ウチ、ただの行商人やで? 〜異世界転移した関西弁女子はチートスキルに物申したい〜 作:霧島 高
みんなに謝らなあかんことがある。
っていうたら、そろそろウチのことを完全に把握しとるストーカーみたいな君らやったら、もうオチはわかったやろ?
昨晩のことや。ウチは宿の食堂で、いつもどおり何かの肉と野菜を煮込んだ料理を美味しくいただいた後、満足したウチはそのまま寝てしもた。
つまりや、あずま君とさやちゃんの愛の巣である隣の部屋で何が起きとったか、ウチはまったく知らんねん。
ただな、おそらくやけどな。朝ぱっと起きて、食堂で黒パン齧りながらスープ飲んでたときにな、お2人さんが連れ立って階段から降りてきよった。
ウチはじっくりねっとり2人を観察してみたんや。ほら、ようマンガで見るやろ?
肝心のシーンはあらへんのに、次の日のガッコでおなごのほうが、足をがくがくしたり内股になったりしながら、階段を下りてくることで誤魔化してるやつとか。「どうしたの?」って、そんなもんわかってんのに、友達がわざとらしゅう尋ねたりすんねん。「ううん、なんでもないよ。ちょっと激しい運動しちゃって」とか大きな声で言いながら、他のおなごを牽制するわけや。
で、せっかくウチが「昨日はお楽しみやったなあ。めっちゃよう聞こえとったで」っていう、国民的ゲームのセリフをちょいと改変して伝えようとしてたっちゅうのにや。
残念やけどな。さやちゃんは別にツヤツヤアオカメムシにはなってなかったで。
でもな、致した後は、ツヤツヤになるってほんまなんやろか?
って、実はみんな疑問に思ってるやろ? だって君ら経験ないもんな? ウチはちゃーんと知っとるで。
ウチはどうなんやって? はあ、そんなん気になっちゃうか〜。でもな、想像に任せるで。
は? そんなん言わんでもわかってるって? そらそうやろ。あるわけないやろ。せやけど、君らと一緒扱いはやめてくれるか?
けどな、ウチは覚えとる。
あれは、ウチ一家と幼馴染のこうやん一家で、恒例の夏休み旅行にいったときのことや。まだおとんとおかんが離婚する前のことやで。
さて、ここで問題や。
二人部屋しかないとしたら、部屋割りはどうなる思う?
まあ尺もあらへんしな、答えなんて考えんでもわかるやろ。
おとんとおかん、こうやんの父ちゃんと母ちゃん、ほんでウチとこうやん、っちゅう組み合わせやねん。当たり前やな。
で、明くる日は、みんなツヤツヤしとるわけやな。
もちろん、ウチとこうやんもお楽しみやったから、ツヤツヤしとるで。
せやからな、もしかして、親らもみんな有料チャンネルでも見ながら大笑いしとったんやろか、って昔はおもとったで。なんせウチにも、こうやんにもな、妹や弟が新しくできることはあらへんかったからな。
だからウチは、クロツヤツヤバエ状態をちゃーんと知っとる。
その鋭いウチの目から見て、どうやらおふたりは健全なお付き合いをしとるらしいわ。
交際と言えばや、どうでもええけど、こっちにコンドームみたいなんてあるんかな? ほんま、ウチにとったらどーでもええことやけどな。でも、気になるねんな。
そういや、あれに水をぱんぱんに入れて、ほんでから頭に落とすっちゅう遊びが昔流行ったんよなあ。幼馴染のこうやんと一緒に試したねんな。
え? どこでこうてきたんって? ようお世話になっとる近所のコンビニに2人で行ってな、ほんでいつも通り迷子扱い防止のために手ぇ繋いで、ジュース買うついでにこうてきたで。別に酒やたばことちごて、あれ買うんに年齢制限なんてないやろ?
店員さんも普通に売ってくれたで。「あ、たぶん水入れて遊ぶんやろな」って思ってたんとちゃうか?
