娘さんをわたしにください!
(直後、四方八方を多数の元素を漲らせている戦闘用マシナリーに囲まれる)
ファデュイ執行官、第三位「少女」コロンビーナ。
一見すれば可憐で儚げな少女でありながら、なんとも掴みどころのない非常に奇異な立ち位置の存在。
しかし、その実力は執行官のトップ層に君臨する……とのことだが、実はファデュイにおいてそんなコロンビーナが何か仕事らしい仕事をしているのを見た者はいないという。
いつも敷地内を散歩しているか、色んな場所で歌を歌っているか、ボーッとどこか別の場所を見ているか…。
執行官同士でのお茶会などの個人的な要素を除くと、部下も含めてこれらしか普段は知りえないのだ。
その上で女皇陛下からはお咎めも指摘すらも一切ない、正真正銘の不思議ちゃんだ。
少なくとも「あなた」は、今日までそのように思っていた。
いつものように仕事を終え、いつものようにお茶を嗜みつつ気楽にサンドローネと会話を交わし、帰宅して一通りの家事を終えてから眠りについた「あなた」。
次に「あなた」が目を覚ますと、そこはいつもの自室ではなかった。
白い羽や青白い花などが周囲を埋め尽くし、どこか浮世離れした幻想的な雰囲気をまとった光景が視界に飛び込んできたのだ。
そして、「あなた」の頭に触れる感触もいつもの枕とは違い、柔らかくも心地よい弾力───そう、まるで人肌のような優しい温もりを感じていた。
「あ、起きた?おはよう、助手くん」
突然自身の上から聞こえる声。
びっくりして上を見上げれば、「あなた」の頭をその細い太ももに乗せ、アイマスク越しにこちらへ覗き込んで小さく微笑んでいる「少女」コロンビーナの姿があったのだ。
───……へっ?あ、あばばばばばばばば!?こ、こここコロンビーナ様……っ!!?
ドシンッ!!
遅れてやってきた大パニック。
なぜ自分はここにいるのか、なぜファデュイ執行官第三位の太ももを枕にしているのか。
無駄に器用にコロンビーナに衝撃を与えず横に転んで盛大に背中から落ちた痛みと共に、思考モジュールが音を立てて消し飛ぶ「あなた」の額に、彼女はそっと自身の冷たい指先をあてて楽しそうに笑う。
「ふふっ、面白い顔。危ないよ急に動いたら…、背中は大丈夫?」
───え、ええ…。どうも……
「…ここは私のお部屋。ちょっとお願いしたいことがあってね、夜中に君を連れてきちゃったんだ」
───は、はい…!?つ、連れて…??
余談だが「あなた」は現在、その技術の高さから知るのはほんの一部だけとはいえ、既に「傀儡」と同等かそれに迫るほどの実力を買われている。
つまりそれは、他の国であれば国家機密にも迫り得る程の重大事項でもあるのだ。勿論「あなた」はそんなこと知る由もないが。
しかしそんな存在を、まるで「散歩の時についでで見つけた綺麗な石をつい拾って持って帰っちゃった」のようなノリでコロンビーナは「あなた」に告げたに等しい。
───っておいいいぃぃぃ!これめっちゃまずいじゃん!!怒られる!怒られちゃう!!
「大丈夫だよ、お願いを聞いてもらったらすぐ返すから」
───い、いや、そうじゃなくてですね……
ドガシャァァァァン!!
地震か爆発かという轟音と共に、コロンビーナの私室の壁が見るも無残に粉々に吹き飛んだ。
立ち込める硝煙の向こうから現れたのは、目を血走らせ、般若も思わず裸足で逃げ出すほどの怒髪天でプロンニアを控えさせる主人───サンドローネであった。
「コ・ロ・ン・ビ・ィ・ナァァァ!!あんたは人のお茶菓子や研究室の私物に飽き足らず、私の「あなた」にまで手を出すなんて……いい度胸してるじゃないのよぉぉぉ!!」
時間になってもいつもなら来るはずの助手が姿を見せないという焦燥と、密かに警戒していた天敵が「あなた」を自室に連れ込んでいるという激
完全にリミッターの切れた主人の大絶叫が、幻想的な部屋に響き渡るのだった。
───さ、サンドローネ…!
煙の中から現れた
「いらっしゃいサンドローネ。入るのはいいけど、壁を壊すのは良くないよ?」
「あんたに言われたくないわよ!いいから私の「あなた」を返してちょうだい!!」
殺気立つ主人。それに合わせてプロンニアも駆動音を響かせる中、コロンビーナは相変わらずフワフワとした口調で、しかし絶対に譲らない笑みを浮かべた。
「やだ。……だって、サンドローネばっかりずるいもん。前に遊んでたおもちゃもそうだし、この前の
「っ……!なんで、それを知って…」
「だからね、私にも作ってほしいんだ。……そうだなぁ、おもちゃもいいけど…私だけのために歌を歌ってくれるオルゴールみたいな、特別なもの。……それを作ってくれるまで、助手くんは私のもの」
「なっ…!あんた何勝手なことを言って───」
サンドローネが激昂して掴みかかろうとした、その瞬間。
このままだと執行官同士のガチの地域破壊抗争にまで発展しかねないと察知した「あなた」は、慌てて二人の間に割って入った。
───ま、待ってください二人とも!分かりました、作ります!作るので喧嘩だけは勘弁してくださいコロンビーナ様!
