夜食に薔薇の毒はいかが? 作:キャンディマン
転生。
生前積み上げた
であるなら俺は、生前善人とは言わずとも悪人ではなかったのだろうか。或いはその死に同情でもされたか。
親が闇金に作った借金を返す為に中学生から働き、最後には違法な被験で呼吸出来なくなって死んだ。
「……………ま、今世も相当な地獄だけど」
「何言ってるの?」
「考え事」
「ふーん」
聞いといて直ぐに興味なさそうに本に視線を戻すガキ。
「……………………ん? まて、お前この前二度と来るなって言って了承しただろ」
「………………そうだっけ?」
「ああ、解ったって言ってたぞ」
「えー、嘘だよ。だって、ここが一番静かに本が読めるんだよ?」
だから来ないなんて言わない、ガキはそう断言する。
「それ前も聞いた。いいから失せろ。ここには近づくなって、他の連中も言ってんだろ」
「なんで?」
「死ぬから」
「私、生きてるよ?」
「…………………」
まあ、そりゃそうだ。だって別に死なないし。
ただ、こんな誰でも受け入れますなんて謳う糞溜めでも、差別は存在する。
「私死んでないから、嘘をついたってことだよね。違うの?」
「…………………………まあ、嘘だが」
「ほら」
と、得意げなガキ。女じゃなかったらぶん殴ってやりたい。
………………落ち着け俺、肉体に引っ張られるな。俺は大人、あっちは子供。精神的にはそうなんだ。
「だが他の連中は俺に関わると死ぬと信じてる。根拠もあるしな」
「根拠?」
「毒だよ。伝染するんだ。俺の母親と、母に関わった男達が死んだように」
「性病?」
「だから、毒」
病ではない。だからウイルスや細菌のように増殖することはなく、そのくせ人から人にその毒は移動する。
より広く、多くを殺すことを目的とした毒は数日から数ヶ月の潜伏する。それを取り込んでいた母と残り数名は、その毒が撒かれた場所の住人というだけで隔離を通り越し処理されそうになり逃げて逃げて、全てを受け入れるという此処に来た。ま、どんな触れ込みをしようと自分達を殺す毒を撒く奴を受け入れるわけなかったわけだが。
それでも顔の良かった母に『客』は絶えずかなりの男とその妻子がくたばったらしい。腹にいた子供もくたばった………その死児に入り込んだ異物が俺。
神様ってのは残酷だな。
我が子を抱きしめる為に妊婦好きの変態に体を売って、流産しないように頑張って頑張って、その果てに産んだ子供は死んでて別の奴に体を乗っ取られてるんだから。
「お母さん死んで、伝染するから誰も近付かないなら貴方は誰が育てたの?」
「いい質問だな。答えはいない、だ」
「ええ、それは嘘だよ。子供が育てられずに生きていけるわけないもん」
「俺はできた………お前、これ見える?」
その言葉にガキは俺が指差した空間を見つめる。コテンと首を傾げた。
「兎に角もう帰れ。どうせこの質問もまた忘れるだろ」
「…………………う〜ん?」
「…………なんだ?」
何かが納得いかないというように唸るガキ。そう言えばこいつ自分が忘れっぽいこと認めないな。忘れたことを忘れるから。
「また、とか、この前、とか………何度も私を追い払ったみたいに言うけどさ」
「みたいじゃないがな」
「それなら何で私が来た時点で追い出さないの? しつこい! って」
「…………………」
まあ、それも出来た。それでも俺はしなかった。
何故かと言えば、まあ、嬉しいんだろうな。誰かが来てくれるのが。数少ない変わり者が。
「私以外、友達いないんでしょ」
「いるっての」
「私は追い出そうとするのに?」
「彼奴は周りにバレない様に来るからな」
自称友達はいるがあっちは堂々と来るので駄目。何が友達と会うのにコソコソしない、だ。
「言っておくが、お前等のために言ってんだからな。来るならバレないように来い」
「うん、わかった」
どうせ明日には忘れるんだろうな。
「よっ、と………」
夜。
床の一部が開き少年が姿を表す。
「ん、ん………」
穴から出るのに苦労しているのを見て、仕方ないと手を貸してやる。
「あはは、ありがと。はい、これ………」
「ん」
外国語講座のビデオを受け取り、早速ビデオデッキに入れる。
「……………………」
「勉強熱心だよね。皆、こういうの喜ばないのに」
「此処から出てく時のために外の言葉知っておきたいしな」
「外かぁ。俺もいつか外に行ってみたいけど、理由は別だよね?」
「ああ。お前は外に憧れて……俺は
或いは此奴等と一緒にゴミ山を駆けていれば、こんな場所でも好きになれたのかもしれないが。生憎と、愛着を持つのは3人ぐらいだ。
「……………今さ、カタヅケンジャーの吹き替えやってるんだ」
「かた………なに?」
「捨てられたビデオのなかにあった。特撮だよ………
「カタヅケシルバーがでたらな。それかゴールド」
「え、シルバー? ゴールド? い、いたかなぁ。あと、クリンだよ」
