仮面ライダージオウ Re:Starting Life in Another World   作:吉野家

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第7話 閉ざされた扉

夕日はもう沈みかけていた。

 

貧民街の路地は赤く染まり、昼間とは別の顔を見せている。

 

男に教えられた場所を目指し、三人と一匹は路地の奥へ進んでいた。

 

人通りは少ない。

 

視線だけがある。

 

窓の隙間。

 

建物の影。

 

誰かが見ている。

 

けれど誰も近寄っては来ない。

 

貧民街には貧民街の流儀があるらしかった。

 

やがて。

 

目的の建物が見えてきた。

 

「……あれか」

 

スバルが足を止める。

 

古びた倉庫のような建物だった。

 

壁はひび割れている。

 

窓は少ない。

 

手入れもされていない。

 

近付けば近付くほど怪しさが増していく。

 

「盗品蔵ね」

 

エミリアが呟く。

 

「想像以上だわ」

 

「もっとこう……」

 

スバルが建物を見上げる。

 

「秘密基地みたいなの想像してた」

 

「十分怪しいと思うけど」

 

ソウゴが言う。

 

「それはそう」

 

スバルも納得した。

 

パックは建物の周囲をふわりと飛ぶ。

 

「人の気配はあるね」

 

「結界とかは?」

 

エミリアが尋ねる。

 

「無いよ」

 

パックは首を振った。

 

「でも歓迎はされてなさそうだ」

 

それは何となく分かった。

 

建物そのものが侵入者を拒んでいるように見える。

 

ソウゴは建物を見上げた。

 

カチリ。

 

胸の奥で時計が鳴る。

 

まただ。

 

最近よく聞く音。

 

景色が一瞬だけ揺れる。

 

建物の中。

 

大柄な老人。

 

金髪の少女。

 

そして。

 

赤い何か。

 

次の瞬間には消えた。

 

「……」

 

良い光景ではない。

 

それだけは分かる。

 

「ソウゴ?」

 

エミリアが振り返る。

 

「大丈夫?」

 

「うん」

 

説明はできない。

 

だから黙っていた。

 

今はまだ。

 

「じゃあ行くぞ」

 

スバルが扉の前へ立つ。

 

そして。

 

コンコン。

 

軽く叩いた。

 

返事はない。

 

「留守か?」

 

「でも気配はあるよ」

 

パックが言う。

 

「じゃあ聞こえてないだけか」

 

スバルはもう一度叩いた。

 

コンコンコン。

 

その瞬間だった。

 

建物の奥から怒鳴り声が響く。

 

「やっかましいわぁ!!」

 

スバルが飛び上がった。

 

「うおっ!?」

 

パックまで尻尾を膨らませている。

 

声はさらに続く。

 

「合図も合言葉も知らんで、扉をぶっ壊す気か!!」

 

沈黙。

 

三人と一匹が顔を見合わせる。

 

「合言葉?」

 

エミリアが呟く。

 

「聞いてないわ」

 

「俺も知らねぇ」

 

スバルが即答した。

 

パックも肩を竦める。

 

「ボクも知らないね」

 

全員知らなかった。

 

ソウゴも少し考える。

 

当然だ。

 

そもそもこの世界に来てまだ一日も経っていない。

 

「どうする?」

 

スバルが聞く。

 

「正直に話すしかないんじゃない?」

 

パックが言う。

 

「盗品蔵に正直が通じると思うか?」

 

「思わない」

 

即答だった。

 

エミリアは困ったように眉を下げる。

 

「どうしましょう……」

 

扉の向こうは静かだった。

 

どうやら相手もこちらの出方を待っているらしい。

 

「帰る?」

 

ソウゴが聞く。

 

「帰れねぇだろ!」

 

スバルが全力でツッコむ。

 

「ここまで来たんだぞ!?」

 

「そうだね」

 

「納得すんな!」

 

どうやら選択肢には無いらしい。

 

その時だった。

 

カツン。

 

小さな足音。

 

全員が振り返る。

 

路地の向こう。

 

夕日に照らされた細い道。

 

誰かがこちらへ歩いて来る。

 

小柄な影だった。

 

軽い足取り。

 

慣れた様子で路地を進んでくる。

 

カツン。

 

カツン。

 

胸の奥で時計が鳴る。

 

カチリ。

 

今までで一番大きく。

 

ソウゴはその人影を見つめた。

 

見覚えがある。

 

屋根の上で見た。

 

断片的な光景の中で見た。

 

そんな気がした。

 

夕暮れの風が吹き抜ける。

 

そして。

 

人影がゆっくりとこちらへ近付いてきた。

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