仮面ライダージオウ Re:Starting Life in Another World   作:吉野家

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第4話 精霊と失くし物

王都の大通りは賑わっていた。

露店から漂う香ばしい匂い。

商人達の威勢の良い声。

行き交う人々。

異世界だというのに、不思議と活気のある街だった。

ソウゴはそんな景色を眺めながら歩いていた。

その隣では。

「だからそこで俺は思ったわけよ!」

黒髪の少年――スバルが元気よく喋っている。

「うん」

「絶対俺ならもっと上手くやれるって!」

「うん」

「聞いてる!?」

「聞いてるよ」

「怪しいな!?」

スバルが振り返る。

ソウゴは頷いた。

ちゃんと聞いている。

半分くらいは。

残り半分は街を見ていた。

スバルは大きくため息を吐く。

「絶対聞いてねぇ……」

前を歩く銀髪の少女が小さく笑った。

どうやら同じことを思ったらしい。

その様子を見て、スバルが不満そうな顔になる。

「なんで笑うんだよ」

「ごめんなさい」

謝っている割には少し楽しそうだった。

さっきまで追われていた人とは思えない。

その表情を見ていると、少し安心する。

しばらく歩いたところでソウゴは尋ねた。

「その探し物って、どんな物なの?」

少女の足が少しだけ止まる。

スバルも気になっていたらしい。

勢いよく身を乗り出した。

「そうそう!」

「俺も気になってた!」

少女は少しだけ迷う。

言うべきか。

言わないべきか。

そんな表情だった。

やがて小さく首を振る。

「ごめんなさい」

「秘密?」

スバルが聞く。

少女は申し訳なさそうに頷いた。

「大切な物なの」

それだけだった。

スバルは露骨に気になる顔をする。

「余計気になる!」

「ごめんなさい」

本当に困ったような顔だった。

だからだろう。

ソウゴはそれ以上聞かなかった。

言いたくないことなら無理に聞く必要はない。

見つければいいだけだ。

その時だった。

少女の髪飾りが淡く光る。

ふわりと光の粒が舞い上がった。

スバルが固まる。

「え?」

光は空中で集まり、一つの形を作る。

猫だった。

灰色の毛並み。

大きな尻尾。

そして妙に人間らしい表情。

「やぁ」

猫が喋った。

スバルが飛び上がる。

「うおぉぉぉ!?」

今度は猫が驚いた。

「うわっ!?」

「喋った!」

「そりゃ喋るよ!」

「猫が!?」

「猫じゃないよ!」

大変な騒ぎだった。

通行人が何事かと振り返る。

ソウゴはその猫を見つめる。

じっと。

興味深そうに。

「……」

「……」

猫も見返す。

数秒。

沈黙。

先に折れたのは猫の方だった。

「何かな?」

「触っていい?」

「初手それ?」

スバルが吹き出した。

少女も笑いそうになっている。

猫は呆れた顔をした。

「ボクは猫じゃないよ」

「じゃあ何?」

「精霊」

ソウゴは少し考える。

そして頷いた。

「へぇ」

反応が薄い。

猫――パックの方が困惑した。

「へぇ?」

「精霊なんだ」

「もっと驚かないのかい?」

「珍しいとは思う」

「思うだけ?」

少女が肩を竦める。

「ごめんなさい。この子ちょっと変わってるの」

「君も十分変わってると思うけどね」

パックはため息を吐いた。

そして改めてソウゴを見る。

「初めまして」

「初めまして」

「ボクはパック」

「常磐ソウゴ」

「知ってるよ」

「そうなんだ」

「今聞いてたからね?」

また反応が薄い。

調子が狂う。

そう思いながらも、パックはソウゴを観察していた。

そして。

違和感に気付く。

最初は気のせいだと思った。

だが違う。

精霊は魔力を見る。

人間を見る時もそうだ。

生命の灯火。

魂の色。

魔力の流れ。

それらは生きている限り必ず存在する。

スバルにもある。

多くはないが確かにある。

エミリアは言うまでもない。

だが。

目の前の少年には。

何も無かった。

魔力が無い。

一切。

欠片も。

有り得ない。

パックの笑みが僅かに消える。

呼吸している。

心臓も動いている。

生きている。

それは間違いない。

なのに魔力だけが存在しない。

そんな存在をパックは知らない。

長い時を生きてきた。

人も見た。

精霊も見た。

魔獣も見た。

だが。

こんな存在は初めてだった。

まるで。

世界の外から来たような。

そんな違和感。

「……」

パックは目を細める。

ソウゴもまたパックを見ていた。

敵意は感じない。

けれど強い。

それだけは分かった。

戦えば大変そうだな。

そんな呑気な感想だった。

「君」

パックが口を開く。

「何?」

「どこから来たんだい?」

ソウゴは少し考える。

そして答えた。

「迷子」

スバルが吹き出した。

「まだ言うのかよ!」

パックは困った顔になる。

誤魔化された。

そんな気がした。

だが今は追及しない。

少なくとも敵意は無い。

それだけは分かった。

「それより」

パックが空中でくるりと回る。

「探し物の方だろう?」

少女が頷く。

「そうだった」

「当てはあるの?」

スバルが聞いた。

少女は少し迷った後、静かに答える。

「一つだけ」

その声は真剣だった。

「貧民街よ」

賑やかな空気が少しだけ変わる。

王都の光が届かない場所。

人々が目を背ける場所。

そして。

探し物があるかもしれない場所。

ソウゴは空を見上げた。

胸の奥で。

また僅かに時計が鳴った気がした。

まるで。

この先に何かが待っていると告げるように。

三人と一匹は貧民街へ向かって歩き出した。

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