APPEARANCE of TRUTH   作:土地_0000

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第二十五話【ビッグブロックの魅力】

第二十五話【ビッグブロックの魅力】byセルヴォ

 

 

 さて、真面目に考えようか。

 ハードネステンの野郎に俺の脱獄がバレちまったこの現状を、どうにかして俺にとって極力都合の良い結末へと捻じ曲げる方法をな。

 

 さて、まず真っ先に思い浮かぶのが、このままエデンからおさらばして自由に暮らす道だ。

 とはいえ、組織を抜ければエデンからの刺客に一生追われるハメになる。これじゃあ完全な自由とは程遠い。まぁ、俺もエデンの中じゃ相当な実力者だと自負しちゃいるが……。

 

 却下だな。

 

 俺の腕はエデンも高く買っているはずだ。ならば当然、俺を消しに差し向けられる刺客は十二使徒……あるいは、『トゥルース』だ。

 逃亡の果てに相棒のビートに殺されるなんて、そんな下らねぇ最期だけは御免被る。問題外だ。

 

 さて、となると、どうにかしてエデンに戻る道を模索しなきゃならんわけだが。

 現状、俺がエデンに顔を出すのは自殺行為に近い。その理由は至ってシンプルだ。エデンの最高権力者に限りなく近い女の命令を無視し、牢屋を物理的に空にしたこと。

 この事実はどう足掻いても曲がらねぇ。事情があったにせよ、俺が軍律に反したことに変わりはない。隠蔽もクソもねぇ。

 じゃあ、事情があれば許されるか?

 どんな事情だよ。牢屋の中にゴキブリが出たから怖くて逃げ出しました、とでも言うか?

 ……無理だな。

 

 さて、ならばやはり、古今東西あらゆる組織で通用する唯一の解決策――「罪を手柄で上書きする」しかねぇ。

 悪いことをしたけれど、それ以上に良いことをしたからプラスマイナスでゼロ。倫理的にどうこうって話は置いておくとして、エデンの上層部に「こいつはまだ生かしておいた方が得だ」と思わせるような働きをすれば、まぁ助かるだろうよ。

 

 さて、そこで、今回偶然にも手に入れた『駒』を使うことにした。

 そう。ヘベレケスペシャル……じゃなくて、メッシュたちだ。

 

「さて、メッシュと、……ええい、その他。ちょっと(つら)貸せよ」

 

 俺はメッシュたちを騒がしい酒場から連れ出した。

 人目のつかない路地裏へ誘い込む。ちなみに、万が一話が(こじ)れて戦闘になったとしても、確実に制圧できるよう、周囲の瓦礫の下には即席の罠をいくつか仕掛けておいた。備えあれば憂いなし、だ。

 

「さて、メッシュ。お前、今のラヴドに不満はねぇか?」

 

メッシュ: 「特に無いな!!」

 

他3名: 「「「同じく!」」」

 

 さて、第一の質問から見事に失敗だ。

 

「さて、じゃあ……何だ。戦争に興味があるとか、腕を振るいたいとかは?」

 

メッシュ: 「特に無いな!!」

 

他3名: 「「「同じく!」」」

 

 ……やべえ。こいつら、意外と無欲か? こうなりゃ力ずくで引っ張っていくしかねぇか……。

 

「さて、実を言うとな。俺はある組織に与しているんだが。……お前たちの実力を見込んで、スカウトしたいと思ってるんだ」

 

メッシュ: 「……?」

 

「いきなりリーダー直属だ。通常の兵隊からは独立した、戦闘専門のエリート部隊。……どうだ?」

 

メッシュ: 「………………」

 

 黙り込むメッシュ。

 まぁ、そりゃそうか。見ず知らずの男に「エリート部隊に入らないか」なんて言われりゃ、普通は引くか、頭の回路がイカれてると思われるのがオチだ。

 

メッシュ: 「……リーダー直属ってことは、親衛隊的なものか?」

 

 ん? 何だ、その食いつき。

 

「さて、まぁ……そんなもんだ」

 

メッシュ: 「親衛隊隊長か!?」

 

「ま、まぁ。お前さんの実力次第じゃ、な」

 

 本当の隊長枠はハードネステンで決まりだろうが、この際、多少の嘘は必要経費だ。しかし、こいつ何でこんなに身を乗り出してくるんだ?

