ウマ娘プリティーダービー -LEGEND OF TRIZEL-   作:カズノリ

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LEGEND No.4 マイ・ルーティン

「よぉ」

「お! 今日も来たか!」

「まぁ、ただ昼メシを買いに来ただけだ」

 

いつもの様に探し者をしているリンクノエポナには一つのルーティンがあった。

それこそが弁当の購入である。

ただの弁当の購入ではなく、商店街にある「弁当屋 田中」のこだわり弁当が目当てで、土日祝は探しに行く前に、必ずこの弁当屋で昼食用の弁当を買っている。

そして、店のショーケース越しに同級生が今日も店番をしているのが見えた。

日本人らしいスポーツ刈りの黒髪をした元気ハツラツ!スポーツ大好きッ!

ベンキョーなんて大キライだぜ!とやんちゃな雰囲気を醸し出す少年とは同じ学校の生徒であり、リンクノエポナのクラスから一つ横のクラスに在籍しており、この弁当屋の息子であり、将来の夢は「弁当屋を継ぐこと!」。先日の授業参観で堂々とそう宣言し、父親を泣かせた親孝行息子――田中 正太郎である。

 

「まぁ、いいや! で?今日の弁当は何にする?」

「んー、「ウマ幕の内弁当」で」

「あいよ!」

 

リンクノエポナに今日は何を買うのか尋ねると、即効で返答が来たことに嬉しそうにしながら、「ウマ幕の内弁当」を袋に入れ始める。

 

さて、この弁当屋は他にはないこだわりが一つあった、それが「ウマ」シリーズだ。

ウマシリーズとは、ウマ娘用に食材から栄養バランスなどを考えて料理されており、弁当1個で五百円という価格とその美味しさから、「美味!(うま)」と言わせることから「ウマシリーズ」と呼ばれている。

リンクノエポナはこの「ウマシリーズ」が少々好きであり、何もない時は必ず買いに来るほどだ。

(土日祝は母親に弁当は要らないと言って断っている事は、この弁当屋には内緒である)

 

「ん、あんがと」

「いや。気にすんな!あ、そだ!なあー、エポナ」

「んー?あんだよ」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

珍しく、正太郎のほうから声をかけてきた事にリンクノエポナは少しだけ驚く。

しかし驚いているリンクノエポナの事を気にせず、正太郎はニコニコと笑みを浮かべながらショーケース越しに話しを続ける。

 

「また来週もさ、探し物を探しに行くんだろ?」

「・・・あぁ」

「ならさ!また来週、うちで弁当を買ってくれね?」

「はぁ? なんで、アタイがそんな事しないといけねぇんだよ」

 

・・・さて、先程も言ったようにリンクノエポナは土日祝はこの弁当屋で必ず弁当を買っていくルーティンがある。

つまりは正太郎が別に言っても言わなくても来週の土曜日は買いに来ることは確定である。

 

「いや〜実はさ! 親父に「ウマ幕の内弁当」のおかずを任せてもらえることになったんだ!だからさ!俺が作った弁当をエポナに食べてもらいてぇと思ったわけよ!」

「んなっ!」

 

そんな子供特有の無邪気な笑顔に何故かダメージを負うリンクノエポナ。

そんなダメージを受けているリンクノエポナの様子なんて気にもせずにキラキラとした瞳で見つめる田中 正太郎君(ななさい)は父親から幕の内弁当のおかず(1種類だけ)を任せてもらえる事に対して、やる気十分。

取り敢えず誰かに食べて欲しいと考えていた為、今まさに目の前に現れたリンクノエポナは格好の餌(味見相手)である。

 

「なぁー、頼むよ〜!」

「・・・」

「やっぱさ!感想とか聞きたいじゃん?

エポナなら、よくうちの弁当を買ってくれるし、隣のクラスだから感想とかもすぐ聞けるじゃん!だからさ!なぁー、頼むよ〜!」

 

まるでゲームの「はい」を選ばないと次に進まない会話イベントの様に少々、いやかなり絡んでくる正太郎に対し、リンクノエポナはため息を一つ吐く。

 

「はぁ

買うのは良いし、感想とかも良いけど。

学校で言うのは嫌」

「おっけー!なら来週待ってるからな!

絶対な!」

 

探し者を探す前に、なんだか疲れちまったなと考えながら財布から五百円硬貨を取り出し、正太郎へ手渡し、正太郎から幕の内弁当を受け取ったリンクノエポナであった。

 

ちなみに正太郎が作ったおかずは「きんぴらごぼう(味付けだけ)」であり、その事をリンクノエポナは全く知らない、弁当のおかずを全て正太郎が作ったと思い込んでいる。

 

 

いやいや!普通に考えてみろ、リンクノエポナ!流石に7歳の子供が1種類何十個、下手をしたら何百個と作る弁当作りという重労働をさせるわけないだろ!

しかも、開店に合わせる為に朝も早起きしないといけないのだ!

世の中のお父さん、お母さんに弁当を作ってもらっている諸君。作ってくれた人に感謝を必ずしなさい!

 

また正太郎は正太郎でおかずを一品だけ作った事を言ったつもりになっている為、お互いの勘違いは解ける様子は無い。

 

 

いつもより疲れてしまったリンクノエポナだが、だからといって探し者をしない、なんてことは無い。

今日も今日とて、電車に乗り前回とは別の街へ向かう。

ウマ娘とはいえ、流石に幼い彼女は他の乗客から不思議そうな目で見られる為、目立って仕方がない。

仕方がないとはいえ、多少イライラと苛立ち度が溜まっていくのがわかる。

 

しかし、流石のリンクノエポナもこういう時の対処法は既に会得しているのだ!

 

「あぁ、いい景色だなぁ~」

 

外を見ながら黄昏る!

これが周りの視線を気にしない方法としては一番効果的である。(リンクノエポナにとって)

 

電車の中で綺麗な景色を見ながら食べる弁当はとても美味い。

しかも、贔屓にしている・・・つもりはないが、弁当専門店の弁当はやはり美味しい。

すると、不意に先程の会話を思い出した。

 

『また来週もさ、探し物を探しに行くんだろ?』

『・・・あぁ』

『ならさ!また来週、うちで弁当を買ってくれね?』

『はぁ? なんで、アタイがそんな事しないといけねぇんだよ』

『なぁー、頼むよ〜!』

『・・・』

『やっぱさ!感想とか聞きたいじゃん?

エポナなら、よくうちの弁当を買ってくれるし、隣のクラスだから感想とかもすぐ聞けるじゃん!だからさ!なぁー、頼むよ〜!』

『はぁ

買うのは良いし、感想とかも良いけど。

学校で言うのは嫌』

『おっけー!なら来週待ってるからな!

絶対な!』

 

リンクノエポナはふむ、と頷く。

仕方がないから、来週はあの弁当屋へ行ってやるか。

別に正太郎の弁当を楽しみにしている訳じゃない。そう心の中で自分に言い聞かせる。

だって––

 

「約束、しちまったからな。仕方がねぇよな」

 

うむ、仕方がない。

約束を守らないのはいけないことだ。

アイツも別に聞かなくてもいい頼み事をいつも解決してきた。

なら、相棒であるアタイが約束を守らないでどうするってんだ。

 

その様に自分自身の心を納得させて、来週のことを少しだけ楽しみにしながら、リンクノエポナは「ウマ幕の内弁当」を口へ運ぶのであった

 

 

【挿絵表示】

 

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