トローラ・ロージン転生   作:ぶーく・ぶくぶく

14 / 14
コーラスに栄光あれ!

/*/ ジュノー戦線 コーラス本陣 ジュノーン護衛陣 /*/

 

 

 

 本陣は、静かではなかった。

 

 前線からは、トローラの白いベルリンが派手に暴れている報告が入ってくる。

 

 

「ロージン卿、敵マグロウ複数を撃破!」

「敵、王騎と誤認して集中!」

「ロージン卿、なお交戦中!」

「マグロウ撃破数、増加!」

 

 

 その報告を聞きながら、トリオ騎士の一人が歯を食いしばった。

 

「客人にばかり前を張らせるな!」

 

「だが、今は本陣を崩せん!」

 

 ジュノーンは、中央に立っていた。

 

 白いMH。

 

 その騎体の中に、コーラス三世とウリクルがいる。

 

 当初の予定通り、王は前へ出すぎない。

 

 ジュノーンは本陣中央に立ち、旗印として戦場を見ている。

 

 その手には、パイドル・スピア。

 

 そして、トローラの助言通り、実剣も携えていた。

 

 コーラス三世は、コクピットの中で静かに息を吐いた。

 

「トローラは無事か」

 

 ウリクルが答える。

 

「白いベルリン、交戦継続中。損傷はありますが、シューシャが制御しています」

 

「彼らしいな」

 

 その瞬間。

 

 空間が歪んだ。

 

 ジュノーンの前方、至近距離。

 

 守備線の内側。

 

 あり得ない位置に、敵の影が出現した。

 

「テレポート!」

 

「ブーレイだ!」

 

「ジュノーン前方! 防げ!」

 

 ブーレイが飛び込んできた。

 

 槍を構え、ジュノーンの懐へ向かう。

 

 護衛のベルリンが即座に前へ出た。

 

 白い盾のように、ジュノーンの前を固める。

 

 トリオ騎士たちも動いた。

 

「陛下を守れ!」

 

「前を塞げ!」

 

「ジュノーンを下げろ!」

 

 その判断は速かった。

 

 正しい。

 

 誰もが前方の奇襲に反応した。

 

 だからこそ、二重目が通った。

 

 ジュノーンの後方。

 

 さらに内側。

 

 空間が、もう一度裂けた。

 

 サイレン。

 

 ブーレイを囮にした、二重のテレポート奇襲。

 

 コーラス三世の背後に、憎悪そのもののようなMHが出現する。

 

 通信に、声が叩き込まれた。

 

 

『久しぶりだ! コーラス!』

 

 

 その声には、戦術ではなく怨念があった。

 

 

『私のプライド。私の顔に剣を向けたことを思い知れ!』

 

 

 サイレンが打ち込んでくる。

 

 ジュノーンの背後。

 

 長物では対応が遅れる位置。

 

 パイドル・スピアでは間に合わない。

 

 だが。

 

 コーラス三世は、迷わなかった。

 

 トローラの声が、脳裏に残っていた。

 

『パイドル・スピアだけじゃ懐に入られた時に対応できねぇ。実剣も持っていけ。飾りで立つなら実剣持ってる方が映えるだろ』

 

 コーラス三世は、パイドル・スピアを捨てた。

 

 槍が地面を打つ。

 

 ウリクルが制御を合わせる。

 

 ジュノーンの手が、腰の実剣へ走った。

 

 居合。

 

 白いMHの動きが、ほんの一瞬だけ静かになる。

 

 次に見えた時、剣は抜かれていた。

 

 サイレンの打ち込みが届くより早く。

 

 ジュノーンの実剣が、斜めに走った。

 

 白い閃き。

 

 火花。

 

 切断音。

 

 サイレンの装甲が裂ける。

 

 それは、華麗な決闘ではなかった。

 

 長い応酬でもなかった。

 

 至近距離に飛び込んできた敵を、携えていた一手で斬り捨てる。

 

 ただそれだけの、あまりにも正しい一撃。

 

 サイレンが崩れた。

 

