私がその気持ちをはっきりと自覚したのは、
物心ついた時には既に持っていた。但し、それは所謂家族愛というものだろう。お兄ちゃんは、それはもう目いっぱいに私のことを可愛がってくれた。沢山遊び相手になってくれて、私が虐められていると気づいた時には烈火の如く怒って加害者へ殴り込みにいった。結果、ボロボロになって帰ってきたのだけど。けでも、そんな所も含めてお兄ちゃんは私の自慢であり、憧れであり、ボロボロの姿を見て、護ってあげたいという気持ちも芽生えた。
一方、お兄ちゃんの憧れはもう一人の兄に向けられていた。兄の語る武勇伝を、お兄ちゃんはいつも目を輝かせて聞いていた。私は武勇伝には然程興味は無かったが、目を輝かせるお兄ちゃんの姿を見ているのが好きだった。
私のお兄ちゃんへの気持ちは、歳を経るにつれて大きなものへとなっていった。お兄ちゃんが家の中でも、私にまで苦痛が及ばないよう護ってくれていたのも一員だ。あの
私の目はいつもお兄ちゃんを追ってしまう。いつもお兄ちゃんのことを考えてしまう。そして、考える度に胸が締め付けられる感覚と下腹部に疼きを感じる。お兄ちゃんを独り占めしたくなる。私だけを見て欲しくなる。けれど、まだ幼かった私は、それは悪いことだと決めつけて無理やりに押さえつける。
小学四年生に上がった時、初潮を迎えた。それが何であるのか、もちろん知っていた。そして同時に、私の中に
──私の、私のための、異能。
「あはっ!」
それを理解すると同時に、私の口から出たのは歓喜の声だった。全身に、力が
きっと、それはまだ未熟な精神には分不相応なものだった。それが私を歪ませた一因であることは間違いない。
「あははっ……! あはははっ……!!」
くるくると、回る。
歓喜に溺れて。
力に酔いしれて。
「おにいちゃん! おにいちゃん!」
その頃には、家族愛は異性に向ける恋慕へと姿を変えていた。
それが一般的な感覚でないことは分かっていても、人と違うことが何故おかしいのか理解出来なかった。私は私、それ以外に何があるというのか。
私の願いは、たった二つ。
──お兄ちゃんを護りたい。
ボロボロになってまで私を護ってくれたお兄ちゃんを今度は私が守るのだ。あらゆるモノから。
──お兄ちゃんと二人きりでいたい。
単なる独占欲。愛する人を独占したいという気持ちは誰にだってあるものでしょう?
たった二つ、ほんの
まず、家族。祖父母共に健在だ。私とお兄ちゃん以外に邪魔なモノが五つもある。家族とは、切っても切れないもの。何処までもついて回るもの。断ち切らなければ、いつまでも二人きりの世界なんて作れはしない。
あの日、食卓には家族全員が揃っていた。よく『協会』とやらに出掛ける祖父も、
私は、お兄ちゃんに問いかける。
「おにいちゃんは、わたしのこと、すき?」
私の問いかけに、嬉しい言葉が返ってきた。
「だいすき?」
お兄ちゃんは、すきだと、だいすきだと、そう答えた。両想いだ。下腹部が疼いて、下着を濡らす。
私は本能のままに、何の罪悪感を抱くことも無く、邪魔な全員を殺した。力の使い方を理解した私には造作もないことだった。
最初に殺したのは当然、祖父だった。後から優しい顔をして孫を慈しむようになったとしても、お兄ちゃんに苦痛を与えた事実は変わらない。許せない。だから、万一に備えての保険だったのであろうものも消し飛ばしてやった。
そして、私の家族はお兄ちゃんただ一人だけになった。
けれど、まだ、邪魔な存在がいた。
お兄ちゃんの平穏な暮らしに必要のないモノ。
「ほぉ? その幼い身で、この
不可視の刃で、首を切り飛ばした。
確実に殺すのであれば、頭部を切り離すのが最も有効な手段。
何故、どいつも余計なことを喋りたがるのだろうか? そんな暇があるならさっさと襲いかかって来ればいいものを。
「も、もしやその首、
誰だか知らないが、この
だから、殺した。不可視の刃で首を切り落とす簡単な作業。そして、その場にいたほぼ全員を殺し尽くした。
多少なりとも抵抗はあれ、私の攻撃を防ぐものは、防御を貫くものは、誰一人としていなかった。
「もう、お兄ちゃんを害するモノは無いよ!」
自宅の扉を開き、自室のベッドで蹲るお兄ちゃんに報告してぎゅっと抱きしめる。欲を言えば頭を撫でて欲しかったが、それは仕方ないだろう。
お兄ちゃんは、あの日から
そして、数年後にあの日が来た。
私が朝食の準備をしていると、背後からバットで殴りかかってきたのだ。当然それを受け止めて、危ないものはくしゃくしゃにしてしまう。
虚ろだったお兄ちゃんの目は、はっきりと私を映していた。その目には、私への憎悪と怒りと──兎に角、あらゆる負の感情が込められている。
「殺す、殺してやる」
そして、はっきりと私に向けて言葉を発した。
──嗚呼、お兄ちゃんが私を視てる。
好きの反対は無関心と聞いたことがある。お兄ちゃんは違う。私に憎悪を抱いている。私に殺意を抱いている。即ち、私に
その目は、私だけを映してくれている。
その頭は、私だけのことを考えてくれている。
絶頂を迎えそうなほどの喜びだった。実際、溢れたものは下着を濡らすだけに留まらず太腿まで流れていた。
「おはよう、お兄ちゃん!」
それは、それまでの人生の中で最も幸福に満ちた瞬間だった。
▽
「うぅ……」
またあの日の光景でも見ているのか、
「ぐっ……」
苦しそうな声が漏れ、直ぐに其れを引っ込ませた。無防備な姿。そんなつもりは毛頭ないが、いつだって私はお兄ちゃんを殺すことが出来る。生殺与奪は、私が握っている。お兄ちゃんは、私の手の平の上で生きている。それが、堪らなく愛おしくて──興奮した。
「あ、んっ……」
お兄ちゃんの手を取って、既に濡れて溢れている其処へとその指を当てる。指で秘裂を往復させ、お兄ちゃんの中指を第一関節まで開口部へと挿入した。そのまま、前後に動かす。
「あっ……ああっ……」
静かな室内に、粘着質な音が響いた。奥からとめどなく溢れる体液で、お兄ちゃんの手はべとべとに濡れていた。程なくして、達する。頭の中が真っ白になるほどの快楽に身を震わせる。
最早、日課と化している秘め事。憎き存在に道具代わりに使われていると知ったらどんな反応を見せてくれるだろうか。
ぞくり、と背中を電流が走り、再び溢れ始めた。欲望が鎌首をもたげる。もう一度しなければ満足しなさそうだ。
「くふっ……うふふっ……」
だいすき、おにいちゃん。