レベル100にしてトリプルクラウンにしたし…イベントでもずっと優しいしよ…こいつ確定で俺のこと好きじゃ*1
いつか心海様のも書いてみたい…
技術者が生み出す道具には、大きく分けて二つの種類が存在する。
一つは、生活や産業を豊かにするための、公の道具。
そしてもう一つは──特定の誰かを守るため、あるいは安心させるためだけに作られる、極めて私的な道具だ。
───そして往々にして、後者によって生み出される道具は、時には作る側と見る側の間で奇妙なすれ違いを生むものだ。
ジ、ジジ……と、静まり返った研究室に、溶接の鋭い光とハンダの焦げ付いた匂いが弾ける。
スネージナヤの凍てつく夜気が窓を叩くなか、「あなた」のデスクだけがランプの鋭い光に照らされていた。
目の前に転がっているのは、スメールの砂漠で回収した無骨な駆動コアと、璃月の最高級の夜泊石。
「あなた」は冷える指先を自身の白い息で温めながら、世界にただ一つだけの「私的な道具」──漆黒の戦闘スーツの骨格を、寡黙に組み立てていた。
───(もっと、もっと良いのを…!サンドローネの為に……)
東の空が白み始め、窓の凍てつきが僅かに緩むまで──その無言の熱狂が止まることはなかった。
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………
……
ある日の昼下がり。
いつも通りの静寂が戻った研究室にて、いつものようにマシナリーの調整を行う「あなた」。
…だが、その手元はどこかおぼつかなく、時折小さく舟を漕ぐように首が揺れていた。
カチャン
小さく工具を落とした音に、デスクで書類を見ていたサンドローネが目線を上げる。
彼女の鋭い瞳は、助手の目の下にうっすらと浮かぶ隈と、あからさまな集中力の欠如を一瞬で見抜いていた。
「…「あなた」、顔色が悪いわね。昨日の夜、ちゃんと寝たのかしら?」
傲然としながらも、どこか心配そうな色を混ぜて投げかけられた問い。
その彼女の表情から、「あなた」のことを心の底から心配そうにしているというのが見てわかった。
───あ、い、いや……!大丈夫!ちゃんと睡眠はとったし、体調も全く問題ないので!
途端に叩き起こされたように弾けて直立不動になり、これ見よがしに視線を泳がせながら大慌てで否定する「あなた」。
生来の真面目さと不器用さが災いし、誰がどう見ても「何かを隠している人間の挙動」そのものだった。
「……ふーん?」
サンドローネは目を細め、ジッと「あなた」の顔を見つめる。
「(おかしいわね…出張から帰ってきたばかりとはいえ、疲労が残っているわけでもなさそうなのに…。
それに、あんなにわかりやすく動揺するなんて……)」
不審に思った彼女の視線が、ふと「あなた」のデスクの端へと向かう。
そこには隠しきれていない削りかけの夜泊石の破片と、最近「あなた」が肌身離さず持ち歩いている設計図らしきもののノート…その端切れが覗いていた。
「(……なるほど、ね?)」
その瞬間、天才たる彼女の脳内で、あらゆるパズルのピースが音を立てて組み上がった。
──昨夜に限らずここ最近小さくだが見かける、夜遅くまでデスクで作業していた形跡。
──旅先でわざわざ手に入れて持ち帰ってきた、最高級の夜泊石や駆動コア。
──そして、自分に聞かれた瞬間のあのあからさまな動揺と隠している事。
「(…まさかあいつ、ワタシに内緒で……
出張から無事に帰ってこれたお礼か、あるいは日頃の感謝か。
理由はともかく、「あなた」が私のためにサプライズで何かプレゼントを用意しようとして寝不足になっている──。
そう理解した瞬間、サンドローネの胸の奥から特大の愛おしさと誇らしさが込み上げてくる。
さっきまでの疑惑の眼差しはどこへやら、彼女は口元が緩んでしまいそうになるのを必死に堪え、少し頬が赤くなりそうになるのを隠すようにフイッとそっぽを向いた。
「…まあいいわ。体調管理も助手の仕事なんだから、倒れて私に迷惑をかけないようにしなさい。……それと!無理は禁物、でね」
───は、はい!心配をかけてしまってすいません、サンドローネ!
