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エデン条約崩壊後。
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トリニティ総合学園。
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夜。
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雨が降っていた。
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静かな雨。
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冷たい雨。
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まるで。
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世界そのものが泣いているようだった。
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聖園ミカは一人で歩いていた。
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傘も差さず。
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行き先もなく。
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ただ。
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歩いていた。
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終わった。
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全部。
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エデン条約。
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友情。
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信頼。
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理想。
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希望。
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全部。
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壊れた。
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自分のせいで。
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ナギサ。
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セイア。
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トリニティ。
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先生。
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みんなを裏切った。
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みんなを傷付けた。
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みんなを失望させた。
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だから。
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もう終わりだ。
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そう思っていた。
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「……」
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ミカは笑う。
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乾いた笑い。
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あの日。
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中庭で会った少女を思い出す。
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クチナシ・ユメ。
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終われた人。
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前へ進めた人。
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帰る場所を見つけた人。
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羨ましかった。
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本当に。
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でも。
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今なら分かる。
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自分には無理だ。
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失ったものが多すぎる。
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壊したものが多すぎる。
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もう。
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取り返しがつかない。
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その時だった。
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「ずぶ濡れだな。」
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声。
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聞き覚えのある声。
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ミカが顔を上げる。
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そこにいた。
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彩禍マダラ。
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白と黒の服。
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雨など気にしていないような顔。
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そして。
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その隣には。
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ユメ。
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傘を差していた。
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「久しぶり。」
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ユメが微笑む。
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ミカは言葉を失う。
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何故。
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ここに。
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何故。
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今。
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「……」
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言葉が出ない。
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出せない。
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こんな姿を見られたくなかった。
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あの時。
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少し羨ましいと思った相手に。
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今の自分を。
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見られたくなかった。
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「酷い顔。」
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ユメが言う。
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責めるような声ではない。
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ただ。
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本当に心配している声。
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それが余計に辛かった。
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「放っといてよ。」
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ミカが言う。
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弱々しく。
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力なく。
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「無理。」
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即答だった。
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ミカが少し目を見開く。
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ユメは困ったように笑う。
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「そういうの放っとけない性格なんだ。」
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「私は放っといてほしい。」
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「そう。」
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「そうだよ。」
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ミカの声が震える。
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「私は全部失ったんだから。」
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「……」
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「全部壊したんだから。」
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「……」
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「終わったんだよ。」
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涙が混じる。
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止まらない。
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「私とあなたは違う。」
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「私は終われない。」
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「受け入れられない。」
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「許せない。」
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「許されない。」
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叫ぶ。
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初めて。
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本音だった。
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誰にも見せなかった。
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本当のミカ。
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ユメは黙って聞いていた。
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最後まで。
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途中で遮らず。
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ただ聞いていた。
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そして。
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静かに言う。
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「私も。」
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ミカが止まる。
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「え?」
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「最初から終われた訳じゃないよ。」
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雨音。
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静かに響く。
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「苦しかった。」
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「辛かった。」
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「死にたかった時もあった。」
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ミカの目が揺れる。
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初めて聞く話。
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ユメは続ける。
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「でもね。」
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「終わるって。」
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「許すことじゃないんだよ。」
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ミカが固まる。
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「え?」
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「許さなくていい。」
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静かな声。
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優しい声。
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「間違えた自分も。」
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「失敗した自分も。」
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「嫌いなままでいい。」
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「でも。」
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そこで少し笑う。
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「それでも生きていい。」
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ミカの視界が滲む。
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その言葉は。
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今の自分が。
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一番聞きたかった言葉だった。
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「そんなの……」
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涙が溢れる。
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「そんなの。」
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「ずるいじゃん。」
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ユメは何も言わない。
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ただ。
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隣へ来る。
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そして。
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そっと傘を差し出した。
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それだけ。
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慰めもしない。
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説教もしない。
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答えも与えない。
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ただ。
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そこにいる。
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まるで。
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昔。
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ホシノにしてもらいたかったことを。
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今。
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ユメがしているようだった。
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マダラは少し離れた場所で見ている。
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介入しない。
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助けない。
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選ぶのはミカだから。
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だが。
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見届ける。
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最後まで。
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それが観測者だから。
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しばらくして。
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ミカは泣いた。
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声を上げて。
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子供みたいに。
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今まで溜め込んでいた全てを吐き出すように。
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ユメは何も言わない。
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ただ隣にいる。
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雨が降る。
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夜は深い。
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だが。
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その日。
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聖園ミカは初めて。
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終わりではなく。
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その先を考え始めた。
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ほんの少しだけ。
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前へ進むために。