へ? そんなこと思わへんて? じゃあ、どう思われとったんやろか。
……まさか思うけどな、ウチ、こうやんの子どもと勘違いされとったとかないよな? お父さんが子どもと一緒に買いモン来て、「あ、そういえばこの前なくなってもてたな」って思い出して、ほんで子どもに「おとん、それなんやの?」って聞かれて、「これでな、運動不足の解消するねん」とか、そんな会話をしとったとか思われたんとちゃうやろな。
う、そ、それはちょっとこうやんに申し訳ないで。妹ならまだしもや、ウチがこうやんの子どもっちゅうんは、さすがに無理があるやろ。
よし、これ以上思い出すんはやめとこ。
ともかく、ウチのことはええねん。
あずま君とさやちゃんや。けどなあ、おそらくあずま君はな、この異世界を楽しもうっちゅうほうに意識が向いてしまっとる。せやから、さやちゃんのささやかアピールをガン無視しとるんに間違いない。
ま、ウチが昨日、さやちゃんにちょろっとだけ発破はかけといたさかいな。もしかしたら本日デートをして盛り上がって、そのまま今晩、さ~やちゅわ~んって感じでワンチャンあるかもしれん。
一応言うとくけどな、ウチの滞在予定は明日までや。つまりこれがラストチャンスでもあるわけやな。
しっかし、よう考えたらあの2人、まだカレシカノジョにはなっとらへんねんな。ちゅうことは、デート以前の問題や。
でもな~、こうやんのもっとった異世界マンガやとな~、だいたい女の子の方が先に既成事実こさえてから付き合い始めるねんな~。男の子が思春期男子とは思えへんぐらい、へたれやねんな~。
けど、まってや。よう考えたら、2人は一緒の部屋や。そうやとしたら、あずま君は溜まりに溜まったもんをどう処理しとるんや?
……ふーむ、実は、あずま君がぐーすか眠っている間になんぞ行われてるかもしれん。あるいはこれからじっくりと行われるんやろか。
「ま、さやちゃんがそんなんするわけないわ。さ~て、ウチはちゃっちゃと今日の予定済ませるで」
ちょうど朝飯も終わったことやし、とっとと部屋に引き上げて準備すんで。あずま君に見つかってまうと厄介やからな。
言うてもな、どうも注意力散漫らしい彼は、ちいこいウチには全然気づいてへんみたいや。
せやから、さやちゃんな。ウチに手を振るのやめてくれへんかな。気付かれてまうやろ。
でも女子同士の付き合いはここが肝心や。無視はでけん。後が怖いからな。せやからウチは小さく手を振って、階段を昇っていくで。
「あずくん、ほら、ちゃんと食べなよ」
「え~、だっておいしくないよ、これ。やっぱさあ、料理人とか転移してきて、ぱーっと改革してくんないかなあ。こんなんじゃ元気でないよ」
ほんま、大丈夫かな。改革が必要なんは、あずま君の意識とちゃうかな。
それにな、あんまいらんことばっか言うてると、小心者なウチの中に蓄積しとる「こいつあかんな」度がどんどん上がってまうで。ほんで最後にはいつのまにか横にひっついとった爆弾が大爆発して、なんでかさやちゃんの好感度が下がってまうわけや。
女子の結束力を舐めたらあかん。
ま、さやちゃんはそんなあずま君だからこそ世話を焼きたい、って感じやしな。あずま君が別のおなごに浮気でもせん限り、どもないやろ。
……よし、勝手にフラグ立てといたったで。
まあ冗談やからな。本気にせんといてや。
けどな、あずま君よ。万一そんなことしてさやちゃん泣かしてしもたらな、おまえのさやちゃんは、めでたくウチのもんになるからな。
あの子はええ子なんや。せやからウチの得意技みたく渾身の土下座してもな、おまえには絶対返さへんからな。
それにしてもなあ、ほんま浅はかやなあ。
料理人言うたら、例えばウチかてな、おかん直伝の絶品たこ焼きなら作れるんやで。
でもな条件があるねん。前も似たようなこと言うたけどな、材料と道具、ぜーんぶ用意してくれるんやったらできるで。せやからな、料理人連れてくるだけで全部解決できるなんて思てたら、大間違いや。
まあ、解決方法があるにはあるで。その1つはな、向こうにある食堂が、なぜかお休みの日だけ繋がるようになればええねん。でもな、その場合、人間に擬態した超やばい食いしん坊ドラゴンとかが給仕しとるかもしれんから、ケンカとかで暴れたりせんほうがええで。
さて、しょーもないこと考えてんと、そろそろ今日のノルマ達成しに行くで!