 通信が途切れる。

 

 王は、生きていた。

 

 ジュノーンは、立っていた。

 

 

 

/*/ 同時刻 本陣前面 ブーレイ奇襲線 /*/

 

 

 

 前方に飛び込んだブーレイもまた、逃げ場を失っていた。

 

 ジュノーンの前面を固めるベルリンを突破しようとした瞬間、戦場の色が変わる。

 

 LEDミラージュが入った。

 

 白い影が、無駄のない速度でブーレイの退路を切る。

 

 黒騎士ロードス・ドラグーン侯が、重く踏み込む。

 

 黒い騎体の一撃が、ブーレイの肩を砕く。

 

 さらに、ボード・ヴィラードのクルマルス。

 

 その刃が、姿勢を崩したブーレイの中心線を捉えた。

 

 ブーレイは、王を討つために飛び込んだ。

 

 だがそこにいたのは、王だけではない。

 

 コーラスの護衛。

 

 黒騎士。

 

 ミラージュ。

 

 そして、星団の怪物たち。

 

 数瞬後。

 

 ブーレイは沈黙した。

 

 奇襲は、失敗した。

 

 

 

/*/ コーラス本陣 /*/

 

 

 

 最初に声を上げたのは、名もない兵だった。

 

「陛下は……」

 

 誰もがジュノーンを見た。

 

 白いMHは、立っている。

 

 パイドル・スピアは地に落ちている。

 

 だが、実剣を抜いたジュノーンは、なお王の旗印としてそこにいた。

 

 誰かが叫んだ。

 

「陛下は健在だ!」

 

 その声が、一気に広がる。

 

「陛下は健在だ!」

 

「ジュノーン、健在!」

 

「奇襲失敗!」

 

「サイレン撃破!」

 

 トリオ騎士の一人が、剣を掲げた。

 

「コーラスに栄光あれ!」

 

 応える声が爆発した。

 

「コーラスに栄光あれ!」

 

「コーラスに栄光を!」

 

「陛下は生きておられる!」

 

 士気が跳ね上がる。

 

 さっきまで、敵が本陣へ飛び込んできた恐怖があった。

 

 だが今、その恐怖は逆転した。

 

 敵は王を討ちに来た。

 

 討てなかった。

 

 王は自ら実剣を抜き、サイレンを斬った。

 

 その事実が、本陣の空気を変えた。

 

 ロードス侯が低く言う。

 

「天はコーラスに味方した」

 

 ボード・ヴィラードが続ける。

 

「行け」

 

 その声は、大きくはなかった。

 

 だが、伝わった。

 

 騎士たちが動き出す。

 

 ベルリンが前へ出る。

 

 LEDミラージュが敵線を裂く。

 

 黒騎士が重く踏み込む。

 

 コーラスのMH隊が、歓声とともに押し出していく。

 

「天はコーラスに味方した!」

 

「行け!」

 

「ハグーダを追い落とせ!」

 

 

 

/*/ ジュノーン内部 /*/

 

 

 

 コーラス三世は、実剣を握ったまま、しばらく息を吐かなかった。

 

 ウリクルの声が、静かに響く。

 

「陛下」

 

「……助かったな」

 

「はい」

 

「トローラの言う通りだった」

 

 落ちたパイドル・スピア。

 

 抜かれた実剣。

 

 斬り捨てられたサイレン。

 

 もし剣を持っていなければ、間に合わなかった。

 

 もし長物だけで立っていれば、懐に入られていた。

 

 コーラス三世は、ほんの少しだけ笑った。

 

「飾りには、剣も必要らしい」

 

 ウリクルが答える。

 

「はい。よくお似合いです」

 

「そうか」

 

 その声には、戦場の中にある、わずかな安堵があった。

 

 だが、戦いはまだ終わっていない。

 

 コーラス三世は実剣を構え直す。

 

「ウリクル」

 

「はい」

 

「本陣を維持する。前線を押し上げろ」

 

「イエス、マスター」

 

 ジュノーンが、再び立つ。

 

