ウチ、ただの行商人やで? 〜異世界転移した関西弁女子はチートスキルに物申したい〜   作:霧島 高

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第3章 すてえたす! ……出てこーへんやん

「どうしたもんやろか」

 ウチは丸いでっかい器を前に悩んどった。

 別にそれがなんかっちゅーのは知ってるで。木桶や。さっきそこの井戸で水汲んだしな。めっちゃ冷えとる水をな。夏場やったらキンキンでうまそうやけどな。今は春っぽい季節や。ホンマに春かどうかはしらん。本日はそろそろお日様だいぶあこうなってカラスが鳴きそうな夕暮れどきやし寒なってきたで。

 それにしたってな、この桶の使い方がわからへん異世界転移者のなんとおおいことか、や。けどウチちゃんはちゃーんと知っとるで。5歳児ちゃうけどな。……ちゃうからな? あのおかっぱはよう似てるけどな。頭身もな! 座敷童? そのネタはもうやったで。もういっぺん謝っといてくれるか。5歳児のおかっぱちゃんにもな。

 んで、このお庭みたいなとこはいちおう薄い布みたいなんで仕切られて目隠しされとる。うっすいけどな。影がよう映るで。こっちからもあっちからもな。筒抜けやから気ぃつけたほうがええで。特に美少女がキレイキレイしてるのを覗くときはな、向こうからもばっちし見られてんで。

 で、さっきからウチが悩みながらじっくりつぶさに眺めてるんはこれや。

「消費期限だいぶ過ぎてもたな。明日買いに行かなあかん」

 ウチは三角形のモンを手で広げて眺めとる。三角おにぎりとちゃうで。うーん、今朝はもうちょっと白かったはずなんやけどな。なんや茶色く……、ちゃうで。……ちゃうで? ほんまいうとっけど、ただの泥やで? 乙女の尊厳の詰まっとるそれはちゃんと葉っぱで拭いて一緒に埋めてきたから問題ないで。ティッシュ持ってたはずやったんやけど、実は持ってくんの忘れとってハンカチもあらへんかったとか、正直に白状するけどそれはほんまや。よう考えたら今朝タンスから出した覚えがあらへんわ。

 しかしまあ、高いところから飛び降りんで正解やったな。

 こんな汚いもん履いたまんま、高いところからせーのでジャンプして事前情報なしにスカートひらりんこさせたら全国の変態紳士にお見苦しいもん見せてゲボ吐かせてまうところやった。あらかじめいまこれ教えてるウチに対して、感謝してくれてもええんやで。キラキラを自動で発生できるオプション機能とかないんやろか。

「とりあえず洗うか。ちょっとぐらいノーパンでも構わへんやろ。誰もわざわざ、こ汚いもん覗いて気絶なんてしたないやろし」

 汚れちまったパンティーを水でごしごしすんで。やっぱ落ちひんな。洗剤ないしな。さすがにどっかでそれらしきもん売ってるやろしスコップといっしょに買わなあかんな。あ、ちなみに今ウチはすっぽんぽんや。行水したとこやしな、少し乾かさんと服着るのはべたべたになって厳しいやろ。せかやら行水中のお色気シーンは割愛や。見たかったら金払わなあかんで。有料コンテンツや。金払いとうないんやったら、ウチがマッパでおパンツをゴシゴシしてるシーンで我慢しとき。当たり前やけど、みんなが期待しとるくノ一熟女のお風呂シーンはないで。

 このパンツは言うとくけどな、ただのパンツちゃうからな。かわいらしいちっちゃい水色リボンのついたショーツや。なんや文句あるんか。見えへんとこぐらいおしゃれしたってええやろ。誰に見せるわけでもあらへんしな。けど幼馴染のこうやんとこではパンイチでごろごろしとることもあったで。というか夏場はたいていいつもやで。あいつは幼児のチーチーパイ見て興奮したり恥ずかしがったり隠せって言ったりもせえへんからな。隣に座ってタオパイパイでブルルンな女の子のマンガ読んどったで。

「よし、パンツはこんなもんや。次はブラジャーやな」

 ブラジャーはどこやったかいなっと。

 あるぇ? ないやん。盗られてもうたかな。誰もあんなもん欲しがる思えへんのになんでや。

 あっ、思い出したで。ウチ、裸んなるとき、ブラ外した覚えないわ。そうや、ハンカチ持ってへんってことはブラすんの忘れてるってことやん。一緒の引き出しに入れてたから、ハンカチとブラジャーは同義語やん。

 まあええ。どうせブランブランするもんなんてあらへん。それにそのブラかてぴっちりぺったんなスポブラやしな。お色気大乱闘スマッシュなんちゃらには登場でけへんで。ゲームやとなんや物理的にありえへんぐらいブルンブルンするらしいけど、比較するもんのないウチにはようわからんわ。なあ、いま可哀想な目でウチをみてたやつは一生ウチよりでっかいぱいぱい見られへんようになる呪い掛けたるからな。つまりもう閲覧不可ってことや、残念やったな。見たかったら転生するしか方法ないで。ママんのパイパイ恥ずかしがりながら、それでも本能がうずくままに吸い直すんやな。美人ママとは限らへんで。美人やとしてもな、そのママはおまえんとこのパパのもんや。