さて、やってきましたんは、ウノーミ中央地区でっせ。でっかいまんまる広場があったで。
つまりこの領都は、ファンタジー世界やとだいたいいっつも出てくる円形都市って言うやつやな。せやから大阪環状線で例えるなら、ここは心斎橋あたりやろな。
ほんで心斎橋言うたら商店街や。たいてい何でも揃うで。もう言わんでもわかるやろけど、だいたい迷子になんで。せやし1人では絶対いくな言われとった。
ちなみに山手線とかいうもんはなんも知らんで。ウチは引っ越したばっかりやったからな。だいたい満員電車になっとって超危険地帯やってことぐらいは聞いとったけど。
せや、大阪の満員電車いうたら御堂筋線や。地下鉄のな。最近はとろろとか言う美味しそうな名前に変わってしもたらしいで。あれ? となりのなんとかいう、口のでかい生きモンのことやったかな?
電車といえばや、みんながめっちゃ気にしてくれる思うから、安心させるためにも教えておくけどな。ウチは絶対に痴漢にはあわへんからな、心配せんでええで。なんせどうやってもな、高さが合わへんねん。まあ、そもそもウチみたいなんにそんなんしてもな、ダメージ受けるんは痴漢のほうや。
せやけどな、痴漢やのうて暴力事件が自動的に起きてまう。誰もウチに気付かへんから蹴飛ばされまくるねん。ほんで最後には、たこせんみたいに薄うなって、みりんせんべいとして売り出されてまうんや。
せやし、おかんやらその他仲のええ友達からはな、みりん風調味料と間違えて酢ぅ飲んだような口でいつも言われとった。いつもこうやんと一緒やないと乗ったらあかんって。ちゃーんと壁ドンしといてもらうんやからな。絶対やからなって。
まったくロマンどころかヘチマもあらへん壁ドンやな。
それにな、高さの違いをよう考えてみい。わかるやろ? ウチの場合な、壁ドンいうよりちんドンになるんや。
お、これで充分ロマンチックになったな。
ところで、ちんどんで有名な太郎さんがいるんは道頓堀や。心斎橋から南に行った場所やな。もうちょっといったらウチの大好きなお笑い劇場もあるで。
ちゅうわけでや、ウノーミの中央地区がなんで商業地区になっとるんかがようわかったやろ。
ほな、本日の第1ノルマ、はじめるで~!
せやけどたぶん第1だけで終わりそうな気もするな。ラジオ体操の第1じゃないほうってなんのためにあるんやろうか。みんなに恥ずかしい格好をさせるためやろか。そういや大阪弁バージョンもあるねんな。全国的には有名やないほうの、おけいはんが案内してくれる遊園地のある自治体で公開されとったはずや。
「えーっと、どこにあるんやろかいな~っと」
さっすが領都やな、いろんな看板が並んどる。
エッサの街にあった、アミーちゃんの衣料品店と同じワンピースマークもあるで。といっても用事はないな。破れてもたシュミーズはまだまだ使えるからな。
あとは、そうやな、ハンマーのマークは鍛冶屋さんかな? こっちも用はないな。ウチには最強のウサギ角があるしな。
ん~。どこやろな~。
「お、あれや!」
あ、あのマークは、どう表現したらええんやろか。
あれはその、えっとな。……ちょっとばかし言うんが、恥ずかしいな。
あ? 何今さら恥ずかしがってるんやて?
しゃあないやん。ウチ、未経験なんやもん。
うーん、でも、あれの正式名称って、いったいなんなんやろ。それさえ覚えとったら、こんな恥ずかしいこと言わんでも済んだのになあ。
ええい。しゃあない。みんなのためにも、ここは気合入れていくで。
あれはな。
チューチューアイスや!
