トローラ・ロージン転生   作:ぶーく・ぶくぶく

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星団歴3011年から3030年の間。原作にないのでふわっと
メサ・ルミナス学園


 

デルタ・ベルン。

星団歴3011年から3020年くらい多分。原作にない場面なので年号は適当。

 

午後の講義を終えたヨーンが校舎を出ると、正門へと続く並木道の脇に、ひどく場違いな男が立っていた。

 

学園は公的な教育機関である。

 

貴族や騎士家の子弟だけでなく、官僚を目指す学生や、奨学制度で地方から集められた優秀な少年少女も学んでいる。敷地内には教師や事務官、警備員の姿が絶えず、来訪者の身元も厳しく確認される。

 

当然、ファティマを気軽に伴って入れるような場所ではなかった。

 

だから、その男は一人だった。

 

木陰に寄りかかり、売店で買ったらしい紙袋を片手に、焼き菓子を食べている。

 

騎士らしい華美な装いではない。

 

保護者にも、教師にも、軍人にも見えない。

 

裏通りの酒場の前で、借金取りが来るのを待っているような姿だった。

 

ヨーンは足を止めた。

 

まばたきをした。

 

もう一度、男を見た。

 

見間違いであってほしいと、一瞬だけ思った。

 

しかし男はヨーンを見つけると、何事もなかったように片手を上げた。

 

「よう」

 

トローラ・ロージンだった。

 

「元気そうじゃねぇか」

 

ヨーンは返事をしなかった。

 

無言のまま歩き出す。

 

一歩。

 

二歩。

 

次第に足が速くなる。

 

トローラは紙袋へ手を入れながら、怪訝そうに眉を上げた。

 

「なんだよ。せっかく様子を見に来たってのに、もう少し愛想よく――」

 

「なにやってるんですか!?」

 

ヨーンの怒声が、並木道に響き渡った。

 

周囲を歩いていた学生たちが、一斉に振り返った。

 

トローラは菓子を口に入れたまま、少し考えた。

 

「今?」

 

「今じゃありません!」

 

「じゃあ何だよ」

 

「フロート・テンプルです!」

 

「ああ」

 

トローラはようやく思い当たったように頷いた。

 

「襲撃?」

 

「襲撃? じゃありません!」

 

ヨーンの顔が赤くなった。

 

「バカなんですか!」

 

「そうだけど?」

 

一瞬の迷いもない返答だった。

 

ヨーンは言葉を失った。

 

トローラは何事もなかったように、紙袋の中を覗き込んだ。残っている菓子の数を確認するほうが、ヨーンの怒りよりも重要であるらしい。

 

「いやぁ、強かったな、ミラージュ騎士」

 

「感想がそれなんですか!?」

 

「他に何を言えってんだ。強ぇもんは強ぇよ。ログナーなんか死んでも止まらねぇし、ランドの爺さんは血まみれでも前に出てくる。メイザーも化け物みてぇにしぶとい。ありゃひでぇ。人間じゃねぇよ」

 

「あなたも、その人たちを襲った側でしょう!」

 

「そうともいう」

 

「そうとしか言いません!」

 

周囲を行き交う学生たちが、ちらちらと二人を見ていた。

 

トローラ・ロージン。

 

今や、その名を知らない者は学園にもほとんどいない。

 

フロート・テンプルを襲撃した四人。

 

バッハトマ魔法帝国皇帝ボスヤスフォート。

 

ビューティ・ペール。

 

黒騎士デコース・ワイズメル。

 

そして、悪党騎士トローラ・ロージン。

 

ブラック4。

 

新聞は、彼らをそう呼んだ。

 

ニュース端末には、損壊したフロート・テンプルの映像が何日も流れ続けた。朱塔玉座の破壊、ミラージュ騎士団の損害、ログナーの死亡と再生待機。

 

どれも、星団を震撼させる報道だった。

 

その中に、トローラの名があった。

 

最初、ヨーンは誤報だと思った。

 

