観測者は青春の物語を見届ける   作:ユーザーA

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最終編 ― あまねく奇跡の始発点 第六章 先生の死

 

終わりは突然訪れた。

 

 

誰も止められなかった。

 

 

誰も防げなかった。

 

 

 

先生は立っていた。

 

 

最後まで。

 

 

 

生徒達の前に。

 

 

色彩の前に。

 

 

絶望の前に。

 

 

 

そして。

 

 

選んだ。

 

 

 

守ることを。

 

 

 

生徒達を。

 

 

 

未来を。

 

 

 

自分の命よりも。

 

 

 

大切なものを。

 

 

 

だから。

 

 

 

死んだ。

 

 

 

静寂。

 

 

 

世界が止まったようだった。

 

 

 

誰も言葉を出せない。

 

 

 

アロナも。

 

 

 

プラナも。

 

 

 

生徒達も。

 

 

 

ただ。

 

 

そこに横たわる姿を見る。

 

 

 

先生。

 

 

 

もう動かない。

 

 

 

呼吸もない。

 

 

 

返事もない。

 

 

 

「……先生。」

 

 

 

アロナの声が震える。

 

 

 

「先生?」

 

 

 

返事は無い。

 

 

 

「先生。」

 

 

 

もう一度。

 

 

 

「先生。」

 

 

 

もう一度。

 

 

 

「先生。」

 

 

 

何度呼んでも。

 

 

 

返ってこない。

 

 

 

アロナの瞳から涙が零れる。

 

 

 

「嫌です。」

 

 

 

小さな声。

 

 

 

「嫌です。」

 

 

 

子供みたいな声。

 

 

 

「起きてください。」

 

 

 

「お願いです。」

 

 

 

「先生。」

 

 

 

「先生。」

 

 

 

「先生……」

 

 

 

プラナも黙っていた。

 

 

 

何も言えない。

 

 

 

何も出来ない。

 

 

 

ただ。

 

 

見ていることしか。

 

 

 

 

世界中で。

 

 

生徒達が絶望していた。

 

 

 

ホシノ。

 

 

シロコ。

 

 

ノノミ。

 

 

セリカ。

 

 

アヤネ。

 

 

 

ミカ。

 

 

ナギサ。

 

 

セイア。

 

 

 

ネル。

 

 

ユウカ。

 

 

アリス。

 

 

 

みんな。

 

 

 

先生を知る全員が。

 

 

 

絶望していた。

 

 

 

 

誰にも辿り着けない家。

 

 

 

静寂。

 

 

 

ユメも見ていた。

 

 

 

先生の死を。

 

 

 

そして。

 

 

ゆっくり。

 

 

マダラを見る。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

長い沈黙。

 

 

 

やがて。

 

 

ユメが聞く。

 

 

 

「助けないんだ。」

 

 

 

責める声ではない。

 

 

 

確認だった。

 

 

 

マダラは窓の外を見る。

 

 

 

先生の亡骸。

 

 

 

泣き崩れるアロナ。

 

 

 

絶望するプラナ。

 

 

 

全て見えている。

 

 

 

全て知っている。

 

 

 

そして。

 

 

答える。

 

 

 

「助けない。」

 

 

 

即答。

 

 

 

迷いは無い。

 

 

 

ユメは黙る。

 

 

 

少しだけ。

 

 

苦しそうな顔をする。

 

 

 

先生は良い人だった。

 

 

 

好きだった。

 

 

 

だから。

 

 

少し辛い。

 

 

 

「どうして。」

 

 

 

小さく聞く。

 

 

 

マダラは静かに答えた。

 

 

 

「選んだからだ。」

 

 

 

短い言葉。

 

 

 

だが。

 

 

全てが詰まっていた。

 

 

 

先生は選んだ。

 

 

 

逃げることも出来た。

 

 

 

別の道もあった。

 

 

 

それでも。

 

 

 

選んだ。

 

 

 

自分の意志で。

 

 

 

ならば。

 

 

 

尊重する。

 

 

 

観測者として。

 

 

 

最後まで。

 

 

 

それが彩禍マダラ。

 

 

 

 

ユメは目を閉じる。

 

 

 

そして。

 

 

小さく息を吐いた。

 

 

 

「そっか。」

 

 

 

理解している。

 

 

 

理解してしまう。

 

 

 

それがマダラだから。

 

 

 

もし今ここで助けたら。

 

 

 

今までの全てが嘘になる。

 

 

 

ホシノも。

 

 

ミカも。

 

 

アリスも。

 

 

先生も。

 

 

 

全員の選択が。

 

 

 

無価値になる。

 

 

 

だから。

 

 

助けない。

 

 

 

 

色彩は見ていた。

 

 

 

先生の死を。

 

 

 

世界の絶望を。

 

 

 

そして。

 

 

彩禍マダラを。

 

 

 

理解できない。

 

 

 

本当に。

 

 

 

理解できない。

 

 

 

何故動かない。

 

 

 

何故救わない。

 

 

 

何故介入しない。

 

 

 

お前なら出来るのに。

 

 

 

色彩は初めて。

 

 

 

疑問ではなく。

 

 

 

困惑を覚えた。

 

 

 

 

そして。

 

 

シッテムの箱。

 

 

 

アロナは泣いていた。

 

 

 

ずっと。

 

 

 

泣いていた。

 

 

 

子供のように。

 

 

 

どうしようもなく。

 

 

 

「嫌です……」

 

 

 

「嫌です……」

 

 

 

「先生……」

 

 

 

声が震える。

 

 

 

涙が止まらない。

 

 

 

その隣で。

 

 

プラナは黙っていた。

 

 

 

だが。

 

 

心は同じだった。

 

 

 

辛い。

 

 

 

苦しい。

 

 

 

失いたくなかった。

 

 

 

失ってしまった。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

長い沈黙。

 

 

 

そして。

 

 

その時。

 

 

プラナが顔を上げる。

 

 

 

何かを見た。

 

 

 

何かを思い出した。

 

 

 

何かを決めた。

 

 

 

アロナが涙で濡れた顔を上げる。

 

 

 

「……プラナ?」

 

 

 

プラナは先生を見る。

 

 

 

静かに。

 

 

 

長く。

 

 

 

そして。

 

 

初めて。

 

 

自分の意志で。

 

 

 

選ぶ。

 

 

 

その瞳に宿ったものを。

 

 

 

遠く。

 

 

誰にも辿り着けない家で。

 

 

マダラは見ていた。

 

 

 

そして。

 

 

ほんの少しだけ。

 

 

 

目を細めた。

 

 

 

「そうか。」

 

 

 

小さな呟き。

 

 

 

誰にも聞こえない。

 

 

 

だが。

 

 

そこには。

 

 

ほんの僅かな期待があった。

 

 

 

先生が選んだ。

 

 

 

なら。

 

 

次は。

 

 

プラナが選ぶ番だ。

 

 

 

奇跡の前に訪れる。

 

 

 

最大の絶望。

 

 

 

その夜。

 

 

キヴォトスは泣いていた。

 

 

 

そして。

 

 

新たな選択が。

 

 

静かに生まれようとしていた。

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