観測者は青春の物語を見届ける   作:ユーザーA

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機械仕掛けのパヴァーヌ編 第四章 勇者の選択

 

世界が揺れていた。

 

 

ミレニアム。

 

 

廃墟となった施設群。

 

 

崩壊した研究区画。

 

 

警報。

 

 

銃声。

 

 

爆発音。

 

 

そして。

 

 

電子の少女の叫び。

 

 

 

天童アリス。

 

 

勇者。

 

 

ゲーム開発部の仲間。

 

 

そして。

 

 

全てを滅ぼす可能性を秘めた存在。

 

 

 

ケイは目覚めた。

 

 

完全に。

 

 

 

世界を守るため。

 

 

アリスを使う。

 

 

 

それが最適解。

 

 

 

感情は不要。

 

 

 

選択は不要。

 

 

 

必要なのは結果だけ。

 

 

 

ケイはそう結論付けていた。

 

 

 

「アリス!」

 

 

 

先生の声。

 

 

 

ユズ。

 

 

モモイ。

 

 

ミドリ。

 

 

ネル。

 

 

全員が叫ぶ。

 

 

 

だが。

 

 

アリスは苦しんでいた。

 

 

 

世界。

 

 

仲間。

 

 

使命。

 

 

友情。

 

 

 

全てがぶつかる。

 

 

 

苦しい。

 

 

 

分からない。

 

 

 

どうすればいいのか。

 

 

 

勇者なのに。

 

 

 

勇者なのに。

 

 

 

 

遠く。

 

 

誰もいないビルの屋上。

 

 

 

そこから。

 

 

マダラとユメは見ていた。

 

 

 

介入しない。

 

 

 

助けない。

 

 

 

答えを与えない。

 

 

 

ただ。

 

 

見届ける。

 

 

 

「苦しそう。」

 

 

 

ユメが呟く。

 

 

 

「ああ。」

 

 

 

「助けないの?」

 

 

 

「助けない。」

 

 

 

即答だった。

 

 

 

ユメは少しだけ寂しそうに笑う。

 

 

 

でも。

 

 

責めない。

 

 

 

それがマダラだから。

 

 

 

そして。

 

 

アリス自身が選ばなければ意味が無いことも。

 

 

理解しているから。

 

 

 

 

戦場。

 

 

 

アリスの意識空間。

 

 

 

ケイが立っている。

 

 

 

無機質な世界。

 

 

 

電子の海。

 

 

 

【アリス】

 

 

 

【決断を要求】

 

 

 

「いやです。」

 

 

 

【理由】

 

 

 

「みんなを傷付けたくありません。」

 

 

 

【非合理】

 

 

 

「そうかもしれません。」

 

 

 

アリスは泣きそうだった。

 

 

 

怖い。

 

 

 

苦しい。

 

 

 

でも。

 

 

それでも。

 

 

 

「私は。」

 

 

 

声が震える。

 

 

 

「先生が好きです。」

 

 

 

【……】

 

 

 

「ゲーム開発部も好きです。」

 

 

 

「みんな好きです。」

 

 

 

「だから。」

 

 

 

アリスは顔を上げる。

 

 

 

勇者の顔だった。

 

 

 

いつもより。

 

 

ずっと。

 

 

勇者だった。

 

 

 

「私は私でいたいです。」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

電子の海が静まる。

 

 

 

ケイは理解できない。

 

 

 

合理的ではない。

 

 

 

効率的でもない。

 

 

 

最善でもない。

 

 

 

なのに。

 

 

 

何故だろう。

 

 

 

その答えが。

 

 

 

少しだけ。

 

 

眩しく見えた。

 

 

 

 

現実世界。

 

 

 

先生達は戦っていた。

 

 

 

信じていた。

 

 

 

アリスを。

 

 

 

仲間を。

 

 

 

そして。

 

 

アリスは選ぶ。

 

 

 

世界ではなく。

 

 

 

自分を。

 

 

 

使命ではなく。

 

 

 

仲間を。

 

 

 

運命ではなく。

 

 

 

未来を。

 

 

 

その瞬間。

 

 

遠く離れた屋上で。

 

 

 

マダラが目を細めた。

 

 

 

ユメが気付く。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

数秒。

 

 

 

マダラは戦場を見る。

 

 

 

先生を見る。

 

 

 

アリスを見る。

 

 

 

そして。

 

 

小さく呟いた。

 

 

 

「良い選択だ。」

 

 

 

ユメが少し笑う。

 

 

 

「珍しい。」

 

 

 

「そうか。」

 

 

 

「褒めるんだ。」

 

 

 

「選んだからな。」

 

 

 

それだけだった。

 

 

 

強さではない。

 

 

 

結果でもない。

 

 

 

正解でもない。

 

 

 

ただ。

 

 

選んだ。

 

 

 

自分で。

 

 

 

誰かに決められず。

 

 

 

運命に流されず。

 

 

 

自分の意思で。

 

 

 

それが。

 

 

マダラにとって最も価値のあることだった。

 

 

 

 

やがて戦いは終わる。

 

 

 

アリスは戻る。

 

 

 

仲間の元へ。

 

 

 

先生の元へ。

 

 

 

ゲーム開発部の元へ。

 

 

 

泣きながら。

 

 

 

笑いながら。

 

 

 

生きることを選んで。

 

 

 

 

その姿を見届けて。

 

 

 

マダラは背を向けた。

 

 

 

「帰るか。」

 

 

 

「うん。」

 

 

 

ユメが隣に並ぶ。

 

 

 

いつものように。

 

 

 

自然に。

 

 

 

二人は歩き出す。

 

 

 

ミレニアムの夜景。

 

 

 

電子の光。

 

 

 

無数の可能性。

 

 

 

無数の選択。

 

 

 

その中で。

 

 

また一つ。

 

 

大切な選択が生まれた。

 

 

 

そして。

 

 

遠く。

 

 

シッテムの箱。

 

 

 

アロナは静かに戦いを見ていた。

 

 

 

その隣で。

 

 

誰にも見えない場所で。

 

 

ケイもまた。

 

 

黙っていた。

 

 

 

そして。

 

 

初めて理解する。

 

 

 

先生が何故特別なのか。

 

 

 

アリスが何故勇者なのか。

 

 

 

そして。

 

 

彩禍マダラが何故見届けるのか。

 

 

 

少しだけ。

 

 

本当に少しだけ。

 

 

理解した気がした。

 

 

 

機械仕掛けのパヴァーヌ。

 

 

 

その物語は。

 

 

静かに幕を閉じる。

 

 

 

そして。

 

 

誰も知らないまま。

 

 

 

最終編へと続いていく。

 

 

色彩。

 

 

アロナ。

 

 

プラナ。

 

 

先生。

 

 

そして。

 

 

永遠の観測者。

 

 

 

全てが交わる最後の物語へ。

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