死神遊戯 ―ダイの大冒険の壊し方― 作:メイドインコ【アビス】
「……なるほど、どうやらボクは、あの『死神』になってしまったらしい」
澱んだ瘴気が立ち込める空間で、俺は鏡に映る己の姿を見下ろした。
黒衣の道化服、感情を微塵も読み取らせない不気味な仮面。
そして、その肩にちょこんと乗る、一つ目の使い魔ピロロ。
「いや、正確にはちがうよ、キルバーン?」
「ああ、その通りだよピロロ。ボクの本体は、キミの方なんだからね」
口から出た二つの声。片や飄々とした男の声、片や甲高い魔物の声。
端から見れば使い魔と主人の会話だが、その実態は完全なる一人芝居だ。
俺はあろうことか『ダイの大冒険』に登場する大魔王の側近、キルバーン……の本体である、このピロロに憑依してしまったらしい。そして同時に、魔界のマグマすら耐え得る機械仕掛けの暗殺人形キルバーンと、視覚も感覚も完全に同調している。奇妙な感覚だが、不思議と違和感はなかった。
原作を知る俺からすれば、ぶっちゃけキルバーンは雑魚だ。
大がかりな罠を仕掛け、強敵そうな雰囲気を醸し出し、死神なんて大そうな異名で呼ばれ、ハドラーやダイたちを散々煽り散らした。だが、蓋を開けてみればどうだ。作中で主要キャラを誰一人として殺せていない。アバンには罠を破られ、ポップには出し抜かれ、見せ場といえば最期の自爆くらい。しかも、それすらも失敗に終わるというピエロっぷりだ。
だが、俺はこいつのあるセリフを鮮明に覚えていた。
『そりゃあ、その気になって修行すればまともな勝負でも無敵になれたさ、それだけの力量はあるからね』
あれは決して負け惜しみなどではない。あの底知れぬ実力は、歴戦の勇者であるアバンすらも冷や汗を流して認めたものだ。こいつはただ、正面からの勝負に興味がなかっただけなのだ。
「……なら、鍛えればいいだけじゃないか、ねぇピロロ?」
「キャハ!違いないや!せっかくチート級のポテンシャルを持ってるんだ、使わない手はないよね!」
俺は元人間だ。ダイたち勇者には愛着があるし原作の続きも見てみたい。機を見てバーンを裏切り、彼らの味方になって平和な余生を送るのも悪くない。
だが、いくらポテンシャルがあるとはいえ、だ。
いきなり修行と言われても、魔物を狩るのか魔法を撃つのか、具体的な方法が分からない。
「ねえ、ピロロ。強くなるにはどうしたらいいんだろうねェ?」
「分からない時は、その辺のヤツを捕まえて聞いてみればいいじゃない?」
「……ウフフ、そうだねェ。ついでに罠のテストもできるし、一石二鳥だ」
標的は魔界をうろつく野良のあくま。俺は適当に仕掛けた罠に一体のベリアルを誘い込み、身動きを完全に封じた。そして、足の指から少しずつ大鎌で切り刻みながら、和やかに語りかけた。
「……ねえ、キミ。強くなるにはどうしたらいいと思う? ああ、それとさ、ボクがダイたち人間の味方になるという計画。フフッ……我ながら、実に素晴らしい名案だと思うんだけどねェ」
俺は善良な小市民としての優しさを込めて、眼前の相手に語りかけた。
『あ、が、あァァァッ……!』
「……おや? 感動のあまり言葉も出ないのかな? それとも……ボクの罠と手さばきが、キミが絶望するほど見事だったということかい?」
返事はない。
「……もう壊れてるなんて残念だなァ……。せっかくボクが、平和のための有意義な対話を設けてあげたのに……」
酸の沼で下半身を溶かされ、大鎌で全身の皮を剥がされたベリアルの無残な死骸を見下ろし、俺は心底残念そうに首を傾げた。
その時、ふと己の頭の中にあった、ある知識が引っかかった。
――ホイミ。回復魔法だ。
「……そうか、『直せば』いいんだ……っ。そうすれば、何度でも対話ができるじゃないかァ!」
