夜食に薔薇の毒はいかが?   作:キャンディマン

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鏡合わせの窓(ふたつのけしき)
放出系ジョイント型
片方が片方の視界内ならマーキング関係無く転移。ただし転移のタイミング、体の向き、場所は視界に移してる側の任意。息が合った連係が必要。視界内ならどれだけ離れていても転移可能。望遠鏡でも可能。
奥の手でマーキングも可能。2人同時にマーキングする必要があり、最大2つのみ。また、双子間で物資の受け渡し可能。本人達の入れ替え可能。
もっと強化系、格闘技術も鍛えれば得意の戦闘スタイルを分けて入れ替わり敵を混乱させたり互いに互いを敵の死角に転移させたりとか出来た。決して弱い訳では無いが不意打ちに頼りすぎて、格上に対処されるとその後の対応がグダグタになるのが弱点。練が足りなかった。


本気と偽り

 1週間。

 絶を使いながら寝ることも出来るようになった。進む距離も増えた。新しい問題が生まれた。

 

「よし………!」

 

 ウサギをゲット。焼きながら周囲を警戒する。

 

「キキ!」

「また!」

 

 この辺りを住処にしている猿だ。長い手足はしかし人面猿のように細くはなく、素早く力強い。そのくせ余計な戦闘をしない知恵があり他の生物が狩った獲物を狙うらしい。

 

 当然この猿もオーラを操作する。

 素早い攻撃の一つ一つを無防備に食らえない。纏では吹き飛ばされ、練でも弾かれ、何度も飯を奪われた。

 

 必要なのはオーラの密度。オーラを両腕に集中させる。凝だ。

 オーラを移動させる流を使えるほどの熟練度はポンズにはない。だから一部をオーラで強化する。

 

 数日前とは見違える反応速度で猿の盗み手を受け流す。この猿は直接的にポンズの命を狙わない。その方が長く獲物を奪え長期的に得と判断したのか、焼かれた肉が好きなのか、別の理由があるのかは分からない。今はその油断を利用する。

 

 奪った手を弾き、奪われた手を弾かれ、素早い奪い合いに常人には空中で肉が躍っているように見えるだろう。

 

 猿がじれたように乱暴に手を伸ばし、ウサギ肉を掴む。勝ち誇った。明確な油断にポンズの拳が猿の顎を打つ。

 

「やっ…………!?」

 

 グニャリと視界が揺れる。頭が痛い?

 

 揺れる視界の中見えたのは長く伸びた猿の尾。第三の拳となりポンズの顎を打ったのだ。

 

「キャキャ!」

 

 猿は笑うとウサギ肉をポンズの眼の前でムシャリと一口。そのまま去っていった。わざわざ一度食ってから。おちょくられているのだ。すごくムカつく。

 

 ポンズの怒りに反応するようにオーラが乱れ、しかし直ぐに静かになった。

 

 絶だ。

 絶そのものに精神を安定させる力はなくとも、絶を使おうとするルーティンが精神を落ち着かせる。

 

 気配が消えたポンズにリスが近付く。ウサギ肉の臭み消しに集めた樹の実の匂いに誘われたのだろう。ヒクヒクと動く鼻がポンズの指先に触れる。次の瞬間リスの首が握り砕かれた。

 

 ポンズはそのまま火に焚べる。血も内臓も抜かない文字通りの丸焼き。血は案外栄養があるのだ。

 傷もなく、新鮮な血は臭みがない。あれは傷口から雑菌が入り繁殖するからだ。

 

 内臓を捨て肉に食らいつく。レバーペーストに似た味。ブラッドソーセージがもっと近いか?

 

「ハンター試験のサバイバルって、優しかったんだなあ」

 

 ヒソカやクレオ達のような例外を除けば念使いはいない。クレオ曰く念を知らぬままオーラを操る者もいたそうだがそれだって稀だろう。

 基本的に期間は短く、生き残れる可能性は高い。武器の持ち込みも許可されるし。

 

 あの猿はこの辺りに来てから急に料理を奪うようになった。つまり縄張りの外には出ないのだろう。なら、縄張りから出れば襲ってこないだろう。けどそれは逃げだ。勝てないからと見切りをつける。

 

 勝ち誇ったあの猿の顔を思い出す。ぶちのめしてやりたい。

 

「……………ふぅ………」

 

 全身の精孔を開く。溢れたオーラを留める。全身を覆い………少なくなってきたら絶で寝る。

 

 

 

 

 

 本日は魚。完璧な焼き加減。

 

「キキィ!」

 

 木の上から飛び降りる猿。鋭い牙を見せつけるように唸り薪の魚を蹴り上げる。ポンズが掴み取ると寄こせとばかりに襲いかかる。

 

 ムシャリと一口食う。奪おうと伸びる手を蹴り上げる。

 

「…………!」

 

 足に集中したオーラ。他の個所のオーラが薄くなっている。故に警戒するのは足………

 

「!?」

「女は視線に敏感なのよ」

 

 意識が足に向いた故に無警戒だった拳を食らう。

 足だけではない。全身を覆う強力なオーラ。練を維持したまま纏を行う。

 

「キィ!」

 

 獲物を奪うのは割に合わないと判断したのか背を向けて逃げ出す猿。ポンズは久し振りにゆっくり食事を取った。

 

 

 

「崖…………」

 

 二十メートルはある崖が立ち塞がる。左右を見ても果ては見えない。

 

 というかこれを登るのも試練の可能性がある。崖へ近寄るポンズ。と………

 

「!?」

 

 不意に差す影。落ちてくる巨大な生き物。

 

「………なに、こいつ」

「コアアアア!」

 

 毛のないのっぺりとした体皮を持つ異形。4本の腕に巨大な単眼を持つ怪物。

 

