オデットに大いに狂わされたので身を切って2凸してきました。なお武器は盤岩結緑な模様
コミケ暑かったけどあまりにも良かった…
でもコミケの原神ブース本当に良かったしスネージナヤのストーリーも面白かったし劇団のスケジュール管理任務も良すぎて録画の手を止められなかったしサンドローネが可愛さ天元突破していたし、それにタカキも頑張ってたし!俺も頑張らないと!!
というわけで予定を少し変えて少しオデット出すけどいいよね、答えは聞いてない!*2
窓の外一面に白銀の雪景色が広がる、スネージナヤのとある日。
いつものように工廠の研究室で執務をこなしていた「あなた」のもとへ、一通の封筒が届けられた。
差出人は執行官『淑女』──シニョーラことロザリン。
封を解くと、中にはスネージナヤが誇る名門「コロレフスキー劇団」の特等席鑑賞チケットが二枚、上品な香水の香りと共に滑り落ちてきた。
『約束のチケットよ。たまには息抜きに、二人で行ってくるといいわ。
……それと、もし時間があるようなら、終演後にあの子の楽屋へ顔を出してあげてちょうだい』
チケットと共に添えられた短い手紙に「あなた」が目を細めていると、奥のデスクからひょっこりとサンドローネが顔を覗かせてきた。
「…あら、何かしら。ロザリンからの手紙?」
───うん。前に話していた、劇団の公演チケットを手配してくれていたんだ。
終わった後に、楽屋へ挨拶もしに来てほしいって
「……ふーん、随分と気の利いたことをしてくれるのね」
「あなた」の説明と共に手渡されたチケットを一瞥したサンドローネは素っ気なく返事をしつつも、その表情にはどこか穏やかな柔らかさが滲んでいた。
「まあ、せっかく貰ったことだし?無駄にするのもあれよね。…ほら「あなた」、さっさと仕事を片付けて準備なさい。………私も終わらせるから、一緒に行くわよ」
───!…了解、すぐに終わらせるよ
なぜか言い聞かせるような感じながらも柔らかくなった口調の主人の背中に小さく笑いながら、「あなた」は支度を行うために仕事を再開したのだった。
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荘厳なシャンデリアが煌めく、コロレフスキー劇場の客席。
静寂に包まれた舞台の中央で、直後に流れた音楽と共に一人の少女がスポットライトを浴びて舞っていた。
──オデット・スペシーヴァ。
愛想を振りまくような笑みは一切なく、ただ氷雪のように澄み渡った表情のまま、完璧なまでの跳躍と回転を繰り出す。
極限まで無駄を削ぎ落としたその舞踏は、観客の呼吸すら奪うほどの圧倒的な気迫に満ちていた。
───(……凄いな…!まるで、本当に氷の上を滑る白鳥のようだ……)
息を呑んで見入る「あなた」の隣で、サンドローネもまた、じっとその姿を見つめていた。
時折「あなた」の方をチラチラと見はしていたが、公共の場という事もあり静かに舞台に集中していた。
「(……ふん。感情を殺したような部分は見えるけど…技術の精度は本物ね。ロザリンが目をかけるだけのことはあるわ)」
やがて演目は終わり、割れんばかりの拍手と歓声が響く中、オデットは淡々と一礼をしてスタッフと入れ替わるように舞台裏へと姿を消していった。
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終演後、二人はロザリンから手配されていた関係者用パスを提示し、劇場のスタッフ──クリシュに連れられて舞台裏の通路を進んでいた。
「オデットさん、執行官『傀儡』様とそのお連れ様がお見えになりました」
「…はい、どうぞ」
「このまま中へお入りください、私はこれで失礼致します」
「ええ、ありがとう」
クリシュが控えめにノックをして声をかけ、ゆっくりと扉を開ける。
そして二人の入室を確認の後、業務に戻るために踵を返した。
室内にいたオデットは、舞台の余韻に浸る様子など微塵もなかった。
既に華やかな衣装は脱いでおり、夜のファデュイ任務用と思われるインナーと装備を素早く身に着け始めている。
その化粧台の上には、器に盛られた無糖のトヴォログ*1と数粒のドライクランベリー、そして黄身を丁寧に取り除いたゆで卵の白身だけが、淡々と並べられていた。
「!…すみません「傀儡」様、こちらまでわざわざご足労いただき恐縮です」
「いいのよ、ロザリンからの手紙で来ただけだしね」
支度の手を止めてゆっくりとこちらへ振り返ったオデットは、そのまま静かに一礼をしながら丁寧に言葉を紡ぐ。
その青い瞳には、舞台上の優雅さとは正反対の、刃物のように研ぎ澄まされた冷徹な警戒が宿っていた。
「そちらの方は、「淑女」様の仰っていた「傀儡」様の助手さん…ですね?既にお聞きかもしれませんが、私はオデットと申します。……何か、私に御用でしょうか」