俺の脳内に一つの稲妻が走った。
ああ、だからピロロはホイミ系を習得していたのか。それは壊れた玩具を修理して、何度でも己の技を試すためのだったのだ。
「キャハハッ! 壊れたオモチャを直せるなら、もっともっと過激な遊びができるよね! ……でも今のキルバーンじゃ、ちょっと退屈だよねえ」
そこで俺は、もう一つの魔法の本当の使い道について考え始めた。
ピロロが習得していた氷の呪文、ヒャド系。
これもまた、単なる攻撃魔法ではないはずだ。俺という人間が持つ知識と、ピロロの魔法適性、そしてキルバーンという機械の身体。それらを繋ぐ最悪のピースとして、ある一つの仮説に辿り着く。
* * *
――それから数年。
俺は魔界の辺境の工房にこもり、ひたすら戦力を追求し続けていた。
薄暗い工房の中、無機質な斬撃音が響き渡る。
キルバーンが大鎌を一閃するたび、実験台にされた巨大な獣系モンスター、バルザックの分厚い皮膚が切り裂かれ、鮮血が宙を舞う。
「……うーん、いまいちだねェ。達人たちの技をこの体で完璧に再現するには、どうしても関節の軋みと……決定的な爆発力が足りない」
ピロロは顔面を覆う、不気味な仮面に手を伸ばした。
その奥に隠された、超兵器にして最大の切り札。黒の核晶。
ここから発生する莫大なエネルギーの一部を、動力源である魔界のマグマへと繋ぐ。当然、そのままでは熱暴走を引き起こし、自爆してしまう。
だが、ここで数年前から構想していたヒャド系の本当の使い方が活きる。
真空の斧などの武器に呪文の力が込められているように、俺が極限まで高めた氷系呪文『マヒャド』を封じ込めた特製の【魔法石】を冷却装置として組み込む。
黒の核晶の熱と魔界のマグマを、魔法石から常時放たれる極低温で相殺し循環させる水冷式ハイブリッドエンジンの調律。これこそが、俺がヒャド系を極めた真の理由だ。
「……フフッ。それじゃあ、少しばかり無茶な仕掛けを試してみようか」
大鎌を構えた、その瞬間。
拘束台に縫い付けられたバルザックの巨体が、びくりと震えた。俺に切り刻まれ続けてきた獣の本能が、言いようのない悪寒を感じ取ったのだろう。
『ま、待て……。や、やめて――』
懇願の言葉が終わるより早く、俺は床を蹴った。
――ドンッ!!
黒の核晶が生み出す爆発的な踏み込み。次の瞬間には、バルザックの巨大な肉体の至る所から鮮血が噴き上がっていた。
『がァァァァァァァッ!?』
拘束具が激しく軋む。
胸、腹、肩、脚。大鎌は信じられない速度で巨体の肉を削り取っていく。
だが、それ以上に凄まじいのは斬撃の『重さ』だった。一撃ごとに骨が砕け、肉が千切れるほどの異常な衝撃が伴う。以前とは全く別物の、純粋で圧倒的な暴力。それが一瞬の間に何十回となく叩き込まれる。
『あ、がぁぁぁぁッ!! やめろ……! やめてくれぇぇぇ!!』
右肩が裂け、太腿の肉が吹き飛び、肋骨が砕け散る。
逃げ場のない拘束台の上で鎖を引きちぎらんばかりにもがき、絶叫し……そして終わらない破壊と激痛の連鎖の果てに、ようやくバルザックの心が完全に折れた。
『た、のむ……』
血と涙を垂れ流しながら、巨獣は息も絶え絶えに懇願する。
『もう……殺して、くれ……!』
「おっと、それは困るなァ……。 まだキミには働いてもらわなきゃ。ねぇピロロ?」
「キャハハ! 安心しなよ! ちゃんと治してあげるからさ!」
ピロロは無邪気な笑みを浮かべ、バルザックに向かって光を放つ。
「あ、ああ……アアアアッ!?」
降り注ぐベホマ。深い裂傷が塞がり、肉体が再生していく。だが、傷が完治したというのに、バルザックの顔に浮かんだのは歓喜ではない。終わらない拷問に対する底知れぬ絶望と恐怖だった。
