夜食に薔薇の毒はいかが?   作:キャンディマン

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蜘蛛の依頼

 十老頭。六大陸十地区をそれぞれ支配している組織のトップ達。決して仲がいいとはいえず、あくまで睨み合う対等の相手。秘密裏に手を組むこともあれば裏切る事もある。

 

 それでも此処数年、代替わりも数の変動もしないのは互いの戦力が釣り合っているから。武力だけでなく影響力なども含めて、だ。

 

 そんな十老頭の懐刀。各々の組織や下部組織含めた戦闘員達の中で集められた最強の10人が陰獣。その中でも最強は蚯蚓というコードネームの男。

 

 戦車すら素手でお釈迦にし、その上隠密にも優れる。彼に狙われ生き残れる者はマフィアの世界を超え軍人、ハンターを含めようと僅かだろう。そんな彼も穏健派故に十大マフィアの均衡は保たれていた。

 

 無論十大マフィアの何処にも属さぬカキンのマフィアなども居るが、陰獣なら問題ない。そんな戦闘集団の一人を()()()()()()()()()()男が居た。

 

「陰獣ってのは十老頭最強の武闘派なんだろ? なら、今日から俺が陰獣だ」

 

 当時は何の飾りもない無機質な仮面を被った男はマフィア達にそう告げた。最年長であれど最弱ではない陰獣の首を持って。

 

 当然マフィアの威信にかけ、次期陰獣の座を餌に追っ手を向かわせたが全滅。

 

 追撃隊は組まれなかった。そんな暇がなかった。

 

 我こそは次の陰獣と、陰獣を失った十老頭麾下組織の銀メダリスト達が声を上げ殺し合い、どころか十老頭の座を狙う者、他の十老頭の覚えを良くするために新たな販売ルートと商品を求め縄張りを広げようとする者………様々な思惑が絡み合い、制圧された。

 

「金とコネ。俺が求めるのはそれだけだ。今までと変わらないだろ?」

 

 結局混乱を収めるためには、混乱の元凶となった男を陰獣の座に据えるしかなかった。

 

 無論その後も陰獣の座を狙いオーラを冷気に変える変化系、コンボが続くほどに拳の威力が増す強化系、条件を満たした獣を隷属させる操作系、一定範囲内で瞬間移動を繰り返せる放出系等確たる実力者が挑み、殺されたが。少なくとも、挑もうと考える者は姿を消していた。

 

 

 

「だってのに、んだこの体たらくはよお」

 

 ジャケットを着た褐色肌の陰獣が独蜘蛛を睨み抜ける。独蜘蛛を気に入らない派閥の一人だ。

 功績を認められたのではなく力で認めさせた独蜘蛛に対する陰獣のスタンスは認めない、力を示したのだから認める、秩序が保たれるなら誰でもいいと大まかに3つに分かれている。

 

 蝙蝠に変身する男や指の長い中性的な男、逆だった髪の男が褐色肌の男と合わせて否定派。

 

「ハンター如きの試験に落ちるなんてな。陰獣やめちまえ」

「おおいいぞ。じゃ、後釜はそっちで見つけてくれ、譲るから」

 

 その言葉に押し黙る。そうなればあの時の混乱の再来でしかない。力で陰獣の座を奪ったのが気に食わなかろうと、一度そうなった以上力で据えるしかないのだ。

 

「そこまでにしておけ。今回の会議は今年のオークションについてだ………」

「そんな時期なんだな」

「つっても俺等は十老頭の護衛だろ?」

「ふん、一人例外だからな」

 

 陰獣は各十老頭の懐刀であると同時に最強()()であるが故にこうして定期的に集まるが、十老頭が集まるのはこの時期のみ。だからこそ最大限の護衛がされる訳だが。

 

 独蜘蛛はその経緯から信頼が足りず護衛を任せられたことはない。もちろん護衛以外にもチームを組んで動くこともあるが。

 

「まずは今回の競売品の保管場所の緊急時の対応について…………資料の2ページを」

 

 

 

 

 独蜘蛛は他のマフィアから信用されていない。

 故に通信機器には盗聴器が仕掛けられている。なのでプライベートな連絡は出来ない。

 

 つまり依頼するには直接出向く必要がある。

 

「イルミ君いる〜?」

「ええと………イルミ様のお友達ですか?」

 

 ゾルディック家の私有地前、黄泉への扉。正式名称試しの門横守衛室の中に居た男に話しかけるクレオ。

 

「いや〜、この前もキルア坊っちゃんのお友達が来てくれてね〜。はい、連絡はしてみます」

 

 と、守衛室の電話を取る男。

 

「あ、もしもし、こちらゼブロです。はい! 実はですね、イルミ様のお友達が………」

『イルミ様に友達がいるわけないだろ』

 

 聞き耳を立てたらそんな声が聞こえてきた。ヒソカはゾルディック家にイルミの友達扱いされていなかったらしい。

 

「あ、はい。いえ、ですが…………はい、はい! スイマセン」

 

 どうやら断られたらしい。じゃあ正面から堂々入らせてもらおうとしよう。

 

「すいませんお客さん…………お客さん?」

 

 扉に触れ、押し込む。軋むような音を立て門が開いていく。

 

(試しの門………5を簡単に)

「力込めると重くなるのか。適度な力加減が重要だな」

 

 そういってクレオはゾルディック家の敷地へと足を踏み入れた。

 

「…………!」

 

 ズシズシ音を立てて現れる巨大な犬。無機質な、ガラス玉のような瞳は殺意がないくせにこちらを殺せるかどうかを確認している。

 

「…………まさかイルミ?」

「違うよ」

「お、イルミ。顔どころか体も変えれるのかと思った」

「そこまで便利じゃないでしょ、操作系」

「あー、確かに犬は無理だな」

 

 多少体の形を操作できるらしい。まあゾルディック家も心臓を取りやすくしたりするし。変化系なら出来なくはないのだろう。

 

「で、なに? 君何時から俺の友達になったの?」

「なるわけねーだろ馴れ馴れしい」

「俺の台詞なんだけどなぁ。急に友達を名乗る奴が来たって連絡が」

「そういうの普通弾かれるんじゃねえの?」

「キルアやミルキは兎も角、俺の友達を名乗るのがありえないから逆に真実味を出したんでしょ」

 

 つまり此奴の友達を名乗る奴が現れるのはおかしいから逆に本当かもと思わせるような人間ということか。

 

「まあいい。依頼だ、格安で受けてもらうぞ」

「ん。で、暗殺対象は?」

「十老頭」

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