深々と頭を下げながらも、オデットの口調はどこまでも平坦で、その瞳の奥には厚い氷壁のような警戒が張り詰めていた。
───初めまして、オデット様。「傀儡」様の助手を務めております。
先ほど舞台を拝見させていただきましたが…本当に息を呑むほど素晴らしかったです
「……過分なお言葉、恐れ入ります。ですが、日頃の基礎鍛錬の成果を時間通りに出力したに過ぎません」
感情の起伏を一切見せず、ただ機械のように淡々と返すオデット。
舞台への誇りなど以上に、どこか己を削って義務を遂行しているかのような危ういストイックさに、「あなた」は鑑賞していた時とは違った意味で僅かに息を呑む。
「…ふーん、相変わらず愛想のない子ね。ロザリンの教育が行き届いているのかしら?でも、普段は私の実験ばかり見ているこいつがここまで感心するなんて珍しいのよ。少しは誇ってもいいんじゃないかしら」
「…そうなのですか?いえ、ですが……」
腕を組み、ツンとしながらもどこか誇らしげに助手を立てるサンドローネ。
しかし、サンドローネの言葉にオデットは少し戸惑いつつも表情をすぐ戻すと、静かに視線を「あなた」へ戻した。
「…「淑女」様から、貴方のことは伺っておりました。『真っ直ぐで優秀な子』だと。……私への新たな査定や監視の目的でないのでしたら、ごゆっくりとお過ごしください」
丁寧な言葉遣い。
けれどその行間からは、「余計な詮索は不要」「これ以上踏み込んでくるな」という明確な拒絶の気配が滲み出ていた。
───(うっ……。これ、完全にロザリン様の手先か監視役だと思われてる…?ちょっと嫌われちゃったかな……)
目の前のオデットから張り詰めた空気の裏にある微かな鬱陶しさを敏感に察知し、「あなた」は内心でちょっぴり本気で凹み、小さく肩を落とした。
すると、その様子を横目で見ていたサンドローネが、面白そうにフフンと口端を吊り上げる。
「あらぁ?随分と嫌われたものね、「あなた」。初対面のはずなのに、何か彼女の気に障るようなことでもしたのかしら?」
───してないよ……そもそも初対面だし、舞台が本当に良かったから純粋に感想を伝えただけなのに…そんな露骨に言わないでよサンドローネ、今割と本気で傷ついているんだから……
「クスッ、それは日頃の行いが悪いんじゃないかしら?…ま、私としてはあんたが他の女に愛想よく懐かれすぎるより、これくらい煙たがられている方が清々するけれどね」
───ひどいなぁ……
しょんぼりと眉を八の字にする「あなた」と、勝ち誇ったように楽しげなサンドローネ。
執行官とその助手という絶対的な上下関係のはずなのに、まるで気心の知れた間柄のような二人の掛け合いを前にして、オデットは思わず瞬きを繰り返した。
「(……なんなのですか、この空気は……?)」
オデットとしては、自身への不信などで新たに送られたロザリンの息がかかった冷徹な査定役を警戒していたはずが、あまりにも気の抜けたやり取りに張り詰めていた肩の力がすっかりと抜け落ちてしまう。
そこでふと、カチリと壁掛け時計の針が刻む音で我に返った彼女は、ハッと小さく息を呑んで佇まいを正した。
「……っ、失礼いたしました、「傀儡」様。夜間任務の時間が迫ってまいりましたので…大変不作法ではありますが、この場でお食事を摂らせていただいても宜しいでしょうか?」
「構わないわ。それとあのオルゴールが少し気になるから、触らせて貰ってもいいかしら?」
「ええ。構いませんわ…」
「ありがとう、少しこのテーブルも借りるわね」
サンドローネはそう返すと、部屋の隅の棚に置かれた小さな木箱の山へふらりと立ち寄った。
劇団のものとは少し違うようにも見える、市販の機巧オルゴール──どうやらランダム封入式のものらしい──のと思わしき山からいくつか取り出し、興味深そうに指先で突つき始めている。
主人がその場に居座ってしまった以上「あなた」も退室するわけにはいかず、部屋の壁際で静かに控える形となった。
オデットは小さく一礼すると化粧台の前に腰掛け、器に盛られたトヴォログとクランベリー、そしてゆで卵の白身を機械的な動作で口へと運び始めた。
咀嚼音すら立てず、冷えた水で淡々と流し込むその姿。
極限まで脂質を削ぎ落したメニューだが、冷え切ったスネージナヤの夜に、これから任務へ向かう人間の胃袋へ収めるにはあまりにも過酷な食事だった。
───(……あの食事、身体作りの徹底ぶりは凄いけれど、この寒さの中で冷たい水分とタンパク質だけじゃ、内臓が冷えて次の現場で身体が動かなくなる……)
傍目からチラリと見えたものと舞台裏やこの後のスネージナヤの気温、そして彼女の過密日程*2を瞬時に計算した「あなた」は、意を決してオデットへと声をかけた。
───お食事中すみません、オデット様。この楽屋内に、給湯器かお湯の出る設備はありますか?