「うっし、戻るか!」

 そんでウチはノーパンのまま部屋に戻ったで。流石にマッパやのうてシャツとスカートは着たけどな。驚きのあまりみなさんの心臓止まってもたら大変やからな。部屋は2階や。階段でスカート抑えたりなんぞせえへんかったで。そんなんしたらノーパンやってばらすようなもんやろ。恥ずかしいやん。堂々と見られたほうがマシや。見られた方は気づかへんから問題ないで。せやけどこれはウチだけに通じる話や。美少女は事情がちゃうやろからな。もしかしたら一緒かもしれんけど、試したかったら命がけやで。美少女のそれは覗き魔の命なんか屁でもないぐらい重いからな。

 ところで気になってるやろ、みんな。え、なんも気にならんって?

 ここがどこかや。宿屋やで。やどやや。や、ばっかりや。

 そんなもんわかってるやて? せやろ、ウチの状況描写はぴかいちやろ。パンツのことしか言うてへんけどな。ちゃう、その話やない。ウチは一文無しやったのにどうやって泊まったか気になるやろ。金借りたわけやないし大切なもん売ったわけちゃうで。まあもったいぶるような話やあらへん。ヴィンセントはん、つまりギルドマスターとこからそそくさと脱出してな、そのまんまふらっとギルドも出ていこうおもたんやけど、ちらりと掲示板覗いたったねん。そしたらな、字は読めへんかったんやけど、なんや見たことあるけばい毛玉の絵が見えたねん。ほんでな、あの受付のねーちゃんとこいって、ウチのもっとるタマタマをぶーらんしながら見せつけたんや。ほんなら1玉を15マゲカ、2玉が3組の合計6玉でなんと90マゲカと交換してもらえたんや。なんやねーちゃんは汚いもん見たんか知らんけど不審そうな顔しとったけどな。ほんま、タマタマをたまたまもっとってよかったわあ。おおきにな、たまたま。ちなみにさっきからたまたま言うまくってるんはわざとやからな。ほれ、股をすぼめて両手でガードしたくなるやろ。

 さて、お部屋についたで。汚いことあらへん、綺麗やで。ゴミは溜まってへん。あ、水と朝夕食事つきで20マゲカ、先払いや。もう払てあるで。行商人のおっちゃんが言う事正しかったわ。まあこの宿はあのおっちゃんに聞いたおすすめの宿やからな、当たり前や。

 さてパンツを干してっと。ベッドの端っこに引っ掛けといたらええやろ。さすがにこのままノーパンで食堂行って食事っちゅうわけにはいかんな。食べてるときにちょびっとでも漏れたら大変や。乾くまで何してよかなあ。とりあえずベッド寝転ぶためにもマッパになるか。服についとった泥はできるだけ落としたけど、夜はこの上で寝なあかんし、いま汚してまうのも嫌やしな。よしマッパ完了や。ごろろんすんで。

 なんてな、実はやることは決まってんで。お決まりのあれがあるやろ。あれやあれ。ベッドで裸になったらやるやつや。ふふん、うちはな、ちゃんとヴィンセントはんから聞いたんや。このかっちょいい腕輪の使い方をな。あっ? 何期待したんや? ちょっと向こういっといてくれるか? そういう変態紳士はお断りや。そうやない変態紳士は別にいてもええで。

 さて男の子はみんな大好きなあのセリフやで。寝転びながら右腕を天井に伸ばすで。真っ赤に燃えるぜ、ウチの右手がっ!

「すてえたす!」

 ……。

 あ、あれ? おかしいで。出るはずやのに出えへんやん。便秘しとるんかな。この伸ばした右腕の処置をどうしたらええんやろか。まさかヴィンセントはんに騙された? いやそんなわけはない。ウチのヴィンセントはんがそんなこというわけない。

 思い出せ、なんか、なんか思い出さな。困ったときのこうやん、なんやあらへんやろか。

 ……。

 肝心なときほど頼りにならへんな。ウチの記憶は。いつものことやけど。

 うーん、うーん。あかん、あんま気張るとなんか出てまう。すてえたす、すてえ~たす、すてえ~しょん、あでら~んす~……あっ!

