第二十三話【トレジャーハント】byセルヴォ
メッシュ: 「ファッファッファーー!! ついたぞセルヴォ!」
「さて、そいつぁ重畳だな」
目の前に聳え立つのは、かつて空中要塞と呼ばれ、今はただ砂塵と沈黙に埋もれた巨大な鉄の墓標――遺跡『フユーン』だ。
さて、ここに来た目的はただ一つ。伝説のヴィンテージオイル『ヘベレケスペシャル』。芳醇な香りと、脳を焦がすような極上の刺激を思い浮かべるだけで、俺のメダルは熱を帯びる。
今回の冒険……いや、個人的な『調達任務』に協力してくれるのは四機。ファーストエースのメッシュ、ガンキングのゲンジ、メイクイーンのキドゥ、ジャッカルのカリパー。
トランプ型と呼ばれる珍しい連中だ。かつてN・G・ライトを屠ったとされる『ジョーカード』も同じトランプ型だったと聞くし、こいつらのカタログスペックも十二使徒候補に挙がるほどには高い。戦力としては相当に申し分ないはずだ。
さて、いくぜ!!
男セルヴォ、不純な動機と高純度のオイルを求め、今ここに命を賭けて挑まんとす!!
「さて、……入るぜ、メッシュ。先導を頼む」
メッシュ: 「ファッファッファッ! 俺はプロのトレジャーハンターだからな。何か困ったことがあったら、この俺様を頼れよ!」
さて、程よくテンションが温まったところで、カビ臭い入り口を潜る。
メッシュはよほど先頭を歩きたいのか、俺を追い抜くようにして前へ躍り出た。まあ、盾代わりになってくれるってんなら、俺に異存はねぇ。ところで……。
「さて、お前たちは前に出なくていいのか?」
俺は後ろをトボトボと歩く残りの三機に声をかけた。どうにもこいつら、メッシュの過剰な熱量に押し流されて、存在感が希薄に見える。
カリパー: 「あー。オイラたちはいいよ」
キドゥ: 「基本、サポート役だしね」
ゲンジ: 「メッシュが危なくなったら前に出る。それが我輩たちの役割だ」
さて、どちらかっつーと、俺はこういう「縁の下の力持ち」的な奴らの方が好みだな。自分が世界の中心だと思い込んで、スポットライトを独占したがる奴はどうにも自分勝手な動きをすることが多くて困る。
メッシュ: 「おっと、あぶねぇ!!」
不意に、メッシュが機体を強引に静止させ、叫び声を上げた。
「さて! 何かあったのか!? 酒か!? ヘベレケか!?」
メッシュ: 「いや、地雷だ」
メッシュが自身の脚部の直下、砂に半分埋まった円盤状の物体を指差して答えた。
近寄ってスキャンしてみれば、信じられないことにまだ微かな磁気反応を発していやがる。骨董品のくせに。
「……チッ」
メッシュ: 「え? 舌打ち?」
さて、さっさと出てこい、ヘベレケスペシャル。俺の「超休憩」は有限なんだ。
メッシュ: 「ま、まあいいか。お前ら、踏まないように気をつけろよ!」
メッシュはオーバーな動作で慎重に地雷をまたぎ、通路の先へと進む。残りの三機も、それに倣って流れるような動作で危険地帯を突破していった。
全員が地雷原を抜けたのを確認すると、メッシュは「ふぅ……」と大袈裟に溜息をついた。
メッシュ: 「……ふむ。俺がいなければ、今ごろ全員全滅していたところだったな……」
さて、鼻につくセリフだ。地雷探知なんてトゥルースの基本中の基本だし、俺一人でも何の問題もなかったんだが……今は伝説の酒の方が大事だ。ここは聞き流してやるのが大人の対応ってもんだろ。
メッシュは得意げな顔のまま、通路の壁にドカッと背中を預けた。
さて、そこまで疲れるほどの障害物でもなかっただろうに。
ん?