「?ええ、あちらのパーテーションの奥にございますが……」
食事の手を一瞬止め、質問の意図がわからず怪訝そうに行き先を指さすオデット。
───ありがとうございます。少々お借りしますね
そう言って「あなた」は自身の鞄から小瓶と私物の少し大きめのマグカップを取り出すと、足早に楽屋の扉を開けてその先のパーテーションの奥へと姿を消した。
オルゴールをいじっていたサンドローネと、スプーンを持ったままのオデットは、自然と顔を見合わせる形になった。
「……何をするつもりなのかしら、あいつ」
「……さあ。私にも皆目見当がつきません」
執行官と部下でありながら、どこか気の抜けた会話がポツリと交わされる。
それから一分も経たないうちに、「あなた」が湯気の立ち上るカップを手に戻ってきた。
ふわりと、上品な香味野菜と澄んだブイヨンの優しい香りが楽屋を満たす。
───オデット様、これを受け取っていただけますか
「……お気遣いは感謝いたしますが、結構です。私は舞台と任務のため、口にするものの成分とカロリーを厳密に管理しておりますので」
「あなた」からの見知らぬ差し入れを警戒し、毅然と断りを入れようとするオデット。
しかし、「あなた」は臆するどころか穏やかな笑顔のまま、淡々とその中身を解説した。
───ふふん、ご安心くださいオデット様。これは脂質を極限まで濾過して完全カットした特製のコンソメスープです。具材の根菜も消化に負担をかけないよう極繊細に刻んでありますし、激しい発汗で失われた塩分とミネラルを補給し、冷えた内臓を温めて血流を戻すよう調整してあります。
カロリーもごく僅かですので、オデット様の身体作りやお食事の計算を狂わせることはありませんよ
「………っ、で、では…一口だけ……」
舞台直後の疲労、これから向かう極寒の夜間任務、そして徹底した食事制限──その全てを完璧に見抜いた上での、非の打ち所がない処方。
自身の痛覚がほぼなくなっているから気にしなくてもいい──なんて言葉も挟む余地すらなく理路整然としたその説明に反論の言葉を失ったオデットは、差し出された温かいカップを吸い寄せられるように両手で受け取った。
立ち上る湯気を浴びながら、恐る恐る口をつけて一口含む。
その瞬間、オデットの青い瞳が丸く見開かれた。
凝縮された野菜の旨味と、染み渡るような優しい温かさが、張り詰めていた内臓と神経をじんわりと解きほぐしていく。
「…!美味しい……」
思わず口から零れ落ちた、飾らない本音の呟き。
その様子を見ていたいつの間にかオルゴールを置いていたサンドローネが、ここぞとばかりに腕を組み得意げに胸を張った。
「フフン、当然でしょう!私の優秀な助手が用意したものなんだから、あんたの舌に合わないはずがないわ!」
───えぇ…なんでサンドローネがそんなに誇らしげなの…?