 まさか、まさかや、英語赤点ギリギリどころか最下位常連チームに属してるウチは、こうやんに嫌な顔されながら熱烈指導をいつもしてもろてたやん。おかんが菓子折り持って頼みこんどったで。あっ、最下位と赤色に関係はあらへんで。これ言うとかんといくら不死チートあるからいうてもウチの命が危ういからな。縦縞チームにFA選手がこーへんようなってまうで。プロ野球詳しない人は置き去りになってもうてごめんやけど、そこらの居酒屋入って元気そうなおっちゃんに聞いたらええで。最近あんま見ぃひんようなった、なんとか女子のこととかな。弱小ぷるぷるモンスターみたいな名前のマスコットのこと聞いてくれてもええで。ああ、もうウチ終わったかもしれん。誰か赤ヘル軍団の監督に、もみじの形したまんじゅうプレゼントしてきてくれへんか。

 え、ええと。あかんちょっとピッチャービビってもーてるわ。体中の震えが止まらんで。

 よ、よしいくでえ。

 あー、あー、マイクのテスト中。本日は曇天雨あられ~。

「すていたす!」

 ……あかんか。もいっちょや。

「すてーたす!」

 これもあかん。3度目の正直いくで! あ、4回目やったわ。

「ステータス!!」

 ぴんぽんぱんぽーん。

 な、なんやこの、トラウマを刺激しそうな、デパートの案内放送が今から始まりまっせみたいなチャイムは。「水色の~ワンピースを着た~8歳ぐらいの~女の子が~お待ちです~」って幻聴が聞こえてくるで。毎年のように何回もすぐ近くで生音声聞いとったのに、放送される年齢がサザエさん時空んなったんかしらんけど途中から変わらへんなった地獄のトラウマや。中3なってまでそのままやったんは、ほんまへこんだで。ウチな、迷子センター常連のお得意さんなんやし、係の人もそろそろ覚えておいて欲しかったわ。しかも服までいつまでもおんなじもん着とったんがさらにトラウマや。

「うおっ。目が、目があ!」

 だ、誰や、ウチの眼に油性ペンでちっぱい女とか悪口書き込みしたやつは! ウチの眼はサインボールやないんやで!

 あかん、落ち着くんや。なんてことはないで。ちょっと予想と違ったからびっくりこいてもうただけや。

 ウチはな、てっきりぽっきりこの腕輪からなんぞカビた色した透明の薄い食パンみたいなんが飛び出すんやと思うとったんや。それやのに網膜を直接刺激して焼き入れしとるんや。どないしよ、これ消えへんかったら万年飛蚊症になったみたいで嫌やな。たぶん消えよるやろとは思うけど不安や。ああ、もし想像つかへんかったら戦闘力が電卓みたいに出てくる例のアレが目に貼り付いてるおもたらええで。

 あ、まってや。あれって数字がぎょうさん並んで表示しきれんかったらどうなるんやっけ。なんかボカンといきよるやんな。やばいで。もしそうなったらウチの目玉爆発して食事時の皆さんの食卓にそのまんま上がってまうで。ん? ありがたいけどウチのことは心配してくれんでええで。チートあるしな。あんま無駄遣いしたらアカンで。パッシブやから勝手に発動しよるけどな。

 よし、いらんこと考えてたらやっと落ち着いたで。慌てたときの対処法はこうするんが一番や。良い子のみんなは真似したらあかんで。悪い子はママにお尻ぺんぺんされるんやで。普通の子はそのまま何もせんでええで。

 もう予想ついてる思うけど、ウチの視界に小ちゃい文字がいっぱい並んどるで。これ拡大とかどうしたらええんやろ。眼球にお父さん指とお母さん指突っ込んで開いたり閉じたりしたらええんやろか。そんなんな、ウチぐらいしかでけへんやん。

 あ、なんや、これみてみたいな~って思たら拡大されたわ。便利やな。えらい前置きがなごうなったけど、反省はしてへんで。

 

 ――――

 NAME: MILYN RACE: HUMAN

 JOB: FIGHTER AGE: 15 EXP: 160

 HP: 7 MP: ∞

 STR: 1 INT: 25

 AGI: 18 LUK: 10

 MONEY: 70 MAGECA

 SPECIAL SKILL: IMMORTAL

 WEAPON SKILL: PIERCE(10)

 ――――

 

 うん、さっぱりや。はあ、さっぱり、さっぱり。誰か腰蓑つけた妖精連れてきてくれるか。なんかちゃうもん呼んだ気がするけど、まあええやろ。しかしこうやんもえらい古いマンガ持ってるなあ。初期の第1巻持っとるとかどこで手に入れてきたんやろ。作者の最初の頃の絵柄がようわかんで。

 しかし読めへんな。なんで英語なんやろな。ちゃんと日本語で書いといてほしかったな。まあ日本語で書いてたかて読めへんかったかもな。大阪語で頼むわ。

 わかるとこだけいくで。NAMEや。ナメてるんか? それぐらいわかるで。ネームやろ。発音はちゃうと思うけどな。こっちのは漫画家さんがよう使うやつやな。わかっとるで。発音間違えてるだけやで。ここにはおそらくウチの名前が書いとるで。

 なんとなウチの名前はみりん、おフルで言うたら阪上(はんじょう)みりんっていうんや。発音難しいで。「み」にアクセントや。ほんまはな。でも関西人には難しいで。どうしても調味料になってまう。自分でも言い間違えるしな。だからどっちでもええで。むしろ本来の発音されたら自分のことやと気づかへんで。ウチのおるとこで「台所のみりん風調味料取ってきてーな」とか言ったらあかんで。返事してまうからな。みりんとみりん風調味料は違うもんやで。これが鉄板の自己紹介や、もう覚えたやろ?