同姓同名の別人かもしれないとも考えた。

 

だが、後から公開された映像に映っていたのは、紛れもなくヨーンの知るトローラだった。

 

口が悪い。

 

態度も悪い。

 

高潔な騎士を鼻で笑い、自分を悪党と呼ばれても否定すらしない。

 

だが、ヨーンを人買いから救った。

 

食事を与えた。

 

戦い方を教えた。

 

バーシャを守るための力の使い方を、根気強く叩き込んだ。

 

その男が、デコースと肩を並べて、フロート・テンプルを襲撃した。

 

しかも。

 

四人のうち、三人は撤退に成功した。

 

ただ一人。

 

トローラだけがその場に残り、A.K.D.に捕らえられた。

 

ヨーンは、新聞のその一文を何度も読み返した。

 

トローラが死んだという続報が出るのではないか。

 

処刑が決まったと報じられるのではないか。

 

そう思いながら、毎朝の新聞を確認した。

 

だが、何も分からなかった。

 

拘束。

 

事情聴取。

 

処遇検討中。

 

報道に出るのは、曖昧な言葉ばかりだった。

 

その男が今、何事もなかったような顔で、学園の並木道に立っている。

 

ヨーンの怒りは、容易には収まらなかった。

 

「どうして……」

 

声が低くなった。

 

「どうして、あなただけ残ったんですか」

 

トローラは手にしていた焼き菓子を口へ放り込んだ。

 

「逃げ損ねた」

 

「そんなわけないでしょう」

 

「いや、本当に」

 

「あなたが?」

 

ヨーンは即座に否定した。

 

K.O.G.を相手に生き残った男だ。

 

ハグーダの戦場を駆け抜けた男だ。

 

ヨーンがゴロツキ騎士たちに囲まれた時にも、まるで偶然通りかかったような顔で現れた。

 

逃げ道を見つけることに関して、この男は並の騎士よりもよほど優れている。

 

そのトローラが、四人の中でただ一人だけ逃げ遅れた。

 

偶然であるはずがなかった。

 

ヨーンの中で、報道された断片的な情報が、一つの形を取り始めた。

 

追撃するミラージュ騎士団。

 

崩れかけた退路。

 

撤退するボスヤスフォート、ペール、デコース。

 

そして、一人だけ残ったトローラ。

 

「三人を逃がすためですね」

 

「は?」

 

「あなたが残って、ミラージュの追撃を止めた」

 

「いや」

 

「だから、ほかの三人は撤退できた」

 

「違う違う」

 

「そうでもなければ、あなただけ捕まるなんておかしいです」

 

「お前、俺を何だと思ってんの?」

 

「最低の悪党です」

 

「うん」

 

「でも、必要な時に誰かを見捨てる人じゃない」

 

トローラの動きが止まった。

 

焼き菓子へ伸ばしかけた指が、紙袋の縁にかかったまま動かない。

 

ヨーンは怒っていた。

 

しかし、その怒りの奥にあるものを、トローラは見てしまった。

 

心配。

 

安堵。

 

尊敬。

 

そして、何も知らされなかったことへの寂しさ。

 

トローラは、ひどく居心地の悪い顔をした。

 

「いや、本当に違うんだって」

 

「あなたはいつもそうです」

 

「何がだよ」

 

「何かしても、まともに説明しない」

 

「今回は説明してるだろ」

 

「人を助けても、偶然だと言う。危険な場所に残っても、逃げ遅れただけだと言う」

 

「今回は本当に逃げ遅れただけなんだよ!」

 

トローラが珍しく声を張った。

 

しかし、その必死さが、ヨーンには別の意味に見えた。

 

自分の行為を誇りたくない。

 

恩を着せたくない。

 

残った理由を、仲間にも知られたくない。

 

この男なら、そう考える。

 

ヨーンはそう確信してしまった。

 

「僕には、無茶をするなと言ったでしょう」

 

「言ったな」

 

「力に酔うなとも言いました」

 