いやん、恥ずかしいわ。だって、チューやで。ぶっちゅうなら幾らでも言うたるのに。チューってなんやいやらしいやんか。めっちゃ、えっちやん。
あ、もちろん食べたことはあるで、あれ。え? そんときはどう言うてたんかやて? 真ん中で折るやつ、て言うてたで。それやとみんなに通じんやろから、恥ずかしいの我慢して言うたんや。感謝してほしいわ。
そうや、あの看板、まさしく真ん中で折ったあれやねん。
ん~? なんやろなあれ。もしかしてポーションってやつかな? 電球みたいな形とちゃうんやな。まあどう考えても、あれ持ち運びにくいもんな。ボールみたいに投げるんやったらええかもしれんけど。
しかし、あのアイスやとしたら、やっぱりいろんな味が合ったりするんやろか。やっぱ定番はレモン味やなあ。ぶっちゅうはレモン味~ってほんまやろか。
そういやマンガで読んだな。なんやしらんけど離婚した親2組が、男女入れ替えて再婚した上に同じ家で暮らし始めたやつや。しかも元夫婦の間にはそれぞれ息子と娘がおって、そんでもちろんあいつの笑顔に会いたいとか言うてたらぶっちゅうしてもて、家系図がぐちゃぐちゃになってしまうやつ。ママレモン少年とかそういう名前やったかな。うーん、古いマンガやし色々混ざってもうてるかもしれんな。
「さて、早速……」
と言いつつや、ウチはそのお店にはいかへんで。ウチが目指しとるんはその店の裏にある別の店や。
ところでな、君らな、白濁してドロリ濃厚な液体、っちゅうたら何を思い浮かべる? 女の子がな、「こんなのべたべたで飲めないよ~」ってよう言ってるやつや。それを聞いた男の子がな、「ほら、早くごっくんして。絶対おいしいから」っていうやつな。
なんてな。ウチの熱烈ファンな君らやったら、正解率は99%やろ。残り1%の君はちょっと修行が足りひんし、皿洗いから出直してきたらどうや?
もちろん正解はラーメンや。しかも京都の一乗寺に本店がある、あの全国チェーン店のやつな。この世でいっちゃん美味いって名乗ってるあれな。
いや実はな、ほら、昨日さやちゃんと話しとったん覚えとるか? あ、ラーメンからは一旦離れてくれるか? 美少女がラーメンのスープ飲むシーンで興奮するとか、ほんまにやめてくれるか? そういうんはな、今晩のお楽しみにとっとこうや。
そうやのうてな、カエルの解毒剤があらへんってやつや。んで、ウチはさやちゃんから、とあるお店のことを聞いたんや。そいつはな、実は広場からよう見える店やのうて、なんとその裏にあんねん。
なんでかいうたらな。ほら、ラーメン激戦区っていうやろ? さっきいうた一乗寺かてな、ラーメン屋ばっかりあるねん。
たとえば「あ、今日ラーメン食いたいな」おもて、いつもの店行ってみたら、定休日やったなんてことがよくあるわけや。そんときにな、「ああ、今日はラーメンの口や。どないしよ。別のラーメン屋近くにあらへんやろか」ってなるんに間違いあらへん。せやしな、こういう店っちゅうんは、大体商売敵同士が集まっとるねん。
ちなみに大阪やと、ラーメン激戦区って言われても、正直思いつかん。ウチがこうやんとよう行ってたんは、泉が撤去されてもたがな広場の近くの店やな。梅田のな。
うーん、食いモンの話ばっかりやな。あずま君がいらんこと言ったせいやで。間違いあらへん。
ともかくや、目的のラーメン屋が混まんうちに、はよういくで。
「ごめんください! どなたですか? 行商人のミリンいいます! お入りください! ありがとう!」
ずこっ! ガンッ!
