観測者は青春の物語を見届ける   作:ユーザーA

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黒服のお話です


対策委員会編 理解不能な観測対象

 

暗い部屋。

 

 

誰もいない空間。

 

 

ただモニターだけが並ぶ。

 

 

ゲマトリア。

 

 

その一室。

 

 

黒服は一枚の資料を見ていた。

 

 

正確には。

 

 

資料になっていない資料。

 

 

存在しないはずの資料。

 

 

「妙ですね。」

 

 

静かな声。

 

 

モニターにはアビドスの映像が映っている。

 

 

先生。

 

 

対策委員会。

 

 

そして。

 

 

白と黒の服を纏う少女。

 

 

彩禍マダラ。

 

 

黒服は初めてその存在を認識した。

 

 

正確には。

 

 

認識してしまった。

 

 

「……」

 

 

沈黙。

 

 

違和感。

 

 

ゲマトリアは観測者だ。

 

 

神秘を観測する。

 

 

恐怖を観測する。

 

 

可能性を観測する。

 

 

世界を観測する。

 

 

故に。

 

 

知らない存在など本来あり得ない。

 

 

しかし。

 

 

彩禍マダラ。

 

 

その名前を調べた瞬間。

 

 

全てがおかしくなった。

 

 

連邦生徒会。

 

 

記録なし。

 

 

各学園。

 

 

所属記録なし。

 

 

出生記録。

 

 

なし。

 

 

戸籍。

 

 

なし。

 

 

過去の行動履歴。

 

 

なし。

 

 

存在証明。

 

 

なし。

 

 

だが。

 

 

確実に存在している。

 

 

映像にも映る。

 

 

音声も記録される。

 

 

生徒達とも会話している。

 

 

先生も認識している。

 

 

それなのに。

 

 

世界のどこにも存在しない。

 

 

「有り得ない。」

 

 

黒服が呟く。

 

 

有り得ない。

 

 

神秘ではない。

 

 

神秘なら観測できる。

 

 

恐怖でもない。

 

 

恐怖なら分析できる。

 

 

色彩でもない。

 

 

色彩ならば理解はできなくとも分類は可能。

 

 

だが。

 

 

彩禍マダラは違う。

 

 

分類欄そのものが存在しない。

 

 

まるで。

 

 

世界の外から突然現れたような。

 

 

そんな異物。

 

 

「興味深い。」

 

 

黒服は笑った。

 

 

久しぶりだった。

 

 

純粋な知的好奇心。

 

 

未知。

 

 

理解不能。

 

 

観測不能。

 

 

だからこそ面白い。

 

 

黒服は更に調査を進める。

 

 

映像記録。

 

 

音声記録。

 

 

通信記録。

 

 

全てを確認する。

 

 

そして。

 

 

気付く。

 

 

「……何?」

 

 

初めて。

 

 

黒服の表情が変わった。

 

 

ある一点。

 

 

全ての記録に共通する異常。

 

 

マダラが映る瞬間だけ。

 

 

情報量が増えている。

 

 

説明できない。

 

 

だが確実に増えている。

 

 

まるで。

 

 

世界そのものが。

 

 

彼女を定義するために無理をしているような。

 

 

そんな違和感。

 

 

黒服はさらに解析を続ける。

 

 

そして。

 

 

失敗した。

 

 

「……」

 

 

モニターが沈黙する。

 

 

解析結果。

 

 

表示不能。

 

 

初めて見るエラー。

 

 

神秘でもない。

 

 

恐怖でもない。

 

 

色彩でもない。

 

 

未知の項目。

 

 

未知の存在。

 

 

未知の概念。

 

 

「素晴らしい。」

 

 

黒服は笑う。

 

 

心の底から。

 

 

本当に楽しそうに。

 

 

「貴方は一体何なのですか。」

 

 

問い掛ける。

 

 

答えは返らない。

 

 

当然だ。

 

 

ここにマダラはいない。

 

 

しかし。

 

 

その瞬間。

 

 

黒服は感じた。

 

 

視線。

 

 

誰かに見られている感覚。

 

 

背筋が凍る。

 

 

ゆっくり振り返る。

 

 

誰もいない。

 

 

誰もいるはずがない。

 

 

だが。

 

 

確信する。

 

 

今。

 

 

見られた。

 

 

「……」

 

 

初めてだった。

 

 

黒服が。

 

 

観測者ではなく。

 

 

観測される側になったのは。

 

 

そして。

 

 

その遥か彼方。

 

 

アビドスの夕暮れ。

 

 

校舎の屋上。

 

 

マダラは空を見ていた。

 

 

何もない空。

 

 

だが。

 

 

確かに知っている。

 

 

黒服が自分を調べていることを。

 

 

「どうかした?」

 

 

隣でユメが聞く。

 

 

マダラは小さく首を振る。

 

 

「いや。」

 

 

そして。

 

 

ほんの少しだけ笑った。

 

 

「面白い者がいると思ってな。」

 

 

その日。

 

 

黒服は初めて知った。

 

 

世界には。

 

 

自分達ゲマトリアですら理解できない存在がいることを。

 

 

そして。

 

 

その探究心は。

 

 

この先ずっと。

 

 

彩禍マダラという観測不能存在へ向けられることになる。

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