観測者は青春の物語を見届ける   作:ユーザーA

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最終編 ― あまねく奇跡の始発点 第八章 色彩と観測者

 

世界の境界。

 

 

そこは場所ではない。

 

 

空間でもない。

 

 

時間でもない。

 

 

世界と世界の狭間。

 

 

神秘も。

 

 

恐怖も。

 

 

因果も。

 

 

意味を失う場所。

 

 

 

そこに。

 

 

二つの存在がいた。

 

 

 

色彩。

 

 

そして。

 

 

彩禍マダラ。

 

 

 

どちらも超越者。

 

 

どちらも世界の外側。

 

 

どちらも人智を超えた存在。

 

 

 

だが。

 

 

決定的に違う。

 

 

 

長い沈黙。

 

 

 

先に口を開いたのは。

 

 

色彩だった。

 

 

 

言葉ではない。

 

 

概念。

 

 

意思。

 

 

認識。

 

 

 

【理解不能】

 

 

 

マダラは静かに聞く。

 

 

 

【何故】

 

 

 

【介入しない】

 

 

 

【何故】

 

 

 

【救わない】

 

 

 

【何故】

 

 

 

【選択に価値を見出す】

 

 

 

静かな問い。

 

 

 

それは。

 

 

色彩が初めて抱いた疑問だった。

 

 

 

マダラは少し考える。

 

 

 

そして。

 

 

答えた。

 

 

 

「価値があるからだ。」

 

 

 

【理解不能】

 

 

 

即答。

 

 

 

マダラは少し笑う。

 

 

 

予想通りだった。

 

 

 

「そうだろうな。」

 

 

 

【結果が全て】

 

 

 

【終着点が全て】

 

 

 

【選択に意味は無い】

 

 

 

色彩の理屈。

 

 

 

色彩にとって。

 

 

途中は意味を持たない。

 

 

 

終わりだけが意味を持つ。

 

 

 

だから。

 

 

色彩。

 

 

 

終焉。

 

 

 

収束。

 

 

 

完成。

 

 

 

マダラは静かに空を見る。

 

 

 

何も無い空間。

 

 

 

それでも。

 

 

何かを見ていた。

 

 

 

「昔。」

 

 

 

色彩が沈黙する。

 

 

 

マダラが自分から話すことは珍しい。

 

 

 

「お前と同じことを考えた。」

 

 

 

色彩が止まる。

 

 

 

初めて聞く話。

 

 

 

「結果だけ見た。」

 

 

 

「終わりだけ見た。」

 

 

 

「意味だけを求めた。」

 

 

 

静かな声。

 

 

 

どこか遠い。

 

 

 

遥か昔を思い出す声。

 

 

 

「そして。」

 

 

 

「飽きた。」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

色彩は理解できない。

 

 

 

飽きる。

 

 

 

その概念が無い。

 

 

 

マダラは続ける。

 

 

 

「何千。」

 

 

 

「何万。」

 

 

 

「何億。」

 

 

 

「数えられないほどの世界を見た。」

 

 

 

「始まりも。」

 

 

 

「終わりも。」

 

 

 

「全部見た。」

 

 

 

そして。

 

 

 

「全部同じだった。」

 

 

 

色彩は黙る。

 

 

 

マダラは初めて。

 

 

自分のことを語っていた。

 

 

 

「結果だけを見れば。」

 

 

 

「全部同じだ。」

 

 

 

「生まれる。」

 

 

 

「生きる。」

 

 

 

「死ぬ。」

 

 

 

「終わる。」

 

 

 

「それだけだ。」

 

 

 

色彩は頷く。

 

 

 

その通り。

 

 

 

正しい。

 

 

 

だから。

 

 

結果だけ見ればいい。

 

 

 

そのはずだった。

 

 

 

だが。

 

 

マダラは首を横に振る。

 

 

 

「違った。」

 

 

 

【何が】

 

 

 