「勘違いしないでくれよ? これは必要な犠牲なんだ。ボクたちがダイたち人間の役に立つために……平和な世界を築くための、最強の戦力を完成させるために、ね……!」
口ではそんな大義名分を語りながら、躊躇いなく再びバルザックの肉を切り裂く。
バルザックの絶望に歪む顔を見るたび、俺の中に黒くどろりとした感情が湧き上がってくる。
人間としての執念と、他者の絶望を貪る純粋な悪意。それが黒い熱となって胸の奥で渦巻く。同調するキルバーンの身体にも、その感情は流れ込み、刃を握る腕に重圧を宿していく。
その悪意が臨界点を突破した瞬間、工房の空気が凍りついた。
『あ……、ぁ……ッ!?』
それまで絶叫を上げていたバルザックが、ガチガチと牙を鳴らして硬直する。
獣の本能が察知したのだ。目の前にいる黒い道化師が、いま、何かへと変質したことを。
足元から、どす黒い霧が立ち昇る。
そして刃に宿る、禍々しいまでの闇の波動――暗黒闘気だ。
「やったね、キルバーン! これでもう、誰にも気迫がないなんて言わせないよね!」
「……ああ、素晴らしいよピロロ。これならアバン先生にも少しは見直してもらえるかなァ?」
かつてアバンに指摘された気迫の無さ。その評価を気にしていた俺にとって、それは最高の感覚だった。狂った一人芝居の間に響き渡る獣の絶叫。
やがて俺は血だまりに伏すバルザックに向かって、慈愛に満ちた声をかけた。
「……よく頑張ってくれたね。テストはこれでおしまいだ。もう自由にしてあげるよ。さぁ、お帰り」
工房の重い扉がゆっくりと開け放たれる。
外から差し込む微かな魔界の光。終わらない地獄からついに解放されたのだと、バルザックの濁った瞳に一筋の希望が宿った。
『ア……、アァ……ッ!帰れる……帰れるのか……!?』
歓喜の涙を流し、引きずるようにして出口へと這い進む巨体。
そして、その手がようやく外の自由な地面に触れ、希望に顔を輝かせた、その瞬間。
――ズバァァァンッ!!
仕掛けておいたファントムレイザーが発動し、バルザックの四肢が目にも留まらぬ速さで細かい肉片となって吹き飛んだ。
『――!? ギ、ギャアアアアアアアアアッ!?!?』
突然の絶望と激痛に泣き叫ぶ肉塊を見下ろし、黒い道化師は腹を抱えるようにして嗤う。
「ウフフフッ……! 嘘だよォ! キミが喜ぶ顔を、ただ見てみたかっただけさァ!!」
俺は容赦なく大鎌を振り下ろし、笑みを深めながらトドメを刺した。
「……フフッ、壊れちゃった。でも、おかげで最高の表情が見れたよ」
マグマと核晶のハイブリッドエンジンは完璧に調律され、溢れ出る暗黒闘気はキルバーンの刃に淀みなく馴染んでいる。俺が思い描いた最強の戦力は、ここに完成した。
「さあ、工房での実験はおしまいだ。外に出て、ボクたちの力を実戦で試してみようか」
* * *
標的は魔界の辺境で徒党を組み、反バーン派として勢力を伸ばしつつあった魔族の軍勢。
彼らは、新たな死神の初陣を飾る極上の供物として、勇んで谷底の戦場へと雪崩れ込んできた。
『ガアアアアッ!? な、なんだこの炎は!?』
『足が、足が溶ける!? 罠だ! 罠に嵌められたぞォォッ!!』
谷底に張り巡らせていた魔界の炎と酸の沼、そして不可視の刃を組み合わせた複合トラップ。
悲鳴を上げながら次々と溶け、切り刻まれていく数百の魔族たち。
『怯むなッ! 罠の範囲から抜け出せ!』
だが、反バーン派を名乗るだけあって、指揮官クラスの数名――巨大な棍棒を構えたダークトロルと、分厚い刃を手にしたてっこうまじんが即座に状況を判断し、炎の壁を突き破ってボクの眼前に肉薄してきた。
『キルバーン! 貴様の小賢しい罠もここまでだ! 接近戦なら、腕力に勝る俺たちが――!』
「……フフッ。随分と威勢がいいね。腕力なら勝てる……そう思っているなら、試してみるといいさ」
