仮面ライダージオウ Re:Starting Life in Another World   作:吉野家

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第30話 通りすがりの王様

 

 

「本当にありがとう」

 

エミリアが微笑む。

 

盗品蔵が静かになる。

 

スバルは思わず頭を掻いた。

 

急に真っ直ぐ感謝されると。

 

なんだか照れ臭い。

 

「いやいや」

 

慌てて手を振る。

 

「礼を言われるほどのことじゃ――」

 

言いかけて。

 

やめた。

 

何度も失敗した。

 

何度も間に合わなかった。

 

何度も届かなかった。

 

だが。

 

それを口にすることはできない。

 

だから。

 

少しだけ笑う。

 

「まあ」

 

「無事でよかったよ」

 

それだけを言った。

 

エミリアは目を丸くする。

 

そして。

 

優しく微笑んだ。

 

「うん」

 

短い返事だった。

 

だが。

 

その笑顔だけで。

 

スバルは報われた気がした。

 

 

 

その隣で。

 

ソウゴも静かに頷く。

 

「どういたしまして」

 

当たり前みたいな返事。

 

エミリアはそんなソウゴを見つめた。

 

「ソウゴも」

 

「ありがとう」

 

「私」

 

少しだけ視線を落とす。

 

「もう駄目かと思った」

 

エルザの姿が脳裏を過る。

 

あの速さ。

 

あの殺意。

 

あの強さ。

 

誰か一人欠けてもおかしくなかった。

 

「でも」

 

エミリアは顔を上げる。

 

「助けてくれた」

 

真っ直ぐな感謝だった。

 

ソウゴは少しだけ考える。

 

そして。

 

「守れたならよかった」

 

そう答えた。

 

エミリアは少しだけ目を細める。

 

不思議な人だと思う。

 

自分の手柄みたいに語らない。

 

当たり前みたいに言う。

 

まるで。

 

誰かを守ることが当然であるかのように。

 

 

 

「そういえば」

 

スバルがふと口を開いた。

 

「ん?」

 

「結局さ」

 

視線がソウゴへ向く。

 

「お前何者なんだ?」

 

盗品蔵が少し静かになる。

 

フェルトも。

 

ロム爺も。

 

エミリアも。

 

ラインハルトも。

 

自然と視線を向けていた。

 

確かに。

 

気になっていた。

 

エルザを圧倒した少年。

 

剣聖ですら気に掛ける存在。

 

それなのに。

 

本人はどこまでも普通だった。

 

ソウゴは少し考える。

 

何者。

 

そう聞かれると案外難しい。

 

王。

 

魔王。

 

時の王者。

 

色んな呼ばれ方をしてきた。

 

その時だった。

 

ふと。

 

脳裏を一人の男が過る。

 

黒とマゼンタ。

 

不機嫌そうな顔。

 

いつも偉そうで。

 

面倒見が良くて。

 

最後まで自分達を見届けてくれた男。

 

 

 

――通りすがりの仮面ライダーだ。

 

覚えておけ。

 

 

 

思わず。

 

ソウゴの口元が緩んだ。

 

「通りすがりの王様……かな」

 

沈黙。

 

「かなじゃねぇ!!」

 

真っ先にスバルのツッコミが飛ぶ。

 

「そこ曖昧にするな!」

 

「いや待て!」

 

「今さらっと王様って言ったよな!?」

 

ソウゴは首を傾げた。

 

「言ったね」

 

「認めるな!」

 

フェルトが吹き出した。

 

「何だよそれ!」

 

「通りすがりの王様って!」

 

「意味分かんねぇ!」

 

エミリアも堪えきれずに笑う。

 

「ふふっ……」

 

「変なの」

 

ロム爺も肩を揺らした。

 

「大きく出たのう若いの」

 

盗品蔵に笑いが広がる。

 

だが。

 

一人だけ。

 

笑っていない者がいた。

 

ラインハルトだった。

 

静かに。

 

ソウゴを見つめている。

 

王。

 

その言葉を。

 

冗談だと切り捨てられなかった。

 

エルザを退けた力。

 

あの時感じた底知れなさ。

 

そして。

 

時折見せる不思議な落ち着き。

 

全てが。

 

妙に引っ掛かる。

 

だが。

 

今は問わない。

 

問うべき時ではない。

 

 

 

「いやほんと何なんだよお前……」

 

スバルが頭を抱える。

 

ソウゴは少しだけ笑った。

 

答えるつもりはないらしい。

 

その様子に。

 

エミリアはまた小さく笑う。

 

フェルトは呆れたように鼻を鳴らした。

 

ロム爺は黙って見守っている。

 

長かった夜。

 

死がすぐ隣にあった夜。

 

それでも。

 

今はこうして笑っている。

 

それだけで十分だった。

 

そして。

 

ラインハルトは静かに目を細める。

 

 

 

――王、か。

 

 

 

その言葉だけが。

 

妙に心に残っていた。

 

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