「選択だ。」

 

 

 

静かな声。

 

 

 

「終わりは同じでも。」

 

 

 

「そこへ至る道は違う。」

 

 

 

「誰を守るか。」

 

 

 

「何を捨てるか。」

 

 

 

「何を信じるか。」

 

 

 

「どう生きるか。」

 

 

 

「全部違う。」

 

 

 

色彩は理解できない。

 

 

 

理解したいとも思わない。

 

 

 

だが。

 

 

聞いていた。

 

 

 

初めて。

 

 

興味を持って。

 

 

 

「先生を見ろ。」

 

 

 

マダラが言う。

 

 

 

世界の向こう。

 

 

 

そこには。

 

 

先生がいる。

 

 

 

死んだはずの先生。

 

 

 

だが。

 

 

終わっていない。

 

 

 

アロナ。

 

 

 

プラナ。

 

 

 

生徒達。

 

 

 

全員が抗っている。

 

 

 

終わりへ。

 

 

 

結末へ。

 

 

 

運命へ。

 

 

 

【非合理】

 

 

 

色彩が言う。

 

 

 

「そうだ。」

 

 

 

【無意味】

 

 

 

「そうかもしれない。」

 

 

 

【敗北する可能性が高い】

 

 

 

「そうだな。」

 

 

 

色彩は困惑する。

 

 

 

何故だ。

 

 

 

理解できない。

 

 

 

理解したくない。

 

 

 

それなのに。

 

 

 

目を離せない。

 

 

 

 

マダラは静かに言う。

 

 

 

「だから価値がある。」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

長い沈黙。

 

 

 

色彩は先生を見る。

 

 

 

生徒達を見る。

 

 

 

アロナを見る。

 

 

 

プラナを見る。

 

 

 

そして。

 

 

初めて。

 

 

理解に近いものを感じる。

 

 

 

終わりに抗う。

 

 

 

不可能へ挑む。

 

 

 

無意味かもしれない。

 

 

 

それでも進む。

 

 

 

それが。

 

 

選択。

 

 

 

【理解不能】

 

 

 

最後に。

 

 

色彩はそう結論付けた。

 

 

 

だが。

 

 

以前とは少し違った。

 

 

 

完全な否定ではない。

 

 

 

本当に少しだけ。

 

 

 

考えようとしていた。

 

 

 

マダラは小さく笑う。

 

 

 

「それでいい。」

 

 

 

【何故】

 

 

 

「理解する必要はない。」

 

 

 

静かな声。

 

 

 

「見ていればいい。」

 

 

 

「お前も。」

 

 

 

「私も。」

 

 

 

「ただ。」

 

 

 

「最後までな。」

 

 

 

色彩は沈黙する。

 

 

 

そして。

 

 

世界を見る。

 

 

 

先生を見る。

 

 

 

生徒達を見る。

 

 

 

奇跡へ向かう者達を見る。

 

 

 

その時。

 

 

色彩は気付く。

 

 

 

自分も。

 

 

観測している。

 

 

 

初めて。

 

 

 

終わりではなく。

 

 

 

その過程を。

 

 

 

 

遠く。

 

 

誰にも辿り着けない家。

 

 

 

ユメは一人で紅茶を飲んでいた。

 

 

 

そして窓の外を見る。

 

 

 

「帰ってくるかな。」

 

 

 

小さな呟き。

 

 

 

誰にも聞こえない。

 

 

 

だが。

 

 

どれほど世界の外にいても。

 

 

どれほど超越していても。

 

 

どれほど永遠を生きても。

 

 

 

彩禍マダラには。

 

 

帰る場所がある。

 

 

 

それだけは。

 

 

色彩にも無いものだった。

 

 

 

そして。

 

 

奇跡の時は近付く。

 

 

 

最後の戦い。

 

 

 

最後の選択。

 

 

 

最後の答え。

 

 

 

全てが。

 

 

始まろうとしていた。

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