「さぁ、美味しいご飯を作ろう」
そう意気込んだものの、勝手が分からない。
「あの、食材はどこにあるんですか?」
「氷室に色々あるわよ」
氷室――確か、江戸時代とかに氷を保管して食材を冷やしていた部屋のはずだ。さすがは幻想郷、現代の冷蔵庫なんて代物はないらしい。
「氷室に、珍しい『どこから来たか分からない海の魚』と大葉があるわよ。それと、お米もね」
「……なぜ海の魚が珍しいのですか?」
「幻想郷には海がないのよ」
海がない場所に、なぜ新鮮な海の魚があるのだろう。まるで学校の七不思議に遭遇した気分だ。
「まぁ、とりあえず取りに行きます」
―――――――――――――――――――――――――
氷室に入ると、ひんやりとした空気が肌を刺した。
並んでいたのは……これ、鰹(カツオ)だろうか。それから大葉、豆腐、ネギ、大根、味噌。顔ぶれはかなり現代の食材に似ている。寒いし、長居は無用だ。急いで必要な分を抱えて外へ出た。
―――――――――――――――――――――――――
「キッチンはここか……。霊夢さん、この魚はいつ手に入れたものですか?」
「それ? あなたが昼間寝ている間に買ったものよ。あと、水はそこにある壺から使いなさい」
火を点けるには薪をくべ、水は壺から汲む。とてつもなく昔にタイムスリップしたような感覚だ。
今日の献立は、刺身、味噌汁、そして白米にしよう。正直、アニサキスなどの寄生虫が怖いが、目視でしっかり確認すれば大丈夫なはずだ。まずは火起こしから。
火打ち石と火打ち金を打ち合わせ、散った火花を火種箱へと落とす。箱の中には、乾燥させたスギやヒノキの葉、ガマやヨモギの繊維に油を染み込ませたものが入っているはず……。
「これか 」
四角い箱を見つけ、火花を落とす。煙が上がったところを優しく息で吹くと、小さな炎が生まれた。それを薄い木片の「着け木」に移し、かまどの薪へと火を移す。
「よし、案外簡単に点いたぞ。順調だ」
一つ目の土鍋に米と壺の水を入れ、かまどにセットする。次にもう一つのかまどに火を付け、汁物用の土鍋を置いた。壺の水を注ぎ、まずは火の通りにくい大根を入れる。湯気が上がってきたところで豆腐とネギを投入。沸騰する直前――いわゆる煮えばなの瞬間に味噌を溶き入れ、香りが飛ばないうちに土鍋を火から下ろした。薪の火を消すのも忘れない。
続いて、まな板を出して鰹を捌く。寄生虫を警戒して身をじっくり凝視しながら、手早く刺身の形にカットしていく。出た内臓は後で土に埋めるため、端にまとめておいた。陶器の皿に大葉を敷き、その上に切り分けた刺身を綺麗に盛り付ける。若干センチメンタルな気分になったがすぐに時間がたつものだ
「よし、完成だ。あとは米が炊けるのを待つだけだな」
昔は自炊が下手だったな親友にご飯の作り方を教えてくれた思い出があるまたあいつに料理を振舞ってやりたいな...だが僕が死ぬまでそれは叶わないだろう任務が終わった後には墓参りに行かなければセンチメンタルな気分になったがすぐに時間は経つものだ気づいたらご飯は炊けていたを
炊き上がった米を茶碗につぎ、居間の机へと料理を運ぶ。湯気を立てるご飯、出汁と味噌のいい香りが漂う味噌汁、そして艶やかな鰹の刺身。上出来だ。
あとは霊夢を呼ぶだけだったが、彼女は縁側で気持ちよさそうにうたた寝をしていた。起こすのは少し気が引けるが、せっかくのご飯が冷めてしまうのももったいない。そっと近づき、声をかける。
「霊夢さん、起きてください。ご飯ができましたよ」
「んーーありがとう」
眠気眼を擦っているとてつもなく眠そうだフラフラしながらも居間に来ている
「意外と美味しそうじゃない」
「鰹の刺身、味噌汁、白飯です。」
「いただきます。」
―――――――――――――――――――――――――
「はぁお腹いっぱいご馳走様」
「えぇお粗末様でした」
「貴方結構料理が上手なのねこれからもよろしく」
もう8時だ明日は大変になるからすぐに寝ておこう
「では先に布団を引いて寝ておきますね」
―――――――――――――――――――――――――