 

メッシュ: 「エクスデス親衛隊隊長みたいだ……かっこいい……!!」

 

 ん? なんか不吉な名前が聞こえた気がするが、無視しよう。

 

メッシュ: 「で、具体的な仕事の内容は?」

 

「さて、まぁ戦争が始まったらお前らを中心に作戦を組んで、最前線で暴れてもらう。……あとは、建設予定の重要拠点『ビッグブロック』の城主……とかだな」

 

メッシュ: 「 ビ ッ グ ブ リ ッ ヂ !!!!!? ? ? ? ? 」

 

「お、おう……」

 

 いや、『ブロック』なんだが。この際いいや。メッシュの目が、さっきより数倍輝いてるしな。

 

メッシュ: 「その仕事、引き受けたぞセルヴォ!! 面白そうだ!!」

 

 なんでだよ!!

 まぁ、都合よく話が進んで何よりだけどよ。

 

カリパー: 「……まぁ、メッシュが言うなら」

 

キドゥ: 「しょうがないね」

 

ゲンジ: 「我輩たちも、行くとしよう」

 

 お前ら……。本当についてくるだけでいいのか?

 

 さて、とりあえず第一段階はクリア。

 まぁ、本当の地獄はここからなわけだがな。

 

 さて、予定よりも随分と早いエデンへの帰還だ。本当なら謹慎期間のすべてをドブに捨てて遊び呆けるつもりだったんだが、背に腹は代えられねぇ。

 メッシュたちを引き連れてエデン本部のゲートを潜った瞬間、待ち構えていた大勢の一般兵が一斉にその銃口を俺へと向けた。殺気立ったセンサーの赤い光が俺のボディをなぞる。

 ……一応、ビートに「戻るなり即射殺とかはナシにしてくれ」と泣きついておいたんだが、こりゃあ歓迎されているとは言い難いな。とりあえず気にしない振りをしつつ歩いていると、一般兵の影からぬるりとビートが現れた。相変わらず、気配を消すのだけは天才的にうめぇ。

 

ビート:「……トゥルースのセルヴォだな?」

 

「さて、お前の記憶力は、一ヶ月の地味仕事でバグっちまったのか?」

 

ビート:「……形式上、こう言うことになっているんだ。……で、後ろの四機は?」

 

「デュオ主任、カヲスリーダー、そしてハードネステン閣下に是非ともお見せしたい逸材だ。俺の進退に関わる『切り札』だよ」

 

 ビートは数秒の間、値踏みするようにメッシュたちを観察していたが、やがて道を空けるよう一般兵に指示を出した。ただし、メッシュたちの両脇を屈強な兵士たちに固めさせ、警戒態勢は解かせない。

 

メッシュ:「む、むぅ。なんだか気分が悪いぞ。せっかく親衛隊隊長として就任しに来たというのに……」

 

「さて、まぁすぐに対応が変わるさ。今は我慢しな」

 

 俺はビートの先導で、エデンリーダー・カヲスの私室へと通された。

 重厚な扉が開くと、そこには底知れぬ沈黙を纏ったカヲスと、その傍らで仁王立ちするハードネステンが待ち構えていた。

 

ビート:「連れてきました」

 

カヲス:「……ご苦労…………」

 

ハードネステン:「ありがとうございます。お下がりください」

 

ビート:「…………はい」

 

 ビートは、俺にだけ聞こえるような微かな声で「生きて帰れよ」と耳打ちし、音もなく部屋を後にした。

 さて、俺、そんなに死にそうなことしちまったかね。

 