ボクの仮面の下から、嘲笑うような低い声が漏れる。
同時に、ダークトロルが山をも砕く棍棒のフルスイングを叩き下ろした。
かつてのボクであれば、回避か罠でいなしていただろう。だが、黒の結晶から生み出される異常な出力と、刃に纏わせた漆黒の暗黒闘気が、そんな常識をあっさりと覆す。
――ドガァァァンッ!!
『……な、に?』
激突した瞬間。振り下ろされた鋼鉄の棍棒は、大鎌にピタリと止められ、次の瞬間にはメキメキと音を立てて木っ端微塵に砕け散っていた。
ボクは一歩たりとも退いていない。ただ、純粋な重圧と暴力だけでねじ伏せた。その絶対的な事実を前に、ダークトロルの顔が驚愕から明らかな恐怖へと染め上がる。
『ば、化け物……ッ!?』
腕力という己のアイデンティティをあっさりとへし折られ、戦意を喪失して尻餅をつく巨漢。
「……化け物なんて失礼だなァ。ボクはただの死神さ」
そのまま刃で両断してやるのは容易い。だが、それではただのつまらない殺戮だ。
キルバーンは無音で歩み寄ると、震えるダークトロルの腹を前蹴りで吹き飛ばし、背後に広がる魔界の炎と酸の沼の複合トラップへと無造作に蹴り落とした。
『あっ、ぎゃああああああッ!?』
炎に焼かれ、酸に溶かされながらもがく巨体。圧倒的な力を見せつけて希望をへし折ってから、最も残酷な罠へと落とす。これが、新しい死神の流儀だ。
『バ、バカな!? こいつはただの暗殺者のはず……ッ! 死角を突けぇっ!!』
驚愕するてっこうまじんが、完全な背後から大斧を振り下ろそうと迫る。
――ゴキッ。
だが次の瞬間、キルバーンの首と右腕だけが、あり得ない角度で180度真後ろへと回転した。
『なっ――!?』
「……死神に死角なんてないのさ」
人間には不可能な関節の反転。放たれた大鎌は、てっこうまじんの堅牢な鎧を斬らない。
代わりに、大鎌の柄が鋼鉄の胴体を強打し、そのまま空中に仕掛けられた不可視の刃が乱舞する領域へとカチ上げた。
『ギィィィィィッ!?』
ガキンッ、という硬質な音と共に、空中でメチャクチャに切り刻まれていくてっこうまじん。
鉄くずの雨となって降り注ぐそれを眺めながら、ボクの脳髄に、再び強烈な快感が走った。
「あぁ……」
仮面の下で、人形の顔は動かない。だが、肩に乗るボクの口元は、三日月のように深く、醜く釣り上がっていた。
助かろうと必死に足掻く者。仲間を盾にしてでも生き残ろうとする者。そして、抗えない死を悟り、瞳を絶望に染め上げる者。
「ヒヒッ! ほら見てよキルバーン! 自分から罠に飛び込んでいくお馬鹿さんたちの顔!」
「……ああ。蜘蛛の巣にはまってもがく昆虫のように……絶望に狼狽える彼らを見るのは、本当に最高だよ」
肩の上の自分と、人形の自分が、恍惚とした声で言葉を交わす。
狂っている。だが、止められない。
「一度それを味わってしまうと、他の殺し方なんてバカらしくなってしまうんだよ……!!」
気付けば、ボクの中にあった「ダイたちの味方になって平和な余生を送る」という願いは、跡形もなく姿を変えていた。
前世の記憶も、人間だった自覚もある。だが、俺……いや、ボクの魂の形が、完全に死神のそれへと変質してしまったのだろう。もしかしたら最初から、かも知れない。
勇者。希望。正義。
あぁ、なんて美しい響きだろう。
困難に立ち向かい、ボロボロになりながらも成長していく彼らの姿は、きっと極上のエンターテインメントに違いない。
だが、ただ遠くから見守っているだけでは退屈だ。彼らをより高く、より美しい希望の頂へと登らせるためには、極上の演出が必要になる。
いずれアバンが散り、絶望に暮れることになるダイやポップたち。もし彼らの前に、優しく頼もしい新たな導き手が現れたらどうだろうか?
