観測者は青春の物語を見届ける   作:ユーザーA

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最終編 ― あまねく奇跡の始発点 第九章 奇跡

 

死んだはずだった。

 

 

終わったはずだった。

 

 

誰もがそう思った。

 

 

色彩も。

 

 

アロナも。

 

 

プラナも。

 

 

生徒達も。

 

 

そして。

 

 

先生自身ですら。

 

 

 

だが。

 

 

終わらなかった。

 

 

 

プラナが選んだから。

 

 

 

アロナが諦めなかったから。

 

 

 

生徒達が願ったから。

 

 

 

先生が。

 

 

生徒達を信じたから。

 

 

 

奇跡が起きた。

 

 

 

先生は目を開く。

 

 

 

光。

 

 

 

無数の光。

 

 

 

そこには。

 

 

アロナがいた。

 

 

 

泣きながら笑っていた。

 

 

 

プラナもいた。

 

 

 

少しだけ。

 

 

本当に少しだけ。

 

 

微笑んでいた。

 

 

 

「先生。」

 

 

 

震える声。

 

 

 

「おかえりなさい。」

 

 

 

先生は答える。

 

 

 

「ああ。」

 

 

 

短い返事。

 

 

 

だが。

 

 

それだけで十分だった。

 

 

 

アロナは泣き崩れる。

 

 

 

プラナは静かに目を閉じる。

 

 

 

助かった。

 

 

 

救えた。

 

 

 

自分達の選択で。

 

 

 

自分達の意志で。

 

 

 

 

その瞬間。

 

 

遠く。

 

 

誰にも辿り着けない家。

 

 

 

マダラは目を閉じた。

 

 

 

そして。

 

 

ほんの少しだけ。

 

 

 

笑った。

 

 

 

ユメが気付く。

 

 

 

「あ。」

 

 

 

珍しい。

 

 

 

本当に珍しい。

 

 

 

心から笑っていた。

 

 

 

「良かった?」

 

 

 

ユメが聞く。

 

 

 

マダラは窓の向こうを見る。

 

 

 

先生。

 

 

 

アロナ。

 

 

 

プラナ。

 

 

 

奇跡を起こした者達。

 

 

 

そして。

 

 

静かに答えた。

 

 

 

「ああ。」

 

 

 

「良い選択だった。」

 

 

 

それは。

 

 

観測者からの最大の賛辞。

 

 

 

 

そして。

 

 

戦いは続く。

 

 

 

色彩はまだいる。

 

 

 

終焉はまだ終わっていない。

 

 

 

だが。

 

 

もう違う。

 

 

 

先生がいる。

 

 

 

生徒達がいる。

 

 

 

そして。

 

 

全員が立ち上がった。

 

 

 

ホシノ。

 

 

 

シロコ。

 

 

 

ノノミ。

 

 

 

セリカ。

 

 

 

アヤネ。

 

 

 

ミカ。

 

 

 

ナギサ。

 

 

 

セイア。

 

 

 

ネル。

 

 

 

ユウカ。

 

 

 

アリス。

 

 

 

ヒナ。

 

 

 

数え切れない生徒達。

 

 

 

キヴォトス全ての想い。

 

 

 

全てが一つになる。

 

 

 

色彩は見ていた。

 

 

 

理解できない。

 

 

 

何故立ち上がる。

 

 

 

何故抗う。

 

 

 

何故諦めない。

 

 

 

敗北するかもしれない。

 

 

 

失敗するかもしれない。

 

 

 

それでも。

 

 

 

進む。

 

 

 

その姿を。

 

 

 

色彩は見ていた。

 

 

 

そして。

 

 

先生が前へ出る。

 

 

 

最後の戦い。

 

 

 

最後の選択。

 

 

 

最後の答え。

 

 

 

色彩は問う。

 

 

 

【何故】

 

 

 

【抗う】

 

 

 

先生は笑う。

 

 

 

少しだけ。

 

 

 

疲れた顔で。

 

 

 

それでも。

 

 

前を向いて。

 

 

 

答える。

 

 

 

「みんながいるからだ。」

 

 

 

