ウマ娘プリティーダービー -LEGEND OF TRIZEL- 作:カズノリ
『皆さん、お待たせしました! 本日も熱気に包まれた非公式レース会場から、生中継でお届けします!
実況は私、柏木 一馬です』
『解説の片山 キナコです、今日もよろしくお願いします!』
非公式レースの会場に放送席から実況と解説の声が響き渡る。
これは非公式レースだからこそできるのだろう。
また平日は豆腐屋を経営している実況者や、元トレーナーにして現在はウマ娘塾の塾長が解説者をしている事からも特殊なのがよく分かる。
『今回は芝1200メートル。わずか1分少々で決着するスプリント戦です。
しかも今回の非公式レースには常連組に加え、日本初参戦となる海外勢も参戦。見どころ満載ですね。』
『そうですね。短距離はスタートからゴールまで息をつく暇がありません。さらに今日は、非公式の王者でもあるハリボテエレジー包囲網がどう機能するかも注目です。』
『ハリボテエレジー倒し隊からは、総隊長であるハリボテアヌビスを始めとした実に4名も出走しています』
ちなみにハリボテエレジー倒し隊という名前ではあるものの、別に隊を作っているわけではない。
あるのは「ハリボテエレジーを倒す」という心(つまり、エレジーより上の順位に立ち、見下してやりたいという者達の集まりとも言える)があれば誰でも「ハリボテエレジー倒し隊」の一員である。
ただし、給料は出ませんので、あしからず。
『これだけ揃うのは珍しいですね。一対一を好む倒し隊とは言っても全員が同じ戦法ではありません。それぞれ走り方がありますからね。どういったレースになるのか楽しみですね』
『それでは、本日の出走ウマ娘をご紹介していきましょう!』
実況と解説が言い終わると、パドックからウマ娘達が出始める。
誰もが堂々と前を歩く、が、誰もが顔にお面やら、マスクやら、はたまた段ボール箱に穴を空けた程度のものを被っているのは非公式レース特有だろう。
まず、はじめに出てきたのはアメリカの国旗風のマントを身に着けたスーパーウーマン風の勝負服を身に着けたスタイルの良い金髪のウマ娘。ちなみにマスクは蜘蛛男風。
『まずは1番、4番人気!
ハリボテアメリカンヌ!
アメリカからやって来た実力者! 本場アメリカの非公式レースでは短距離戦を何度も制してきましたが、日本の非公式レースは今回が初挑戦!』
『能力は十分でしょう。ただ、日本独特のレース運びや駆け引きに対応できるかがポイントになります』
次に出てきたのは白と金色のエレガントなドレス風の勝負服を身に纏う金髪のウマ娘。
歩き方にも気品が漂う。
しかし、なぜ、被り物が〇〇肉マンのロビン〇〇〇なのだろうか?
『2番は6番人気!
ハリボテレッツゴー ワン!
どこか見覚えのある勝負服を着込んだ、名門を思わせる気品のある美しいフォーム!
『ハリボテエレジー倒し隊・エレガント隊』隊長です!』
『走りそのものも完成度が高いですね。人気以上に怖い存在ですよね』
3番目に現れたのは茶髪の小さめなウマ娘(33歳)。そして身に纏うのは小学生の運動着。(ゼッケンには「くらしあ」とひらがなで流れている)
顔には祭りの屋台にあるキャラもののお面をかぶっている。
・・・そんな服装だから子供と間違えられるのでは?
『続いて3番、7番人気!
ハリボテクラシア!
3回目の挑戦です!
これまでは独特のルールに泣かされ、実力を出し切れませんでした!』
『過去3回共に進路妨害による敗北でしたからね。経験を積み、ルールへの対応力が上がっていれば、一発があるかもしれません。』
次に、4番目が現れた瞬間––
会場中が自身の体重が重くなった気がした。
黒色を主体とした勝負服とそのお面も合わさったその姿はまるでエジプト神話に出てくる神を思わせるかのようであった。
『皆さんも感じますか!?威圧感と共に現れたのは4番、2番人気!ハリボテアヌビス!