「(ふふっ……健気な助手ね。いいわ、「あなた」がそこまでして用意してくれているんだもの。
「あなた」の主人として、完成するまで気付かないフリをしてあげましょう。感謝するといいわ)」
自身のデスクで、完璧すぎる
優雅に足を組みながら席に座るその姿から、フフン、と得意げに鼻を鳴らしているとさえ見えるほどだった。
───(よ、良かった…スーツのことがバレていなさそうだ……!もっとピッチを上げて完成させなきゃ!)
一方、「あなた」は「あなた」で主人に隠し事がバレていないと本気で信じ、これまた明後日の方向へと意気込みを新たにするのだった。
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暖炉の中で薪がパチパチと爆ぜる優しい音。
風気を遮る重厚なガラス窓。
一切の雑味を排したストレートティーの渋く気高い香りと、持ち帰り用の箱から出された焼き菓子の甘い匂いが、サンドローネの鼻腔をくすぐった。
「はむ、はむ……美味しい」
「どう?今回の任務先の有名店で買ったものよ。美味しいと評判の物なのだけど、口に合うと嬉しいわ」
「……ええ、美味しいわロザリン。さすがのセンスね」
「ああ、同感だ。なんという名前の店かな?私も機会を見つけて、子どもたちに買いに行ってあげたい美味しさだ」
「ふふ、今度手紙でおすすめ商品と一緒に送るわね。是非あの子たちに送ってあげてちょうだい」
研究室での出来事から暫く後、サンドローネの自室にて。
カチャリ、と繊細な磁器が触れ合う静かな音が室内に響く。
窓の外で吹き荒ぶ猛吹雪をよそに、執行官の四人はそれぞれに温かいカップを傾けながら、束の間の穏やかなティータイムを過ごしていた。
ロザリンによって持ち寄られた極上の茶菓子を満足げに味わい紅茶で喉を潤したサンドローネは、ふと勝ち誇ったような笑みを浮かべると、これみよがしに胸を張った。
「……でもね、これからはもっと極上の時間が味わえるようになるわ」
「ほう?」
「あら、どういうことかしら?」
ロザリンが首を傾げ、アルレッキーノも静かにカップを置いて視線を向ける。
二人の関心を引き付けたことに十分な満足感を覚えながら、サンドローネはフフンと鼻を鳴らした。
「なんせ私の優秀な助手がね、最近研究室で私に内緒で
「助手?ああ、君が大切にしている子のことか。それがどうかしたのかな?」
「貴女の自慢の助手くんの事よね?何かあったの?」
「…ん?助手くん?」
二人が興味深そうに首を傾げると、それまでいつもの小難しい話だと思って黙々とお茶菓子を口に運んでいたコロンビーナが、ぴくっと長い睫毛を揺らした。
彼女なりにいつぞやの時*1の助手と思い当たったのか、歌うように軽快な足取りでソファーに深く腰を掛け直し、そしてどこか楽しそうに耳を傾け始める。
二人と一人の視線を一身に受け、サンドローネは待ってましたと言わんばかりに胸を張った。
「この間あいつが出張に行った後から、その旅先でわざわざ持ち帰った夜泊石や駆動コアを使ってね、夜遅くまで作業しているものだから目の下に隈まで作っちゃって……昨日問い詰めたら、分かりやすく動揺して隠そうとするのよ。
──ふん。あいつのことだから大方、出張から無事に帰れたお礼に私へのサプライズプレゼントでも用意しているに決まっているわ。本当に、手のかかる可愛い助手なのよね!」
相変わらずの憎まれ口を出しながらも嬉しさを隠しきれず、いつもより少し声のトーンが高くなっているサンドローネ。
それを聞いたアルレッキーノはカップをそっとソーサーへと戻すと、その鋭い洞察力で察したように薄く唇を弧に描いた。
「なるほど、一途で健気なことだ。……だがサンドローネ、あまり期待しすぎて後でずっこけないように祈っているよ。
