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トリニティ総合学園。
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夕暮れ。
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校舎裏の中庭。
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人通りは少ない。
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木々が風に揺れる。
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静かな場所だった。
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ユメは一人で歩いていた。
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マダラは別行動。
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珍しいことではない。
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どれほど一緒にいても。
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四六時中離れない訳ではない。
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互いに一人の時間もある。
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信頼しているから。
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「んー……」
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ユメは伸びをする。
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平和だった。
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本当に。
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少し前まで死んでいたことになっていた人間とは思えないくらい。
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穏やかな時間。
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その時だった。
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「あなた。」
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声が掛かった。
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振り返る。
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そこにいたのは。
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聖園ミカ。
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ティーパーティーの一角。
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トリニティでも屈指の有名人。
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「こんにちは。」
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ミカは笑う。
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天使みたいな笑顔。
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誰からも好かれそうな笑顔。
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だが。
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その笑顔の奥にあるものを。
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ユメは見逃さなかった。
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「あ、こんにちは。」
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ユメも笑う。
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初対面。
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だが。
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不思議な空気だった。
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ミカはユメを見ている。
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じっと。
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観察するように。
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「どこかで会った?」
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ユメが聞く。
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「ううん。」
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ミカは首を振る。
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「初めて。」
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「だよね。」
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「うん。」
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沈黙。
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だが。
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ミカは立ち去らない。
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何か気になる。
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そんな顔だった。
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やがて。
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ミカは口を開く。
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「変なこと聞いていい?」
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「いいよ。」
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「あなた。」
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少しだけ迷って。
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そして。
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言った。
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「幸せそう。」
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ユメは一瞬だけ目を丸くした。
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そして。
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少し笑う。
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「そうかな。」
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「うん。」
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ミカは即答した。
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「凄く。」
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その言葉に。
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嘘はなかった。
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ミカには分かる。
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理屈ではなく。
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直感で。
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目の前の少女は。
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本当に幸せなのだ。
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演技じゃない。
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強がりじゃない。
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偽りじゃない。
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心の底から。
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それが。
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少しだけ羨ましかった。
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「ミカちゃんは?」
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ユメが聞く。
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ミカは笑う。
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いつもの笑顔。
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完璧な笑顔。
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誰もが好きになる笑顔。
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でも。
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ユメには見えていた。
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少しだけ苦しそうだった。
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「私は幸せだよ。」
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ミカが言う。
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ユメは何も言わない。
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否定しない。
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肯定もしない。
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ただ。
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静かに見ている。
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それが逆に。
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ミカには辛かった。
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見透かされた気がした。
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「……変だね。」
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ミカが笑う。
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「初対面なのに。」
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「そうだね。」
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「でも。」
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ミカは空を見る。
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夕焼け。
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赤く染まる空。
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「なんか。」
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「似てる気がしたんだ。」
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ユメは少し驚く。
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似ている。
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初めて言われた。
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マダラにも。
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ホシノにも。
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黒服にも。
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言われたことがない。
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「私と?」
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「うん。」
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ミカは頷く。
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「でも。」
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少し笑う。
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寂しそうに。
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「今は全然違う。」
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その言葉。
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ユメは理解してしまった。
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ああ。
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この子は。
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まだ終われていないんだ。
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ミカは気付いていない。
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自分がどれほど追い詰められているのか。
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どれほど過去に縛られているのか。
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どれほど自分を責めているのか。
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まだ。
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気付いていない。
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「ねぇ。」
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ミカが聞く。
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「一つだけ聞いていい?」
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「うん。」
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「どうしたら。」
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そこで言葉が止まる。
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本当は聞きたくなかった。
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答えが怖いから。
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それでも。
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聞いてしまった。
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「どうしたらそんな顔になれるの?」
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静寂。
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ユメは少し考える。
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難しい質問だった。
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だが。
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やがて。
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小さく笑う。
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「終わったからかな。」
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ミカの瞳が揺れる。
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終わった。
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その言葉。
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どこかで聞いた気がした。
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でも。
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理解できない。
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まだ。
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自分には。
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「終わるって?」
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ユメは答える。
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「受け入れること。」
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静かな声。
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「失ったものも。」
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「間違えたことも。」
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「戻れないことも。」
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「全部。」
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ミカは黙る。
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聞きたくなかった。
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だが。
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目を逸らせない。
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「私は。」
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ユメが続ける。
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「昔のアビドスに戻りたいって思わない。」
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「戻れないから?」
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「ううん。」
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首を振る。
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「もう必要ないから。」
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ミカは息を呑む。
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必要ない。
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そんな風に言えるのか。
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大切だったものを。
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本当に。
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その時。
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後ろから足音が聞こえた。
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振り返る。
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そこにいた。
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彩禍マダラ。
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白と黒。
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巨大なリボルバー。
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そして。
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ユメを見る目だけが少し柔らかい。
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ミカは気付く。
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理由。
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この人だ。
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ユメが終われた理由。
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前へ進めた理由。
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帰る場所。
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それがある。
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だから。
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終われた。
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ミカにはまだ無い。
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だから苦しい。
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だから。
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終われない。
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「迎え?」
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ユメが笑う。
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「ああ。」
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短い返事。
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それだけ。
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それだけなのに。
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ユメは嬉しそうだった。
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本当に。
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ミカは二人を見る。
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そして。
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少しだけ。
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羨ましいと思った。
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その感情を。
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誰にも言わないまま。
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夕焼けの中。
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二人は去っていく。
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並んで。
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自然に。
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当たり前のように。
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残されたミカは。
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一人空を見上げる。
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そして。
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誰にも聞こえない声で呟いた。
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「終われるのかな。」
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その問いに答える者は。
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まだ誰もいなかった。
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エデン条約が。
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彼女を飲み込むまでは。