初出走時は『ハリボテウッマウマ』の名で参戦!長距離戦でハリボテエレジーに敗れ、それ以来、最大のライバルとして立ちはだかります!
そして現在は『ハリボテエレジー倒し隊』総隊長!』
『今日は短距離戦ですが、総合力は非常に高い一頭です』
威圧感に負けたのか、恐る恐る現れたのはいろんな所がメロン級で今レース一番の恐ろしいスタイルの持ち主である金髪のウマ娘。
まるで罰ゲームを受けたのか、と思わせる勝負服(水着)をしていた。
ちなみにお面は爆弾男の白色。
『恐る恐る出てきたのは5番、8番人気、ハリボテダイナマイト!
今回が2回目の挑戦!
鋭い末脚はメンバー随一!
ただ、最後に体力が尽きて差し返されるレースが続いています。』
『1200メートルならスタミナ面の不安は多少軽減されます。展開次第ですね。』
次に出てきた?いや、走ってきたのは、赤色をメインにしたレーサーを思わせる勝負服。
まるで24時間走れます!と言わんばかりだ。
顔にはレーサーのヘルメットをかぶっていた。
『6番、3番人気!ハリボテレッツゴー ツー!
短距離レコードホルダーを思わせる勝負服!名前もどこか聞き覚えがあります!
ハリボテエレジー倒し隊・爆速隊隊長です!』
『スタートから飛ばしてくるでしょう。短距離適性はかなり高そうです。
かの名家のように爆速な走りを見せてくれるでしょう』
次に、現れたのは緑色のジャージを身に纏い、段ボール箱に穴を開けたものを被ったウマ娘。
このウマ娘が現れた瞬間––「ハリボテエレジー倒し隊」の面々から威圧感という名の重力が襲いかかるもハリボテエレジーは平然としていた。
『そして登場しました!1番人気!7番、ハリボテエレジー!
非公式レース界の絶対王者!
短距離・マイル・中距離・長距離、芝・ダートを問わず出走し、これまで一度たりとも3着以下になったことがありません!
しかも初出走時はまだ子どもだったため、最年少でありながら現在では最古参とも言える存在です!』
『誰もが倒したい相手ですね。今日も各馬の標的になるでしょう。』
最後に出てきたのは、先ほどの威圧感を受けてしまった白髪のウマ娘。
恐る恐ると出てきたためせっかくの宇宙を守る巨人のスーツと何故かバイクのヒーローの仮面がすこし台無しだ。
『8番、9番人気、ハリボテウルトラ!
今回がデビュー戦!
実力はまったく未知数!
人気は9番人気ですが、不気味な存在です!』
『データがありません。こういうタイプは読めないんですよ。しかし、可哀想なことに「ハリボテエレジー倒し隊」からの威圧感による被害を受けてますねー』
最後に出てきたのは学ランを身にまとっていたウマ娘。しかも、前は開けており、そこからさらしが見えていたが、かなり堂々としていた。
顔にはハリボテエレジーを意識しているのか段ボール箱に穴を空けたものを被っていた。
『最後は9番、5番人気ハリボテバンチョウ!ハリボテエレジー倒し隊・特攻隊隊長!マイル・中距離を得意とするベテラン!非公式レース経験はハリボテエレジーに次ぐ豊富さを誇ります!』
『経験値はかなり高いですね。短距離でも展開を読む力は侮れません』
全員が集まると、次々に己のゲートへ向かい、中へ入っていく。
ここから始まるのは、まさに電光石火のような一瞬で終わるレース。
しかも公式レースとは違い、妨害等の禁止行為すら出来る危険極まりないレースだ。
『全てのウマ娘達がゲートイン完了致しました!