「カアアアア!!」

 

 振るわれた腕が鞭のように大気を引き裂く。オーラで攻防力を高めたポンズはそのまま吹き飛ばされる。

 

「〜〜〜っ!!」

 

 木々を圧し折り吹き飛んだポンズ。追撃に迫る怪物。

 

「………!」

 

 しかし何かに気付いたように後ろ向きに跳ねて、再び崖の上に消えた。

 

「……………?」

 

 ブブ、と羽音が聞こえた。

 

「………あ、シビレヤリバチ」

 

 こんな時にこの子達に救われるなんて。

 

 

 

 

「………よし」

 

 毒草を調合。自分が受けてしまった時の為に薬も作った。蜂を恐れるあたり、毒は効くのだろう。

 毒は鏃に塗る。問題はどうやって石を削っただけの鏃でオーラを突破するか、だ。

 

 オーラを纏おうと高いところから落ちたら痛かった。オーラ以外に無敵というわけでなく頑強さが上がるだけ。一定以上の力なら突破出来るのだろうが森で手に入る材料でオーラの防御を超える威力の矢は生み出せない。

 

 これもオーラを纏わせれば………。

 

「体から離れたオーラを維持………あの人も、やってた」

 

 ただ操られた自分にやらなかったあたり、基礎よりも上の技術なのだろう。一度手に持ちオーラを纏わせ、放す。オーラが霧散する。

 

「…………一瞬」

 

 一瞬だけだがオーラが離れた。

 オーラを体から離す。放出系と言われる念能力の系統の基礎だ。まずはオーラを離す。その後に物に込める。しかし、オーラを纏わない物にオーラを纏わせるのは…………。

 

「…………オーラ」

 

 ふと、ポンズは上を見る。

 生物であるが故にオーラを纏うその虫を。

 

 

 

 

 

「…………はぁ、はぁ………つっ、きっつぅ」

 

 オーラで強化した指を突き刺しながら崖を登りきったポンズ。ゴロリと横になる。

 

 周囲に浮かぶのは通常ではあり得ぬほどにオーラを纏ったシビレヤリバチの群。

 

 ゴロリと大の字で寝転がり空を見上げるポンズ。

 

「よお、お疲れ」

「………………………殴っていいですか」

「出来るものならな」

 

 のぞき込んでくるクレオに怒気を向けるも軽く流された。

 ほら、と渡されるスポーツドリンク。寝転がったまま飲む。口の端から溢れた水滴がツゥ、と喉を滑り落ちる。

 

「大したものだな。慣れ親しんだ主とは言え、訓練してるからこそ先入観が邪魔をするもんだが」

 

 と、シビレヤリバチを掴み取るクレオ。近付くものを攻撃せよと命令しているのに掴まれるまで蜂は反応しなかった。というかこうして目の前にいるのに少し目を離しただけで見失いそうなほど存在感がない。

 

「…………あなたが私を操ってたから」

「正解。操作系だな………俺が2番目に得意な系統。3番目は強化」

「1番は?」

「放出系。ただ放つ以外にも物にオーラを込めて強化したりな。蜂一匹で熊を毒使わず殺せるように出来るぞ」

 

 ポンズのオーラが尽きた蜂が暴れ出すもクレオにオーラを注がれ直され大人しくなる。クレオが放ると普通の蜂の何倍もの速度で飛行し岩を貫いた。

 

「これが本当のテッポウムシ」

「は?」

「何でもない。ほら、手を出せ」

「……………」

 

 クレオの手を取った瞬間オーラが全身に流れ込む。しかし操られるような感覚はなく、ただ疲労が文字通り吹き飛んだ。

 

「さて、じゃあ食事にするぞ。簡単なもので悪いがな」

 

 開けた草原にはテーブルが用意されており、ハニートーストなどが並べられていた。ゴクリと喉を鳴らすポンズ。数週間ぶりのまともな食事。

 

「…………修行の第一段階、キツくない………ですか? 死ぬかと思いました」

「敬語はいらねえよ。それに、第一段階だからな、ちゃんと命の保証はされてるぞ?」

「あんな猛獣だらけの森の何処に」

「いないぞ、危険な猛獣なんて」

「そりゃ、貴方からすれば………」

 

 と、崖から何かが飛び出してくる。単眼四腕の怪物だ。ポンズが即座に臨戦態勢。この数週間ですっかり切り替えの速度が上がった。

 

「お疲れ」

「いえ」

「え……………?」

 

 喋った。魔獣?

 

「此奴がお前をずっと見守ってたからな」

「ずっとって…………」

 

 ポンズが困惑していると魔獣はその姿を変える。まずはキツネグマ………次に、猿。

 

「……あ!」

「あの森は俺の私有地でな。売られそうになってた凶狸狐(キリコ)の群が住んでいる」

「キリコって…………変幻魔獣」

「どんな姿にもなれるからな。()()があるんだよ」

 

 暗殺やそれ以外にも。

 『獣使い』の念能力者が陰獣の座を狙いやって来た際に返り討ちにし、解放された彼等を保護したのだ。

 

「因みに大蛇は複数人で化けるんです」

「念に目覚めてからは精度が増しました」

 

 更に現れた。

 

「ついでにうちで働いてたのもキリコだ」

 

 一度操れば操作が続くが操るのは弱い個体という条件の能力。子供を攫い育てるやり方ゆえに多くの群れから攫い、その群れに返す際に人里離れた私有地を与えたのだ。

 

「ていうか都合よく疲れたところを襲われなかったり小動物が現れるわけないだろ。サバイバルなめんな」

 

 ポンズは拗ねたように食事をとる。

 

「…………………あ、美味しい」

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