パンドラ(偽)が幻想入りするそうです   作:Park M

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パンドラ(偽)はルーミアと友達になるようです

 

 

 

 

 およそ普通の人間の少女からは出ない発言を聞いて、俺は冷や汗を掻きながらフリーズする。もしや魔女教徒とかそっち系のやばい奴かもと内心戦々恐々としているその間も少女はニコニコしながら俺の返答を待っているようだった。怖い。

 

 「ど、どっちかというと食べちゃ駄目な人間かなー?」

 

 テンパリすぎて頓珍漢な答えをしてしまう。どっちかというと食べちゃ駄目ってなんだよ。絶対食べちゃ駄目だろ。何言ってんだ俺は。

 

 「えーでもすごく美味しそうだよ?」

 

 ほら見ろ、交渉の余地ありって感じであまりに雑な理由で説得しにかかってきてるじゃん。……問答無用で食べに来ない辺り良心的なのか?いや待て落ち着け俺。食べようとしてる時点で良心も何も無いだろ。表情を見てみろよ。さながら獲物を追い詰める狩人って感じだろあれ。

 

 とにかくこの子に俺を食べるのを諦めさせるしかない。最悪虚飾の権能を使って逃げることを考えてみるが、何かデメリットがあったりするかもしれないから最後の手段として取っておく。力に溺れてマジもんの魔女になったりする可能性も無きにしも非ずだ。大いなる力には代償が伴うって言うしな。合ってるかわかんないけど。

 

 そしてここからが肝心だ。古今東西、人類が危機を乗り越える時一番何を駆使してきたか、そう!話術だ。え?暴力?……平和が一番!ラブアンドピース!よし、やってやるぞ!変幻自在の口八丁とは俺のことだ!

 

 「いやいや、私なんて、ほら。ちっこいし細いし、あまり食べられる場所は無いよ?それになんか、こう、小骨とか多いし(?)肉も多分、カナブンみたいな味するし(??)食べてもいいことなんてないよ?ね?」

 

 「ちょっと何言ってるか分からない」

 

 うん、俺も。口から出るのは意味不明な言葉の数々。何で俺は自分の食レポみたいなことをしてるんだ。やっぱ元引きこもりの俺に暫定魔女教徒の説得なんて無理だったんだよパトラッシュ。

 

 「それに、私が美味しそうだと思ったのはそういうことじゃないんだよ?」

 

 少女はそう言うと、俺の目の前に顔をグイッと寄せてきて鼻をヒクつかせる。突然の奇行に俺は動くことが出来ずにされるがままに匂いを嗅がれていた。てか元男の引きこもりにこれは刺激が強すぎる!

 

 「にゃ、にゃにをっ?!」

 

 「アハっ!やっぱりいい匂い♪」

 

 「ヒェッ」

 

 少女の緋色の瞳が怪しく光る。それどういう仕組みなんですか?なんて聞けるはずがない。なぜならそれは、そう、まるでA5ランクサーロインステーキを目の前にした猛獣の眼をしていた。俺の体臭は高級牛肉食材だったようだ。パンドラは牛だった……?な訳ないだろ。

 

 てか、ふざけてる場合じゃない。本当に食べられる。R18じゃなくGの方の意味で。か、かくなる上は……

 

 「食べないで下さい!お願いします!なんでもしますから!」

 

 恥も外聞も無く少女に泣き縋る俺。はは、笑えるだろ?これ、中身はいい歳した男なんだぜ。だがしかし引きこもりニートに守るべきプライドなど無い。命には変えられないのだ。

 

 それが功を成したのか少女は考えるような仕草を取る。もしかしたらまだ話し合いの余地はあるのかもしれない。表情は未だに獲物を甚振るような笑顔を浮かべているけど。

 

 「なんでもするかー。じゃあ、貴女は私に何をしてくれるの?」

 

 き、来た!ここが今一番の正念場だ!俺を食べないでいることのメリットをアピールして諦めさせるのだ。さっきは失敗したけど、同じ轍を踏む俺じゃない。

 

 「と、友達になる……?」

 

 「……」

 

 同じ轍を周回し出す俺。なんでこんなふざけたことを言ってしまったのか。これには山よりも低く、海よりも浅い理由がある。仲良くなれば食べる気も無くなると思った俺は、友達になればいいと考えた……考えてしまった。冷静じゃなかった俺はバカ正直に考えていたことを口にする。それがことの顛末だ。

 

