(当たるまで回しつつ)書けば出る、ということですね。
あまりにもサンドローネが可愛すぎる。もういっそのこと、レベル100にしようかな…
テイワットで冒険者をしたり何かしらで正規にお金を稼ごうと思うのなら、どこの国でも必ず一度は冒険者協会へと立ち寄るだろう。
そしてそんな冒険者を迎え入れる看板娘を、誰でも見ただけではなく話した事や依頼を受けたことさえあるだろう。
その受付にいる者の名は、キャサリン。
「星と深淵を目指せ!ようこそ、冒険者協会へ!」という挨拶から始まり、誰とでも明るく元気に接し、時には親身になって話を聞いたり、またある時にはここぞという場面で発破をかけて冒険者たちを鼓舞したりと、冒険者にとっては様々な場面でなくてはならない貴重な存在だ。
「そこのネジ、ちょっと回しすぎ。曲がらないように向きも気を付けて」
───わかった、そしたら次はここの回路繋げておくよ
「ええ、お願いするわ」
今、そんなキャサリンの大規模アップデートに向けて、「あなた」とサンドローネは研究室で共同で最終調整を行っていた。
世界中で冒険者を迎え入れているキャサリンたち。
実は、その正体はサンドローネが造りあげた最高傑作の人形なのだ。
その質感や肌触り、立ち振る舞いに至るまでを限りなく人間に寄せてはいるが、しかし根本は精緻な機械。
ファデュイとして世界中に張り巡らされたキャサリンの情報網を維持し、今後の活動を円滑に行うためにも、定期的なメンテナンスやアップデートは必要不可欠な工程だった。
今回はそんなキャサリンの、主に感情や受け答え、そして思考モジュールの最終調整と確認を行い、問題がなければこれをプロトタイプから各国の
それが、今日二人が課せられた重要な仕事だ。
「…よし、これで完了ね」
───お疲れ様。排熱補助いる?
「ありがとう、助かるわ。「あなた」も水、どうぞ」
───ありがとう、正直凄く助かる
「…大袈裟よ」
冷却用のパーツを手渡しして一息つこうとしたところで、「あなた」はサンドローネから水を手渡される。
お礼を言うとなぜかそっぽを向きながらそう言った主人を横目に、「あなた」も水を飲む。
必要な事とはいえ、やはりこういったことはどんな物を作っていても大変だな…と改めて身に染みて痛感していた。
ましてや、キャサリンは彼女の最高傑作だ。
彼女曰く、キャサリンの製作にはほんの表面的な部分とはいえ、自身の構造を模倣しているとのこと。
つまりそれは、かの「奇械公」であるアラン・ギヨタンの技術でもあり、それを間近で見て学ぶ栄誉をいただけているということだ。
そんな仕事を手伝わせて貰うだけでも学べることが非常に多くて、その上技術者として相当信頼されている、という意味もあってとてもありがたいと感じている。
つまり、今この仕事は「あなた」にとって非常にやりがいがあるのだ。
なんなら、プロトタイプのキャサリンには人間の感情や思考を理解しやすいようにと、一時期「あなた」やサンドローネの思考を読み取っていたこともある。
自身の構造だけでなく思考モジュールすら研究のための材料の一つとして使うその姿…さすがだぁ…!
などと、「あなた」は思わずどこかのレプリロイドの隊長の部下みたいなセリフが出てしまうほどだった。
───もっと、沢山知識をつけないとだなぁ……
「何がかしら?」
───ううん、なんでもない
「…そう。ねえ、ちょっと聞きたいことが────」
「ガガッ!ピピピッ…」
いけない、つい独り言が出てしまった。
「あなた」はそう思い本当になんでもない事のため訂正を入れると、プロトタイプからここまでで一度も聞いたことのない音が鳴り出した。
何かエラーでも吐いたのだろうか?と疑問に思うが、初めて見るパターンなので何もわからないというのが正直なところだった。
「あら?これは…エラー…?」
───何だろう…?何がどうなって…
「あなた」とサンドローネが慎重に近付くと、突然プロトタイプがぎゅるん!とこちらを向き出した。
そしてそのまま、二人の方──厳密には、ずっと「あなた」の方──を向いて、ずんずんと歩き出し始める。
突然のことに困惑し出す二人だったが、プロトタイプが「あなた」の目の前に止まると、突如喋り始めた。
「───エラー。エラー。
───………はい?