私が言うものではないとも思うが…職人のこだわりというものは、時に贈る相手の想像の斜め上を行くものだからね」
「何よ、失礼ね!あいつが私以外の誰のために道具を作るっていうのよ!」
ぷいっと頬を膨らませる高貴なこの部屋の主人を見て、ロザリンもまた慈愛に満ちた優しい眼差しで微笑む。
「ふふ、そうね。貴女がそこまで自慢するほどの助手だもの、きっと素敵な贈り物が届くわよ、サンドローネ」
「ロザリンまでからかわないで頂戴!……ふん、まあせいぜい楽しみに待っててあげるわ」
そう言って誇らしげに胸を張る彼女を、二人は「さてね」と微笑ましく見守り、コロンビーナは一人だけすべてを知っているかのように目を細めてフフッ……と、謎の後方理解者面で微笑んでいた。
そうして再び、四人は穏やかに紅茶の香りを愉しむのだった。
──まさかこの瞬間、当の
「……ところでサンドローネ。その自慢の助手くん、私たちにはいつ紹介してくれるのかしら?最初聞いた時からずっと気になってるのよねぇ~」
「む。……ふむ、確かに私も一度、その健気な助手くんの顔を見てみたいものだな。君がそこまで入れ込むんだ、さぞ素敵な人なのだろうさ」
「なっ……!?なな、何を言っているのよ二人とも!べ、別にあなたたちに紹介する筋合いはないわ!あいつは私の助手なんだから、絶対に会わせないわよ!!」
「あらあら、そんなに顔を真っ赤にしちゃって。本当に余裕がないわねぇ」
「ああ、そうだな……ふふっ」
「あむ……ん、ふふ…」
ジジ……と、静まり返った研究室に弾ける最後の青い火花。
窓の外から滑り込んでくる早朝特有の寒気とハンダの焦げ付いた匂い、そして冷え切った金属の触感。
カチリ。
「あなた」の手元で、スメールで入手した駆動コアと璃月での夜泊石を組み込んだ変形型制御デバイスが、澄んだ高音を立てて完璧に嚙み合った。
───できた……!
漆黒の装甲を静かに撫でながら、「あなた」は熱い吐息を漏らす。
これなら、神の目を持たない自分でも戦える。
…もう二度と、あの朝霧の駅舎で見せたような寂しげで不安そうな顔を、大好きな主人にさせないために。
───よし、誰もいないうちに雪原で試運転だ…!
「あなた」は完成したスーツとデバイスを厳重にケースへ収めると、朝霧の立ち込めるスネージナヤの雪原へと静かに足を踏み出すのだった。
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ザクッ、ザクッと深雪を踏みしめる音。
吐く息が一瞬で白く凍りつく極寒の風。
「よし…ここだな。冒険者協会から聞いていた場所は……」
少し前に冒険者協会のキャサリンからもらった地図と、目の前の状況を照らし合わせる「あなた」。
しっかりと確認を終えてから地図を懐へと収め、目的地から少し離れた高台の陰から眼下に広がる目的地を見下ろし観察を始める。
視線の先には、簡易的な木柵で囲まれたそこそこ規模の大きいヒルチャールの集落。
およそ十体ほど見える一般的な棍棒やクロスボウを持っているヒルチャールに、計三体ほどのそれぞれ斧持ち一人と木の大盾持ち二人のヒルチャール暴徒。
そして、数体の何か儀式的な謎の動作をしているヒルチャールに囲まれながら中央の焚火に向かって杖のようなものを怪しげに振っている二体のアビスの魔術師──水と雷の姿があった。
ヒルチャールやアビスの魔術師の聞き取れない言語による音が、寒風に混じって届いてくる。
通常これほどの規模ともなれば、神の目を持つ者が必ずいる状態かつ複数人で挑むのが定石だ。
ましてや、神の目を持たない者がアビスの魔術師のシールドを破るなど、本来なら無謀の一言に尽きる。
だが──「あなた」は、手に持った重厚なケースを強く握りしめた。
───(大丈夫、勝てる…!いくぞ!)