俺の目が、メッシュの背中の影に「ある不純物」を捉えた。
「さて、メッシュ……」
メッシュ: 「ん? どうしたセルヴォ。この俺の勇姿に見惚れたか?」
「お前が今、背中で押し込んだ『ボタン』みたいなヤツはなんだ?」
メッシュ: 「……」
メッシュが寄りかかった壁のボタン。それが深く沈み込んだのと同時に、静止していたはずの遺跡の『時間』が動き出した。
―――ゴ、ゴゴゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
さて、腹の底を揺さぶるような、嫌な振動だ。
メッシュ: 「ん? なんだこの音は?」
音のする方向に嫌々ながら首を向ければ、通路の奥から巨大な球体――天井の高さまで届くほどの岩石が、猛烈な勢いで転がってきていた。
さて、やれやれだぜ。
メッシュ: 「オイィィィィッ!!? 」
慌てふためくメッシュを横目に、俺は最短の回避ルートを計算する。
今更、こんな太古の映画でしか見ないような原始的なトラップの相手をさせられるとはな!
「さて、下がれ!!」
俺はメッシュの襟首を掴み、後方へと全力疾走する。
直後、背後で凄まじい爆音。
猛スピードで転がってきた岩が、先ほど通過した地雷原を踏み抜いたのだ。
―――ズ、ドォォォォォォォォォンッ!!
爆炎が通路を舐め、砕け散った岩石の破片が、質量を持った弾丸となってこちらへ襲い掛かってくる。壁や天井を不規則に乱反射しながら、回避不能の弾幕となって俺たちの背中を狙う。
さて、索敵で軌道を完全に見切り、すべての破片を左腕のハンマーで叩き潰してやる――。
そう身構えた、その時だった。
メッシュ: 「セルヴォは俺が守るぞッ!!」
メッシュが俺の頭上を飛び越えた。
空中で舞うメッシュの右手には、いつの間にか一振りの大剣が握られていた。いや、違う。あれは――
メッシュ: 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッッ!!!」
絶叫と共に、メッシュの全身が駆動音を上げて連動する。
右手には『大剣カリパー』。
左手には、城壁のような『大盾ゲンジ』。
そして背中には、輝きを放つ『杖キドゥ』。
カリパーで迫り来る岩の礫を鮮やかに切り裂き、ゲンジの盾で俺の死角を完璧にカバーする。さらに、蓄積されるカリパーとゲンジへのダメージをキドゥが瞬時に癒し、継戦能力を底上げしていく。。
一見、この騒がしい一団の中で最も不要な存在に見えたリーダーのメッシュ。だが、あいつがこの三機を「装備」し、一糸乱れぬ統制で操ることによって、個々の性能だけでは到底成し得ない、独特のチームワークを発揮していやがった。
すべての破片を塵に変え、メッシュは静かに床へ着地した。
メッシュ: 「セルヴォ! 怪我はないか? 無事か!?」
「あぁ、大丈夫だ。問題ない」
さて、と。強がってみたものの、正直なところ俺はビビっていた。
メッシュ、カリパー、キドゥ、ゲンジ。この四機。こいつら全員、十二使徒の化け物どもに比肩する実力を持ってるんじゃねーか?
おっと。今は不本意な
とはいえ、一気に四機も『トゥルース』の息のかかった戦力として引き込めりゃ、今後の俺の地味仕事も相当に楽になるだろうな。
……さて、休暇中に仕事を考えるのは俺のポリシーに反する。後でビートにでも情報を流しておくとしよう。
とりあえず、今は酒だ。
今の俺を動かしているのは、その渇きだけなんだから。
俺は索敵範囲を最大まで広げ、通路の先を探った。……あぁん?
「さて、メッシュ……。気を引き締めろよ」
メッシュ: 「どうしたセルヴォ。お宝の匂いでもしたか?」
何かおかしいと思っていたんだ。
百年以上も昔の遺跡のトラップが、整備もされずに未だに完璧なタイミングで動いているなんて、論理的にあり得ねぇ。
そういうことか。
「さて、……このフユーン。俺たち以外に『誰か』がいるみたいだぜ……」
センサーが捉えたのは、埃っぽさの中に混じる、微かな、けれど新しい「熱量」の残滓。
先客が、暗闇の奥で俺たちを待ち構えているらしい。
第二十三話【トレジャーハント】終わり