観測者は青春の物語を見届ける   作:ユーザーA

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最終編 ― あまねく奇跡の始発点 第一章 理解不能存在

 

静かだった。

 

 

あまりにも。

 

 

静かだった。

 

 

 

シッテムの箱。

 

 

電子の海。

 

 

先生の意識領域。

 

 

アロナが住む場所。

 

 

そして今は。

 

 

もう一人いる。

 

 

 

プラナ。

 

 

 

白と青。

 

 

光と影。

 

 

対になる二人。

 

 

 

二人は同じものを見ていた。

 

 

 

彩禍マダラ。

 

 

 

観測記録。

 

 

行動記録。

 

 

映像記録。

 

 

音声記録。

 

 

 

膨大な情報。

 

 

 

それなのに。

 

 

何も分からない。

 

 

 

「おかしいです。」

 

 

 

アロナが唸る。

 

 

 

「絶対におかしいです。」

 

 

 

「同意。」

 

 

 

プラナが頷く。

 

 

 

珍しく。

 

 

完全に意見が一致していた。

 

 

 

「なんでですか!?」

 

 

 

アロナが机を叩く。

 

 

 

「なんで存在してるのに存在しないんですか!?」

 

 

 

「解析不能。」

 

 

 

「分類不能。」

 

 

 

「定義不能。」

 

 

 

プラナも淡々と告げる。

 

 

 

通常ならあり得ない。

 

 

 

シッテムの箱。

 

 

 

それはキヴォトスの根幹。

 

 

 

世界の記録。

 

 

世界の観測。

 

 

世界の管理。

 

 

 

その一部。

 

 

 

つまり。

 

 

本来なら。

 

 

 

観測できないものなど存在しない。

 

 

 

はずだった。

 

 

 

彩禍マダラを除いて。

 

 

 

「再解析します!」

 

 

 

アロナが立ち上がる。

 

 

 

「今度こそです!」

 

 

 

「成功率0.0000001%」

 

 

 

「あります!」

 

 

 

「ほぼ無い。」

 

 

 

「あります!」

 

 

 

 

検索開始。

 

 

 

【彩禍マダラ】

 

 

 

検索。

 

 

 

結果。

 

 

 

ERROR

 

 

 

「またです!」

 

 

 

【存在分類】

 

 

 

ERROR

 

 

 

【起源】

 

 

 

ERROR

 

 

 

【年齢】

 

 

 

ERROR

 

 

 

【種族】

 

 

 

ERROR

 

 

 

【正体】

 

 

 

ERROR

 

 

 

【危険度】

 

 

 

ERROR

 

 

 

【存在格】

 

 

 

ERROR

 

 

 

完全敗北。

 

 

 

アロナが机に突っ伏した。

 

 

 

「もう嫌です……」

 

 

 

プラナも珍しく沈黙する。

 

 

 

これは異常だった。

 

 

 

本当に。

 

 

 

異常だった。

 

 

 

そして。

 

 

二人は気付いていない。

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

観測されていることに。

 

 

 

 

誰にも辿り着けない家。

 

 

 

夜。

 

 

 

ユメが紅茶を飲んでいる。

 

 

 

マダラは窓際。

 

 

 

静かに空を見ていた。

 

 

 

そして。

 

 

ふと。

 

 

呟く。

 

 

 

「またやっているな。」

 

 

 

「アロナちゃん達?」

 

 

 

「そうだ。」

 

 

 

ユメが苦笑する。

 

 

 

「あの子達も大変だね。」

 

 

 

「そうだな。」

 

 

 

だが。

 

 

マダラは少しだけ笑っていた。

 

 

 

本当に少しだけ。

 

 

 

ユメは気付く。

 

 

 

「好きなの?」

 

 

 

「何がだ。」

 

 

 

「アロナちゃん達。」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

数秒。

 

 

 

そして。

 

 

マダラは答えた。

 

 

 

「嫌いではない。」

 

 

 

ユメが笑う。

 

 

 

「それ好きって意味だよ。」

 

 

 

「違う。」

 

 

 

「はいはい。」

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

シッテムの箱。

 

 

 

アロナが突然立ち上がる。

 

 

 

「待ってください!」

 

 

 

「?」

 

 

 

「今!」

 

 

 

「何か。」

 

 

 

「見られました!」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

プラナも固まる。

 

 

 

「同意。」

 

 

 

「観測された。」

 

 

 

「誰にですか!?」

 

 

 

「不明。」

 

 

 

アロナの背筋が震える。

 

 

 

本来。

 

 

あり得ない。

 

 

 

観測者である自分達が。

 

 

 

観測される側になるなど。

 

 

 

あり得ない。

 

 

 

だが。

 

 

心当たりは一つだけ。

 

 

 

「……」

 

 

 

「……」

 

 

 

二人は顔を見合わせる。

 

 

 

そして。

 

 

同時に呟いた。

 

 

 

「彩禍マダラ。」

 

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

目の前の空間が揺れた。

 

 

 

アロナが飛び上がる。

 

 

 

プラナが警戒する。

 

 

 

そして。

 

 

現れた。

 

 

 

彩禍マダラ。

 

 

 

当然のように。

 

 

 

シッテムの箱へ。

 

 

 

「こんばんは。」

 

 

 

アロナ絶叫。

 

 

 

「ぎゃああああああああ!!」

 

 

 

プラナ後退。

 

 

 

完全警戒。

 

 

 

「何故ここにいる。」

 

 

 

プラナが問う。

 

 

 

マダラは少し考えた。

 

 

 

そして。

 

 

答える。

 

 

 

「来れたから。」

 

 

 

「回答になっていない。」

 

 

 

「そうか。」

 

 

 

「そう。」

 

 

 

アロナが頭を抱える。

 

 

 

「またです!」

 

 

 

「またこれです!」

 

 

 

「説明してください!」

 

 

 

「面倒だ。」

 

 

 

「してくださいー!!」

 

 

 

 

ユメがいたら笑っていた。

 

 

 

間違いなく。

 

 

 

そして。

 

 

しばらく騒いだ後。

 

 

 

プラナが静かに問う。

 

 

 

「貴方は何者。」

 

 

 

空気が変わる。

 

 

 

アロナも黙る。

 

 

 

これは。

 

 

本気の質問だった。

 

 

 

世界の管理者達からの。

 

 

問い。

 

 

 

マダラは少し考える。

 

 

 

長く。

 

 

静かに。

 

 

 

そして。

 

 

答えた。

 

 

 

「私は。」

 

 

 

アロナとプラナが見つめる。

 

 

 

だが。

 

 

返ってきた言葉は。

 

 

 

「私だ。」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

完全沈黙。

 

 

 

アロナが崩れ落ちた。

 

 

 

「もう嫌ですーーー!!」

 

 

 

プラナも目を閉じる。

 

 

 

解析放棄。

 

 

 

理解放棄。

 

 

 

観測失敗。

 

 

 

完全敗北。

 

 

 

その様子を見て。

 

 

マダラは少しだけ笑った。

 

 

 

本当に少しだけ。

 

 

 

そして。

 

 

誰にも気付かれないまま。

 

 

小さく呟く。

 

 

 

「もうすぐだ。」

 

 

 

アロナが顔を上げる。

 

 

 

「え?」

 

 

 

だが。

 

 

マダラは答えない。

 

 

 

窓の向こう。

 

 

 

誰よりも遠い未来を見る。

 

 

 

色彩。

 

 

 

終わり。

 

 

 

奇跡。

 

 

 

先生。

 

 

 

そして。

 

 

全ての始まり。

 

 

 

最終編は。

 

 

静かに幕を開けようとしていた。

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