仮面ライダージオウ Re:Starting Life in Another World 作:吉野家
盗品蔵の外へ出ると。
夜風が頬を撫でた。
王都の喧騒も。
この時間になれば随分静かだ。
「じゃあな」
フェルトが振り返る。
まず見たのはロム爺だった。
言いたいことは山ほどある。
だが。
結局。
何も出てこない。
「……行ってくる」
ロム爺は少しだけ目を細めた。
「おう」
それだけだった。
それだけで十分だった。
フェルトもそれ以上は言わない。
次に。
スバルを見る。
「借りは返したからな」
スバルが首を傾げる。
「借り?」
「助けてもらっただろ」
「お前も助けてくれたじゃん」
「そうか?」
「そうだよ」
フェルトは少しだけ考えた。
そして。
鼻を鳴らす。
「ならチャラだな」
「おう」
スバルが笑う。
フェルトも少しだけ笑った。
ほんの少しだけ。
そして。
最後に。
エミリアを見る。
「それ」
エミリアが首を傾げる。
「ん?」
フェルトはエミリアの手の中の徽章を顎で示した。
「今度は無くすなよ」
にししっ。
悪戯っぽい笑み。
エミリアは一瞬ぽかんとした。
そして。
思わず吹き出した。
「言うじゃない」
「事実だろ?」
「否定できないわね」
苦笑しながら。
エミリアは徽章を握り締める。
「今度は無くさない」
「ならいい」
満足そうに頷く。
そして。
フェルトはソウゴへ振り返った。
「通りすがりの王様」
「ん?」
「その変な肩書き忘れんなよ」
沈黙。
「ぷっ」
スバルが吹き出した。
「おい!」
フェルトが睨む。
「いや無理だろ!」
スバルが腹を抱える。
「通りすがりの王様って何だよ!」
「悪くないと思うけど」
ソウゴは真面目だった。
「乗るな!!」
スバルのツッコミが夜道に響く。
笑い声が広がる。
フェルトは少しだけ口元を緩めた。
「じゃあな」
それだけ言って。
今度こそ歩き出す。
ラインハルトも続く。
二人の背中が。
少しずつ夜の街へ溶けていく。
やがて見えなくなった。
静寂。
「さて」
ロム爺が口を開く。
「お前さん達はどうする」
エミリアは少し考える。
そして。
ふとスバルを見た。
「そういえば」
「ん?」
「あなた今日泊まる場所あるの?」
スバルが固まった。
ない。
宿もない。
金もない。
そもそも。
異世界に来てから野宿しかしていない。
「……ない」
「即答ね」
エミリアが苦笑する。
今度はソウゴを見る。
「ソウゴは?」
ソウゴも少し考える。
そして。
「ない」
即答だった。
「お前もかよ!」
スバルが思わず叫ぶ。
「そうみたい」
ソウゴは首を傾げた。
ロム爺が呆れたように鼻を鳴らす。
「二人揃ってか」
「仕方ないだろ!」
「仕方ないね」
スバルとソウゴの温度差が酷い。
エミリアは少しだけ笑った。
そして。
決めたように頷く。
「だったら」
二人を見る。
「来る?」
「へ?」
スバルが固まる。
「私の屋敷」
エミリアは少しだけ照れ臭そうに笑った。
「お礼もしたいし」
「今日は色々あったし」
「部屋なら空いてると思うから」
一瞬。
スバルの思考が止まった。
そして。
ゆっくり理解する。
屋敷。
エミリアの屋敷。
泊まれる。
「行く!!」
即答だった。
食い気味だった。
エミリアが少しだけ驚く。
「そ、そう」
「行く!」
「二回言わなくても分かったわ」
ロム爺が吹き出した。
ソウゴも少し考える。
帰る場所はない。
断る理由もない。
「じゃあ」
静かに頷く。
「お言葉に甘えようかな」
エミリアはほっとしたように笑った。
「決まりね」
長い夜だった。
だが。
ようやく終わる。
そう思っていた。
誰もまだ知らない。
その屋敷で待つ騒がしい日々を。
そして。
これから始まる物語の本当の幕開けを。
一旦ここで区切らせてもらいます。この2日でストック全部全力放出したので
続きを考えたりする時間を貰います。ロスワールの口調ムズいし…
もし気になっていただけるのでしたら気長に待っていただければそのうち続きを投下してると思いますので、ふと思い出した頃にでも見に来てくださると嬉しいです。