仮面ライダージオウ Re:Starting Life in Another World 作:吉野家
「では」
ラインハルトが一歩前へ出る。
そして。
ロム爺へ向き直った。
「大切なお孫さんをお預かりします」
ロム爺は腕を組んだまま鼻を鳴らす。
「返さんかったら承知せんぞ」
「はい」
迷いのない返事だった。
「必ず」
短い言葉。
だが。
その重みは十分だった。
ロム爺はそれ以上何も言わない。
ただ。
真っ直ぐラインハルトを見つめる。
その視線を受け止めるように。
ラインハルトも静かに頷いた。
そして。
今度はエミリアへ向き直る。
「エミリア様」
軽く一礼する。
「本日はご迷惑をお掛けしました」
エミリアは首を横に振った。
「いいえ」
そう言いながら。
視線をフェルトへ向ける。
フェルトは居心地悪そうに鼻を掻いた。
そして。
手の中の徽章を見る。
青い徽章。
中央の赤い宝石。
今日一日。
散々振り回された原因だった。
「……ほら」
ぶっきらぼうに差し出す。
エミリアが目を瞬かせた。
「これ」
フェルトは視線を逸らした。
「あんたのだろ」
エミリアはゆっくりと受け取る。
青い徽章。
失くしたはずの大切な物。
その重みを確かめるように握りしめる。
「ありがとう」
優しい声だった。
フェルトは鼻を鳴らす。
「別に」
「借りてただけだ」
エミリアは思わず笑った。
「それでもありがとう」
フェルトはますます居心地悪そうな顔になる。
その様子を見て。
スバルも思わず笑った。
長かった一日が。
ようやく終わろうとしていた。
その時だった。
「そういえば」
ラインハルトがふと思い出したように口を開く。
視線がスバルとソウゴへ向く。
「お二人のお名前をまだ伺っていませんでした」
「あ」
スバルが間の抜けた声を出した。
確かにそうだった。
色々ありすぎた。
自己紹介どころではない。
「ナツキ・スバルだ」
今度はちゃんと名乗る。
少しだけ胸を張って。
「常磐ソウゴ」
ソウゴも続いた。
ラインハルトは静かに頷く。
「改めまして」
「ラインハルト・ヴァン・アストレアです」
「それは知ってる」
スバルが即答する。
「剣聖だろ?」
ラインハルトは少し困ったように笑った。
「そのようです」
「そのようですって何だよ」
スバルが思わず突っ込む。
ソウゴも小さく笑った。
盗品蔵の空気は。
先程までとはまるで違っていた。
その時だった。
「あ」
エミリアが小さく声を上げる。
皆の視線が集まった。
エミリアは少しだけ申し訳なさそうな顔をする。
そして。
スバルとソウゴを見た。
「私」
一拍。
「二人にちゃんとお礼を言ってなかった」
スバルが目を瞬かせる。
ソウゴも静かに視線を向けた。
エミリアは徽章を胸の前で抱く。
そして。
優しく微笑んだ。
「本当にありがとう」
その言葉に。
盗品蔵の空気が少しだけ温かくなった。