「な、何よ!いいじゃないバカ「あなた」!助手の功績は主人の功績に決まっているでしょう!!」
冷静に指摘され真っ赤になって声を荒げるサンドローネと、そんな主人に肩をすくめる「あなた」。
そんな二人のやり取りをカップ越しに見つめていたオデットの胸から、張り詰めていた警戒の氷が段々と溶け去っていくのを感じた。
彼女はカップを台に置くと、居住まいを正し「あなた」に向き直って深々と頭を下げた。
「……先ほどまで、監視役などと疑ってしまい大変失礼いたしました。貴方は……本当に「淑女」様の仰る通りの、誠実なお方でしたね」
顔を上げたオデットの表情はあまり変わっていないが、その雰囲気は先ほどまでの冷徹さが嘘のように温かいものへと変わっていた。
そして彼女は、自分でも無意識のうちに衝動のままその両手を伸ばすと──「あなた」の手を、きゅっと優しく包むように握りしめた。
「……温かい、ですね。あの…また私の舞台を観にいらしてください。…その、またお話させていただけたら…嬉しいです」
───えっ…、あ、はい!喜んで──
「ちょっっと待ちなさい…?」
突如、二人の間にサンドローネが割って入る。
荒々しくはないがそれでもオデットの手は加減をして持ち、しかし「あなた」の手だけはまるで握り潰そうとするかの如く強く握りお互いの手を離す。
額に青筋を浮かばせながら表情だけは笑顔で、だが目だけは笑っていない状態でサンドローネはそのまま口を挟む。
「ごめんなさいねオデット。私たち、これから大事な仕事があったのを思い出したわ」
───えっ…?そんなのなかったような「あったのよ。いいわね?」アッ、ハイ……
「そんなわけだから任務の邪魔しちゃいけないし、私たちはここで失礼するわね。ほら行くわよバカ「あなた」!」
───は、はい…。あ、スープ冷めないうちに飲んでくださいねオデット様~~!
「え、ええ…そちらもお元気で……」
バタンッ!と勢いよく楽屋の扉が閉まる。
嵐のように去っていった二人の気配が遠ざかっていくのを感じながら、取り残されたオデットは、握りしめていた自分の掌に残る微かな温もりを見つめた。
そして、まだ湯気を立てているスープのカップを再び両手で大切そうに包み込むと、静かに口元を緩めるのだった。
─おまけ─
あれから、数週間が過ぎた。
劇団の厳しい稽古を終え、汗を拭いながら椅子に腰掛けたオデットは、持参した保温マグの蓋を静かに開けた。
立ち上る湯気を浴びながら一口啜るが──彼女は小さく眉を寄せる。
「……やはり、違いますわね」
あの日、楽屋で口にしたあのスープ。
後から市場を調べてもどこにも存在せず、自身で予定の合間を縫って調査をした所…どうやらあの時の「傀儡」の助手──「あなた」という青年が、「傀儡」のために独自に研究・調理と調合した一点ものだと知った。
その時のものを見よう見まねで自作してはみたものの、あの時身体の芯まで染み渡った優しい味には遠く及ばなかった。
あの日以来、彼には一度も会えていなかった。
どうやら工廠での激務に加えて、何やら劇場関係の連絡業務だけ意図的とも思えるほど不自然に彼だけが外されているらしい……という噂を耳にした。
「……「傀儡」様にも、あのような一面があるんですね」
あの日の楽屋で見た、これまでの普段の業務の姿からはとても想像さえもつかなかった彼女の姿を思い出し、オデットは小さく苦笑する。
けれど、会えない日々が続くほどに──あの時迷いなく差し出された温かいカップと、穏やかに微笑んでいた彼の横顔が、鮮明に脳裏を掠める。
「……また、お会いしたいですわね。「あなた」さん…」
スネージナヤの冷たい風が入口から少しとはいえ吹き抜ける中、オデットは温もりを求めるようにマグカップを両手でぎゅっと包み込み、遠い工廠の空を見つめていた──。
「傀儡」→主人の判決を言い渡す……(接触禁)
「あなた」→これで嫌われてないかな?なんて呑気に思っている。劇団関係の任務だけ外されているのには気づいていない
オデット→また会いたいですわ…
ヴォジャニーツァ(今回未登場)→オデットから面白い予感がしている
試験勉強の合間に衝動で書いたやつなので、普段以上に荒いかもです。
確認はしていますが、あったらごめんなさいと先行ドゲザンしておきます。(せんせいのツメ)
いつもの投稿時間過ぎちゃったけど、許してヒヤシンス