 なあ、今誰か、「あっ、だから身長がミリなんか」って言うたらあかんこと大きな声で言うてしもたやろ? みんな聞いたよな? よっし、ちょっと表でよか。そこでパンツ脱いで尻を出すんや。みりんのボトル、ケツ穴に突っ込んだるわ。中身全部なくなるまで抜かへんで。

 しかしなあ「MILYN」って書いてるなあ。えむあいえる……、これでみりんって読めるんかなあ。読めるんやろなあ。ヴィンセントはんに書いてもろたからこうなったんやろか。せやかて異世界転移してきたモンは誰も字わからへんやろ。難しい名前やったらどうなるんやろな。さかのうえのたむらまろとかな。漢字でどう書くんかはしらんで。うろ覚えや。

 苗字の方はどこにも書いてへんで。そらヴィンセントはんには言うてへんからな。危機管理や。大事やろ。貴族がおるような世界で庶民が苗字持ってるなんて普通ないやろ。なんでマンガやとみんなフルネーム名乗っとるんやろな。しかも周りもそれ受け入れとるしな。現地の人らは苗字なんて名乗らへんのにな。もしかしたら苗字が普通にある世界なんやけど、作者さんが思いつかへんから設定してないだけの可能性もあるかもしれんけどな。

 名前だけでこれ以上引っ張るわけにもいかんし、次行くで。言うてウチがわかるとこ少ないけどな。年齢とかジョブぐらいはわかるけど、だいたい常識や思うし省略してええやろ。決してウチがわからんから飛ばすんちゃうで。しかしHPっちゅうんは7やし、MPってやつは8やな。少ないんかな? たぶん少ないんやろな。なんやMPは誰かが蹴っ飛ばしてしもうて横倒しんなってるけどなんでやろ。

 気になるんは、SPECIAL SKILLってやつや。スペシャルぐらい知ってんで。スペシャルメニュー言うたらお子様ランチのことや。おかんにずっと騙されとったで。国旗やのうて虎縞の旗やったらさらに嬉しいで。

 でもその先に書いてるやつはなんて読むんや? IMMORTAL……芋、もったる? 芋なんか持ってへんで。ウチはこの赤ウサギからもぎ取った最強の角しか持ちもんないわ。学生鞄は異世界ではご法度らしいし、乙女のたしなみグッズは全部家に忘れてきたで。ちなみに時間を尋ねるときは、掘った芋ほじるなやで。ほじるなんて鼻くそにしか使う言葉やない思うけどな。でんじろう先生に怒られそうや。あれ? 違う人かな。

 そんなもんかな? WEAPON SKILL? これなんやろな。なんや疲れてきたし、どうでもええやろ。暇なときに誰かに聞くわ。

 せや、おパンツもだいぶ乾いてきたし、そろそろごはんいかな。まだちょっとしっとりびっちょりしとるけど背に腹は代えられんしな。腹言うたら、こっち来てからなんも食べてへんのに腹減らんな。食欲はあるけどな。おなごの腹は11次元ポケットや。いつもは紐パンみたいに折り畳まれとるで。あ、忘れるとこやった、パンツだけやのうてちゃんと服着ていかんと。捕まってまうで。こっちの常識わからんけど、たぶんそのへんはおんなじやろ。

 で、このゲームみたいな表示どうやったら消えるん?

 もいっぺん言うてみたらいい? そういうたら念じるだけでええってヴィンセントさん言うてたな。でもせっかくやし声に出すで。

「ステータス!」

 ぴんぽんぱんぽーん。

 あ、消えたで。あとチャイムの音程はちゃんと放送終わるときみたいに逆になってたわ。はよ迷子センターにお迎えこーへんかな。

 

 ご飯のシーンは割愛して、ウチがマッパで眠ってたシーンも省略や。食べたんは貝殻みたいなパスタとなんかの肉と根菜の煮込みやったわ。うまかったで。ウチはたいていのもんはうまぁ感じるからな。酒は飲んでへんで。まだな。またの機会や。