ならクリンゴールドか。いるかは知らんが。
朝は早い。
森に向かい、肉を狩る。
気配を断ち、世界に紛れる。
何の違和感も持たずに鳥が目の前に降り羽を休めた。結構でかい。その鳥を狙い、肉食獣が跳ね…………。
「ギャッ!?」
悲鳴を上げる獣が暴れる前に首をへし折る。肉ゲット。
俺から飯を奪おうなんて奴はいないが、早いとこ帰ろう。
「あー!」
「げ」
見つかった。
俺に関わってくる3人のうち、一番馴れ馴れしく騒がしい奴だ。
「でけー! 熊!? 食べるの! 一人じゃ無理でしょ、みんなで食べよ!」
「熊じゃない。後、俺の触った肉、誰が食うんだよ」
「あたし!」
「あ、私も」
「「ん?」」
増えた。
やはり堂々と普通にやってきてペコリと挨拶してきた。
「おはよ。今日も部屋、使わせてもらうね」
「なんだなんだ、あたし達2人以外にも友達いたのか! よかった!」
「五月蝿い。そもそもお前とそっちは友達じゃない。友達ってのは迷惑かけ合わない彼奴みたいなのを………」
「友達だから、迷惑かけあったりするんじゃないの?」
「………………………」
ニコニコと笑みを向けてくる。
「もう聞いてるでしょ? 一緒にやろうよ」
「なんの………ああ、クリンジャー?」
「カタヅケンジャー! ちなみにあたしはクリンオレンジ!」
「なら緑はクリングリーン? 一番キレイにできそうだな」
「リーダーはレッドだからレッドでしょ。あ、やりたい、グリーン?」
「やらない。肉分けてやるからさっさと帰れ」
「「やだ」」
クソガキ共。ん?
「チッ」
飛んできた石を弾く。拳に当たった石は砕け散った。
「え? なに?」
「なんだー! お前等、何すんだー!」
ゴミ山の影から現れた数人の男達。今の俺と同い年ぐらいか。
「オレンジ、そいつから離れろ!」
「有名なんだなカタヅケンジャー………」
ところでこの名前どちらかというと片付けサボりそうな気がするのだが。
「なんだよ! 此奴が何したってんだ! 確かに一人でいて暗いけど、実はいい奴だぞー!」
「うん。口出は冷たいふりするけど全然出来てないよね」
「……………………」
もうさっさと蹴り出そうかな此奴等。
「そいつはなぁ! そいつの母親は、俺達の両親を殺したんだ!」
「そうなの?」
「違う」
「だよね!」
「だと思った」
俺の言葉に頷いた二人にまで敵意を向け始める男達。とはいえオレンジは余程人気なのか主にもう一人だが。
「ふざけん、な………関係ねえ奴は引っ込んでろ!!」
「!!」
飛んできた石を受け止める。
「…………?」
衝撃が来ないことに不思議がり目を開けるガキの頭を撫でてやる。そういや、此奴との出会いもこんな感じだったな。
清貧なんて嘘ばかり………貧しい奴の心に灯るのは精一杯生きようではなく自分は彼奴よりマシな証拠が欲しい、だ。だから他者を傷つける。
俺の友達が住んでる場所はそんなゴミ溜めでもマシな方だが、こういう奴らはまあいる。
「っ! な、なんだその目はぁ!? そんな目で見られるべきは、お前の方だろ!」
「……………何を勘違いしてるか知らねえが、テメェの親父が死んだのは妻子ほっぽっていい女を抱こうとしたテメェの親父のせいで、テメェの母親が死んだのは他の女抱いた身体で家族にイイ家族ごっこさせるクソ野郎のせいだろ」
「っ!!」
そもそも母さんの身が毒に侵されているのは母さんがここに来た時点で言っていたらしい。そのうえで助けを求めた母さんに体を求めたのがお前等の親だろうが。
「ふ、ふざけ………!」
「ああ、テメェ等からしたら関係ねえだろうよ。だから、俺に対して何しようが見逃してやる。だがな………関係ねえ奴巻き込んでみろ。『殺すぞ』」
言葉に意思を。
放つ言葉に殺意を乗せる。無防備な男達は顔を青くしてへたり込む。やりすぎたな。心を壊すところだった。
「俺に勝てないからって、此奴等に当たるなよ? 分かったな? 分からねえようなら………」
「ひ、ひぃ! わ、わかった!」
「わぁ、ぁ、ああああ!!」
ションベン撒き散らしながら逃げんじゃねえよ汚えな。
「……………今何したの?」
「燃」
「「ねん?」」
取り敢えず肉裁くか。当然血とか細菌の温床なので離れでだ。まあ俺は別に問題ないけど、遊びに来る奴らが病気になるかもしれないし。
「おいバカ」
「「呼んでるよ?」」
「お前だオレンジ。彼奴に肉持っていってやれ」
「うん!」
深夜。
探し物。
この場所には様々なものが捨てられる。生ごみ、粗大ごみ、不燃ごみ、可燃ごみ、そして死体に赤ん坊。果に兵器まで…………
「お、これたぶん細菌兵器だな。この頑丈さ、間違いない」
大気に触れぬよう厳重に密閉されている丈夫な鉄の箱。漏れないように気を使い、でも捨てる。感染力は気にしないんだろうな。ここには
「…………ついでにビデオ探してみるか」
なんだったか…………学連?