 王は健在。

 

 白いMHは健在。

 

 コーラスの本陣は、折れていなかった。

 

 

 

/*/ 前線 白いベルリン /*/

 

 

 

 その報は、前線でマグロウを相手にしていたトローラにも届いた。

 

 

「本陣奇襲失敗!」

「ジュノーン、実剣でサイレンを撃破!」

「陛下健在!」

 

 

 トローラは、白いベルリンのコクピットで一瞬だけ目を見開いた。

 

 それから、口の端を吊り上げる。

 

「ほら見ろ」

 

 シューシャが言う。

 

「マスターの助言が生きました」

 

「だろ?」

 

 トローラは剣を握り直す。

 

「言ったじゃねぇか。飾りで立つなら実剣持ってる方が映えるってな!」

 

 正面からマグロウが一騎、突っ込んでくる。

 

 トローラは白いベルリンを踏み込ませた。

 

「王様が生き残ったぞ!」

 

 剣が走る。

 

 マグロウが裂ける。

 

「こっちも負けてらんねぇだろ!」

 

 シューシャが明るく応じる。

 

「はい、マスター!」

 

 白いベルリンは、再び前へ出た。

 

 王が本陣で立った。

 

 ならば前線は走る。

 

 コーラスに栄光を、という声が、戦場全体へ広がっていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ちゃんと軍人教育受けてるジィッドくん(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:ファイブスター物語)

ニナリスのA-B1-B1-B2-B2:VVS1・L型って見てさ。クリアランスVVS1が嫁いでくるのにジィッドくん残念過ぎないと思って妄想を形にしてみます。これミースを誘拐したり、エンジン爆破しそうにないから、死なないで済むかしら?▼ラストまで投稿したぜ。2026年6月18日完結。▼トローラ・ロージン転生「https://syosetu.org/novel/4…


総合評価:725/評価:8.55/完結:161話/更新日時:2026年06月18日(木) 00:00 小説情報

アルカンフェル転生(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:強殖装甲ガイバー)

気が付くとアルカンフェルに転生していた▼お仕置きビリビリは嫌だが、巨大小惑星の衝突は回避しないと地球丸ごと死ぬとか草。▼原作開始まで何万年?忘れない様に石板に覚えてる原作内容を書き込んでおこう。気が付いたら眠りの神殿に石板が飾られてて笑う。日本語は不味くないか?


総合評価:2529/評価:8.7/連載:39話/更新日時:2026年07月02日(木) 17:00 小説情報

転生バドは勝利を夢見る(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:機動警察パトレイバー)

オタクの夢見る転生もの。▼リアルっぽい世界でインドで人買いに攫われて外れかと思ったら、ボク、バドリナード・ハルチャンドやん!▼グリフォン乗れるやん!▼ならアルフォンスに勝たなあかん。▼原作通りなんてつまらない。▼性能は勝ってる。あとはパイロット次第……めっちゃ燃える!▼


総合評価:598/評価:7.08/連載:17話/更新日時:2026年07月02日(木) 05:00 小説情報

銀河腐れ伝説(作者:ウヅキ)(原作:銀河英雄伝説)

キガ ツク トワ タシ ハギ ンガ テイ コク ノキ ゾク ニナ ッテ イタ▼ソレ デモ ワタ シハ カツ テノ ユメ ヲワ スレ ナイ▼今更ながら原作キャラの血縁者に生まれたオリジナルキャラクターを主人公に、銀河英雄伝説の二次創作に挑戦してみました。クロスオーバー作品ですが片割れはほぼ出番がありません。▼本作品はらいとすたっふ規定(2015年改訂版)を遵守…


総合評価:4456/評価:8.71/連載:27話/更新日時:2026年06月30日(火) 19:06 小説情報

起きたら仁義なき転生、それから。(作者:函南)(原作:仁義なき戦い)

起きたら仁義なき戦いの世界にいた。そんな話。


総合評価:2710/評価:8.95/連載:32話/更新日時:2026年06月29日(月) 05:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>