「本当?やったぁ~」
「ちょっと「あなた」!?なんでそんな条件飲むのよ!帰るわよ、コロンビーナの悪ふざけに付き合う必要なんてないでしょ!」
───いやいや!ここで断ったら僕、物理的にここに永遠に監禁されちゃいますから!それに、ここで戦われたら部屋が同じ目に遭うどころじゃ済まないですし!
「うぐっ……、それは、そうだけど…」
正論を突かれ、ぐぬぬと悔しそうに奥歯を噛み締めるサンドローネ。
更に余談だが、「あなた」はコロンビーナについてを殆ど全くと言っていいほど知らない。
ただ、主人の愚痴の中によく「自室の扉の前で歌ってくる迷惑な奴」だの、「お茶会で礼儀作法すら知らない失礼な奴」だの。
あるいは「普段ポワポワしているくせに変なところで鋭くて侮れない」だの、「背中のゼンマイが気になったからってずっと後ろからついてきて意味がわからない」だの──といった散々な内容ばかりだった。
その上、姿すら
何はともあれ、こうして「あなた」はコロンビーナの私室の片隅で、般若のような顔で自分を
「…ちょっと、「あなた」私の時よりも気合入ってないかしら…?違う?ふーん……」
「へえ…凄く上手だね。いつもこんな感じで作ってるの?」
「……凄いわね、いつの間にそんな技術まで…それなら、今度はあの業務も任せてみようかしら…」
「………*1」
───……なんか、集中しづらいな…
製作時、終始左右から様々な口出しや視線が絶えなかった為、「あなた」がそこそこ集中できなかったのは言うまでもないだろう。
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───ふぅ……よし、できました!コロンビーナ様、こちらがご所望の品々です!
「わぁ…!」
あれから数時間、色々と
テーブルの上に並べられたのは、二つの美しいマシナリーと一つの御守り。
一つ目は、まるで本物の鳥のように滑らかで非常に精巧な自律型の小鳥マシナリー。
一見するとなんの変哲もない鳥型マシナリーでしかない。
だが、ここで「あなた」が自信満々に口を開いた。
───その鳥を肩に乗せて何か歌ってみてください。簡単なのでも難しいのでも、好きなのをどうぞ
「え?うん、やってみる」
そう頷くと、コロンビーナは小鳥マシナリーをまるで本物の鳥のように大事に手に取り、それを肩に乗せてから普段よく歌っている歌を口ずさむ。
するとコロンビーナの声に合わせるように、鳥型のマシナリーから美しいコーラスや即興の伴奏が流れだしたのだ。
更にその音はコロンビーナにとって耳や歌の邪魔にならないどころか、流れるたびに不思議と気持ちが落ち着いてきて、もっと歌いたくなるというような気分になっていくのを感じた。
「凄い…なんか、不思議と落ち着くような感覚がする。これは?」
───これは歌った相手の音波を聞き取り、そのピッチや感情をリアルタイムで分析してそれに合ったコーラスや伴奏を奏でる機能が搭載されているんです。
そして、その音には周囲の微弱な振動をカットしてコロンビーナさんの調律する効果まで組み込んであって……、あー……
「……?」
完成した時のいつもの高揚感を抑え切れず「あなた」は技術者目線の小難しい話し方をしてしまった為、そういった単語を聞き慣れていないコロンビーナは途中からずっと首を傾げていた。
コホン、とわざとらしく咳を軽くした「あなた」は、言い直さなきゃな…と内心で自身に言い聞かせつつ修正をかけることにした。
───ごめんなさい、難しく話してしまいました。要するに、コロンビーナさんの歌った歌に合わせた音楽と気持ちを落ち着かせる音を、耳の邪魔にならないように自動で優しく流すやつなんですよ。
勿論、この玩具自身が歌ってそれを聞くのもできますよ!
「そうなんだ。ふふっ…機械のはずなのに、なんだか本物の鳥みたいにかわいいね」
本当に肩に止まった小鳥を優しく撫でるかのように触れながら小さく微笑んだ彼女に、「それは良かったです」と安堵しつつ「あなた」は答え、次のパレット型のマシナリーを手に取ってから再び説明に入る。
───二つ目はこれです。コロンビーナ様が頭に浮かんだものを形にして出してくれるんですよ。試しに何かやってみますか?