「言った」

 

「自分の命を粗末にするなとも言いました」

 

「そこまで立派な言い方はしてねぇと思うぞ」

 

「それなのに、自分は何をしているんですか!」

 

「だから、馬鹿だって言っただろ!」

 

「笑い事じゃありません!」

 

「笑ってねぇよ」

 

「笑っています!」

 

実際、トローラは少し笑っていた。

 

ヨーンがあまりにも真剣に、自分を仲間のために残った騎士へ仕立て上げているため、訂正する気力より先に笑いが込み上げてきたのである。

 

「お前、俺を買いかぶりすぎだ」

 

「買いかぶっていません」

 

「俺はデコースに誘われて、ミラージュがどれくらい強いのか見たくなったから、ついていっただけだぞ」

 

「そんな理由でフロート・テンプルを襲う人がいますか!」

 

「ここにいる」

 

「バカなんですか!」

 

「二回目だぞ、それ」

 

「何度でも言います!」

 

ヨーンの声に、周囲の学生たちは完全に足を止めていた。

 

ブラック4の一人を真正面から叱りつけている学生。

 

どう見ても、尋常な光景ではない。

 

トローラは周囲の視線に気づき、声を低くした。

 

「おい。少し静かにしろ。俺はいま、あんまり注目されたくねぇ立場なんだ」

 

「それなら、どうして学園に来たんですか!」

 

「お前の様子を見に来た」

 

ヨーンは言葉に詰まった。

 

ほんの一瞬だった。

 

しかし、トローラはその隙に話を戻した。

 

「いいか。俺はあいつらを庇って残ったんじゃない。殿を務めたわけでもない。追手を引きつけようとしたわけでもねぇ」

 

「では、なぜあなただけが」

 

「俺の退路だけ切られたんだよ」

 

ヨーンの眉が動いた。

 

「退路を?」

 

「ああ」

 

「誰にですか」

 

「アマテラス」

 

その名が出た瞬間、ヨーンの表情が固くなった。

 

アマテラス。

 

A.K.D.を統べる天照帝。

 

星団最大の権力者。

 

騎士団、国家、軍、財力。そのどれを取っても、ヨーンの理解をはるかに超える存在だった。

 

「アマテラス陛下が、あなた一人の退路を?」

 

「そう」

 

「なぜです」

 

「知らねぇよ」

 

トローラは心底嫌そうな顔をした。

 

「ボスやんも会長も凸助も逃げた。俺も帰ろうとした。そうしたら、俺が使うはずだった退路だけ、ぷつんと切れた」

 

ヨーンはしばらく黙っていた。

 

それから、静かに尋ねた。

 

「三人が撤退するまで、あなたが最後尾にいたからでは?」

 

「違う」

 

「追撃を警戒して、後方に残っていた」

 

「残ってねぇ」

 

「では、なぜ三人より撤退が遅れたんです」

 

「ちょっと周りを見てた」

 

「ミラージュの追撃を確認していたんですね」

 

「違う。壊れた王宮を見てただけだ」

 

「戦況を確認していた」

 

「見物だよ!」

 

「逃げる前に、全員が退いたことを確かめた」

 

「だから違うって!」

 

どれほど否定しても、ヨーンの中では筋道が整っていった。

 

トローラは自分の行為を誇らない。

 

仲間を庇ったなどとは絶対に言わない。

 

まして、相手がデコースである。

 

ヨーンの左腕を奪い、バーシャを連れ去った男。

 

それでも、同じ戦場に立った以上は見捨てなかった。

 

その事実を、ヨーンには言いたくないのだ。

 

そう考えると、トローラの曖昧な態度も、必死な否定も、すべて説明がついてしまった。

 

「分かりました」

 

ヨーンは言った。

 

トローラがほっと息を吐く。

 

「やっと分かったか」

 

「それ以上は聞きません」

 

「待て。何を分かった?」

 

「あなたが話したくないなら、無理に聞くべきではありません」

 

