⸻
アビドスでの騒動からから数ヶ月後。
⸻
キヴォトスは新たな局面を迎えていた。
⸻
トリニティ総合学園。
⸻
ゲヘナ学園。
⸻
長年対立を続けてきた二つの巨大学園。
⸻
その和平を目的とした計画。
⸻
エデン条約。
⸻
キヴォトス全体を巻き込む巨大な物語が。
⸻
静かに動き始めていた。
⸻
⸻
一方。
⸻
誰にも辿り着けない場所。
⸻
マダラとユメの家。
⸻
朝。
⸻
窓から差し込む柔らかな光。
⸻
食卓には朝食。
⸻
ユメが作ったものだった。
⸻
「起きて。」
⸻
「起きている。」
⸻
「じゃあ起き上がって。」
⸻
「面倒だ。」
⸻
「起きて。」
⸻
「……」
⸻
マダラは無言で起き上がる。
⸻
ユメが少し笑う。
⸻
超越存在。
⸻
色彩と同格。
⸻
世界の外側の存在。
⸻
そんなものですら。
⸻
ユメには勝てない。
⸻
少なくとも日常生活においては。
⸻
⸻
朝食を取りながら。
⸻
ユメがふと聞いた。
⸻
「最近忙しそうだね。」
⸻
「そうか。」
⸻
「そう。」
⸻
「何か見てるでしょ。」
⸻
マダラは少し考える。
⸻
そして。
⸻
頷いた。
⸻
「面白いものが動き始めた。」
⸻
「面白いもの?」
⸻
「トリニティ。」
⸻
「ゲヘナ。」
⸻
ユメは納得したように頷く。
⸻
「エデン条約か。」
⸻
「そうだ。」
⸻
⸻
マダラは知っている。
⸻
これから起きる全てを。
⸻
裏切り。
⸻
陰謀。
⸻
絶望。
⸻
戦い。
⸻
涙。
⸻
選択。
⸻
そして。
⸻
先生が再び試されることを。
⸻
⸻
「介入するの?」
⸻
ユメが聞く。
⸻
マダラは首を横に振った。
⸻
「しない。」
⸻
即答だった。
⸻
「先生がいる。」
⸻
「生徒達がいる。」
⸻
「彼女達が選ぶ。」
⸻
いつもの答え。
⸻
いつもの信念。
⸻
ユメは安心したように笑う。
⸻
それでいい。
⸻
それがマダラだから。
⸻
⸻
だが。
⸻
その時。
⸻
マダラは僅かに目を細めた。
⸻
「ただ。」
⸻
「?」
⸻
「少し気になるものがある。」
⸻
ユメが首を傾げる。
⸻
マダラが気にするもの。
⸻
それは滅多にない。
⸻
⸻
「黒服か?」
⸻
「違う。」
⸻
「じゃあ色彩?」
⸻
「違う。」
⸻
「じゃあ何?」
⸻
数秒の沈黙。
⸻
そして。
⸻
マダラは言った。
⸻
「先生だ。」
⸻
ユメが少し驚く。
⸻
⸻
先生。
⸻
シャーレの先生。
⸻
選択する者。
⸻
キヴォトスの中心に立つ存在。
⸻
⸻
「何かあるの?」
⸻
「いや。」
⸻
マダラは窓の外を見る。
⸻
遠い空。
⸻
誰にも見えない未来。
⸻
⸻
「ただ。」
⸻
「今回は少し過酷だ。」
⸻
⸻
先生はまた選ばなければならない。
⸻
守るべきもの。
⸻
信じるべきもの。
⸻
進むべき道。
⸻
全てを。
⸻
⸻
ユメは静かに聞いていた。
⸻
やがて。
⸻
少しだけ笑う。
⸻
「大丈夫だよ。」
⸻
「?」
⸻
「先生だから。」
⸻
マダラは何も言わない。
⸻
だが。
⸻
否定もしなかった。
⸻
⸻
同じ頃。
⸻
ゲマトリア。
⸻
暗い会議室。
⸻
黒服は一人座っていた。
⸻
机の上には資料。
⸻
エデン条約関連。
⸻
トリニティ。
⸻
ゲヘナ。
⸻
アリウス。
⸻
そして。
⸻
先生。
⸻
⸻
だが。
⸻
黒服の手は別の資料を持っていた。
⸻
一枚だけ。
⸻
存在しない資料。
⸻
記録できない記録。
⸻
⸻
彩禍マダラ
⸻
黒服はその名前を見つめる。
⸻
そして小さく呟いた。
⸻
「貴方は今回も見ているのでしょう。」
⸻
返事はない。
⸻
当然だ。
⸻
⸻
だが。
⸻
黒服は知っている。
⸻
どこかで。
⸻
あの観測者が見ていることを。
⸻
⸻
そして。
⸻
ふと笑う。
⸻
「さて。」
⸻
「先生。」
⸻
「貴方はどのような選択をするのですか。」
⸻
⸻
物語が動き出す。
⸻
トリニティで。
⸻
ゲヘナで。
⸻
アリウスで。
⸻
そして。
⸻
観測者達の知らない場所でも。
⸻
新たな選択の物語が始まろうとしていた。
⸻
エデン条約編。
⸻
開幕。