シミュレーションは済ませてある。
大丈夫だと自身に言い聞かせてからケースを開け、ガチャリ、と中に入っているベルト型の制御デバイスに手を伸ばして装着する。
そして駆動コアやパーツを埋め込んだキーにコードを入力し、それをベルトに突き刺す。
『
内部の歯車が超高速回転するギィィン!、という高周波の金属音が雪原に響き渡る。
その後、夜泊石の青いラインが全身を包むように駆け巡った後、眩い発光と共に漆黒や白の装甲も同時に展開される。
『──
ズン、と全身を包み込む硬質な重厚感。
発光が引いていき、全身が顕わになる。
漆黒と白で組み上げられた硬質な装甲の隙間に夜泊石の青いラインが静かに脈動し、頭部の双眸が黄色く発光した。
神の目を持たない青年が、マシナリーの技術とテイワットの素材によって「戦士」へと変身を遂げた瞬間だった。
───うん、いい感じ…!あとはこれで、勝つだけ!
軽く手を握り感触を確かめ終えたところで「あなた」は高台を飛び降り、ザッと雪を蹴って駆け出す。
突如現れた人間に気付き、奇声を上げて群がってくるヒルチャールたち。
だが、「あなた」は冷静にその攻撃を見切り、最小限の動きで叩きのめしていく。
下顎、眉間などの急所を的確に拳や脚で砕き、その全てを塵にしていく。
これを実現可能にしているのは、装甲内にリアルタイムで超速演算をしそれをもとに攻撃を予測、及び対処法の最適解を瞬時に伝達しているためだ。
──問題は、後方から迫る大盾と斧の暴徒とアビスの魔術師。
アビスの魔術師の怪しい鳴き声とそれに呼応するような暴徒たちの荒々しい鳴き声と共に、大盾の突進と斧持ちの飛び上がって斧を振りかぶる攻撃が同時に「あなた」に襲いかかる。
───大丈夫…、視える!
盾持ち暴徒の突進をいなし、斧持ち暴徒の斧の切っ先を手で掴み取る。
ブモッ!?という斧持ち暴徒の驚愕する声を余所に、「あなた」は掴んだ斧ごと暴徒を盾持ち暴徒の方に投げつける。
抵抗できず斧持ち暴徒は投げ飛ばされ、突進を躱されて振り返った直後の盾持ち暴徒にそのままぶつかってからまとめて倒れ込んだところを狙い「あなた」は高く跳躍、その際に足の装甲の両側面からバチバチと強力な電気を放つ刃を展開し、そのまま頭部めがけて落下の勢いを乗せて強烈な飛び蹴りをお見舞いした。
───あとは、お前らだな
暴徒たちが頭部を潰され、力なく倒れて塵となって消えるのを確認してから「あなた」は二体のアビスの魔術師に向き直る。
魔術師たちは既にシールドを展開しており、嘲笑うような鳴き声の後に水と雷の弾を「あなた」に向けて多数飛ばす。
それを「あなた」は、演算を行って魔術師に向かいながらも華麗に回避。
そのまま水魔術師のシールドに向かって愚直に拳をぶつけた。
───(やっぱダメか。クソッ、課題がまだ残るな…)
先程はヒルチャールすら瞬時に消し飛ばし、シミュレーションでは遺跡守衛の装甲すら一撃で砕いた威力を持つ拳。しかし元素持ち相手には再現性の問題などでこれまで試せていなかった。
故に予想してはいたものの、やはり元素相手に通常の攻撃が通らないことに少し悔しさを感じながらもすぐにバックステップで距離を取る。
それを見て相手はこちらに有効打がないと判断したのか、アビスの魔術師たちは奇怪な鳴き声と共にシールド内で器用に踊ってすらいた。
───なら、環境を使えばいいだけだよね
思い返すのは、キャサリンから地図を受け取った時。
アビスの魔術師の討伐事例も一緒に報告されたことがあった際に、その中に一つだけ「あなた」にとって興味深いものがあった。
「そういえばですけど…過去に討伐した際の報告の中に、炎元素を扱うアビスの魔術師に近くの川の水をかけたら周りのシールドが弱まった、という話がありましたよ。……あの、この話、お役に立ちそうですか?」
───ああ、さいっこうだ!