ボクが人間の姿にでも変装して、ピンチの時に颯爽と駆けつける。時に優しく助言を与え、時に彼らを庇って、自ら痛々しい傷を負ってみせる。
「君たちが無事でよかった……」と偽りの血を流して微笑むボクを見て、彼らはどれほど悲痛な顔で泣き叫んでくれるだろう。自分の弱さのせいで大切な人が傷ついたと、どれほどの罪悪感に心を曇らせてくれるのだろう。
あぁ、愛おしい。そんな彼らの姿を特等席で眺められるなら、この身体をいくら切り刻まれても構わない。
そして、彼らがボクという光に全幅の信頼を寄せ、希望の頂点に手をかけたその瞬間――最も残酷な形で、最悪の罠へと叩き落とす。
愛する師の正体が、最初から自分たちを嘲笑い、絶望を貪るためだけに育てていた死神だったと知った時の、ダイの絶望に染まる顔。ポップの泣き叫ぶ顔。すべてを失うアバンの顔。
想像しただけで、身震いするほどの悦びが込み上げてくる。
だが、待って欲しい。もし仮に大魔王バーンの計画通りに地上を消し去り、黒の核晶ですべてを吹き飛ばしてしまったら、この極上の遊びは永遠に失われてしまうではないか。
「それは困るよね、キルバーン?」
「……ああ、とても困るよ、ピロロ」
希望を植え付けては、絶望で狩り尽くす。
人間たちが何度牙を剥こうとも、何度立ち上がろうとも、その度に圧倒的な力と残酷な罠で完膚なきまでに叩き潰し、這いつくばらせる。
この最高の遊戯を永遠に楽しむためには、あの老人はひどく邪魔だ。
「ボクたちさ、少しばかり計画を変更しようか」
「キャハ! 大魔王の首をすげ替える準備ってやつだね!」
「ウフフ、その通り。……とはいえ、まずは足元の問題を解決しなきゃいけないなァ」
ボクは手元の死神の笛に視線を落とした。
刃には無数の亀裂が走り、今にも砕け散りそうだった。暗黒闘気と異常な出力。ボクたちの本気に、耐えきれないのだ。
「……せっかく気持ちよくなってきたというのに。手加減しながら遊ぶなんて、ひどく退屈だ」
ボクはヒビ割れた死神の笛の刃を、指先でそっとなぞった。
「じゃあ、もっと硬いオモチャを調達しに行かなきゃね!」
「……ああ、そうだね。大魔王様におねだりしに行こうか。少しばかり、身内の駒を拝借するためにねェ」
黒い道化師は不気味に笑い、肩の上の小鬼は邪悪に嗤う。
かくして死神は、いずれ訪れる凄惨な遊戯の日のために、静かに魔宮へと歩みを進めるのだった。