 というわけで次の日なったで。朝は黒くて硬いパンと昨日の煮込みの残りもんつこうたスープや。あとトイレもいっといたで。ここでいっとかんと他に行ける場所なさそうやし。

 歯磨きは道具ないからなあ。今日中に日用品買っとかんと虫歯だらけなって痛い目見るで。歯医者さんは苦手や。あんなもん苦手やない人おらんやろ。

 気持ちいい朝陽を浴びながらおでかけや。地球とおんなじやったらたぶんあっちが東なんやろけど、どうなんやろ。実はお日さんが3つあって殴りおうたり抱きおうたりしてるうちに三角関係のもつれから誰も予測でけへんテロ事件に発展するとるとかやめてや。まあいまんとこ1つしか見てないし大丈夫やろ。直接見たら目がやられるから、目ぇ細めながらみただけやけど。濃ゆい顔してるタレントさんがなんとかカードマンとか言いながらつけてるメガネみたいなやつはあらへんしな。

 あ、そういえば、ここはエッサちゅう街やで。おっちゃんが言うとったわ。んで、お世話になった宿とか冒険者ギルドが西地区にあって、商業区は東地区なんやと。だからウチはお日様目指してレッツゴーや。ちなみにウチは南門から入ったで。北側には近寄ったらあかん。こっちを見下ろしとるでっかい建てもんが居座っとるからな。

 所持金は70マゲカ。無駄遣いはできん。とりあえず最優先は服や。はよせんとマッパで歩き回る羽目になるで。

 まだ朝早いからかしらんけど、そんなに人はおらんな。丸い広場みたいなとこ出たで。ぐるりと見回してお目当ての看板を探してみたらな、あったわ。ワンピースみたいな絵柄のあれや。海賊マークちゃうで。裾の長いシャツのほうや。ウチの場合は大人用のシャツで代用可能やで。ズボンもいらんし、スカートもいらん。作者の都合により急に発生した大雨ん中、傘も持たんと走ってきてびしょびしょになった同級生の美少女を、なんでかしらんけど偶然家族が留守にしとる自宅へ連れ込んで、せんでええのにシャワーまで浴びた女の子が「あの子が僕のシャツを着るなんて!」みたいな男子の妄想シチュエーションな感じになるで。しかもな、なんか不可視の力が働いてな、えろうて巨大なマシュマロを揉むことになるんや。嘘やで。そんなロマンチックなことにはならへんで。ウチの場合、なんやったらなんもきーひんまま大自然を感じつつ風呂場から出てくんで。悪いけどそれ洗濯しといてくれへん? 明日取りに来るわ。ついでに無い胸も揉んで大きいしてくれるか? 拒否権はないで。

 さっさと入らなあかんな。言うとくけど別にぼーっとしながらしょーもないこと考えてたわけちゃうしな。これぐらい普通に歩きながら1秒も経たんうちに思いつくで。大阪モンの習性や。そうやない人もたまに居るからパワハラはしたらあかんで。

「邪魔す……!?」

 うぉ、びっくりした。急にドア開けんといてくれるか。内開きやったからよかったけど外開きやったら頭ゴッツンしてそのまんまバク転5回ぐらい繰り返して見事な着地決めるとこやったわ。できるわけないやろ。ゴロゴロ転がるだけや。5回なんは変わらん。

「おとといきなあっ!」

 おお、なんかドスの効いたすんごい声が聞こえたで。大音量がびりびりしてなんや地面まで揺れてる気がするわ。

「ひいぃ」

 ほんならなんかよわっこいおっさんが1人、慌てて出てきたで。ウチはもうちょっとで蹴飛ばされるところやった。無様な5回転がそんなにみたいか?

 ん~? なんかあのおっさんみたことある気がすんで。スーツみたいなん着てるけど、こっちの世界にもああいう服あるんかいな。うん、すっとぼけとこ。トラブルはごめんや。

 そのまんまウチに気づかんとおっさんはどっかいったで。まあ視線をわざわざ下に向けん限り、ウチのことは見つけられへん。犬の糞みたいなもんや。いつのまにか踏んづけとる。それにかくれんぼだけは得意や。いつまでも見つけてくれへんから、おっきい声でおもろいこと言わなあかんねん。

 ウチは勝手に開いたドアからそのまんま店に入ったで。自動ドアや、楽ちんやな。自動とちゃうドアは取っ手が上の方にあって使いにくいことあるから、助かったわ。

「おじゃましまんにゃわあ」

 小声で呟きながらそーっと忍び込むで。ガラの悪いファンみたいなんがいたら嫌やん。エラーした選手にメガホンとか投げつけてまうで。

「あら、いらっしゃ~い、可愛いお・じょ・う・さんっ!」

 うーん、これはどう表現したらいいんやろなあ。あ、店は庶民的な服屋さんや。似たような服がそこら中に折りたたんでおいてある。衣料品店、っていったほうがええかな。鞄みたいなもんもおいたるわ。

 でもそんなもんどうでもいいぐらい注目せなあかんもんがあるで。さっきの地響きの原因や。それっぽいのはどこにもおらんから、たぶん目の前にいるあの、ええと、女の人(?)が原因やろ。厚化粧でシナを作ってんなおもてたら、ちょいと腰かがめてキラキラ長まつげでこっちを見つめてるで。わかってはるわ。小ちゃいもんにとって上から見られるんは、えらい怖いことやからな。商売っちゅうもんをようわかってはんで。

「すんまへん、服いくつか、見させてもろうてええ?」

「いいわよぉ。あなたなら、このあたりがおすすめねえ」

 正直言うわ。この人、おかまさんや。だってぱいがあらへんもん。しかも肩幅すごいしブルドーザーみたいなんや。あ、よう見たらウチより胸があるで。筋肉質な感じやけどな。

 それにしても異世界にもこんなアクの強い人おるんやなあ。逆に異世界やからこそか?