「……おおきに、ねーちゃん。机で頭打ったみたいやけど、どもないか?」
「うう、痛いです~。なんですか、今の挨拶は! もう~」
「いや、なんちゅうか、やらなあかんっていう使命感があんねん。ウチはどうしてもそれに逆らうことができひんねん」
それにしても、こっち来て初めてウケたな。こんなに嬉しいことはないで。もうウチいつ死んでもええわ。不死チートあるから死なんけどな。
「それにしても、話には聞いてたけど、エルフさんやなあ」
「はい~、エルフのソフィアですよ~。今日は何の御用ですか~?」
さて、エルフや。
しかも最近とある架空の戦記本の影響で評判落としとるらしい、黒くないほうのエルフや。
せやけど問題があるねん。
異世界ファンタジーで定番のエルフもな、最近はバリエーションが多すぎて、エルフって紹介だけやとなんも伝わらへん。さすがにウチもな、後は想像で補っとき、なんて無責任なことは口が裂けても言えへんわ。
だいたいな、昔ながらのエルフ言うたら、例のトール軒とかいうラーメン屋の真ん中あたりで産みだされたあれなんやけど、最近はあんま見かけへん。高身長でスンッ、な感じのやつな。
けどな、最近の主流いうたかて、二極化しとるんも確かやねん。
その一つはな、巨乳マスターこうやんがたいそう好んどるやつや。表紙に載っとるだけで、あらすじどころかタイトルすら読まんと買ってまいよる。で、なんでかしらんけどだいたい触手に絡めとられたりしよるねん。つまりお色気担当や。都合によりちょっとばかし主人公君よりも背が低めなことも多いで。おっぱい好きの男が求めてるもんがな、だいたい詰めこまれとるわけやな。
で、もう一つは想像つくやろ? ウチみたいな幼女や。なんてこと言うてもたら、ウチがいろんな人から失礼やろ言われて袋叩きになるかもしれんから、やっぱなしな。それはともかく、だいたい年寄りみたいにして喋りよる。実際に3万と永遠の17歳とかいう年寄りやったりするしな。すぐロリバッバとかいうあめちゃんとか、渡してきよるのじゃ。
うん、今のは完全にウチが悪いわ。ホンマ謝るし、石を投げるのはやめてくれへんか? できれば、舐めたらあかんのに美味しくいただける黄色いのど飴にしてくれへん?
「う~ん? けど、どっちでもあらへんな」
「何がですか~。というより、どこ見てるんですか~」
エルフや言われたらな、確かにその通りとしかいえん。耳はぴーんと長くて先っぽをおさわりしたら痛そうや。そんでサラサラ金髪や。ただ流れるようなんとちごて、ウチほどやないけどショートなボブカットにしとる。食いモンの商売やってるとな、だいたいみじこうしとなるねん。衛生上の問題もあるけどな、単純に暑いねんな。薬作っとるんやったら、たぶんおんなじ理由やろ。
背丈は、こっちの世界で言うたら低いな。さやちゃんぐらいや。なんせ、ここらでよく見る人間、ヒューマンっていわれる人らは割と背が高いねん。みんなプロ野球選手ぐらいや、っていうたらわかるか?
でもな、スンッ、なんや。ここだけ古来のあれを引き摺っとる。
まあ、ウチよりはあるで。だから自信持ったらええで。でもな、シスターねーちゃんよりは小さいで。なんや可哀想やな。ウチよりましやけどな。
エルフなあ。……そういや、エルフ言うたら、対になるあの種族はいるんやろか。
あの太っいけど、めっちゃ筋肉質で、斧とか持っとってタフそうな種族や。
そうや。
「……オークっているんやろか」
「なんですか~、それ?」
……いーひんらしい。
え、オークおらんの? ほんまに?
それじゃあ、魔法使いになれそうな英雄オークが、ハーレム要員探しながらほうぼう旅していろんな人を助けてんのに、オークやからって理由で誰からも相手にされんくて、ひとり寂しく男泣きしたりせーへんの?
それか、おうた大好きな王様オークが、夜中に大きな河を必死こいて渡ってきたダークエルフのおねーさんに、そのまま寝床におしかけられて童貞奪われた挙句、お肌真っ白つるつるぷるるんやけど実は腹黒なエルフの国を滅ぼすために、全軍あげて協力させられたりせーへんの?
つまらんなあ。特にかっこかわよくてしびれるぅなダークエルフねーさんには、是非とも聞きたいことがあったんやけどなあ。どうやってオークの大きいモンを口に入れるんやろか、1か月に何回ぐらいそういうんがあるんやろかとか、未来のウチが参考にせなあかん話がぎょーさんあるねん。
ちなみにな、何想像してるんかしらんけど、たまに配られてくる豪華なお子様ランチの話やで。特別配給いうらしんやけど、つまりそれスペシャルメニューってことやろ?