「そんな事できるの?うーん…なら、月霊にしてみようかな」
───そしたら、それを頭に思い浮かべながらこれを持ってください
言われた通りにパレットを手に持ちながら静かに思い浮かべる。
するとマシナリーが光りだし、機体の中からまるで筆を持った人の手のように小さな手がいくつか伸びて空中に何かを描き始める。
やがてそれはくっきりと形になりコロンビーナの思い浮かべる月霊と同じ姿になると、そこに命が吹き込まれたかのように自然と動き出しふわふわと自在に飛び始めた。
「わっ、凄いね…!本当に同じのが出てきた」
───そりゃあもう!けど、維持できるのは数分が限界なんですよね……
たはは…と頭をかきながら苦笑する「あなた」を余所に、コロンビーナはパレットで生み出した月霊と楽しく飛び回って遊んでいた。
少し経つと、コロンビーナは満足した様子で「あなた」の目の前に戻ってきた。
それを確認すると、「あなた」は手に予め持っていた御守りをコロンビーナの首にかけた。
「すごく楽しかった。ん?なにこれ…」
───おまけです。まあ御守りのようなもの、と思ってください
「おまもり?って、なに?」
───あー…まあ、簡単に言えば無事でいられますようにってお願いを込めたものですね。
稲妻という国での伝統的な縁起物の一つだそうです。
「無事を…?でも私、危険もなにも…そもそもここから出たことないけど」
───知っています。でもまあ…余った部品で適当にササッと作ったものなので、もし要らなかったら捨てちゃってください
「そうなんだ……うん、わかった。離さず持っておくね。他のおもちゃも、大事に使うね」
───お役に立てたようで、何よりです。………あの、これは?
説明を終えて離れようと一歩下がると「あなた」の手を優しく、しかしギュッとしっかり両手で握ったコロンビーナが、静かに「あなた」をアイマスクごしに見つめていた。
「ありがとう、助手くん。1つだけじゃなくてこんなにたくさんの素敵なものを作ってくれて、すっごく嬉しい。……最初はね、サンドローネをからかうだけのつもりだったんだよ?」
───え?
「……は?」
コロンビーナの、彼女特有とでも言うべき浮世離れした甘い香りが鼻腔をくすぐる。
それほどまでに、コロンビーナはいつの間にか「あなた」に接近していた。
───(ち、近い…!なんだこれ、すごく…いいにおい……!!)
「私ね、一生懸命私のことを考えて作ってくれる君を見てたら……このおもちゃも嬉しいけど、私は、それよりも君のことが──」
「玩具として気に入った親愛」なのか、それとも人外の彼女が初めて気づいた「別の何か」なのか──その境界線の言葉を紡ごうとした、まさにその時。
ガシッッ!!…と。
「あなた」の首根っこを、プロンニアの巨大な機械腕が背後からガッチリと掴み取った。
「…そこまでにしなさい、条件はクリアされたわ。帰るわよ「あなた」、まだ今日の分の作業が山積みなんだからね…!」
顔が怒りを通り越して虚無になり、ハイライトの灯っていない漆黒の瞳をしたサンドローネが、「あなた」をプロンニアで強引にコロンビーナから引き剥がし、まるで獲物を回収する猛獣のごときスピードで研究室へと連れ戻していく。
───へっ?うおおおお!!?痛い痛い痛い!!痛いですってサンドローネ様ぁ!!
「うるさいわね!「あなた」は私の助手なんだから、他の女の部屋に長居してんじゃないわよ!!あと様要らない!!」
嵐のように去っていく主従の後ろ姿。
粉々に破壊された壁の向こうへ消えていく「あなた」の姿を、残されたコロンビーナは手渡されたパレットと小鳥マシナリーを愛おしそうに抱き締めながら、アイマスクの奥で今まで誰にも見せたことがないような、切なくも愛おしそうな
どう解釈するかは、あなた次第───。
「傀儡」→空気読んで黙ってたけど、最後のはさすがに看過できなかった
「あなた」→一番丸く収まる方法にしたのに…
「少女」→ふふっ…どっちだと思う?
おばあちゃんが言っていた
もし学パロがあるなら、コロンビーナは他にはそんな素振りミリもしないのに、「あなた」にだけ思わせるような態度で接してきて悶々とさせるタイプなんだ…きっとそうだ、と。
予約投稿で入れたストック分はこれで全てなので、続きは16日以降に書けるようにしたいと思います…。
…まあその時は、まずイベントとか実装されたサンドローネのプロフ情報とかにしっかり目を通す所から始めなきゃなんですけどねw
感想や高評価を入れてくださり、本当にありがとうございます!
今後の話(あるいは番外編みたいなもの)での指標として。「あなた」は本編ストーリー(魔神任務)に出てもいいのか?(あくまでも参考にするだけなので、票数次第ではあるものの実際に書くかどうかはまだ考えさせてください。)
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イッテイイヨー!(作者好み展開かも)
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シリアスなのはダメ!死刑!