ハードネステン:「……セルヴォさん」

 

「あん? じゃねえや……。はい、なんでございましょう」

 

 最近、まともな敬語なんて使ってねぇから、油断すると言葉遣いがボロクソになる。マズイな。

 ハードネステンの全身からは、どす黒い怒りのオーラが物理的な圧力となって室内に満ちていた。その瞳が、俺の(メダル)まで焼き切らんばかりに細められる。

 

ハードネステン:「貴方には謹慎を言い渡したはずですが。その命を公然と破り、脱獄した。事実ですね?」

 

「さて、……ぐうの音も出ねぇ事実です」

 

ハードネステン:「ならば、私は規律に則り貴方を罰することになりますが。……何か、弁解はありますか?」

 

「さて、大有りだ。……大有りでございます」

 

 俺は、怪訝そうな顔をしているメッシュたちをハードネステンの前へと押し出した。

 

「さて、私セルヴォは。……非常に、その、最悪な、あー……なんかヤベェ感じのことをしてしまったことを深く反省いたしまして。何かこの反省を形で表すことはできないかと考え、現在トゥルースの抱える最重要任務――十二使徒結成のため、新たな強者を求めて単独潜入を行っていた次第で。……結果、この逸材たちをスカウトして参りました。命令無視は事実ですが、すべてはエデンのための善意的なあれでございます」

 

 さて、我ながら吐き気がするほど苦しい言い訳だ。

 ハードネステンはジロジロと不機嫌そうにメッシュたちを観察し、冷淡に切り捨てた。

 

ハードネステン:「そのようなその場しのぎの弁解のために、どこからか適当な人材を拾ってきたのではないですか?」

 

メッシュ:「何だと!? 適当とは何事だ!!」

 

「さて、滅相もございません! こいつら、性格は何気に馬鹿っぽいですけど、その戦闘力たるや凄まじいのなんのって! まさしく十二使徒のステレオタイプそのもので……」

 

ハードネステン:「そのような素晴らしい人材が、この短期間に一挙に四機も集まる道理があるでしょうか?」

 

「な……。集まっちまったもんは、しょうがねぇだろーが! ……でございます」

 

 

カヲス:「……ハード…………ネステン……」

 

 

 不意に、これまで置物のように静止していたカヲスが口を開いた。

 地を這うような重低音。音量は小さいが、リーダー特有の逃れようのない威圧感が、室内の空気を一瞬で凍りつかせる。

 

カヲス:「…………どいていろ」

 

 カヲスが右腕を緩やかに掲げると、その掌に紫色の半透明なエネルギーが渦を巻き始めた。怨念の質量――『ゴースト』。

 紫の燐光が凝縮され、直径二メートルほどの球体へと膨れ上がる。カヲスはそれを、躊躇なくメッシュに向けて解き放った。

 

 おいィ!? 俺の生命線になんてことを!!

 

「メッシュ! 避けろ!!」

 

 俺が割って入ろうとしたが、遅すぎた。ゴースト弾は音もなく、確実にメッシュの心臓部を捉える――。

 

 だが、俺の心配は無用だった。

 

 ――ガギィィィン!!

 

 メッシュの目前で、ガンキングのゲンジが神速の変形(メダチェンジ)を敢行。城壁のような盾へと姿を変え、放たれたゴースト弾を真っ向から受け止めたのだ。凄まじい衝撃波が室内に吹き荒れるが、盾は一ミリも動かない。

 

カヲス:「………………」

 

 カヲスの追撃が続く。

 今度はゴーストを長大な剣の形へと変質させ、メッシュの喉元へと突き出した。メッシュは既にジャッカルのカリパーを剣の姿で握りしめており、その白刃でゴーストの剣戟を鮮やかにいなしてみせた。