「違うぞ」

 

「でも、三人を逃がすために残ったことは――」

 

「だから残ってねぇ!」

 

「誰にも言いません」

 

「お前、全然分かってねぇじゃねぇか!」

 

ヨーンは、トローラの抗議を聞き流した。

 

むしろ、そこまで必死に否定すること自体が、この男らしく思えた。

 

自分を恩人扱いされるのを嫌う。

 

英雄扱いされることを嫌う。

 

善人だと言われれば、不機嫌になる。

 

だが、誰かが本当に危険に陥れば、最後には自分が動く。

 

ヨーンの中で、これまで見てきたトローラの姿と、ブラック4襲撃の結末が重なった。

 

「それで」

 

ヨーンは問いかけた。

 

「アマテラス陛下に捕らえられて、どうなったんですか」

 

「働かされてる」

 

「囚人として?」

 

「違う」

 

「では、捕虜交換を?」

 

「そういうんじゃねぇ」

 

「裁判は」

 

「受けてねぇ」

 

「では、なぜ自由に学園へ来られるんです」

 

「仕事の途中だからだ」

 

「仕事?」

 

トローラは嫌そうに紙袋を丸めた。

 

「損害賠償」

 

「……はい?」

 

「朱塔玉座の修理費。王宮施設の復旧費。ミラージュ騎士団の人的損害。ログナーが戻るまでの戦力穴埋め。A.K.D.の威信回復にかかる諸経費」

 

「それを、あなたが支払うんですか」

 

「そうらしい」

 

「一人で?」

 

「逃げた連中からは取れねぇからな」

 

ヨーンの顔が険しくなった。

 

「つまり、三人を逃がすために残ったうえ、その三人の分まで背負わされたんですか」

 

「違う!」

 

トローラは即座に否定した。

 

「俺が払うのは俺の分だ!」

 

「でも、正確に四分の一だけではないのでしょう」

 

「……まあ、諸経費とか、色々盛られてる気はする」

 

「やはり」

 

「何が、やはりだ」

 

ヨーンの表情に、静かな憤りが浮かんだ。

 

トローラは頭を抱えたくなった。

 

誤解が深まっている。

 

自分はただ、面白そうだからついていっただけだ。

 

逃げる時に、アマテラスから自分だけ退路を切られた。

 

捕まった。

 

請求書を渡された。

 

それだけである。

 

それなのに、ヨーンの中では、

 

仲間を逃がすために殿を務め、そのためにA.K.D.の支配者から狙いを定められ、他の三人の分まで押しつけられた男。

 

という、妙に筋の通った物語が完成しつつあった。

 

「それで、今は何をしているんです」

 

「色々だよ。護衛、調査、戦力の穴埋め、面倒事の処理」

 

「それは、ミラージュ騎士団の任務では?」

 

「違う」

 

トローラはそこだけは強く言った。

 

「俺はミラージュじゃない」

 

「でも、アマテラス陛下の命令で働いている」

 

「命令じゃねぇ。契約だ」

 

「契約?」

 

「損害賠償労務契約者」

 

ヨーンは何度か瞬きをした。

 

「それは、捕虜と何が違うんですか」

 

「契約書に署名してる」

 

「自分の意思で?」

 

「一括請求と選べって言われた」

 

「それを自分の意思とは言いません」

 

「俺もそう思う」

 

「逃げられないんですか」

 

「逃げたら一括請求」

 

「結局、拘束されているのと同じじゃないか」

 

「だから、そういう言い方をするな。俺が惨めになるだろ」

 

ヨーンはしばらく黙って、トローラを見つめた。

 

ニュースで名を見た時。

 

拘束されたと知った時。

 

処刑されるのではないかと思った時。

 

自分には何もできなかった。

 

アマテラスのいるフロート・テンプルへ乗り込むことも、A.K.D.へ抗議することもできなかった。

 

ただ、毎日新聞を読み、続報を待つことしかできなかった。

 

その無力さが、ヨーンの中には残っていた。

 