「ビデオが増えてる!」
「拾った。そことそこは要らないからやる」
今日も騒がしいな此奴。
「…………………」
あっちみたいに静かにできないものか。
「まだ仕分けしてないが」
「カタヅケンジャーあった?」
「いや、なかった……………なんだその顔」
「んー、だって、適当に集めたわけじゃないんでしょ? 少なくともカタヅケンジャーがないことは知ってるもんね」
集める時一々タイトルやフィルムを確認して、カタヅケンジャーがないことだけは確認していたことがバレたらしい。
「えっへっへ〜。シルバーかゴールドだっけ? みんなも続き探してるからさ、見つかったらちゃんと出ててよ!」
「断る」
「ことわるのをことわる!」
「……………………静かにして」
怒られてやんの。
「でもそっか、そっちにはなかったんだね」
「………………最近何かと物騒だ。探し物するなら一人で行動するなよ」
「へーきへーき、あたしは正義のクリンオレンジだからね!」
「…………………はぁ」
あの時、もう少し強く止めていたら、或いは何か違ったのだろうか。
そんな事、過ぎた後に考えても意味はないが。
前の世界も今も、どうも俺は、あの時こうしていればと、そう後悔するらしい。
「……………………」
「おい、起きろ
懐かしい夢を見た。少し気分が良くて、最後は最悪な夢。目が覚めたら赤褐色の唇が厚いハゲ男とは……余計に最悪な気分。
「ふん、定例会議でよく寝れるもんだな。なんでこんな奴が俺達と席を並べてやがる」
「強いからだよ、おっさん」
端的に返してやれば青筋を浮かべる。
「ここにいるからって勘違いしてんじゃねえ。テメェと俺等は対等じゃねえんだよ!」
「俺達は十老頭の懐刀。お前は違う」
「格もな」
「そう卑下するなよ。俺はお前等が弱くても、格下なんて見下してねえよ」
その言葉にが臨戦態勢に入り、十指をオーラでか輝かせ姿をコウモリのように変化させ、オーラを漲らせせこちらへ取り掛かる…………よりも速く、轟音を立て円卓が砕けた。
「座れ」
「み、蚯蚓………だけど!」
「座れ。2度言わせるな」
その言葉に殺気立った連中はおとなしく座る。
「お前も、引かせろ」
「………………」
「「「!!」」」
バレてたか。
3匹の蜂を回収する。
「俺達が争うのは、そのまま戦争を起こすと同義だ。弁えろ」
「だ、だが………」
「み、蚯蚓の言う通りだな、うん。信用はともかく、そいつがこの席にいる理由を、うん。俺達が軽んじるのは良くないんだな」
ま、今のバランスは戦力が拮抗してる前提だしな。んで言葉の連中は一騎当千………此奴等の有無で戦力が傾く。勿論俺もな。
「お前も、自分の立ち位置を理解しろ」
「……ああ」
後は本当にただの会議。組がどうだった、何処の組を潰した、そんな話。
「他に何か連絡しておくことはあるか」
「あ、俺ある」
「チッ、てめぇかよ」
「オレ次のハンター試験受けにいくから暫く開ける。上の許可も取ってるから………俺が嫌いだからって俺の組に迷惑かけるなよ?」
「…………それは俺達全体に影響が出る。この場にそんな馬鹿はいない。この場にはな」
つまり一部が暴走する前にさっさと戻ってこいと。まあ蚯蚓を含めて今の均衡を維持したいのは十老頭も同じ(だから俺嫌われてるし)。暫くは此奴等が教えるだろ。
「ああ、さっさと合格して戻る」
今日も殺気を向けられる定例会議だったな。まあ当然だが。
しかし、漸く時が来たって感じだ。受けるならこの回って決めてたからな。後いい加減ハンター試験受けないとあのババアがうるさい。
『恵まれない子供達の支援・救済に尽力した「
「お、まだ取り上げてんだこれ」
フルフェイスの仮面を外しながら酒を入れる。此奴の不幸を聞きながら飲む酒は美味い。
『現場に残された『カタヅケンシルバー参上』の文字は、専門家によると顕示欲の表れであり犯人の幼稚な………』
「クリンだったんだよな、これ………すっかり間違えちまった」
クレオ(放出系)
原作の知識は天空闘技場まで。後は蟻編を疎らに。当初ビザフを食人鬼だと思ってた(作者の体験)