「おねーさん、おおきにな。なんやったら似合いそうなもん探してくれへん? いま着てるもん以外なんもあらへんで、できれば2着ほど入り用でなあ。あんま手持ちないし、安めのがええんやけど」

「ええ、ええ。アタシがさがしてあ・げ・る」

 うん、このおねーさん? おにーさん? おねにーさん? とは仲良くなれそうや。呼び方はおねーさんやないとしばかれるやろな。裸の女の子の前やとおにーさんへ変わってしもて、向かい合いながら巨大ロボットを操縦したりはせえへんやろな。

「あ、下着もお願いするわ。あるやんな?」

「もちろん、あるわよぉ」

 ウチに服のセンスとか期待したらあかんで。そもそも制服以外やと子ども服しか着たこと無いけどな。店員さんに任せると100%子ども服が出てくるけど、ウチは文句いうたことあらへん。数年後のためやいうて大人用の服選んだところで誰も得せえへんからな。タンスの肥やしになるだけや。

 せやから最初からどうなるかわかってたんやで。

 

 まっ、げっ!

 小気味ええ音がウチのかっちょいい腕輪から聞こえてきたで。

 お買い物の結果、チュニックっちゅうくびれのないちょい短めのワンピースが2枚で10マゲカ、シュミーズっちゅう全身下着が2枚で6マゲカや。いちおう丁寧目に説明したけど、だいたいみんな知ってるやろ。基本は古着というか引き取ったのを直したやつやな。でも下着の古着は少ないらしいで。くんかくんかされてまうからかな。

 それにしたってえらい安い思わへんか? 正解や。理由は想像に任せるで。だいたいわかるやろけどな。古着っちゅうのに加えて、布面積の問題や。そういやマイクロビキニっていくらぐらいするんやろ。スク水以外やと短パンしか買うたことないからわからんわ。ビニールプールでこうやんと水鉄砲できゃっきゃウフフするぐらいやったらええやろ? ちゃんとしたプールみたいなもん溺れるだけやで。足つかへんからな。流石にスク水は女モンにしたで。指定されとったからしゃあなしや。

 ちなみにあの気の抜けそうな「まっ、げっ」ってのは、お金を払ったっちゅう音や。店主のおねーさんがつけてる指輪の上に16っちゅう数字が浮かび上がっとってな、その指輪とウチのつけとる腕輪をごっつんこしたら取引成立や。関西で言うたらカモノハシのあれで通じる電子マネーみたいやな。冒険者ギルドの受付のねーちゃんに、毛玉ぐいぐい押し付けたったときに経験済みやからスムーズにでけたで。経験済みって言葉にいらん反応したやつはおらんよな?

「アミーちゃん、ここで着替えてええ?」

「いいわよう」

「おおきに、ほな」

「あっ、まって。だめよ、店の真ん中で裸になっちゃ。ほら、こっちにいらっしゃいな」

 店主のアミーちゃんに了解もろてそのまま脱ごうとしたら止められたで。ええ人やな。うちは着替えブースみたいなとこに案内されたで。現代日本の証明写真機みたいなんとちごて、布がただでろんとぶら下がってるだけの簡易目隠しやけどな。え? プリクラとか言ったほうがよかったか? キャバクラみたいな響きが嫌やんか。もしかしたら全国の女子高生の皆さんを敵に回したかもしれん。みんなで1つの自転車一緒に漕いで逃げよか。

 しかし、ちゃんとこういう場所があるんやなあ。せっかくやし使わしてもらうわ。せやけど足元丸見えやから、ウチの背丈やとほとんど見えてるんと変わらんような気もすんで。まあええか。気持ちの問題やな。

 さっきから言うてるけど、このおねーさんの名前はアミーちゃんや。アミーちゃんと呼ばんとひどい目見るからこれから転移してくる予定の人らは気ぃつけときや。さっきのスーツ姿のおっさんみたいにな。別にアミーちゃんと呼ばへんかったから追い出された、ちゃうわけやないと思うけど、詳しい話は聞きとうないから見なかったことにしたで。イベントはスルーするんに限るわ。ノーマルエンドが一番平和やで。ハッピーエンドは他の女の子にとってはバッドエンドになるさかい、知らんうちにその子が病んでしもてて、空のお鍋ん中におたまつっこんでぐるぐるしてんなと思てたら、プレイヤーをナイフで刺しにきたりすんで。間違ってへんで、「今あなたの後ろにいるの」って言いながら主人公やのうてプレイヤーの君を刺しにくるで。元凶は君やからな。イベントCGすべて回収せなクリアしたことならんとか、わけわからんこと言うてるからやで。イベントスチルって言うたほうが通じるか? 今度は全国の乙女たちを敵に回したかもしれんな。