静寂に包まれるスタンド、これから始まるのは、電光石火のような一瞬たりともよそ見が出来ない芝1200メートル――まもなくスタートです!』
ガッコンッ!!
今、ゲートが開かれた。
ドドドという音を立てながら9人のウマ娘達は殺気を入り混ぜながら走り出す。
『さぁ!スタートしました!!
抜群のスタートを決めたのは5番!
その外から6番!
2人のウマ娘達が一気に飛び出していく!』
『やはり予想通りですね。5番、6番ともに自慢のスピードで主導権を奪いにいきました』
「爆速!バクソク!バクソーク!!」
「ふふふ、流石ね!バクソクちゃん!」
「ははは!これこそがワタシですからね!」
「ちょっと!ボクの事も忘れないでよ!」
「あら?シアンちゃんも来たのね、けど、負けないわよ!」
ハリボテレッツゴー ツーとハリボテダイナマイトが走りながら殺意の語り合いをしていると内側から、小さな子供(33歳のウマ娘)が飛び込んできた。
ハリボテクラシアである。
『おっと!ここで3番が内側から攻めてきたぁ!!5番、6番、その内から3番も並んだぞ!』
『3番はあの身長ゆえに内側を攻めてくるスタイルですからね、妨害される事が多いですが今回は行けるのではないですか?』
『向こう正面、先頭は1バ身開いて5番、外から6番!内側からは3番とウマ娘3人が並びました!後方から見ればまさに壁!
他のウマ娘達は前に出ることが出来るのか!?
この3人が後続を2バ身ほど引き離す!
しかし3番手には1番がピタリと着いています!その後ろに4番!一番人気の7番は中団にいるぞ!9番もその真後ろですが、これは様子を見ているのか!?』
『7番、9番は慌ててませんね。いつもの位置取りです』
今回、日本への初出走をするハリボテアメリカンヌは予想とは違う展開に悔しそうに顔を歪める。
本来、いや、計画では既に前に出ており、そこからスパートをかけている所だ。
しかし––
「(Damn it!(クソっ!)まさかジャパンレースがここまで野蛮なんて思ってもいなかったッ!)」
そう、彼女は前に出る瞬間にハリボテレッツゴー ツーとハリボテダイナマイトによって進路妨害を受けたのだ。
ならばと、内側から攻めようと思うも、既に遅かった。
ハリボテクラシアが内側から攻めてきたことによって3人のウマ娘による壁が出来たことにより、思うように動くことが出来なくなったのだ。
しかし、このまま負けるのは己のプライドが許さない。
かつて日本の中央トレセン学園へ留学しに来た時に出会った生涯最高のトレーナーからの教えは己の身体に染み込んでいる。
そう––「レースの流れを一瞬で読み、爆発させるかのように力を込めよ」という教えは、これまでのレースで勝ち進んできた証である!
「(It's not over yet! Stay focused!)(まだ、終わってない!集中しろ!)」
教えの通りに、諦めず、集中し、レースを観察する。
必ず穴がある!ならば、そこを攻めるのみ!
故に見つけた。
第4コーナーを曲がる瞬間––
一筋の穴を見つけることが出来たのだ。
「(This is it!)(ここだ!)」
『さぁ!第4コーナーへ!
5番、6番、3番は壁を作ったまま、おっと!!ここで1番がハナを切った!!!流石、アメリカ仕込みのスピード!』
『これはいい脚ですね。初の日本でも十分通用しています』
一気に3人を抜いた。
その事実にハリボテアメリカンヌはニヤリと笑う、これで私の勝ちだと確信したからだ。
だが、レースの世界では一瞬の油断もしてはならない。
先ほどハリボテアメリカンヌが3人を抜いたように、後方には恐ろしいウマ娘達がいるのだから。
『残り200メートル!1番が先頭を保ったままゴールするのか!?3番、5番、6番はいずれも上がろうとする度に1番から妨害を受ける!まるで背中に目があるかのようだ!
