ薄れていた。

 

嘘ではない。

 

それだけは分かる。

 

この男は本気だ。

 

本気でフェルトを守ろうとしている。

 

「……ふん」

 

ロム爺が鼻を鳴らす。

 

それ以上は言わない。

 

だが。

 

完全に納得した訳でもなかった。

 

フェルトはそんな二人を見比べる。

 

まだ分からない。

 

何も。

 

だが。

 

一つだけ分かることがある。

 

目の前の剣聖は。

 

冗談で動いている訳じゃない。

 

本気だ。

 

それだけは伝わっていた。

 

「フェルト様」

 

「だからその呼び方やめろ」

 

反射的に返す。

 

ラインハルトは少しだけ困ったように笑った。

 

「難しいですね」

 

「難しくねぇ!」

 

久しぶりに。

 

盗品蔵へ小さな笑いが生まれる。

 

スバルが肩を竦めた。

 

エミリアも少しだけ笑っている。

 

ソウゴも静かに見ていた。

 

その時だった。

 

「……一つだけだぞ」

 

フェルトが口を開く。

 

全員の視線が集まる。

 

「話だけだ」

 

ラインハルトが目を見開く。

 

フェルトは続ける。

 

「話を聞くだけだからな」

 

「納得できなかったら帰る」

 

ロム爺を見る。

 

「ロム爺んとこに」

 

ロム爺は少しだけ笑った。

 

「好きにせい」

 

その一言に。

 

フェルトは小さく頷く。

 

ラインハルトも静かに頭を下げた。

 

「ありがとうございます」

 

フェルトは気に入らなそうに顔をしかめる。

 

だが。

 

完全には拒絶しなかった。

 

それが答えだった。

 

騒がしい声が聞こえる。

 

スバルが何か言っている。

 

フェルトが怒鳴り返している。

 

エミリアが困ったように笑っている。

 

ロム爺は黙ってその光景を見ていた。

 

いつまでも続くと思っていた。

 

だが。

 

そういう訳にもいかないらしい。

 

少しだけ寂しくて。

 

少しだけ誇らしい。

 

ロム爺は誰にも聞こえないように鼻を鳴らした。

 

「まったく」

 

小さく漏れた声は。

 

いつもより少しだけ優しかった。

 

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