その時、張り詰めた空気を破るように、冷徹な声が響いた。
「――⬛︎⬛︎⬛︎、それに⬛︎⬛︎。お前たちに話がある」
そこには、奇妙な三体のモンスターが対峙していた。
巨大な筆を背中に背負い、どこか浮世離れした雰囲気を纏うナニカ。マフラーとジャケットを着込み、強い意志を瞳に宿した者。
指示された通りの青いジップアップパーカーを羽織り、ポケットに両手を突っ込んだままのモンスター。
「どうたんだい?」「どうしたんだ?」
⬛︎⬛︎⬛︎と⬛︎⬛︎と呼ばれた二体は、顔を見合わせ、同時に言葉を返した。青いパーカーのモンスターは深くフードを被り直し、二人を冷たい目で見据えたまま、本題を切り出す。
「……オイラはさ、あの世界は不要だと思うよ」
その一言に、場が凍りついた。筆を背負った者が、すかさず反論の声を上げる。
「何故だい? まだ僕たちの敵は見えていない。何者かの影響で、すでに沢山の生き物が危険に晒されているんだ!。 あそこの世界に構っている暇なんてない。それに、あそこの⬛︎⬛︎で出来る⬛︎は、強い可能性が高い。協力することが出来れば、僕たちにとって大きなアドバンテージになるはずだ。」
「……こればっかりは、⬛︎⬛︎⬛︎の言う通りだ」
マフラーのモンスターも、苦渋の表情で同意の頷きを返した。しかし、青いパーカーのモンスターは感情の読めない笑みを浮かべたまま、静かに首を振った。
「忘れたのか? ……オイラはちゃんと覚えてるぜ。⬛︎⬛︎⬛︎が多ければ多い程、その⬛︎⬛︎に出来る⬛︎は強くなり……そして『凶暴』になる。⬛︎⬛︎⬛︎の量が⬛︎⬛︎なら、オイラ達も一応⬛︎だけどさ。その凶暴性と強さの前には、太打ちができなくなる。普通、⬛︎⬛︎⬛︎の量は⬛︎のはずだろ。だからオイラは……あの⬛︎⬛︎を壊すよ」
「何を言ってるんだ!」
守護者が激昂し、一歩前に踏み出す。
「もう何者かの影響で、⬛︎⬛︎⬛︎が⬛︎⬛︎個も消失したんだぞ! 速くしないと手遅れになる!!」
「止めるならいいぜ。……出来るものなら、な」
青いパーカーのモンスターの片目の奥で、不気味な魔力の光が小さく揺らめいた。
「冷静になるよ……すまない。だけど、僕の役目は⬛︎⬛︎の守護だ」
筆のモンスターが背中の大筆に手をかける。
「君が敵になるというなら……僕が君を倒すよ」
「倒すなんて、そんな甘いことを言ってるからそうなるんだ」
マフラーのモンスターが割って入り、戦闘態勢を整える。
「本気でやるなら、殺してみろ。オイラいや俺はもう――とっくに覚悟が出来ている」
一触即発の空気が極限に達したその瞬間、バリバリと空間が引き裂かれた。
耳を刺すグリット音。漆黒の空間の裂け目から現れたのは、全身に不吉な文字を纏ったナニカ。
――⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎だった。
「さぁ……こちら側に来るかい?」
バグを含んだ歪んだ声で、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎が青いパーカーのモンスターに手を差し伸べる。
「――⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!」
守護者たちが武器を構え、警戒を最大に高めた。
しかし、マフラーを巻いたモンスターが、遮るように前に出る。
「悪いが、彼はそちら側に行こうとはしていない。さっさと失せろ」
緊迫した沈黙の中、青いパーカーのモンスターは視線を落とし、ぽつりと呟いた。
「……悪い」
その言葉を聞き、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は不敵な笑みを浮かべる。
「ほら見ろ、コイツはこう言ってるぞ?」
「……ちっ、もういい、勝手にしとけ!」
マフラーのモンスターは吐き捨てるように言い放ち、青いパーカーのモンスターの背中に視線を向けた。
「お前らがあそこを壊そうとするなら――俺達が、何としてでもあそこを守り抜く」
さぁ次章の予感です。