夜食に薔薇の毒はいかが?   作:キャンディマン

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殺し屋と殺人鬼

「いい兄貴だな」

「でしょ?」

「皮肉だよ」

「?」

 

 何故、と言いたげなイルミ。いい兄貴という()()()()()の何処に皮肉を込める要素があったのかがわからないのだろう。

 

 結果を言えば、イルミが合格しキルアが降参した。

 ハンターに向いてないだの殺し屋にしかなれないだのと言って、欲しいものなんてないくせにと言えばゴンと友達になりたいという。レオリオがもう友達だといえば、友達は必要ないからゴンを殺そうとまで言い出した。

 

 友達と戦うために自分に挑みゴンを救うか、戦わずゴンを見捨てるかと二択を迫りキルアが降参したら満足した。

 

「よくもまあ弟にあんな事するな」

「そこはほら、俺の家は普通の家と違うからさ。キルアも、次期当主に相応しくなってくれなきゃ」

「お前んとこの爺、普通に友達いるだろ。ちょうどあそこに」

 

 と、ネテロを見るクレオ。イルミはあー、と呟く。

 

「でもウチの爺さんは依頼来たらちゃんと殺しに行くと思うよ」

「まあ、だろうな」

 

 そしてキルアにはそれは出来ないだろう。

 

「立派な殺し屋になるために友達なんて必要ないよ。作るにしてもせめて友達でも殺せるように育ってからだね」

「でも彼奴殺し屋向いてないだろ」

「……………………は?」

 

 ビリッと空気が張り詰める。

 ポックルを押さえつけていたハンゾーが振り返り他の受験者達も獲物を構えたり距離を取ったり縮こまったり。ヒソカは逆に大きくなっている。

 

 

「殺しの才能はあるが」

「当然だね」

 

 殺気は霧散し誇らしげなイルミ。

 

「けど彼奴飛行船で肩ぶつかっただけの俺殺そうとしたしなあ」

「う〜ん。勝てない相手に挑むのはよくないね」

「いや、殺し屋なら依頼受けた相手だけにしろよ。お前の爺も親父もそうしてるだろ」

「ひょっとして戦ったことある?」

「あー………まあ。途中依頼主俺が殺したけど」

 

 次期十老頭の座を狙い陰獣を出したファミリーになろうとしていた男が居た。次の十老頭になれると思い上がれる程度にデカい組織を持つ男を敢えて放置して世界最高峰の念使いと戦ってみて、あわよくば心臓を狙っていたのだったが無理だった。

 

 因みに両者共に放出系、広範囲に高威力の破壊を行える彼等はしかし派手な破壊と裏腹に無関係の人間は巻き込まなかった。

 

「あれが殺し屋としてあるべき姿なら、お前やキルアは向いてねえよ。ただの殺人鬼」

「でもほら、俺は操作系だからさ。駒は必要じゃない?」

「お前絶対暗殺に関係ない殺しもするだろ」

「そんな事………………あー…………キルを完璧な殺し屋に育てる教育のためなら関係なくないよね?」

 

 どうやら暗殺の手駒を作るため以外にも無関係の誰かを殺したことがあるようだ。キルアが興味を持った遊びしてた子供とかだろうか?

 

「お前の親父達に確認すれば?」

「やだよ。怒られる」

「怒られろ」

 

 怒られるようなことをした自覚はあるらしい。

 

「クレオ、ポンズ、出てください!」

「呼ばれてるよ」

「あー、降参。まいった」

 

 クレオはあっさりそう言った。

 

「いいの?」

「ああ」

 

 これでポンズは合格。クレオは負け進み次はヒソカと戦うことになるだろう。

 

「クレオ………♥」

 

 君も同じ気持ちなんだね、と言いたげなネットリとした視線を向けてくるヒソカ。

 

「おいイルミ、格安でヒソカ殺してこい」

「ヒソカは格安にしても高いよ。ていうか、それ君失格にならない? そしたらキルアが合格しちゃうじゃん」

「仕事に私情を持ち出すなよ」

「まだ仕事じゃないし」

 

 そしてキルアとボドロ。試合開始と同時にボドロが降参を宣言しようとして、キルアがボドロの心臓を抜き取った。

 

「「「!?」」」

「お、おい、キルア!!」

「何を………!?」

 

 レオリオとクラピカの言葉に応えず背中を見せ立ち去るキルア。ボドロは確実に死んでいる。キルアは失格だ。

 

「……………うむ、キルア選手は失格とする」

 

 ネテロは淡々とそう答えた。イルミは満足そうに頷く。

 

「ヒソカ、ガム寄こせ」

 

 クレオは放り捨てられた心臓を掴みボドロの死体に近付く。綺麗に抜き取られている。

 

「お、おい何を」

「蘇生」

 

 ドグンと止まったはずの心臓が脈動し、クレオが触れている死体から血液が流れ出なくなる。

 

 血の流れを操作し肺を動かし心臓が無い以外は生きているのと変わらない動きをする。

 

伸縮自在の愛(バンジーガム)

 

 心臓の切断面に粘着性のオーラが付着。クレオは素早く心臓を内部にハメ直し具現化した糸で縫合する。心臓が一際強く脈動しボドロが息を吹き返す。

 

「んなアホな………」

 

 念を知らない者から見ればあり得ない光景。とれた心臓をハメれば生き返るなんて、人体はそんなに単純ではないのだ。

 

「………あ! お、おい、そのおっさん生き返ったなら、キルアの不合格は!」

「先程までは確実に死んでおった。明確な殺意を持っての攻撃………不合格は覆らん。ボドロも生き返ったからといって合格は与えられん」

「取り敢えず此奴ちゃんとした医療施設に送れ。応急処置だし」

「うむ」

 

 ネテロが頷くとボドロは直ぐに担架で運ばれていった。

 

「共同作業だね♥ マチみたいだったよ♣」

「誰だよ」

 

 本当に誰?

 

「えー、おほん」

 

 と、ネテロが咳払いする。

 

「それでは、残る9名は最終試験合格! 追って説明があるので休憩の後案内の下講堂に来なさい」

 

 こうしてハンター試験は終了した。

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