パンドラ(偽)が幻想入りするそうです   作:Park M

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パンドラ(偽)は人里に招かれるようです

 

 

 

 女の人は明らかに俺たち……主にルーミアを敵視しているようだ。雰囲気はまさに一触即発。その身から滲み出る覇気?は、質量を持っているかのように空間を歪ませていて、チクチクと肌を刺してくる。正直チビりそう。こ、これが覇王色の覇気か……!

 

 「わはー見つかっちゃったかー」

 

 一方ルーミアはどこ吹く風といった感じで涼しい顔をして受け流している。なんなら挑発するかのように微笑を浮かべていた。強い。でもあまり刺激しないでほしい。死ぬから、俺が。

 

 「言っておくが、これ以上人里に近付くことは私が許さない。お前には人里へ近付くことを禁じていたはずだが、一体何を企んで人里の近くまで来た?」

 

 「人里に用があるのは私じゃなくてこっちの外来人だよ、半妖」

 

 ルーミアの物言いに女の人は僅かに眉を顰める。なんでいちいち挑発するんだお前は。てか、そこで俺に振る?この人の眼光で睨まれたら俺死ぬよ?

 

 「ん?お前は……人間の子供?というより、なんて格好をしているんだ?!」

 

 「アッドモ」

 

 女の人は俺を見るなり覇気も忘れて驚いた声を上げる。あ、やっぱり変なんだこの格好。パンドラと同じ布切れを一枚なんとか纏っているだけの痴女コーデなのだが、ルーミアは何も言わないから別に普通なんだと思っていた。こうも異常な反応をされると、今まで何も感じなかったのに途端に恥ずかしく思えて来る。ルーミアはこの格好を最初に見て変だとは思わなかったんだろうか。

 

 「?」

 

 そういえばルーミアはルーミアだった。ルーミアにファッションを説いてもきっと、何それ?美味しいの?と返されるのが関の山だろう。

 

 「まさか、お前がこの子にこんな格好をさせているのか?」

 

 「いや、私が見つけた時からこの格好だよ」

 

 「そ、そうなのか?」

 

 「ええ、まあ、はい……」

 

 女の人は可哀想な子を見る目で俺を見てくる。やめて、これは俺のせいじゃないの……パンドラが痴女なのが悪いの……てかそこ!面白そうに笑うな!

 

 「……それはとりあえず置いておいて、お前が人間を食わずに人里へ送り届けるなど、どんな風の吹き回しだ?」

 

 「んー別に。ただ、パンドラは私の特別ってだけ。ねっ、パンドラ」

 

 「ま、まぁね。ルーミアは私の初めての友達だから……」

 

 女の人はまたもや驚いたような顔をして固まる。その表情からは理解出来ないといった感情が見えた。

 

 「今はそういうことにしておいてやろう。それとこの子は私で預かる。お前が人間を無事にここまで連れて来たことは評価するが、それだけだ。あとはどこにでも行くがいい」

 

 女の人はそう言うと俺の体を優しく抱き寄せる。対してルーミアには未だに冷たい眼を向けて強い言葉で去るように言う。あれ、寒暖差がすごい。一体ルーミアは何をしたっていうんだ……?

 

 「言われなくてもそうするよ」

 

 突き放すような言葉にルーミアはむっとした顔をするも、反論することなく踵を返す。森の奥へと俺たちから離れていくルーミアの背中は、どこか寂しそうだった。

 

 このまま何も言わず別れてしまったら、きっと俺は後悔する。そんな気がした。

 

 「えっと、ルーミア!」

 

 俺が呼ぶと、ルーミアは一瞬足を止める。俺はすかさず次の言葉を放った。

 

 

 「()()()!」

 

 

 「!……うん、またね。もし会いに来てくれなかったら、私の方から会いに行くから。食べに」

 

 「うっ、も、もちろんだよ!」

 

 そんなやり取りをした後ルーミアはまた歩き出す。だけど、どこか浮ついた足取りで、さっきのような寂しさはもう感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女の人……上白沢さんに連れられて歩く俺。さっきまで居た森はすでに抜けており、今は町へと続く獣道のような場所を進んでいる。

 

 「パンドラは外来人……幻想郷の外から来たから知らないかもしれないが、ヤツは人を食べる妖怪だ。幼い少女の見た目に騙されちゃいけない」

 

 上白沢さんは諭すように話しかけてくる。確かに、最初は俺のことを食べようとして来たし、実際怖かった。だけど、打ち解けて友達になり、人となりを知った今ではもう怖くない。むしろ親近感さえ湧いている。ボッチなところとか。

 

 「でも、ルーミアは友達です」

 

 「……お前は変わった人間だな」

 

 そう言うと上白沢さんはわしゃわしゃと頭を撫でてくる。な、なんだこの抱擁力は。くっ、俺はなでぽなんかに屈しないぞ!……あ、そこ気持ちいい。

 

 「そういえば、さっきから出てくる妖怪とか半妖とかってなんですか?私には、その、ルーミアも上白沢さんも人間にしか見えないんですが……」

 

