観測者は青春の物語を見届ける   作:ユーザーA

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機械仕掛けのパヴァーヌ編 第一章 勇者と観測者

 

ミレニアムサイエンススクール。

 

 

キヴォトス最大の技術学園。

 

 

最新技術。

 

 

最先端研究。

 

 

無数の発明。

 

 

そして。

 

 

数え切れない問題児達。

 

 

 

その日。

 

 

先生はいつものように巻き込まれていた。

 

 

ゲーム開発部。

 

 

彼女達の新作ゲーム制作。

 

 

その手伝い。

 

 

本来なら。

 

 

平和なはずだった。

 

 

 

「先生!」

 

 

花岡ユズが慌てて走ってくる。

 

 

「大変です!」

 

 

「どうした?」

 

 

「予算がありません!」

 

 

 

先生は頭を抱えた。

 

 

いつものことだった。

 

 

 

一方その頃。

 

 

ミレニアム中央区。

 

 

大型商業エリア。

 

 

そこを歩く二人の少女がいた。

 

 

 

彩禍マダラ。

 

 

クチナシ・ユメ。

 

 

 

「広いな。」

 

 

「広いね。」

 

 

 

ユメは周囲を見回す。

 

 

巨大モニター。

 

 

ホログラム広告。

 

 

自律ドローン。

 

 

アビドスとは真逆の光景。

 

 

 

「未来都市みたい。」

 

 

「実際そうだろう。」

 

 

 

ユメが笑う。

 

 

マダラも少しだけ目を細める。

 

 

 

その時だった。

 

 

前方から。

 

 

誰かが走ってきた。

 

 

 

「勇者様ー!」

 

 

 

元気な声。

 

 

 

そして。

 

 

勢いよく飛び出してきた少女。

 

 

 

天童アリス。

 

 

 

「?」

 

 

 

ユメが目を丸くする。

 

 

 

アリスはマダラの前で止まる。

 

 

 

そして。

 

 

真剣な顔で。

 

 

言った。

 

 

 

「勇者様です!」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

ユメが吹き出した。

 

 

 

「ぶっ。」

 

 

 

「勇者様だって。」

 

 

 

「そうです!」

 

 

 

アリスは本気だった。

 

 

 

目を輝かせている。

 

 

 

マダラは無言。

 

 

 

数秒。

 

 

考える。

 

 

 

そして。

 

 

答えた。

 

 

 

「違う。」

 

 

 

即答。

 

 

 

アリスが固まる。

 

 

 

「違うのですか!?」

 

 

 

「違う。」

 

 

 

「勇者ではない?」

 

 

 

「違う。」

 

 

 

「伝説の英雄でもない?」

 

 

 

「違う。」

 

 

 

「ラスボスですか!?」

 

 

 

「違う。」

 

 

 

ユメが笑いを堪えている。

 

 

 

肩が震えていた。

 

 

 

アリスは真剣に悩み始める。

 

 

 

「おかしいです。」

 

 

 

「見た目は勇者様なのに。」

 

 

 

「見た目で判断するな。」

 

 

 

マダラが言う。

 

 

 

すると。

 

 

アリスは少し考えた。

 

 

 

そして。

 

 

満面の笑みを浮かべる。

 

 

 

「でも優しいです!」

 

 

 

その瞬間。

 

 

マダラが少し固まる。

 

 

 

ユメが吹き出した。

 

 

 

「ふふっ。」

 

 

 

「珍しい。」

 

 

 

「?」

 

 

 

アリスは首を傾げる。

 

 

 

ユメは笑いながら言う。

 

 

 

「その人ね。」

 

 

 

「優しいって言われるの苦手なんだ。」

 

 

 

「そうなのですか!?」

 

 

 

「そうだ。」

 

 

 

少し不機嫌そうな声。

 

 

 

だが。

 

 

本気ではない。

 

 

 

アリスは納得したように頷いた。

 

 

 

「大丈夫です!」

 

 

 

「?」

 

 

 

「アリスは知っています!」

 

 

 

胸を張る。

 

 

 

「優しい人ほど優しいって言われるの苦手です!」

 

 

 

ユメがまた笑う。

 

 

 

マダラはため息を吐いた。

 

 

 

本当に珍しく。

 

 

少しだけ困っていた。

 

 

 

 

その頃。

 

 

シッテムの箱。

 

 

 

アロナは異変に気付いていた。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

小さく首を傾げる。

 

 

 

先生の周囲情報。

 

 

ミレニアム情報。

 

 

ゲーム開発部情報。

 

 

自動収集。

 

 

 

その中に。

 

 

理解できない情報があった。

 

 

 

「え?」

 

 

 

アロナが固まる。

 

 

 

再確認。

 

 

 

もう一度。

 

 

 

再確認。

 

 

 

もう一度。

 

 

 

結果。

 

 

変わらない。

 

 

 

「えぇ!?」

 

 

 

シッテムの箱に響く声。

 

 

 

「情報がありません!」

 

 

 

アロナが叫ぶ。

 

 

 

あり得ない。

 

 

 

本来ならあり得ない。

 

 

 

先生が認識している。

 

 

 

生徒も認識している。

 

 

 

映像にも映る。

 

 

 

音声も存在する。

 

 

 

なのに。

 

 

情報が無い。

 

 

 

存在しない。

 

 

 

「なんでですか!?」

 

 

 

アロナは慌てて検索する。

 

 

 

彩禍マダラ。

 

 

 

検索。

 

 

 

失敗。

 

 

 

再検索。

 

 

 

失敗。

 

 

 

連邦生徒会。

 

 

失敗。

 

 

学園データベース。

 

 

失敗。

 

 

シッテム内部。

 

 

失敗。

 

 

 

全部失敗。

 

 

 

「なんですかこれぇぇぇ!?」

 

 

 

完全に混乱していた。

 

 

 

 

一方。

 

 

マダラはふと空を見上げる。

 

 

 

誰もいない空。

 

 

 

だが。

 

 

知っている。

 

 

 

今。

 

 

シッテムの箱で。

 

 

アロナが大騒ぎしていることを。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

ユメが聞く。

 

 

 

「いや。」

 

 

 

マダラは少しだけ笑う。

 

 

 

本当に少しだけ。

 

 

 

「面白いものがいた。」

 

 

 

「?」

 

 

 

ユメには意味が分からない。

 

 

 

だが。

 

 

それ以上聞かない。

 

 

 

どうせそのうち分かる。

 

 

 

そんな気がした。

 

 

 

そして。

 

 

機械仕掛けのパヴァーヌ編。

 

 

 

新たな物語が。

 

 

静かに始まる。

 

 

勇者と。

 

 

観測者と。

 

 

そして。

 

 

まだ誰も知らない。

 

 

電子の少女との出会いへ向けて。

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