仮面ライダージオウ Re:Starting Life in Another World   作:吉野家

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第5話 貧民街

王都の賑わいは徐々に遠ざかっていった。

 

石畳はひび割れ。

 

建物は古い。

 

漂う空気まで違う。

 

同じ王都の中とは思えなかった。

 

「なんか急に雰囲気変わったな」

 

スバルが辺りを見回す。

 

先程までの元気は少し影を潜めていた。

 

「ここが貧民街?」

 

「ええ」

 

エミリアが頷く。

 

その表情は真剣だった。

 

パックも空中を漂いながら周囲を警戒している。

 

「スリも多いし、揉め事も多い場所だよ」

 

「怖っ」

 

スバルが素直な感想を漏らした。

 

ソウゴは辺りを見回す。

 

視線を感じた。

 

建物の隙間。

 

路地裏。

 

人影。

 

誰も近寄っては来ない。

 

けれど確かに見られている。

 

王都とは違う。

 

ここにはここなりのルールがあるのだろう。

 

「大丈夫?」

 

エミリアが聞く。

 

「うん」

 

ソウゴは頷いた。

 

怖くはない。

 

ただ。

 

少し気になることがあった。

 

カチリ。

 

まただ。

 

胸の奥で時計が鳴る。

 

一瞬だけ。

 

見知らぬ路地が見えた。

 

血。

 

倒れている誰か。

 

そして。

 

銀髪の少女。

 

次の瞬間には消える。

 

「……」

 

最近よく見る。

 

断片的な光景。

 

未来なのか。

 

過去なのか。

 

それすら分からない。

 

ただ。

 

あまり良い光景ではなさそうだった。

 

「ソウゴ?」

 

スバルが覗き込む。

 

「また考え事?」

 

「少し」

 

「若いのに苦労してんな」

 

「スバルよりは若くないと思う」

 

「年齢変わらねぇだろ!」

 

そんなやり取りをしながら歩いていると。

 

「おや?」

 

パックが声を上げた。

 

「どうした?」

 

「向こうだね」

 

小さな前足が一つの路地を指す。

 

エミリアの表情が引き締まる。

 

「何か分かったの?」

 

「うっすらだけど」

 

パックは尻尾を揺らした。

 

「ボクの勘を信じるならね」

 

「勘なのかよ!」

 

「精霊の勘だよ」

 

「余計信用していいのか分かんねぇ!」

 

スバルが頭を抱える。

 

パックは楽しそうだった。

 

エミリアも少し笑っている。

 

その様子を見ながらソウゴは思った。

 

良い関係だな、と。

 

短いやり取りだけで分かる。

 

パックはエミリアを大切にしている。

 

エミリアもまたパックを信頼している。

 

「行こう」

 

エミリアが先頭に立つ。

 

三人と一匹は路地へ入った。

 

奥へ進む。

 

さらに奥へ。

 

人通りはどんどん少なくなっていく。

 

そして。

 

古びた建物の前でエミリアが足を止めた。

 

「ここ……?」

 

建物というより倉庫だった。

 

壁は傷だらけ。

 

窓も少ない。

 

怪しさしかない。

 

スバルが率直な感想を述べた。

 

「入りたくねぇ」

 

「同感」

 

珍しくソウゴも賛成した。

 

エミリアは苦笑する。

 

「でも調べないと」

 

「そうなんだよなぁ……」

 

スバルが頭を掻いた。

 

その時だった。

 

ソウゴの視線が動く。

 

向かいの屋根。

 

誰かいる。

 

小柄な影。

 

一瞬だけ目が合った気がした。

 

だが。

 

次の瞬間には消えていた。

 

「?」

 

気のせいではない。

 

誰かいた。

 

カチリ。

 

胸の奥で時計が鳴る。

 

今度ははっきりだった。

 

小柄な少女。

 

金色の髪。

 

軽やかな足取り。

 

風を切るように屋根を駆ける姿。

 

そして。

 

何かを持っている。

 

それだけが見えた。

 

次の瞬間。

 

映像は消える。

 

「……見つけた」

 

思わず口から漏れた。

 

三人が振り返る。

 

「え?」

 

「何を?」

 

スバルが聞く。

 

ソウゴは屋根の方を見る。

 

もう誰もいない。

 

夕日に照らされた瓦屋根だけが静かに並んでいた。

 

けれど。

 

確信だけは残っていた。

 

誰かがいた。

 

そして、その誰かは探しているものと繋がっている。

 

そんな気がした。

 

「ソウゴ?」

 

スバルの声で我に返る。

 

「どうしたんだ?」

 

「いや」

 

ソウゴは首を振った。

 

まだ上手く説明できない。

 

ただの勘かもしれない。

 

それでも。

 

胸の奥で時計が鳴る。

 

カチリ。

 

まるで。

 

見えない歯車が噛み合ったような音だった。

 

王都の夕日が街を赤く染める。

 

長く伸びた影が石畳を覆っていく。

 

ソウゴは静かに歩き出した。

 

その一歩に合わせるように。

 

物語の歯車は静かに回り始めていた。

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