アビスの魔術師に対抗するには、神の目を持ち元素を扱えるものがいるのが定石。
しかし、いないから必ず勝てないというわけではない。
そしてこの話。
天才の
アビスの魔術師に向かって、再び「あなた」は駆け出す。
今度は出力が最大近くまで上げながらの、ほぼ全力で。
そして油断している魔術師たちに向けて、近くの雪を思いっきり蹴り上げてかけた。
突然のことに反応が遅れた魔術師たちは、雪をシールドに被ってしまう。
するとそれによって、水シールドはパキパキ…と音を立てて凍結を起こし、脆い氷の塊へと変化。
一方で雷シールドは超電導のエネルギー暴走を引き起こし、バチバチとスパークを散らしながらもその強度を急激に減衰させていった。
それを確認した「あなた」は、目論見が成功したことに喜びつつも接近し、拳や蹴りを多数浴びせてシールドを破壊した。
破壊された魔術師たちは、浮くこともできなくなったのかそのまま落下し、その衝撃で動きを止めていた。
───さて、フィナーレだ
『──
勝ちを確信した「あなた」は、右腕のパーツを外し、そのパーツをベルトに付ける。
すると装甲から音がして胸部の装甲が肩へと移動し、足の踵部分の装甲からエンジンが飛び出した。
そして、背面の排熱ダクトからシュウウ!!と凄まじい熱気と白い冷却蒸気が吐き出された。
周囲の雪が一瞬で蒸発し、陽炎が立つ。
それを終えると、「あなた」はパーツを外した際に露出したボタンを押す。
『──十秒、
その瞬間、ポン、と世界から音が消えた。
空中に舞い散る雪の結晶が静止し、魔術師たちの動きがほぼ止まっているようになる。
「あなた」はそのまま駆け出し、高速で動きながらも力の限り殴り、蹴り、と攻撃を欠かさず加えていく。
『──
魔術師たちの頭部をそれぞれ殴り、お互いの後頭部がぶつかるように押し出していく。
その際、ベルトのスイッチも押して足の装甲を変化させる。
『──
止まった世界の中で駆け出し、大きく跳躍する。
すると魔術師たちの上空から多数の円錐状の青いマーカーが出現し、魔術師たちをロックオンして拘束する。
『──
そのまま順に全てのマーカーと共に、「あなた」が連続で魔術師に向けて飛び蹴りを叩き込んでいく。
『──
世界が、再び動き出す。
ドゴォォォン!という遅れてやってきた風切り音と爆風と共に、アビスの魔術師たちが一斉に爆発して塵と化す。
『
───ふぅ、ハァッ、ハァッ……
陽炎が立つスーツから熱気が抜け、そのままスイッチを押して変身が解除される。
荒い息を吐きながらも、「あなた」は自身の手元を見つめ、確かな手応えを感じて口元を緩めた。
───よし、これなら基本的に問題なさそうだ。元素持ち相手にはまだ改善の余地があるけど……ひとまず、試運転としては十分だ
これで、大好きな主人を守るための力が手に入った。
マシナリーや個別の機械などではなく、スーツ装甲という自身で戦う力を。
安心した「あなた」がケースを回収し、研究室へ戻ろうと踵を返す──その時だった。
「確かこの辺で爆発が……無事なの「あなた」!?どこ、に………あ、あんたぁぁぁっっっ!!??!?」
静まり返った雪原に、耳をつんざくような悲鳴に近い叫び声が響き渡った。
驚いて振り返るとそこには息を激しく切らし、雪道をなりふり構わず走ってきた様子の主人──サンドローネの姿があった。
少し後ろからプロンニアも走ってきている様子が見えることと主人の髪型が少し崩れかかっていることからも、その必死さはすぐに理解できた。
───サ、サンドローネ!?どうしてこんなところに……
「どうして、じゃないわよバカ助手!!