 さてお待ちかねのお披露目タイムや。制限時間内に着替え終わったし、間に合わせのバスタオルは投げ込まんでええで。このまま熱湯風呂に入ることもないしな。

 ばばーん。年季の入った病院の壁みたいな色のシュミーズの上に、水不足でからんからんになった田んぼみたいな色のチュニック着て、この世界にウチが唯一ダメ出し食らわんと持ち込めた100均で買うたスカートベルトつこうて腰しばったら立派な町娘Aの誕生や! あっ忘れんうちにウサギ角をベルトに挟んどかな。ウチがこの世界で暮らしていくための生命線やからな。

 え? 町娘Aやのうて、幼児Bやて? 否定はでけん。下着であるはずのシュミーズがほうぼうからはみ出しとるっちゅう大人やと恥ずか死しそうな感じやからな。なんでもっと小さい下着にせえへんかったんやて? そんなもん売ってへんわ。ここは現代日本みたいにな、背が10センチ伸びるたんびに子ども服買い換えて、かわいいでちゅねえとかいいながら写真に収めるような贅沢な文化とちゃうんや。まああっちでもウチの場合は小学校低学年過ぎたらその必要ほぼなかったけどな。ほんま金のかからん女やな。お得やで。誰かもらってくれるか。いややっぱ今のなしな。ウチは安い女ちゃうで。

「あら、よく似合わってるわあ。あっ、そうだ! あなたこ・れ、ほしくな~い? お荷物持ち運ぶのに、ちょうど、いいわよお。もしこれからもご贔屓にしてくれるんだったら、これ、安くしちゃうわ~」

「な、なんやと!」

 安い、安いよぉ、なんていわれてもたらな、食いつかなあかん。ぶら下がったスルメ見せつけられたアメリカザリガニみたいにな。誰一人知らんかったやろけど、なんせウチはどけちんぼやからな。ばびぶべぼとぱぴぷぺぽは見間違えたらあかんで。ウチにはそれついてへん。これはもっと知らんかったやろ。なんせ乙女の最優先機密事項やからな。ところであの点々と丸々はなんていう記号や? 水で薄めて飲むジュースと関係あったかもしれん。

「……くっ、これはっ!」

 なんやナイト職の女冒険者がいますぐここに駆けつけてきそうなセリフになってもたけど、蛮族といちゃこらしながらアヘ顔さらしてそうなツンデレ女の貞操なんてどうでもええ。そんなことよりもアミーちゃんが取り出したもんや。

 なんということや。う、うさぎのポーチ、やと。しかも角付ウサギみたいな凶悪なんとちごて、お口がチョメチョメの白くてふわふわで可愛い例のあれやん。ポーチの上からはウサ耳がぴょこんと飛び出しとる。

「これはね、こんなに小さいのに、マジックバッグになってるの。あなたのその大きな角だって、ずっぽり入っちゃうわあ」

 マジックバッグとしても使えるやと。……マジックバッグってなんや? ガッコの持ちもんに名前書くためのあれか? そもそも持っていくん忘れたら意味ないで。

 言われんでもな、このボケに無理があるっちゅうんはわかってる。割とありふれとってマンガで見たことあるしな。というか行商人のおっちゃんも持ってたしな。この世界でも当然のようにあるわけや。せやけどなんでもかんでも無限に入るわけではないらしいで。そんでないとラマねーさんは用済みになってぽいっと売られてまうからな。せやし無限アイテムボックスチートでウハウハ金儲けなんて考えたらあかんで。間違いのう戦争の道具にされるで。ついでのようにそのチート持ちの美少女の大事な貞操も軽い扱いになんで。男の場合は……いやなんでもないわ。それは口が裂けてもウチと同じ名前のもん突っ込んだ場所とは言えんわ。ウチが可哀想になるやろ。まあどうせキラキラペーパーにそんなもんなかったけどな。女神がさらに嘘ついて隠しとったらしらんけど。脅迫なんてしたらあかんで。ウチのようにおとなしいしとき。

「通常100マゲカのところ、いまならなんと20マゲカ。おとくよお~」

 ぐぬぬ、しかしこのすんごい可愛いお目々でウチをじーと見つめてくるウサギさんポーチにはとてつもない大きな問題があるで。

 もし、もしもや、ウチがこれ持ってたらな、完全にはじめてのお使いになってまうやん。ストーカーみたいなんに追跡されながら背後から恥ずかしい姿ばっちり全部盗撮されて、ついでに「ああ、今にも泣きそうです!」なんてナレーションまでつけられて、最後にはお茶の間のみなさんの笑いもんにされてまう。

 せやけど、これこそ背に腹は代えられん!