「─────なんて?」
あまりにも突飛というか前後がわからないどころじゃない謎のプログラムと指示内容に、揃って言葉を失う
開いた口が塞がらない「あなた」は言うまでもなく、主人のサンドローネに至ってはまるでどこぞの妖精騎士のように目を大きく見開き、信じられないというような表情をして固まっていた。
少し経つと指示がないと確認したのか、プロトタイプが自分から動き出し「あなた」を抱きしめ始めた。
───ぐえっ!苦し…く、ない?え、むしろ何か程良い力加減と…えっ…!?
「これが、お兄様の体温……。これが、「心地良い」という感情なのですね」
「───はっ!!?ぷ、プロトタイプ!さっさと離れなさい!!「あなた」も!こんなことで鼻の下を伸ばさない!!」
───うぇ!?い、いやいや!そんなことしていな
「いいえ、お兄様との
声は無機質に、しかし目にハートが浮かびながらどこかトロンと蕩けているとさえ見える瞳のまま、プロトタイプは「あなた」の胸元に更に強く身体をすり寄せる。
そして、ふわりと柔らかい肌の質感──顔どころか豊満な胸の感触までもが、ダイレクトに「あなた」の身体へと押し付けられた。
余談だが、通常のキャサリンと違いプロトタイプだけは更新分を含めた情報やバックアップなどの通常より多いデータを自然に抱えるために胸部を通常より大きく設計してある。
他にも設計段階では冒険者から好感を得やすくしスムーズな情報の入手をしようと考えていたなどのしっかりとした理由があり、ましてやその製作に「あなた」は一切関わっておらず主人のサンドローネだけが必要と判断して搭載していた、というのは最早言うまでもないだろう。
「あぁ…お兄様。とっても、あったかいです…♡」
───え、あ、あのぉ…キャサリンさん?その、腕に、何か当たって…っ!?
主人の目の前で繰り広げられるプロトタイプの大胆すぎるお色気アタック、そして至近距離から伝わる「主人の最高傑作」の柔らかすぎる衝撃に、純情な「あなた」の思考モジュールは一瞬で限界を迎えた。
ボンッ!と幻聴で聞こえるほどに瞬時に顔を完熟トマトのように真っ赤にしてフリーズし、意識が飛んでガクッと膝から崩れ落ちてしまう「あなた」。
「お兄様!?深刻なエラーを検知…!安心してください、キャサリンが全力で支えます!」
そのまま顔から床にダイブするところだった「あなた」の身体を、プロトタイプは甲斐甲斐しく、しかし絶対に離さないという強い意志を込めて、その胸元へと更に強く抱きしめた。
ひとまず「あなた」に怪我がなくホッとしたのも束の間、プロトタイプのその独占欲全開の行動に、ピキリッと、サンドローネの額に青筋が浮かぶ。
「…プロトタイプ、命令よ。「あなた」をこちらに寄越しなさい。主人の命令は絶対だと忘れたのかしら?」
「先程と同じ回答で、拒否致します。そして、マスターにお願いがあります」
「…ふーん、いつからこんなに図々しくなったのかしら。いいわ、どうせ何を言うか見当がつくし、聞くだけ聞いてあげるわ」
「では遠慮なく。…今後のメンテナンスやアップデートは、「あなた」に行わせてください」
「………は?」
「確かに技術や手際などではマスターの方が圧倒的に高いのは事実です。しかし私の中の幸福回路に従い時間がどれほどかかろうとも、「あなた」の視線や熱を感じながら行う方がより効率的に駆動でき、更にその分幸せな時間を過ごすことができるのです。そしてそれによってその後の活動に大きく効率補正がかかりますので」
ブチィッ!!