「あの~、それでご用件はなんでしょうか~?」
「あ、せやった。うっかりしとったわ」
あまりのショックに妄想が止まらんかったで。具体的にいうたらな、この微乳エルフさんが裸にひん剥かれて、体中まさぐられながら恥ずかしいところに貼られとるびっくらこいたシールみたいなんを無理矢理はがされてるところや。
「へっへっへ~、なあ~、そこの微……べっぴんエルフさんや~。ちょっとな~、こっちをな~、見てくれへんか~?」
そんでウチは、がばっと、それを開いたんや。
ウサギさんポーチの口をな。そこからさっと、カエルの肝を取り出して、エルフさんのいるカウンターの上に乗せたで。
あ、このカウンターは冒険者ギルド仕様とちごて、エルフさん仕様やから、ウチの肩ぐらいの高さや。角で頭を打ったりもせえへんウチに優しい安全でらくらく仕様やな。
「きゃあっ! なんて、大きいの……。これは! ポイズントードの肝じゃないですか! 買います~。ぜひ売ってください~」
「もちろんやで。そのために来たんやしな」
決して、エルフさんを一目拝んで、ウチの頭ン中で妄想こねくり回して遊ぼうとか、そんな楽しいことだけしにきたわけちゃうんやで。
「あ~、そんでやなあ。実は1つやのうてな。6つもあるねん」
「え、そんなにいっぱいですか~? いったいどこで……」
「ん? ちょっとそこで狩……たまたま仕入れて持っとっただけやで。なんや不足してる聞いてな。せやし持ってきただけや」
いらん妄想してたせいで、危うくお漏らししてまうところやった。まったく、エルフさんは狩るもんやで、とかどっかの誰かが考えとったからやな。
「そんでな、おいくらで引き取ってもらえるんやろか?」
「えっとですね、ウチでは20マゲカで引き取ってます~。表のお店の方だと、もう少し高く引き取ってもらえるのは、知ってるんですが~」
……この人、商売下手ちゃうか?
まあ、正直モンなんやろな。
ん~、どうしようかなあ。そりゃウチかて、商売人やしなあ。
あ、せや。
「ええとな、ちょいと聞きたいんやけど。この肝ってな、解毒剤ってのを作れるんやろ? これ1個でいくつ作れるんや?」
「はい~、1つで5個のキュアポーションになります~。キュアポーションの値段は、そこに書いてますよ~。1つ10マゲカになります~」
カウンターの上の看板見たらな、たしかに10って数字が書いとった。きゅ、きゅあ、ぽー、しょん? って、大きいお友達の喜びそうな単語が、その横にたぶん書いてある気がするで。メロン味の……うん、なんやもう恥ずかしうなくなってもたしそのまま言うけど、チューチューアイスが半分になっとる絵も描いとるな。
その上に描いとるイチゴ味はなんやろな。5マゲカや。うーん、と。り、りふ、ぽー、しょん? リフポーションか。
ふむ、リフいうたらあれのことやな。
確か、とある花札で有名な会社が作った、宝箱を開けるお仕事してる王子様が主人公のゲームの超序盤に出てくる、キラリと輝く3回分のきずぐすりのことやったな。つまり、あれは、きっとおそらく、回復用のポーションや。
「なあ、べっぴんなエルフさん。物は相談なんやけどな。ええと、肝3つは60マゲカでええんやけど、残り3つはこの、リフポーション15個と交換してくれへん?」
「リフポーション? あ、ライフポーションのことですね~」
リフとちごてライフやったらしいわ。
うん、ウチはまだまだこれから伸びしろがあるっちゅうことやな。エッサの街帰ったら、ウチの下宿先のちいそうて可愛い先輩のエミリちゃんに、もうちょい真面目に文字を教えてもらったほうがええな。
まちごうてへんで。地獄の授業をしてくれとるシスターねーちゃんにではないで。だって怒られるんイヤやん。
「そうや、そのライフポーションや。どうやろ、あかんかな?」
さてな、おふざけはほんのちょっとだけにしといて、ここでウチが真面目に計算したことを言うたるで。
まずは肝や。こいつは肝1個20マゲカで、解毒用のキュアポーションが5個できよる。キュアポーションは1個10マゲカやから、5個で合計50マゲカやな。つまり材料費の割合は、20割る50したらわかるけど、4割ってことや。でな、おそらくやけど、このお店はそれぐらいの割合で物を売っとる。
で、リフ、やのうて、ライフポーションやな。こいつは5マゲカで売っとる。そっから考えたら、おそらく材料費は2マゲカやろな。ほんで、ウチはそれを実質4マゲカで買おうとしとる。4掛ける15は60、つまり20マゲカの肝3個分や。
本来ライフポーション15個は75マゲカや。それを60マゲカで買うんとおんなじやから、ウチが15マゲカ得するわけやな。
どう思う? 売ってくれるやろか? そんなん、無理とちゃうか? そう思うやろ?