肩を激しく上下させ、ハァハァと荒い息を吐きながらも大声を出すサンドローネ。
彼女の頭の中は、自身へのサプライズプレゼントの仕上げのために無茶をしに行ったに違いない、という危惧でいっぱいだったのだ。
だが──彼女の視線が「あなた」の手にあるケース、排熱ダクトから微かに煙を吐く漆黒のパーツ、そして腰に巻かれているベルトへと注がれた瞬間、ピタリと動きが止まった。
「……え?なにそれ。……わたしへの、プレゼント……じゃないの…?」
ぽかん、と鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする主人に、「あなた」はきょとんとして頭をかく。
───え?プレゼント…?いえ、違いますね。これは僕自身が着用して戦うための、人間用戦闘スーツの試運転です。
……ほら、以前出張へ出発する時、サンドローネを不安にさせてしまったでしょう?だから、そうならないように僕が強くなってサンドローネを守れるようになりたくて……
「────────────────────」
その瞬間。
サンドローネの頭の中で、お茶会での記憶が走馬灯のように駆け巡った。
『あいつのことだから大方、私へのサプライズプレゼントでも用意しているに決まっているわ!』
『あまり期待しすぎて後でずっこけないことを祈っているよ』
『あいつが私以外の誰のために作るっていうのよ!』
『貴女がそこまで自慢するほどの助手だもの、きっと素敵な贈り物が届くわよ、サンドローネ』
「(───ッッッッッッッッッッ!!??!?!?!?!?!!!?)」
自分の恥ずかしすぎる盛大な勘違い。
アルレッキーノたちの前でドヤ顔で熱弁したあの自慢。
そして──何よりも自分を守るために己の身を削ってまで強くなろうとしてくれたという、目の前の助手からの猛烈すぎる一途な情熱。
それら全てが脳内で
───さ、サンドローネ…?顔がすごく赤いけど、どこか体調でも──
心配して顔を覗き込もうとした「あなた」に対し、彼女の顔は耳の裏から首元まで、茹で上がったタコのように真っ赤に染まっていく。
「~~~~~~~~~~~~っっっっっっっ!!!!」
声にならない悲鳴を上げると、サンドローネは顔を真っ赤にしたまま、半泣きで「あなた」の胸元をポカポカと大慌てで叩き始めたのだ!
「バカ!バカバカバカ!!このバカ「あなた」ーーーーーーーッッ!!!何よそれ!!なんなのよそれぇぇぇぇ!!!!」
───ええっ!!な、なんで怒られてるんですか僕!?痛い、痛いですってばサンドローネ!!
「うるさい黙りなさいかしこまりなさいバカ「あなた」!!!は、恥ずかしい!恥ずかしすぎるでしょうがぁぁぁぁ!!!」
───だから何の話ーーーーー!!!?
極寒の雪原に主人の盛大なメンタル大爆発と、理由もわからず混乱しなすがままにされている助手の叫び声が虚しくこだまするのだった。
「傀儡」→しばらく恥ずかしさで沈んだ。隠しておくのそろそろ限界かも…
「あなた」→ナンデ……ドウシテ……
「少女」→むふー(後方理解者面)
「召使」→やはりか…
「淑女」→あらあら、微笑ましいこと
書いててなんかイメージデザインが似てるな…って思ったら興が乗りに乗ってネタを入れすぎました。
だが私は謝らない(ショチョー)
いくつ入れたのか自分でも数えてないですけどw
まあそれはそれとして、さすがにここまでのは今回だけにするつもりですけどね…
それと、今後の投稿頻度についてを活動報告に新しく記載しときましたので、もし興味がありましたらそちらも合わせてどうぞ〜