サンドローネにとってプロトタイプからの明確な裏切りとも取れる発言だけでなく、「あなた」の独占欲を隠そうともしないその態度に、ついに最後まで聞く事すらなく自身の一線と共に大人しく話そうなどと甘く考えていた理性すらブチ切れる音がした。
「…ふ、フフ…フフフフ……!馬鹿も休み休み言いなさい!!「あなた」は私の
「いいえ違います。キャサリンはお兄様の才能を潰す気はありません。むしろ、お兄様の愛によって才能を200%引き出すためのいわば共同生活を提案しているのです。」
「きょ…!?あっ貴女、自分が何を言ってるのかわかっているの!?開発者を差し置いて、私の助手に手を出そうだなんて───!」
「ええ、勿論です。そもそも───────。」
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次々に火に油を注ぐプロトタイプの暴論に、研究室内の温度が物理的に上昇していると錯覚するほどのサンドローネからの怒号が響き渡る。
しかし、そんな主人の最高傑作の腕の中で白目を剝いていた「あなた」の意識は、その喧騒によって深い闇の底からゆっくりと浮上しつつあった。
───……んっんん…。あれ、ここは…?
「だから何度も言わせないで!─────「あなた」は───で────だから────!」
「それは違います。「あなた」に─────メンテナンスを───して───────しにいく──それがキャサリンの、最優先シークエンス─────でして───。」
ぼんやりとした視界の先で、何やら恐ろしい剣幕で言い争う二人の美少女の姿が映る。
そこでようやく、「あなた」は自分がまだプロトタイプの豊満な胸に抱きとめられている状態のままであること、そして主人の目が完全に据わっていることに気が付き、一気に血の気が引いていく。
───ひっ、え、あ、あの…二人とも…?
「「!」」
「あなた」が小さく声を出した瞬間、プロトタイプとサンドローネの二人はまるで示し合わせたかのようにほぼ同時に「あなた」に気付き、こちらの方に振り向いた。
「「起きたの(です)ね、「あなた」(お兄様)!」」
声が重なりながらも、その瞳には全く異なる種類の「重い執着」が爛々と輝いていた。
直後。サンドローネは顔を真っ赤にしながら、プロトタイプは無機質なハート目のまま、「あなた」の左右の手をそれぞれガシッと掴んで各々で叫んでいた。
「ちょうどいいわ!「あなた」からも言ってやりなさい!私とこいつなら、私を選ぶってね!」
「お兄様。キャサリンを選び、何卒駆動効率の活性化を…!」
意識が戻って間もない中での突然の選択。
「あなた」は当然混乱するが、暫く沈黙を貫くと「あなた」はプロトタイプへゆっくりと手を伸ばし、その頭に優しく手を置いた。
───プロトタイプはいつも頑張ってて偉いね、よしよし…。でも、君のご主人の言葉もちゃんと聞いてくれると、お兄様は嬉しいかな
「…!!」
板挟みになった「あなた」は、まず暴走しているプロトタイプを落ち着かせるのが先決だと判断した。
頭に置いた手をゆっくりと動かし撫でながら優しく言葉を紡ぐと、プロトタイプの目が通常の目に戻り、動きも落ち着いて無事に沈静化した。
「…お兄様からの直接承認と命令を受信、これを受諾します。……幸福回路が完全に満たされた為、これより高負荷データの処理及びその一斉送信を行うために長時間のスリープモードへと移行します」
スッと立ち上がりプロトタイプは自身の行動を丁寧に報告してから、もといた研究室の奥の部屋へと自主的に戻っていった。
それをしっかり見届けてから、「あなた」は緊張が解けたかのように息を吐いた。
───ふぅっ、これで落ち着いたかな…。大変でしたねぇ~サンドローネ。…サンドローネ?
「………フンッ」
スタスタと「あなた」を無視して研究室の自身の席まで移動し、どっかりとわざとらしく大きく座ったサンドローネ。
彼女はそのまま椅子をくるりと「あなた」に背を向けるように回すと、背もたれ越しでもわかる程露骨に椅子の上で両膝を立てて胸に引き寄せ、両腕で脚を抱え込む姿勢*1を取った。
プロンニアもさすがに主人の機嫌を察してか、どことなく気まずそうにその巨大な腕をモジモジとさせているのが「あなた」の視界の端に映った。
───あ、あの…サンドローネさん?もしかして、怒ってます…?