「ええと、そうですね~……。うん! それなら、いいですよ~」
「ほな、商談成立や! おおきになあ」
これがな、割といけるんや。まあ別にウチが転移者やから特別ってわけちゃうで。行商人のみなさんは割としとる。
簡単な話がな、在庫の問題や。この微乳エルフさんは、儲けるためにはものをどんどん売らなあかん。そのためには商品をつくらなあかん。
せやけど、このお店、小さいんや。物を置ける場所がそんなないねん。つまり今あるもんをどうにかせんと、新しいもんおけへん。
それにな、ポーションは加工品やから関係ないかもしれんけど、材料ってたぶん生ものやねん。定番で言うたら薬草やろ? 確か冒険者ギルドの依頼にそんなんあったで。この乾燥しとる肝もそうや。ちゅうことはや、早めに加工してまわなあかん。
せやからな、お店にとってはちょっとぐらい安う売ったところで、仕入れ値さえ下回らん限り、充分利益があるっちゅうわけやな。これをな、単純に「3つで75マゲカ、これでどうや?」って言うたら、単純に店が損するだけやし、たぶん「めっ、ですよ~」って言われんで。
……むしろそれ、いっぺん言われてみたかったかもしれん。
ん? 不死チート持ってんのに、ライフポーションなんているんか、やて?
ふっふっふ、そいつはな。また今度、教えたるわ。
「それでは、ポイズントードの肝6つを60マゲカと~、ライフポーション15個と交換ですね~」
「せやで。ほな、商人指輪さんの出番やな」
というわけで、ウチは微乳エルフさんと指輪同士をごっつんこや。
まっ、げっ!
「まいどおおきに!」
「は~い、ありがとうございます~」
ところで、君ら覚えとるか?
だいぶ前にな、税金の話しとったやろ。売上税や。
商人が街中で物を売るとな、税金とられるって言うたやろ?
実はそもそもな、街中で物を売るには、販売の許可を取らなあかんねん。誰にやて? そんなもん、お代官様に決まっとるやろ。言うてもな、そんなめんどくさいこと、商人ギルドに代行させとるけどな。
ただし、これには例外があるねん。
まず売上税のことや。こいつは商人同士の取引には適用されん。なんでかいうたら、そんなんをどんどん繰り返してたら、税金の分だけどんどこ値段が上がってまうからや。
ほんでな、許可の話や。商人同士の取引に限ってだけ、税金がかからん上に、なんと許可がのうても街中で物を売ってええねん。つまり、ウチらみたいな行商人は、営業許可もっとる街の商人さんとこへ売り込みにいけるってことやな。
ま、ウチの場合、冒険者の腕輪もあるさかい、それ使ってでも売れるんやけどな。
けど、これはあんま使いたくないねん。たぶん勘がええ君らやったらわかる思うけど、冒険者ギルドに把握されてまうからや。
ウチはな、こっそりひっそり生きたいねん。
「ほな、失礼します~」
「は~い、また来てくださいね~」
ちゅうわけで、ウチがとっても親近感を抱いてしもた、ちょっぱいエルフのソフィアさんとはここでお別れやで。ソフィーとはちゃう。それは別のアトリエにおる人や。
ま、どうせ君らのことやから、名前忘れてたやろ? ウチはちゃんと、今思い出したで。せやし、次んときはもう覚えてないし、君ら代わりに覚えとくんやで。そんで、ウチに大きな声で教えてや。
さてノルマ達成したし、次はどうしようかな。第1ノルマとか言うてたけど、実はなんも考えてへんかったねんな。
ん~、どないしよかな。
あずま君とさやちゃんが、どっかでラブラブデートでもしてへんかな~。そのままどっかにしけこむ様子でも、こっそり見られへんかな~。
ほんで結局その日はな、北の城門前のバザールぶらついて、それから南の城門前のバザール冷やかしてたら、ええ時間になってもた。
あと、冒険者ギルドにもついでに寄ったで。おもろいイベントでも起きてへんかなって思て。そしたらスイカップねーちゃんに呼び止められて、エッサの街への手紙配達頼まれてしもた。「君、明日帰るんだよね~?」って。一体誰や、ウチの情報漏らしたんわ。
たぶん、さやちゃんとはちゃうで。あの子はそんなことせえへん。せやしおそらくやけどな、ウチがいつのまにか、だばだばとお漏らししとるねん。間違いないわ。そういや、冒険者ギルドの掲示板の前で、ほんのわずかにいろいろ呟いてしもてたわ。
まあ、また100マゲカもらえるみたいやし、引き受けといたで。手紙はウチが帰る日の朝に、取りに来て欲しいんやと。配達は楽ちんやし、危ないことなんて1つも起きたりせーへんからな。
ウチは危ないことなんてしとうないねん。せやし、ウチは討伐依頼とか絶対受けたりせーへんしな。
ん? そういや討伐依頼言うたら、ウチにはまーったく関係あらへんけど、ゴブリンがどうたら言って出かけてった冒険者らはどうなったんやろな? 楽勝とか言うてた気がするし、ちゃっちゃと片付けて祝杯でもあげとったんやろか?