色彩は沈黙する。

 

 

 

理解不能。

 

 

 

だが。

 

 

以前ほど否定できない。

 

 

 

アロナがいる。

 

 

 

プラナがいる。

 

 

 

生徒達がいる。

 

 

 

先生がいる。

 

 

 

その事実を。

 

 

色彩は見てしまった。

 

 

 

そして。

 

 

戦いが始まる。

 

 

 

終焉と。

 

 

 

希望の戦い。

 

 

 

世界の終わりと。

 

 

 

未来の戦い。

 

 

 

無数の光が空を埋める。

 

 

 

神秘。

 

 

 

恐怖。

 

 

 

願い。

 

 

 

祈り。

 

 

 

絆。

 

 

 

全てが一つになる。

 

 

 

先生は進む。

 

 

 

生徒達も進む。

 

 

 

誰一人置いていかない。

 

 

 

誰一人諦めない。

 

 

 

そして。

 

 

奇跡は完成する。

 

 

 

色彩が揺らぐ。

 

 

 

世界が揺らぐ。

 

 

 

終焉が。

 

 

崩れていく。

 

 

 

色彩は最後に見る。

 

 

 

先生を。

 

 

 

生徒達を。

 

 

 

そして。

 

 

遠く。

 

 

誰にも辿り着けない場所にいる。

 

 

彩禍マダラを。

 

 

 

観測者。

 

 

 

最後まで介入しなかった存在。

 

 

 

最後まで見届けた存在。

 

 

 

色彩は理解できなかった。

 

 

 

最後まで。

 

 

 

だが。

 

 

一つだけ。

 

 

理解した。

 

 

 

選択は。

 

 

 

結果を変える。

 

 

 

それだけは。

 

 

確かだった。

 

 

 

やがて。

 

 

色彩は去る。

 

 

 

静かに。

 

 

 

世界の終わりは。

 

 

終わった。

 

 

 

キヴォトスは救われた。

 

 

 

先生達が。

 

 

 

自分達の力で。

 

 

 

選び取った未来によって。

 

 

 

 

遠く。

 

 

誰にも辿り着けない家。

 

 

 

マダラは窓を閉める。

 

 

 

戦いは終わった。

 

 

 

奇跡は起きた。

 

 

 

物語は完結した。

 

 

 

ユメが隣に来る。

 

 

 

静かに。

 

 

当然のように。

 

 

 

そして。

 

 

笑った。

 

 

 

「面白かった?」

 

 

 

長い沈黙。

 

 

 

観測者は考える。

 

 

 

無数の世界。

 

 

 

無数の終わり。

 

 

 

無数の物語。

 

 

 

その中で。

 

 

今回の物語はどうだったか。

 

 

 

そして。

 

 

彩禍マダラは答える。

 

 

 

「ああ。」

 

 

 

優しい声。

 

 

 

穏やかな声。

 

 

 

満足した声。

 

 

 

「面白かった。」

 

 

 

ユメも笑う。

 

 

 

「そっか。」

 

 

 

それだけ。

 

 

 

それだけで十分だった。

 

 

 

マダラは立ち上がる。

 

 

 

世界を救った英雄達の元へは行かない。

 

 

 

祝福もしない。

 

 

 

賞賛もしない。

 

 

 

その必要は無い。

 

 

 

彼らは。

 

 

 

自分達で選んだのだから。

 

 

 

観測者の役目は終わり。

 

 

 

だから。

 

 

帰る。

 

 

 

たった一人の少女の隣へ。

 

 

 

ユメが手を伸ばす。

 

 

 

マダラも手を取る。

 

 

 

そして。

 

 

二人は家の奥へ歩いていく。

 

 

 

世界のどこにも無い家。

 

 

 

誰にも辿り着けない場所。

 

 

 

永遠の観測者の帰る場所。

 

 

 

最後に。

 

 

窓の外では。

 

 

キヴォトスの朝日が昇っていた。

 

 

 

新しい物語の始まりを告げるように。

 

 

 

そして。

 

 

永遠の観測者は。

 

 

今日も。

 

 

ただ一人の少女の隣へ帰る。

 

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