ウマ娘プリティーダービー -LEGEND OF TRIZEL-   作:カズノリ

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LEGEND No.1 伝説のウマ

『きたぁぁぁ!! きたきたきたきたきたぁぁぁ!!

一番後方!9番、ハリボテエレジー!!

内側から一人、二人と一気にごぼう抜きぃぃ!!』

 

とある日本の地方にある非公式レース。

現役を終えたウマ娘達に混ざる小さな子供。

全員がお面や被り物をしているために表情はうかがえないが、抜かれるたびに漏れる言葉が表情の代わりとしては十分だった。

 

だが、それでも現役時代でのプライドが「諦める」と言う言葉は頭から追い出した。

いや、追い出さなければならない!

こんな小娘に! 負けてたまるかぁ!と

さらに根性で足を速める。

 

しかし、それでも––

 

『9番、ハリボテエレジー!

ごぼう抜きから一気に先頭争いに突入しました!

勝つのは3番、ハリボテウッマウマか!

それとも! 小さな子供チャレンジャー! 9番、ハリボテエレジーかぁ!!』

 

追いつけない、それどころか既に先頭争いまで前にいる様子。

それでも、足をとめるということはしない、現役時代に戦ったライバル達に、敗者に、勝者に対して背を向けるような、裏切るような事は、出来ない。

抜かれたウマ娘達はうねり声を上げ、さらに足に力を込める。

 

『さぁ! この非公式レースでの最後の直線だぁぁ!これまでカーブを内側で走る事で一気にごぼう抜きをしたハリボテエレジー、この直線が最後の戦いだぁぁ!!

体格差が圧倒的に不利な状況、前の3番ハリボテウッマウマとは3バ身差まで迫る!

差し切るか!?差し切るのか!!?』

 

3番 ハリボテウッマウマは驚きを隠せない。非公式レースは公式レースと違い、試験にさえクリアー出来れば年齢、現役や国等全く関係の無いある意味では真の実力を持つ者が勝利するレースだ。

プライバシーの関係、恨みや妬みの回避する為にこの非公式レースは「ハリボテ〇〇」と名前を自分でつけるルールだ。

自分自身も「ハリボテウッマウマ」なんてふざけた名前をつけているし、1番は「ハリボテーンブレイク」と意味が分からない。

だから、この小さな子供も試験をくぐり抜けたとはいえ、体格差とは足の長さ。それはそのまま速さに直結する。

 

しかし、この子供はそんなことは関係ないと言わんばかりにクラシック三冠称号を獲得したウマ娘である自分とタメを張るほど実力を持っているのだ。

 

どうやってここまで来たかは分からない。それに9番と言うのは9と書かれたゼッケンで分かる。

9番ということは一番不利のハズ。

もし、自分が9番なら勝てるか?と、考えれば難しいと答えるだろう。

 

だが、それもここまでだ。

ここまで来た子供とはいえ、後は直線のみ。

ならば、小手技なんて意味がない!

勝つのは、この私だっ!!

 

 

「ハリボテウッマウマ」は直線に入った瞬間、己の力を込めて一気に抜かせずにゴールしようとした。

しかし、遅かった。悔しさから、考え事をしてしまったのが一番の油断。

背が小さいというのは現役時代にもいた。

しかし、それは中央トレセン学園の優秀なトレーナーによって鍛えられた同世代だ。

だが、今日の相手は完全に子供だ。

トレーナーに鍛えられた。と言うには荒々しい。

 

そう、子供というだけで、「ハリボテウッマウマ」は油断してしまったのだ。

直線に入れば勝てる等という思い込みが彼女から勝利を奪ってしまった。

 

 

『差し切ったぁぁぁぁ!!

9番 ハリボテエレジー!!

3番 ハリボテウッマウマとの接戦に差し切る!!

ハリボテウッマウマ、追いつこうとスピードを上げるも既に遅し!!

ゴォォォル!! 一着 9番ハリボテエレジー! 二着 ハリボテウッマウマ!

三着 ハリボテバンチョウ!』

 

ゴールを越え、スピードを落としていくと、ハリボテウッマウマは芝の上に倒れた。

お面を被っていて良かったと思った。

声さえ我慢すれば涙を見られる事なんて無いから。

いくら現役を終えたからとはいえ、油断、傲慢、希望的予測。

そんなのは担当トレーナーとレースで戦ってきたライバル達に申し訳がなかった。

遊び程度で非公式レースに出たとはいえ、

いや、「三冠ウマ娘」である私が負けるなんてあり得ない。このレースでの実力を、確かめてやろうと思ってこのザマ。

 

この日、ハリボテウッマウマは中央トレセン学園にいるトレーナーに会いに行く事を決めた。

恥ずかしい、だなんて思っていられない。

サポートウマ娘制度を使えば、中央トレセン学園にいられるし、現役ウマ娘と練習とはいえ走る事もできる。

 

負けられない。

 

お面のせいで涙がふけないが、ハリボテウッマウマは立ち上がり、ハリボテエレジーの元へ向かう。

 

「あん? んだよ」

 

口が悪い。

クスっと、笑う。

 

「悔しいけど、負けたわ。貴方、強いのね」

「はん、最後に油断したやつに言われたかぁねぇな」

 

驚いた。

まさか、私が油断したことに気がついているなんて。

けど、嬉しく思う。

この日、また一人。最高のライバルが増えたことに。新たな強者が現れたことに。

 

「あら、私が油断したなんて、よく、わかったわね?」

「んなもん、レースしてりゃわかるだろ。

ま、次は例え油断して無くてもアタイが勝つがな」

「ふふふ、良いわね。けど今回は私の負けよ。けど、次からは気をつけなさい。私だけでなく、このレースを走った皆が貴方の事を「子供」なんて思わない、油断なんかしないからね」

「はん、上等。次もアタイが勝ってやらぁ」

 

ハリボテウッマウマは活きの良いハリボテエレジーに笑みを浮かべる。

お面で見えないだろうが、それはハリボテエレジーも同じだ。

まぁ、ハリボテエレジーは段ボール箱に目と耳用の穴を空けた被り物をしているが。

ハリボテウッマウマはハリボテエレジーの耳元に口を近づける。

 

「私は「アグネスアヌビス」覚えておきなさい。次は負けないからね」

「あん?さっきも言ったろ?次もこのアタイ、「リンクノエポナ」が勝つってな」

「ふふふ、ま、次のレースが楽しみね」

「ふん、悪いが次回のレースは、でねぇぞ」

 

その言葉にアグネスアヌビスや他のウマ娘達から殺気が溢れ出した。

勝ち逃げ等許さない、自分の誇り、プライドが今回の無様なレースの名誉挽回の為にも。

周りからの殺気を気持ちよさそうにしながらも、申し訳なさそうにしていたので、

なんとなく事情があると察したウマ娘達は殺気を抑えた。

 

「わりぃな。

探し者があってな。レースには賞金目当てなんだ」

「そう、それは仕方ないわね。

貴方、携帯電話は持ってるかしら?」

「持ってるが?」

「電話番号、交換しましょ?」

「・・・まぁ、いいか」

「あ!ちょっとちょっと!ずるいずるい!私も私もー!」

 

アグネスアヌビスとリンクノエポナが電話番号を交換すると周りのウマ娘達とも電話番号を交換して、ウイニングライブをする。

この時、周りが大人の中で、子供が中央で踊る様子は頭に被り物をしているとはいえ、微笑ましかった。

 

こうして。

ウマ娘の子供である「リンクノエポナ」が、これから何をするのか、何を求めているのか。

それは、見ているあなたたちしか、わからない。

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