「……別に、怒ってなんかいないわ。「あなた」が誰をよしよししていようが、誰に甘い言葉を囁こうが…私の知ったことじゃないもの。どうぞ?あの子のスリープモードが明けたら、一生専属で愛を注いでやればいいじゃない」
───い、いやいや!あれはあの場を収めるための苦肉の策というか、そうしないと僕あの時プロトタイプに掴まれて離してくれなかったからで……!僕は
「!!ふ、ふん!どうだか…、「あなた」ってば他の人たちにも随分と気に入られているようだし?その言葉にどれほどの信憑性があるのか、本当に怪しいところだわ」
───え、そうなの?知らなかったな…誰なんだろう…
「言うわけないじゃない…!こんなしょっちゅう癇癪を起こして小うるさい私なんかよりも、もっといいところに、なん、て……あ、あれ……?どうして……」
───え、サンドローネ…?
「ば、ばか…!こっちを…みるなぁ…」
ポタ、ポタ…と。
無意識のうちに口から出た自分自身を責める言葉を続けていく度に、胸がキュッと絞めつけられる感覚が増え、それを無視しながらも続けていくと自然と涙が零れていってしまっていた。
───サンドローネ……
泣き顔を見られたくない一心で、膝に顔をギュッと埋めて小さな身体をさらに縮こまらせる主人。
「あなた」はもう、ただ慌ててオロオロするのをやめた。彼女が今、どれほど傷つき不安に怯えているのかが、その震える小さい背中から痛いほど伝わってきたからだ。
「あなた」は静かに歩み寄ると、彼女の正面で床に膝を突き、目線を彼女の膝元へと合わせる。
───見るな、って言われても見るよ。だって、僕の主人はサンドローネだけなんだから。
「っ……。う、うるさい……。さっさと、あの子のところへ───」
───行かないよ。さっきも言ったでしょ?僕は
他の誰のところにも行かないさ。
「あなた」はそっと手を伸ばし、彼女が抱え込んでいる小さな膝の上に、自分の手を重ねた。
───小うるさいなんて思ったこと、一度もないよ。僕は、誰よりも技術に真摯で、不器用だけど本当は凄く優しいサンドローネが作ったキャサリンだから手伝いたいんじゃない。
サンドローネが作ったものだから、サンドローネの隣だから、ここで働きたいんだ。
「……っ、……、……〜〜〜っ…!」
真っ直ぐな「あなた」の言葉。
それは、彼女が一番欲しかった「自分という存在への絶対的な肯定」だった。
膝に顔を埋めたまま、サンドローネは声を押し殺して、しばらく肩を小さく震わせていた。
やがて少しだけ涙が引いたのか、彼女はゆっくりと顔を上げた。
林檎なんて生温いほどに顔を真っ赤に染め、涙で少し腫れて潤んだ瞳で、「あなた」をじっと下から見つめる。
怒らせてしまったかもしれない、と少し身構える「あなた」だったが。
彼女の手が、そっと「あなた」の服の裾を、消え入りそうな力でキュッと掴んできた。
「…ほんとうに、どこにも、いかない…?」
───うん、約束するよ
「…じゃあ……、その………」
恥ずかしさに耐えかねるように一度ギュッと目を瞑り、それから意を決したように顔を上げると、椅子の上で抱え込んでいた脚を崩し、んっ!と言う声と共に、変わらず顔を真っ赤にしたサンドローネが「あなた」へ両手を広げだした。
───…えっと、これは…?
「…あの子にした以上のことを、私にしなさい…!」
先程自分の目の前でプロトタイプがされていた、そして本当はずっと羨ましくて堪らなかった「よしよし」。
更に、度々言っていた「あなた」の体温。
独占欲と、寂しさと、愛おしさと、それ以上を求める欲求がごちゃまぜになった最高に可愛いおねだりが、彼女の口から飛び出たのだった。
「あなた」→サンドローネが満足するまでハグしながらなでなでをした。
「傀儡」→……大きいパーツにした方が、「あなた」は喜ぶのかしら…
(予約投稿してる話の合計6話分が全てイベント開始前に書いたものだから、齟齬が発生するかもしれないという事実に投稿前の最終確認時に気付いて、死んだ目をしている作者の図)
(前書きと後書きは昨日まとめて書きましたけど、それ以外は直すとなると時間がかかるので…)
(予約投稿している現在時点で、ちょうど今日から15日までリアルのことで暫く忙しい状態になっているので手直しする余裕がないです。そこは本当に申し訳ない…)
(なので、もしこれが今回のイベントのストーリーで色々違うとかそういうのがあったら、こっそり活動報告にでも置いておいてください……!時間がある時にしっかり見てできる限り反映させていけたらなと思います。)