 たびたび会話の中で出て来た妖怪の話が気になり、俺は上白沢さんに聞いてみる。俺の想像する妖怪ってのは、あかなめだったり河童だったり、明らかに人外の見た目をしたものだ。ルーミアはカニバリズムの気がある普通(?)の可愛い女の子に見えるし、上白沢さんだってただの綺麗なお姉さんにしか見えない。

 

 「この幻想郷では、人ならざる者のことを総じて妖怪と呼ぶ。ヤツも見た目だけは人間だが中身は全く別のモノだ。力を振るい、人間を食らい、本能のまま生きる。人里を襲うことが無いのも、幻想郷の取り決めを守らせているだけで、本質は何も変わらない。こうして話す私も、その妖怪の血が半分入っているってだけのことだ」

 

 「なるほど」

 

 確かにリゼロでも見た目は人間でも中身は全く違うモノだったりするキャラクターもいた。大罪司教とか魔女とか魔女教徒とか……あれ、ほとんど魔女教関連だな。ただまぁ、そういったものに当て嵌めるならさっきまでのあんまりな態度も納得……できるかぁ?ルーミアが友達っていう色眼鏡も入ってるかもだけど。

 

 そういえば、妖怪について説明する上白沢さんの姿は実に堂に入ったものでなんだか教え慣れているように感じた。学校の先生をやっていても違和感がないほどだ。上白沢さんみたいな綺麗な先生の授業なら俺も受けてみたいと心から思う。上白沢先生……いい響きだ。

 

 「上白沢さんって教えるの上手ですよね。なんか、先生みたいな感じです」

 

 「!そ、そうかそうか!そう見えるか!いやなに、私は実際に寺子屋で教師をしていてな!だが、そう言ってくれたのはパンドラが初めてだ!全く、うちの生徒達にも見習ってほしいな……」

 

 まさかのガチ先生だった上白沢さん。だけど、教え子達からの評価はあまり良くないようだ。嘘だろ?これで?俺だったら引きこもりやめて即授業受けに行くレベルだぞ。

 

 「そういえば上白沢さんも半分妖怪の血が入っているって言ってましたけど、ルーミアみたいに人間を食べたくなったりするんですか?」

 

 「いや、私は半分は人間だし人里の守護者として妖怪の本能を抑えているからな。そういったことはほとんどない。ただな……」

 

 そう言葉を区切ると上白沢さんは俺のことをジッと見てくる。え、なになにどうしたんだ?おまえ、うまそうだな、って言って食べようとして来るのだけはやめてくれよ?!

 

 「……いや、なんでもない。忘れてくれ」

 

 「え?!ちょ、ちょっと!めちゃくちゃ気になるじゃないですか!変なところで切らないで下さいよ!」

 

 ふいっと顔を背ける上白沢さんに、俺はつい声を荒げてしまう。なんだその勿体ぶる解説キャラみたいな言動は?!今時そんなの流行らないぞ!

 

 「いや、本当になんでもないんだ。気にしないでくれ。それより、人里に着いたらパンドラの服を見繕わなくちゃな。いつまでもその格好だと寒いし恥ずかしいだろう」

 

 「あ、ありがとうございます……」

 

 上白沢さんは頭を撫でながら言う。くそう、そんな風に気遣われると何も言えなくなるだろ!

 

 

 

 「さて、着いたぞ。ここが人里だ」

 

 「おー」

 

 そうこうしているうちに、どうやら目的地に着いていたようだ。この世界に来た時はまだ真上にあった日は、すでに傾きかけている。夜になる前に着けて良かったぜ。

 

 目の前には、さっきは遠くからでしか見えなかった町の全貌が広がっていた。古風な家屋が立ち並ぶその町は、やはり時代劇のセットにしか見えない。しかし、人々が盛んに往来する道と生活感溢れる街並みからは、ここが生きた町だということを伝えてくる活気を感じられた。まるでテーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるな〜。

 

 「ひとまずパンドラは私の家に来るといい。衣食住は私の方から提供しよう。なに、子供一人養うことなんてどうってことないさ。それに、ここで行く宛のない子供を見捨てるほど私は人の心を捨てていないからな」

 

 か、かっこいい……!これが大人の女性なのか。本当に至れり尽くせりの待遇に上白沢さんには頭が上がらない思いだ。ここは好意に甘えて居候させて貰おう。いつか必ず恩返しすることを、俺は心の中で誓った。

 

 「すみません、お世話になります上白沢さん」

 

 俺は上白沢さんに一礼をし、感謝の意を伝える。だけど、なんだか上白沢さんは微妙な顔をしていた。

 

 「……そういえばパンドラ。さっきから私に対して敬語で話しているが、もっと楽に話してくれてもいいぞ」

 

 「え?いきなりどうしたんですか?」

 

 唐突にそんなことを言う上白沢さん。ま、まさか、社会人経験の無い俺の敬語が気に障ったとかか……?

 

 「いや、なに、別に大した理由じゃない。とにかく、敬語はやめてほしいだけだ」

 

 「で、でも上白沢さん」

 

 「慧音」

 

 「……慧音さ」

 

 「慧音」

 

 「……」

 

 

 結局、俺は理由も分からず慧音のゴリ押しによって敬語をやめるのだった。

 

 

 

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