まあ、ええか。
というわけで、次の日になったで。今日はエッサの街に帰んで。
なんか大事なこと忘れてへんかって?
あのな、いくらなんでもウチかてちゃんと覚えとる。昨日の野球の結果やろ? さや投手の微妙な変化球にあずま選手はまったく反応できず、そのまま試合終了や。いや、まあな。さやちゃんがまたウチの部屋来ていろいろ相談しにきよったんやけど、ちょっと乙女のプライベートやし、君らには話せへん。野球の結果から想像しといてくれるか。
うーん、どうにもこれは、歯痒いな。せやけどなあ、ウチがこれ以上なんかしてまうと、たぶんここではお見せでけへんほうに拗れてまうんよなあ。
ま、次おうたときのお楽しみっちゅうことやな。
もしかしたらな、あずま君が最近いつも朝起きたらなんやスッキリしてるなあ、いつもさやちゃんがおっきなぽんぽん持って応援してくれるからかなあ、そういやなんかお腹も大きく……ってことになってるかもしらん。
けどな、たぶん美味いもんでも食べ過ぎたんやろか、女子ってそういうとこあるもんなあ、ってあずま君は呑気に構えとるで。
すべての真相は闇鍋の中や。
ってなことになりかねへんから、ウチは絶対にこれ以上はおふたりの私生活には関わらへんからな。これはフラグやないで。そういうアツアツなんは夏の日々だけで充分や。それ以上は、鍋から溢れてまうからな。溢れるって難しい漢字やな。英語では、どうなるんやろ? やっぱ難しいんやろか?
「んじゃ、帰りまっせ~」
さて、冒険者ギルドで手紙も受け取ったし、懐かしのエッサへ――。
バシンッ!
なんや、なんや。冒険者ギルドの扉がいきおうよう開きよったで?
こりゃ、ずっこける準備が必要か?
「ギ、ギルマスを呼んでくれっ!」
そんなら血相変えて、ボロボロになった冒険者が入ってきて、なんや叫びよった。そこらにおった人らが、みんな慌てて、「どうした?」「なにがあった?」いうて駆け寄ってきよる。ウチの大好きなステージでよくあるシーンやな。さあ、いつでもなんかおもろいこと言うてや。準備万端やで。
ん~? けど、なんやろ。あの冒険者、どっかでみたことあんなあ。
「あ……ありのまま起こった事を話すぜ……」
どこでみたんやったかなあ?
「俺たちは、ゴブリンを倒しに行ったはずだったんだ……」
ああ、そうや。確か南門で、意気揚々とゴブリンを倒しに向かっとった人らや。
「なのに、なのに! 俺たちは、アサルトボアと戦う羽目になっちまったんだ……」
そうかあ、あの下着ドロボーイノシシ、そんな名前やったんかあ。
「な、なんだってー‼ おい、タックルボアの見間違えってことは!? ……ないな。お前らがあんなのに負けるはずない……」
あ、ここのギルドマスターみたいな人が、ブルーハワイみたいな色になったで。
「き、緊急依頼だ! Cランク……いや、Dランク以上で、合同討伐依頼だ!」
……まあ、ウチには関係ないな。
うん関係あらへん。一切ないで。
いやあ、不死チート様様やなあ。
あ、ウチは、冒険者ランクは、永遠のFランクやからな。一応言うとくで。
ほな、さいなら。さっさとずらかんで。
みんな、あんじょうがんばってや~。