「どうして、連絡をくれなかったんですか」

 

トローラが目を瞬かせた。

 

ヨーンの声は、先ほどまでよりも小さかった。

 

「生きていると、一言知らせてくれてもよかったでしょう」

 

「忙しかったんだよ」

 

「新聞でしか、あなたのことが分からなかった」

 

「悪かったって」

 

「処刑されたという記事が出るかもしれないと、ずっと……」

 

ヨーンはそこで言葉を止めた。

 

トローラは少しの間、何も言わなかった。

 

それから、わざと軽い調子で口を開いた。

 

「俺がそう簡単に死ぬかよ」

 

「あなたは、自分から死ぬような場所へ行くでしょう」

 

「それは否定できねぇな」

 

「否定してください!」

 

ヨーンの声が再び大きくなる。

 

トローラは苦笑しながら、紙袋をヨーンの胸へ押しつけた。

 

「土産だ」

 

ヨーンは反射的に受け取った。

 

中を覗く。

 

「食べかけじゃないですか」

 

「一個残ってる」

 

「一個しか残っていません」

 

「お前の分だ」

 

「最初から僕の分だったんですか」

 

「今そう決めた」

 

「いりません」

 

「学生は甘いもの食って、頭を使え」

 

「あなたは、もう少し頭を使ってください」

 

「使った結果がこれだよ」

 

「それなら、次から使わないでください」

 

「ひでぇ言い草だな」

 

ヨーンは紙袋を突き返そうとした。

 

だが、途中で手を止めた。

 

「……無事でよかったです」

 

聞き逃しそうなほど、小さな声だった。

 

トローラは一瞬、何も言わなかった。

 

「何か言ったか?」

 

「何も言っていません」

 

「そうか」

 

「それと」

 

ヨーンはトローラを真っすぐ見た。

 

「次に同じことをしようとしたら、僕が止めます」

 

「止められるくらい強くなれよ」

 

「なります」

 

迷いのない答えだった。

 

トローラの脳裏に、左腕を失い、血の中に倒れていた少年の姿が浮かんだ。

 

あの時よりも背が伸びた。

 

目も変わった。

 

まだ未熟だ。

 

だが、もうただ守られるだけの少年ではない。

 

トローラはわずかに目を細めた。

 

「そうかよ」

 

ヨーンは紙袋を抱えたまま、なおも厳しい顔をしていた。

 

「ですが、三人を逃がすために残ったことを美談にするつもりはありません」

 

「だから残ってねぇって」

 

「仲間を守ったことと、襲撃に加わったことは別です」

 

「聞けよ」

 

「あなたが無茶をしたことも許していません」

 

「おい」

 

「それでも、あなたがしたことを、僕は忘れません」

 

「忘れろ。全部勘違いだ」

 

「誰にも話しません」

 

「そういう問題じゃねぇ!」

 

「分かっています」

 

「分かってねぇ!」

 

ヨーンは、深く頭を下げた。

 

「三人を逃がしてくれて、ありがとうございました」

 

「やめろ!」

 

トローラの声が、学園の並木道に響き渡った。

 

周囲の学生たちは、その会話を聞き、ひそかに確信した。

 

ブラック4のトローラ・ロージンは、仲間を逃がすために一人フロート・テンプルへ残り、アマテラスの手に落ちたのだ、と。

 

翌日。

 

学園内には、新聞にも載っていない新たな噂が広がった。

 

悪党騎士トローラ・ロージン。

 

ブラック4最後の一人。

 

三人の撤退を成功させるため、ミラージュ騎士団の追撃を単身で引き受けた男。

 

本人は、その噂を耳にするたびに否定した。

 

「違う。俺はただ逃げ損ねただけだ」

 

だが、人は美しい話を好む。

 

そして、普段から悪党を名乗る男が必死に否定すればするほど、それは照れ隠しにしか聞こえなかった。

 

トローラの弁明を信じる者は、一人もいなかった。

 

 

 

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