「買うわぁ。……いや、待ってや。それはなんか安すぎとちゃうか? 事故物件か?」

 いや事故物件やとしても買うけど。ウチは幽霊なんか信じてへん。ウチが幽霊みたいなもんやからな。足元から急に出て驚かしたるで。

 だいたいな、100マゲカやとしても安いで。カバンも買わなあかんおもてたけど、おっちゃんに聞いたらマジックカバンは小ちゃいもんでも毛玉20個分するはずや。それまでは普通のやっすい袋みたいなんで我慢するつもりやったねん。

「違うわよお。中古品なのはあってるけどお、なかなかみんな買ってくれないのよう。こんなに可愛いのに、なんでかしらねえ。このまま置いとくのも可哀想だから、あなたにぜひ使ってもらいたいなあ、って思ったのよお」

 たぶんそれな、可愛いことが原因やで。ウチが躊躇した理由とおんなじ理由でみんな買わへんのやで。

 まっ、げっ!

 ああ、気付いたら買うてもてた。まあいろんなことに目をつぶれば悪い買いもんやない。いまさらウチには失うもんなんてあらへんからな。たった1つ残ってるあれを除いてな。あれが何かはみんなで勝手に想像するんやで。スコップで埋めたあれではないのは確かや。何想像したんや? 角のことやで。君らの1割ほどが想像したあれは生まれたときから勘定外や。

 しかし残金がなあ。70引く16引く20は34やからなあ。宿代も考えたら、今日も毛玉取りに行かなあかんかもなあ。ああ、毛玉といえばそうや。おっちゃんに聞いてたやん。

「なあなあ、アミーちゃん。ええと、ホーンラビットやったっけ、あの毛玉持ってきたら買い取ってくれるん?」

「ええ、もちろん。お貴族様用のドレスに使うのよお。いくらでも買い取るわあ。足りないから冒険者ギルドに依頼出したんだけど、なかなかみんな取ってくれなくてねえ。あなたには感謝してるの、だからおまけしちゃったわあ」

「そうなん? そりゃウチのほうこそおおきにやなあ。……ありゃ? ウチその話したかいな?」

 どうやったかなあ。いらんことぎょうさん喋るくせがあるから、自分で言うたことなんて覚えてへんしなあ。言うたかもしれんしそうでないかもしれん。

「うふふ、実はね、昨日ギルドから届けられたときに聞いたのよう。ちっちゃな不思議な喋り方する女の子が持ってきたって。あなたのことだって、すぐわかったわあ。その角も持ってたからね!」

「なんや、そうかいなあ。びっくりしたわあ」

 まあこの世界、個人情報なんて考えあらへんやろしな。狭いコミュニティでそんなもん気にしてたらやってけへん。

「でも、どうやって手に入れたの? ホーンラビットってね、なりたての冒険者何人集まっても倒せないのよう」

「そうなん? ……たまたま拾っただけやで。たまたまや、たまたまな、たまたまやからな」

 ウチはな、こんときちょっとだけ背筋がつめとうなってたで。ほんのちょっとだけや。首元にな、ちょこんとあずきバーくっつけられたぐらいのちょっとだけや。

 よう考えたら受付のねーちゃんかて不審な目でウチを見とったやろ。行商人のおっちゃんかてウチのこと運がいいとか言っとったやろ。

 あのウサギ、あのなりして、ヤバいモンスターやったんや。

 だから言うてるやん、ウチは肝心なところが抜けてるって。

 よう考えんでもわかるやん。

 あんな鋭い角持ったウサギが弱っちいモンスターなわけあらへん。一撃必殺首ちょんぱしてくるようなウサギが序盤に配置されてるとか、そんなもん喜び勇んで買うんは正真正銘のマゾゲーマーだけや、ありえへんやろ。そんなんしたら冒険者が絶滅危惧種になってまうで。

「ごめんくださいな。おお、やっぱりここにいたねえ」

 そんなときや、ウチがどう言い訳しようとおもてたらな、ウチにとっての第一村人であるおっちゃんがひょっこりはんみたいに現れたんや。

「あら、エドガーさん、いらっしゃいな」

 おっちゃんはエドガーっちゅう名前らしいで。いや聞いてたけどな。そんなことはどうでもええねん。

「ミリンちゃん、ちょといいかなあ。君に頼みたいことがあってねえ」

 あかんで、嫌な予感がするで。ウチなんかやらかした気がするで。

 目立たんように生きようおもてたのに、もしかしてそこら中キラキラ照らしながら歩いてたかもしれん。

 あかん、あかんがな。あの女神の同類になるんは、死んでもゴメンやで~。

 

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