夜食に薔薇の毒はいかが? 作:キャンディマン
「さて、やるか」
ゾブリと針の束が皮膚を貫く。血管に、筋肉の隙間に猛毒が入り込み、肉体を侵す。神経が悲鳴を上げる。苦痛という名の肉体の警告による反射を完全に抑え込み、体内へ宿った毒を己の一部であるかのように念を込める。
強力な毒は意識を溶かし、しかし耐えきり体外へ放出。
「最後の晩餐にオリジナルブレンドをどうぞ」
放出したガスは無数の蛾の形を取り屋敷へと向かう。武装したマフィア達が何事かと顔を上げ、死んだ。
「…………電気が消えたね」
「結露しやすい特殊性。電気もよく通すから機械内部の水滴が電子機器を破壊する。ま、軍用施設にゃ効果薄いし、十老頭の別荘だからその程度の機能は…………」
放たれた毒ガスは円の効果も持つ。屋敷内の構造を把握し、逆に把握できない個所を見つける。
「みっけ」
新たな薬品を体内に流し込む。現れるのはカミキリモドキの幼虫が強靭な顎でコンクリートを噛み進む。
金属も混ぜられていた。普通なら金属中毒になって死ぬだろう。イルミは今のところ暇。轟音を立て壁が破壊される。
「ここから先毒ガス使われると俺が困るんだけど」
「わかってんよ」
クレオはバールを具現化した。
「君さぁ、放出系なら具現化苦手だよね? メモリ無駄遣いしてない?」
虫に関しては薬品をその形に『操作』しているだけだがこれは間違いなく具現化能力だ。
「? 特殊能力もない具現化にメモリなんて使わないだろ? おまえ、風景画を別の場所で描く時に一々写真にとるのか?」
「普通そうじゃない?」
「………………?」
通常具現化系能力者は具現化する物を瞬時にイメージ出来るように己の記憶に馴染ませる。その理屈で言うなら、慣れ親しんだ物の具現化は容易いだろうが……。ディテールにまでこだわるならそこからさらに病的なまでに触れ合う必要はある。
重さも硬さもある具現化。ディテールに凝ってないとはいえ、それをメモリに入れず具現化する。
一度だけ見た風景の絵を別の場所で見ずに完成させるようなものだ。
因みにポンズには一日一枚、ネットで世界の風景、絵画などをランダムで選び一度見ただけで写生するよう言い含めている。要するに瞬時にイメージを固めればいいのだろう? とクレオは思ってるし出来ている。
「そこまでだ」
と、立ちはだかる影。見れば分かる。手練れだ。
「どこの誰から命を受け、ここを知ったか知らんが、運がない。独蜘蛛相手ならば楽に死ねたものを」
「? ああ、そういえば君バレてないんだっけ」
その独蜘蛛が目の前にいるのだが。しかし発言的に
「独蜘蛛よりは弱いんだね。そりゃそっか、陰獣じゃないし」
「っ! 独蜘蛛と違い、俺は甚振るのが好きなんだよ!」
「殺しに時間かけるの、プロとしてどうかと思うんだよね、俺」
「捕まえて拷問してやるってことだろ」
「ああ、まあ。聞き出さなきゃいけないしね」
なので陰獣の一人である病犬も普段は拷問用の毒を仕込んでいるが捕縛ではなく殺害の時は即死の猛毒に切り替える。
呑気な、つまり余裕と取れる二人の態度に男は飛び出す。
「痛みに震えな!
オーラを纏ってからの身体能力の上昇率………恐らく強化系或いは隣り合った系統。操作系のイルミが僅かに反応に遅れる。
(オーラの量や格闘技術は俺が上だけど、強化系として鍛えてるなあ。オーラ強化込みなら身体能力だけは俺より上だ)
伊達に裏社会で生きていない、ということか。裏社会からの暗殺依頼は多々あれど、ここまでの使い手は久し振り。
ふとイルミは隣に立つ男を見る。そういえばこの男は裏社会に混沌をもたらして力で解決したとか。此処数年の裏社会で手応えを感じなかったのって此奴とヒソカとクロロが狩りまくってたせいでは?
俺の知り合い裏社会に迷惑な奴等が多いな。
「へ、当たったな?」
「…………?」
その言葉にガードした腕の殴られた箇所が赤くなっていた。極まった具現化、操作系なら触れただけでも面倒なことになったりするが、オーラ量と身体能力の上昇率を見る限り間違いなく強化系。
ああ、隠でオーラ量を隠している可能性もあるか。
「お前………俺に何をした?」
「っ!!」
無機質な殺意に顔を青くする男。しかし直ぐに恐怖を振り払うように笑う。
「痛覚の強化さ………今、お前の腕は子供が触れただけで剣山で身を削がれるような激痛に襲われる!」
「え、その程度?」
「え………」
「人の体にオーラを込める。強化と放出の複合かな。にしても痛みがいまいち」
ゾルディック家では痛みに耐える訓練も当然している。
「でも痛いものは痛いんだよね」
「っ! さらなる痛み…………」
それ以上の言葉は続かなかった。イルミが首を千切り取ったからだ。困惑する瞳が己の体を見つめ、グシャリと頭部が潰され零れ落ちた。
「……………おい」
「あ、ごめん。つい」
クレオは自分で殺さないとオーラを奪うことは出来ない。イルミが殺してしまった。
「まあいい。進むぞ…………」
クレオから膨大なオーラが広範囲に流れる。
クレオは隠し通路を見つけた。円だ。
「使えるんだね」
「ガス使えば500メートルいけるぞ。大雑把な形しか捉えられねーが。普通の円なら100メートル。いろいろ細かく分かって便利」
コツコツと隠し通路を進み、頑丈そうな扉を引き剥がす。元より強化系に隣り合った放出系………その膨大なオーラに物を言わせた強化は純粋な強化系すら上回るだろう。
「き、貴様等何者だ! 私を誰だと思っている!」
「イルミ」
「はいはい」
イルミが投げた針が十老頭に向かい飛ぶ。最後の護衛達が動くがまるで間に合わない。先程の男子と比べ余りに弱い。
その護衛もクレオの蜂に刺されて死んだ。
「生きている内に操れば筆跡もそのまま使えるんだったな? 招待状書かせろ」
「招待状?」
「此奴スナフマニアって奴だな。自慢の作品を見せ合う鑑賞会を定期的に行うんだが、マフィアじゃないのも混ざってて
だから次の開催まで待つ予定だったのだがイルミのおかげで早められた。
「十老頭が一人死ぬとオークションに合わせた会合もなくなるかもだから、それまで頼むな」
「ええ、長期依頼」
「格安なんだろ。念使いの暗殺依頼ならかわりに受けてやるよ」
「もう少しオークションに近い時期にしてもよかったんじゃない? 格安にするって言っても、高くなるよ?」
「ああ、確かに…………」
10と少し前、とある少女の『作品』を公開した奴は殺したがオリジナルの記録を買った奴がいるらしい。
「殺す意味あるの?」
「殺す意味は、特にない」