【完結】APPEARANCE of TRUTH 作:土地_0000
最終話【罪】by ビート
――パリンッ、……。
荒野に、小さく乾いた音が響いた。
リネルという少女を、この世界につなぎ留めていた魂の核――メダルが、俺たちの手で粉々に砕け散った音だった。
その後に訪れた静寂を破ったのは、これまで数え切れないほど耳にしてきた言葉だった。だが、それがこれほど暗く、重く響いたことは一度もなかった。
セルヴォ:「さて、……任務…………完了だ」
セルヴォは、たった今命を奪ったばかりのリネルの亡骸を抱きかかえ、地を這うような声で呟いた。
その目はひどく濁り、身体には戦闘の熱が残っていた。
セルヴォ:「さて、……今の、……最後の一撃は俺のハンマーだった。……そうだろ?」
「……いや。俺のライフルだった。俺が先にメダルを撃ち抜いている」
俺は感情を殺し、努めて平坦に答えた。
だが、セルヴォは身体を激しく震わせ、俺を睨みつけた。
セルヴォ:「いいや、俺だ。俺の打撃が、間違いなくトドメだった」
「俺だ」
セルヴォ:「俺だっつってんだろうがッ!!」
セルヴォの目には、剥き出しの怒りが浮かんでいた。
「……俺だッ!!!」
気づけば、俺もまた、柄にもなく怒鳴り返していた。
どちらが殺したのか。
そんなことは、今の俺たちにとって何の意味も持たないはずだった。誰がトドメを刺そうと、任務は完遂され、リネルはもう戻ってこない。
分かっている。分かっているんだ。
あいつがムキになって「俺だ」と言い張る理由は。そして、俺が意地になってそれを否定する理由も。
俺たちはただ、これ以上、相棒に『後輩を殺した』という消えない傷を刻ませたくなかった。その罪を、すべて自分が背負い込んでしまいたかった。
そのあまりに傲慢で、あまりに身勝手な慈愛が、最悪の口論となって荒野に響き渡った。
セルヴォ:「さて、……もう、どーでもいいや。先に帰るわ」
セルヴォは突然、肩の力を抜いた。
そして、動かなくなったリネルを乱暴に、けれどどこか愛おしむように背負い直すと、一度もこちらを振り返らず、エデン本部のある方向へ歩き出した。
セルヴォ:「お前は、少し遅れて来い。……報告書やら、そういう反吐が出るほどメンドクセー後始末は……。全部、俺がやっておいてやるよ」
「…………。あぁ、分かった」
俺は、去りゆく背中を追うことはしなかった。
相棒もまた、独りになりたかったのだろう。いや、俺が独りになりたいことを、あいつは見抜いていたのかもしれない。
月光に照らされた相棒の背中は、いつもより一回りも、二回りも小さく、孤独に見えた。
相棒の足音が遠ざかり、荒野には再び静寂が戻ってきた。
一人残された俺の脳裏には、先ほどまで目の前にあったリネルの最期の顔が、焼き付いて離れない。
これまで俺たちが命を奪ってきた、数多のメダロットたち。
死を悟った連中の顔は、恐怖に歪み、絶望に満ちていた。
だが、リネルは違った。
彼女の目は安らかに閉じられ、口元には微かな、けれど確かな微笑さえ浮かんでいた。それは、自らの「真実」を最後まで貫き通し、憎しみから解き放たれた者だけが浮かべられる、穏やかな表情だった。
あの瞬間。彼女の精神は、俺たちが一生かかっても届かない、遥かな高みにあったのだろう。
「裏切り者」としてではなく、「一つの生命」として。
俺は、彼女を尊敬する。
……だが。
俺は決して、彼女のようにはならない。
俺たちはこれからも、闇の中でこの手を汚し続ける。真実を人々の目から隠し、表向きの歴史を書き換え、悪であり続ける。
感謝の言葉も名誉もいらない。美しいものは泥と一緒に吐き捨てる。
それが、俺たちという『存在』なのだから。
これが、俺たちトゥルースの姿であり、
これが、俺たちトゥルースの仕事であり、
これが、俺たちトゥルースの希望であり、
これが、俺たちトゥルースの絶望であり、
これが、俺たちトゥルースの幸せであり、
これが、俺たちトゥルースの不幸であり、
これが、俺たちトゥルースの喜びであり、
これが、俺たちトゥルースの悲しみであり、
これが、俺たちトゥルースの怒りであり、
これが、俺たちトゥルースの楽しみであり、
これが、俺たちトゥルースの情熱であり、
これが、俺たちトゥルースの誇りである。
そして。
これが、俺たちトゥルースの「罪」である。
永久に許されることもなく、ただ、砕けたメダルの重みと共に、背負い続けなくてはいけない『真実』なのだ。
~THE END~