 さらに、背後にいたメイクイーンのキドゥが、各機に生じた僅かな熱歪みや損傷を、ナノマシンの発光と共に瞬時に修復していく。

 

カヲス:「……嘘では…………ないようだぞ…………ハードネステン……」

 

 あ、そうか。

 実力を測るために、いきなり仕掛けやがったのか。

 さて、だったらそうだと言えよな……。

 

 ハードネステンはカヲスに向き直ると、凛とした声で「はい」と短く応じた。そして、再びメッシュたちの方へと視線を戻す。

 

ハードネステン:「……カヲス様の攻撃を完璧に防ぎきった以上、その実力を疑う余地はありません。貴方たちの腕を疑うような真似をしたこと、お詫びいたします」

 

メッシュ:「ファッファッファ!! 良いってことよ! 強いやつほど言葉より拳が出るもんだからな!」

 

 さて、つくづくおめでてー奴だ。

 

ハードネステン:「……手続きが完了するまで、十二使徒専用の待機区画にてお待ちください。追って連絡を入れます」

 

 ハードネステンの指示で一般兵が入室し、メッシュたちを連れてどこかへ向かった。

 十二使徒の個人部屋は、近々巨大な飛空艇へと改造される予定だと聞いている。『ノアの箱舟』とかいう大層な名前が付けられるらしいが、あいつらなら派手な乗り物も喜びそうだな。

 

 メッシュたちが出ていくと、ハードネステンは一転、この世の終わりでも見るような不機嫌な顔で俺を睨みつけてきた。

 

ハードネステン:「……どうやら、外で仕事をしていたというのは真実のようです。この功績を考慮し、貴方の処罰については改めて検討します。……とりあえず、トゥルース本部へ戻りなさい」

 

 さて、物凄い残念そうな顔をしてやがる。そんなに俺をスクラップにしたかったのかね。

 まぁいい。トゥルース本部への帰還が許されたってことは、実質的にお咎めなしが決まったようなもんだ。

 

 俺はカヲスの部屋を後にし、心の中で鼻歌を歌いながら廊下を闊歩した。

 なんとかなった♪

 なんとかなった♪

 人生ってのは、いつだって一か八かの勝負だな!

 

 すると、曲がり角でジト目をしたビートと鉢合わせになった。

 

ビート:「……助かったのか?」

 

「さて、なんたって十二使徒を一気に四機も『釣り上げて』きたからな。プロのなせる技だぜ」

 

ビート:「そいつは重畳だ」

 

 相変わらず、温度のない目で俺を見るビート。

 俺が脱獄してから今日まで、こいつには相当な尻拭いをさせたんだろうな。ハードネステンの次は、相棒の機嫌も取っておかなきゃなんねぇ。

 

「さて、ビート……。とっておきの土産があるぜ♪」

 

 俺は、持ち帰った貴重なヘベレケスペシャルのうち、一缶をビートに手渡した。

 あいつはラベルを見た瞬間、目をカッと見開いた。

 

ビート:「こ、これは……まさかッ!?」

 

「さて、伝説のヘベレケスペシャルだ。今度、その一缶を二人でじっくりやろうじゃねぇか」

 

 俺がそう告げると、ビートは俺の手元に残ったもう一缶を、じっとりとした目で見つめてきた。二缶あるなら一缶ずつ山分けにしろよ、とでも言いたげな顔だ。

 だが、これだけは譲れねぇ。

 

 こいつは、俺を牢屋から見逃してくれた門番のボブへの『賄賂』……いや、感謝の印なんだからな。

 

 

 ちなみに。

 この直後、「ハードネステンに散々嫌味を言われたわぁぁぁぁッッ!!」とブチ切れたデュオさんに、逃げる間もなくガチの拳骨を食らった。

 

 何はともあれ。十二使徒結成まで、残りはあと三機。

 さて、この任務も、ようやく終わりが見えてきたな。

 

 

第二十五話【ビッグブロックの魅力】終わり

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