しかし!ここで外と内側から2つの黒い影!!
1番人気の7番と4番が飛び込んできた!!9番も徐々に伸びてきた!!』
『さぁ、来ましたね! ベテラン3頭がここで一気に勝負へ出ました!』
「わりぃな、せっかく日本に来てもらったのに。」
「先生の教え子と、戦えるのは嬉しいですが、今回は私の勝ちですね」
「What?! Why?!(はぁ!?何で!?)」
「あん?勝つのはアタイに決まってんだろ!」
「いいえ?私ですが?」
「おらおらおら!!てめぇーら待ちやがれー!!」
ハリボテアメリカンヌは驚きに満ちていた。
残りの体力の事を考えても、ラストスパートしていれば勝ち同然だったのだ。
しかし、今、ハリボテエレジーとハリボテアヌビスがハリボテアメリカンヌの前を走っており、再び壁が出来ていたのだ。
そこに後ろからハリボテバンチョウに体当たりされ、ペースが少し落ちる。
『さぁ、残り100m!先頭は7番、4番、9番!この3人で、決まりか!?
1番は少しペースが落ちている!』
『1番はかなりキツイ状況ですね。3人のウマ娘による壁はなかなか崩せませんよ』
『7番が前に出たァ!しかし、4番との差がない!9番も喰らいつく!』
ここまで来てしまえば既に1位から3位までは決まったも同然だった。
前に出るハリボテエレジー、エレジーに復讐をするとばかりに力を発揮するハリボテアヌビスとハリボテバンチョウ。
ハリボテアメリカンヌは己の力を発揮するタイミングを逃したばかりに段々と後ろへ下がってしまい、8番のハリボテウルトラに追い越されてしまった。
『7番が僅か、ほんの僅かに前に出る!4番、9番も粘って、粘る!
おっと!8番が1番を抜いて、先頭争いに加わった!!』
『ここまできたら誰が勝つかわかりませんね、それに8番も先頭争いに入ってきましたね』
『しかし!既に遅かった!
勝つのは7番か!4番か!9番か!!』
「勝つのは私よ!」
「いやぁ!俺様だね!!」
「はん!勝つのは––
アタイだッ!」
『ゴール!!!
一見ではほぼ同着か!?』
『これは、写真判定ですね、見ただけではわかりません』
『そうですね、では写真判定をお願いします』
走り抜いた3人のウマ娘達が荒い息をしながら、掲示板を見つめる。
その後ろから、悔しそうにゴールまで走り抜いたウマ娘達が、やってくる。
『着順が確定しました!
1着 7番 ハリボテエレジー
2着 4番 ハリボテアヌビス ハナ差
3着 9番 ハリボテバンチョウ クビ差
4着は惜しくも8番ハリボテウルトラ!』
『惜しくも5着となった1番のハリボテアメリカンヌは、日本デビュー戦で見事な走りを見せつけました。ゴール寸前でベテラン勢に交わされましたが、とても良い走りでしたね』
「シャァァ!」
「「チッ!」」
雄叫びを上げるハリボテエレジーに対して、嫌味全開で舌打ちをするハリボテアヌビスとハリボテバンチョウ。
「ハリボテエレジー倒し隊」の名物シーンである。
ちなみにハリボテエレジーに勝った時は、逆の事をするので気にしてはならない。
そんな名物シーンをみながら、1番のハリボテアメリカンヌは両拳を強く握る。
こうして、また一人、「ハリボテエレジー倒し隊」に入隊するハリボテが増えた事は、まだ誰も知らない。
そして、このレースを観客席の最前列で観戦していた二人の女性達は驚きと恐ろしさが入り混じりながら、席を立つ。
そして、二人の女性達が向かう先は––
難産でした。
レース展開やエレジー、アヌビス以外のキャラを考えていたら時が過ぎていました。
少し休んでから、また書きます(気が乗ったら)