 さっそく俺の異世界生活にピリオドを打つことになりそうだ。……まあ、そうなる前にまた『見間違いにする』けれど。あまり権能を無闇矢鱈に使いたくないのだが、やむを得ない。

 

 「……ぷっ、あははは!いいね、いいよ。食べないであげるし人里まで送ってあげる。その代わり友達になってくれるんだよね?」

 

 「はいもちろんでございまする」

 

 なんかどうにかなりそうな件。何が少女の琴線に触れたのか分からないけど、さっきまでの獲物を目の前にしたような笑みから打って変わって、普通の少女のように上機嫌に笑っている。なぜだ。

 

 「自分を喰べようとしてる妖怪と友達になろうとするなんて、面白い人間だね。気に入った。今はまだ食べないでいてあげる」

 

 なるほど。ふっ、おもしれー女理論で助かったようだ。やはり少女漫画は正義だった。……ん?ちょっと待てよ。

 

 「今はまだってどういう」

 

 「そうだ!せっかく友達になったんだから名前を教えてよ。私はルーミア。貴女は?」

 

 「え?あ、パンドラ……」

 

 名前を聞かれて咄嗟にパンドラと名乗ってしまう。まあ、今のこの姿ならあながち間違いじゃないし、何なら元の名前の方が違和感だろう。

 

 「パンドラ…良い名前だね。これからよろしく、パンドラ」

 

 「えっと、こちらこそよろしくね、ルーミア」

 

 ここに奇妙な友情が生まれるのであった。終わりよければ全て良し!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ついたよパンドラ。この先が人里」

 

 「はへー」

 

 森を抜けたその先に江戸時代みたいな街並みが見える。まるで時代劇のセットを丸々持って来たかのようだ。リゼロで和風な国っていえば……カララギ都市国家とかか?でも道中ルーミアにここはどこの国かを聞いてみた時は、国?ここは幻想郷って言うんだよ、って言われたし……知らん…何それ…どこ?

 

 そういえばルーミアとは道中でかなり仲良くなれたと思ってる。俺のことを食べようとしてたとは思えないくらい。というより、普通に話してる分だとルーミアは見た目相応の女の子なのだ。世間話も出来るしボケるしツッコミもする。時折物騒だけれど。

 

 他にも魔女教についても聞いたところ、何それ?美味しいの?とのこと。こいつ食べることしか頭に無いのか……?というより、今までの話からしてもしかしたらこの世界はリゼロ世界ではないのかもしれない。だとしたらこの世界はなんなのか?俺にも分からん。

 

 「あれ?ルーミアは入らないの?」

 

 ずっと隣を歩いていたルーミアの姿が見えなくなり、俺は後ろを振り向く。すると、人里に近付こうとする俺とは反対にルーミアは足を止めてこの先に行こうとしない様子だ。疑問に思った俺がルーミアに聞くと、うーんと唸りながら話しだす。

 

 「外来人のパンドラは知らないかもだけど、私みたいな人食い妖怪は人里の中には入れないんだよ。入ろうとするとこわ〜い半妖の人間が襲いかかってくるからね」

 

 「へー、ちなみにどんな姿をしてる人なの?」

 

 「えっとねー、銀髪で帽子をしてて青い服を来てるかなー。あ、でも満月の夜になると姿が変わるんだよ。面白いよね」

 

 ケタケタと笑うルーミア。何が面白いのか分からないけど俺も適当に頷いておく。こういう時はコミュニケーションを円滑に進めるために相手に合わせるのが吉なのだ。特にルーミアはバカ……変わってるからツボもどこにあるか分からない。合わせるのも大変である。

 

 「あはは、パンドラって考えてることが分かりやすいよね。てか、いくらなんでも自分を食べようとした相手に対して警戒心が無さすぎない?」

 

 「い、いひゃい。いひゃいれす」

 

 なぜかルーミアに考えていたことがバレてしまった。お仕置きとばかりに頬をぐにぐにと引っ張られて痛い。警戒心云々に関しては……はい、おっしゃる通りです。でもまあ友達ですしおすし。

 

 

 

 「……こんなところで何をしてる、宵闇の妖怪」

 

 突然後ろから聞こえてきた声にびっくりして振り返る。そこには銀髪で帽子をした青い服の女の人が立っており、敵愾心を隠す事なくこちらを睨んでいた。……あれ、さっきルーミアが言ってたのってこの人のことじゃね?

 

 

 

 

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